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重い?
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「手触りはいいけど、少し重い気がするわ」
「そうです。少し重いんです。私の技術では、ここまでの重みにしか出来なかったんですけど……」
「それって、もっと重くするということ?」
「そういうことです」
「……これを纏ってダンスはなかなか骨が折れそうよ?」
私は布を持ち上げてみる。ずっしりするの重さに想像して見た。これを着て踊る姿を。どう考えても無理がある。渋い顔をしているとナタリーが笑った。
「ドレスの全体に使うわけではありませんよ?例えばですけど……失礼します」
ナタリーが織られたばかりの布を少し加工したものを私の腰に巻き付ける。まるでコルセットのようになる。今日は淡い色の服だったので、しっかりした赤や青が使われているので、グッと引き締まったように感じる。
「鏡はありますか?」
「ただいまお持ちします!」
工場長が慌てて姿見を取りに向かう。ステイは私に巻き付けられたものをじっくり見ている。気に入ったのだろうか?と視線を追うと、何度も頷いている。
「これは、コルセットの代わりにドレスに巻く形になるのかしら?」
「いえ、それは想定していません。あくまで、装飾品のひとつですから、コルセットは、必須ではありませんか?」
「……私はしていないから、コルセットを巻かれている気分よ?」
「こういうのを皮で作っている地域もあるようですね。興味がおありですか?」
「えぇ、すごく」
ナタリーは紐を持ってきてもらっていたようで、コルセットのようなそれをぎゅうぎゅうと締めあげていく。デリアにもこんなに締められたことがないのにと苦しんでいると、ニコッと笑うナタリー。
「アンナリーゼ様、まだ、まだ締めますからね?」
「まだ締めるの!」
「当たり前です!令嬢やご婦人方は、並々ならぬ努力で締めあげているのですから、たまにはアンナリーゼ様にも体験をしていただかないと」
「……無理。私、そんなに締めあげられると、息ができなくなるわ!」
「普段、アンナリーゼはコルセットをしていないの?」
ぎゅうぎゅうと締まっていくのに耐えながら、「してません!」とステイに答えると、笑い始めた。余程、私が苦しんでいることが嬉しいのか、ナタリーまで笑顔で私を見ている。
「そろそろいいですかね?」
「……よくない。外して……」
「工場長が来るまでの我慢ですから」
「来年はこれを流行らせるつもり?」
「それも考えたのですが、ステイ様から見てどうですか?」
「とてもいいと思うのだけど、もう少し柄の種類があるといいわね?」
「そう思いますか?私もそう思っているのですけど、なかなかコツがいるようで……来年に間に合うか……流行に乗せないでおくのもひとつだと思っています。アンナリーゼ様がこのように嫌うので、夜会でお披露目は難しいでしょうから」
「確かにそうね」と笑うステイとナタリー。「お待たせしました」と工場長が姿見を持ってきてくれたのだが、私は一刻も早く取ってほしかった。
「アンナリーゼ様、見てください。とても素敵ですよ?」
「うぅ……」
「ほら、アンナリーゼ」
楽しそうな二人を他所に、私は鏡を見る。そこに映るは、こってり絞られたウエストが細くなっており、なんだか、可哀想だ。
ただ、見たところ、とても可愛らしく、淡い色合いのドレスの引き立て役にはもってこいだろう。濃いいろだからこそ、余計に細く見えるので、流行りそうだ。
「ナタリー、これは、今から細々と作っていくことはできる?」
「来年を視野に入れますか?」
「今年でもいいんじゃないかしら?私はいらないけど」
「在庫がないので、売れませんから」
私は頷き、良き時期に出そうという話になった。貴族に売れるかもと言うより、領民の方が需要があるのではないかと考えた。
「そうです。少し重いんです。私の技術では、ここまでの重みにしか出来なかったんですけど……」
「それって、もっと重くするということ?」
「そういうことです」
「……これを纏ってダンスはなかなか骨が折れそうよ?」
私は布を持ち上げてみる。ずっしりするの重さに想像して見た。これを着て踊る姿を。どう考えても無理がある。渋い顔をしているとナタリーが笑った。
「ドレスの全体に使うわけではありませんよ?例えばですけど……失礼します」
ナタリーが織られたばかりの布を少し加工したものを私の腰に巻き付ける。まるでコルセットのようになる。今日は淡い色の服だったので、しっかりした赤や青が使われているので、グッと引き締まったように感じる。
「鏡はありますか?」
「ただいまお持ちします!」
工場長が慌てて姿見を取りに向かう。ステイは私に巻き付けられたものをじっくり見ている。気に入ったのだろうか?と視線を追うと、何度も頷いている。
「これは、コルセットの代わりにドレスに巻く形になるのかしら?」
「いえ、それは想定していません。あくまで、装飾品のひとつですから、コルセットは、必須ではありませんか?」
「……私はしていないから、コルセットを巻かれている気分よ?」
「こういうのを皮で作っている地域もあるようですね。興味がおありですか?」
「えぇ、すごく」
ナタリーは紐を持ってきてもらっていたようで、コルセットのようなそれをぎゅうぎゅうと締めあげていく。デリアにもこんなに締められたことがないのにと苦しんでいると、ニコッと笑うナタリー。
「アンナリーゼ様、まだ、まだ締めますからね?」
「まだ締めるの!」
「当たり前です!令嬢やご婦人方は、並々ならぬ努力で締めあげているのですから、たまにはアンナリーゼ様にも体験をしていただかないと」
「……無理。私、そんなに締めあげられると、息ができなくなるわ!」
「普段、アンナリーゼはコルセットをしていないの?」
ぎゅうぎゅうと締まっていくのに耐えながら、「してません!」とステイに答えると、笑い始めた。余程、私が苦しんでいることが嬉しいのか、ナタリーまで笑顔で私を見ている。
「そろそろいいですかね?」
「……よくない。外して……」
「工場長が来るまでの我慢ですから」
「来年はこれを流行らせるつもり?」
「それも考えたのですが、ステイ様から見てどうですか?」
「とてもいいと思うのだけど、もう少し柄の種類があるといいわね?」
「そう思いますか?私もそう思っているのですけど、なかなかコツがいるようで……来年に間に合うか……流行に乗せないでおくのもひとつだと思っています。アンナリーゼ様がこのように嫌うので、夜会でお披露目は難しいでしょうから」
「確かにそうね」と笑うステイとナタリー。「お待たせしました」と工場長が姿見を持ってきてくれたのだが、私は一刻も早く取ってほしかった。
「アンナリーゼ様、見てください。とても素敵ですよ?」
「うぅ……」
「ほら、アンナリーゼ」
楽しそうな二人を他所に、私は鏡を見る。そこに映るは、こってり絞られたウエストが細くなっており、なんだか、可哀想だ。
ただ、見たところ、とても可愛らしく、淡い色合いのドレスの引き立て役にはもってこいだろう。濃いいろだからこそ、余計に細く見えるので、流行りそうだ。
「ナタリー、これは、今から細々と作っていくことはできる?」
「来年を視野に入れますか?」
「今年でもいいんじゃないかしら?私はいらないけど」
「在庫がないので、売れませんから」
私は頷き、良き時期に出そうという話になった。貴族に売れるかもと言うより、領民の方が需要があるのではないかと考えた。
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