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新しい風
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「似合っていますね!」
「そう?私はとても気に入ったけど、アンナリーゼはそうでもなかったようね?」
「……締め付けるのが、どうしても苦手で」
「令嬢なら誰しも通っていそうな道だと思っているけど、そうでもないの?」
「アンナリーゼ様は体を鍛えていますから、自然と体が整っているのです。だから、余計なものはつけたくないと……」
「そういえば、少し幅があるわね?」
「…………ステイ様?」
「ごめんなさいね。悪気があるわけじゃないのよ?ナタリーと並ぶと少し違和感があるけど、そうね。とても自然体でバランスがいいわ。コルセットは腰を細く見せてだけど、確かにアンナリーゼの自然な美しさの前には、必要ないわね。そういう女性が増えていくといいのだけど」
ステイが笑いかけてくる。コルセットをする窮屈な感じもそれによって倒れる令嬢も多いことを知っているステイは、「もっと楽に生きられたらいいのにね」と呟いた。
「服装って、もっと自由でもいいと思うんですよね。広告塔の私が言ってはいけないのでしょうけど、流行りにのらず、独自の路線でドレスを着ているおしゃれってあると思うんです」
「確かに。リンゴ姫はその部類ではなくて?自分に似合うドレスを着て、誰もが羨むような輝きを出している」
「確かにカレンはそうですね。旦那様に愛されているというのが、カレン自身をさらに輝かせる要素でもありますし」
「確かに。私と結婚せずによかったわ。あの幸せそうな顔を見れば、わかるわ。リンゴ姫が選んだ人が正解だったって」
少し寂しそうにしているステイではあったが、カレンの幸せは願っているのだろう。その笑顔は優しさに満ちている。
「ステイ様との道が繋がっていたとしても、カレンは幸せだったと思いますよ」
「どうして?」
「カレンは、一途にステイ様への想いを大切にしていたと思います。今の旦那様に出会えた幸運はあるでしょうが、そういう道もあったこと、忘れないでください。例え、たらればの話だったとしても、そこから何か学ぶこともあると思いますから」
「……アンナリーゼって、生意気ね?」
「すみません。こういう性格なので。差し出した気持ちまで、偽るのは可哀想ですよ?」
ステイに笑いかけると「敵わないわ」と小さくため息をついた。カレンにステイへの未練はないだろう。ただ、当時の恋心の記憶を亡くしたかといえば、そうではない。大切にしまってあることを私は先日の再会で垣間見た。今の旦那様を愛しているカレンにとって、憧れに近い初恋は、色褪せることなく記憶に残っている。それは、ステイも同じなのだろう。気持ちに蓋をしたステイにも、新しい風が舞い込むことを私は願った。
「そう?私はとても気に入ったけど、アンナリーゼはそうでもなかったようね?」
「……締め付けるのが、どうしても苦手で」
「令嬢なら誰しも通っていそうな道だと思っているけど、そうでもないの?」
「アンナリーゼ様は体を鍛えていますから、自然と体が整っているのです。だから、余計なものはつけたくないと……」
「そういえば、少し幅があるわね?」
「…………ステイ様?」
「ごめんなさいね。悪気があるわけじゃないのよ?ナタリーと並ぶと少し違和感があるけど、そうね。とても自然体でバランスがいいわ。コルセットは腰を細く見せてだけど、確かにアンナリーゼの自然な美しさの前には、必要ないわね。そういう女性が増えていくといいのだけど」
ステイが笑いかけてくる。コルセットをする窮屈な感じもそれによって倒れる令嬢も多いことを知っているステイは、「もっと楽に生きられたらいいのにね」と呟いた。
「服装って、もっと自由でもいいと思うんですよね。広告塔の私が言ってはいけないのでしょうけど、流行りにのらず、独自の路線でドレスを着ているおしゃれってあると思うんです」
「確かに。リンゴ姫はその部類ではなくて?自分に似合うドレスを着て、誰もが羨むような輝きを出している」
「確かにカレンはそうですね。旦那様に愛されているというのが、カレン自身をさらに輝かせる要素でもありますし」
「確かに。私と結婚せずによかったわ。あの幸せそうな顔を見れば、わかるわ。リンゴ姫が選んだ人が正解だったって」
少し寂しそうにしているステイではあったが、カレンの幸せは願っているのだろう。その笑顔は優しさに満ちている。
「ステイ様との道が繋がっていたとしても、カレンは幸せだったと思いますよ」
「どうして?」
「カレンは、一途にステイ様への想いを大切にしていたと思います。今の旦那様に出会えた幸運はあるでしょうが、そういう道もあったこと、忘れないでください。例え、たらればの話だったとしても、そこから何か学ぶこともあると思いますから」
「……アンナリーゼって、生意気ね?」
「すみません。こういう性格なので。差し出した気持ちまで、偽るのは可哀想ですよ?」
ステイに笑いかけると「敵わないわ」と小さくため息をついた。カレンにステイへの未練はないだろう。ただ、当時の恋心の記憶を亡くしたかといえば、そうではない。大切にしまってあることを私は先日の再会で垣間見た。今の旦那様を愛しているカレンにとって、憧れに近い初恋は、色褪せることなく記憶に残っている。それは、ステイも同じなのだろう。気持ちに蓋をしたステイにも、新しい風が舞い込むことを私は願った。
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