ハニーローズ ～ 『予知夢』から始まった未来変革 ～

お約束の工場見学Ⅲ

　恋とは盲目的なのだろうか……。私は、そういう恋をしたことがない。

　ライズを見て、ふとそんなことを思った。ナタリーを中心に世話をやくライズは、いたって普通に見えるが、私から見たらとても幸せそうに見える。初めて出会った日。アンバー公爵家で預からなくてならなくなったことで思うところがたくさんあった。
　今二人を見ていると息ぴったりに話をしていく様子に、まるで夫婦のようだと思えた。

　ナタリーはこのままライズと添い遂げるのかしら？あぁ、でも、ライズは身分がないわ。元の地位に戻ることが、とてつもない奇跡の重なりであったとしたら……あるかもしれないけど。

　どう見ても、ライズがナタリーの尻に敷かれているが、それも幸せなら、誰も何も言わないだろう。何の役にも立たなかったライズが、ナタリーのために……ナタリーのためだけに頑張った姿は、感動してしまいそうだ。


「あの人は？」
「ライズと言いまして、我が家の侍従です」
「そうなの？昔、どこかで会ったことがあるように思ったのだけど……勘違いだったかしらね？」
「昔ですか？」
「えぇ、ずいぶん昔。私、幼いころにインゼロ帝国へ遊びに行っていた時期があったのよ。そこで出会ったのが、さっきの青年のように感じたから」


　ステイの勘は正しいのだろう。ステイは、インゼロ帝国の元皇太子なのだから。見つかれば、彼は殺されるだろうが、今のところ、何も起こっていない。気が付いて放置されているのか、力のないライズに興味がないのか。
　どちらにしろ、私たちの生活似インゼロ帝国の現皇帝は興味はないようだ。


「気のせいですよ。さぁ馬車に乗ってください！」


　ステイに馬車へ乗るように促すと、しぶしぶ乗ってくれる。私はもう一度、話をしているナタリーとライズの方へ「馬車を出すよ！」と声をかけたら、先にライズは出発してしまう。


「……なんていうか、ナタリーはすごく上手にしているわね？」
「ライズですか？」


　コクンと頷く私に「そんなことないですよ」と笑顔で否定していく。ここまでの信頼関係を績のに大変だった話を聞くことになったが、そのお話はインゼロ帝国にいたときの話であった。身の上話は細かいところまで話をしている証拠で、驚きを隠せなかった。