1,374 / 1,480
何を考えているのですか?
しおりを挟む
私は恋人に贈り物をしてもらい、とても嬉しいとうふうに店を離れた。アデルが私の後についてきた。後ろを振り返ろうとしたので、アデルの腕に私の腕を絡ませてる。急なことで驚いてアデルはこちらを見た。
「きゅ、急にどうしたのですか?」
「後ろを振り向かないで。このまま、私だけをしばらく見ていて」
「……わかりました」
納得していないという表情のまま、アデルは私の言ったことを守ってくれる。傍から見れば、ただのバカップルだが、今はそれでいい。そうしないとダメだから。
私たちを疑う視線をまだ感じているので、どこか店に入ることにした。ちょうど、昼食時間も近いので、食堂へ入って行く。さすがに、視線は感じなくなった。
「いらっしゃいませ。2名ですか?」
「えぇ。あまり人が来ない席ってありますか?」
これ見よがしにアデルに甘える私を見て、店員は苦笑いをして奥の席に通してくれた。確かにこの場所はあまり人が来ないであろう。大きな声で話さなければ、大丈夫だと判断して、やっとアデルから離れる。
「アデル」
「何でしょうか?」
私が離れたことにホッとしているアデルを睨むと何かいいわけが出てきそうだ。まぁ、このラブラブ計画は、まだ継続中なので、気を抜かないでほしい。
「机の上に左手を出しておいて」
「……左手ですか?」
「そう。ラブラブな雰囲気はまだ、続けておいてくれないと困るわ!いつ店員が来るかわからないでしょ?」
「……でも、そろそろいいんじゃないですか?解放してくれても。アンナの悪ふざけでしょ?」
大きなため息をつくと、何かまずいことを言ったのかと肩を震わせる。私もニコニコニコニコと笑いかける。
「さっきのお店……視線を感じなかった?」
「視線ですか?そんなのは全く」
「……もう少し、訓練が必要なようね?ディルに言っておくから、しっかり励みなさい!」
「えっ?いや、ちょっと……それは」
「もう少し、あるでしょ?」
「……暗殺者か何かですか?」
「暗殺者というより観察者って感じたかな。ねっちこいいやらしい感じ?」
「……アンナって、そういうのはどうやってわかるのですか?」
「感じない?人の視線って、好意や悪意とかって。特に殺意はすごく感じるけど?」
「今回のは観察なのですよね?さすがの俺でも殺意は感じますし、好意もわかります」
私は「好意がわかります」と言ったアデルに驚いてしまった。好意がわかるのは、向けられたことがあるからだ。ジトっと見ると、「俺だって近衛でしたからね!」というので、「制服効果か」と笑ってやると、拗ねるアデル。
「落ち込まないで、そういうので結婚まで繋がる人もいるから」
「俺は全く何もないですけどね?」
「アデルって、本当に好意の視線を受けたことあるの?」
疑問に思い、再度聞くと「ありますから!」と完全に拗ねてしまう。好意がわかるなら、リアンの好意もわかっているはずだが、これは……絶対わかっていないと思ってよさそうだ。
そのとき、足音が聞こえてくる。私は咄嗟にアデルの手を握り、恋人繋ぎをする。ちょうど、店員が注文を取りに来たときに、目に入っただろう。
「お薦め料理でお願いします!」
私は店員に言えば、注文をとって、厨房へ伝えに行く。その様子を見ても、特に何もなさそうなので、アデルの手をパッと開いた。
「……何事でしょう?」
「大切なのよ。こういうの」
「……確かに、玄関を通ったときは、仲が良かったのにってことですね。やっと理解出来ました」
「小さなことからコツコツよ?」
頷くアデル。他にも聞きたいことがあったらしく、私の首元で光るネックレスを指さした。
「何を考えているのですか?」
「何って……この宝石、クズ石でできたもので、アデルが払った金額は本物の値段だったから、何かあるのか調べるために買ったのよ」
「……お財布が」
「リアンに買ってって言われたら買うくせに」
「それは、その……でも、アンナの場合は俺じゃなくてもいいわけで……それこそ、最高級のものばかりですよね?」
「そうね。だからこそ、違和感を感じたのよ」
ネックレスを見ながら、どこの仕入れなのか……。
「これは、あの領地で取れるものなのではないのですか?」
「それはないんじゃないかしら?この領地で取れるなら、おかしいわよ?」
「どういうことですか?」
「クズ石を宝飾品にするというのがないのよ。だから、これはおかしいの。値段も含めてね。店を見て回ったときに感じた違和感がね……そのまま、監視されちゃったって感じね」
「アンナが味方でよかった」
「どうして?」と聞くと、とてもじゃないが私には敵わないと笑う。護衛がそれでは困るのだけど?と苦笑いをしていると、店員がお薦めをもって来てくれる。ところ変われば、おいしい料理も違う。見たこともないおいしそうな料理に頬も緩む。「先に毒見します」とアデルが口に入れたのを見ていると頷くので、食べても大丈夫なようだ。私は湯気の立ったスープにスプーンを突っ込む。柔らかいお肉が、私を温めてくれたのであった。
「きゅ、急にどうしたのですか?」
「後ろを振り向かないで。このまま、私だけをしばらく見ていて」
「……わかりました」
納得していないという表情のまま、アデルは私の言ったことを守ってくれる。傍から見れば、ただのバカップルだが、今はそれでいい。そうしないとダメだから。
私たちを疑う視線をまだ感じているので、どこか店に入ることにした。ちょうど、昼食時間も近いので、食堂へ入って行く。さすがに、視線は感じなくなった。
「いらっしゃいませ。2名ですか?」
「えぇ。あまり人が来ない席ってありますか?」
これ見よがしにアデルに甘える私を見て、店員は苦笑いをして奥の席に通してくれた。確かにこの場所はあまり人が来ないであろう。大きな声で話さなければ、大丈夫だと判断して、やっとアデルから離れる。
「アデル」
「何でしょうか?」
私が離れたことにホッとしているアデルを睨むと何かいいわけが出てきそうだ。まぁ、このラブラブ計画は、まだ継続中なので、気を抜かないでほしい。
「机の上に左手を出しておいて」
「……左手ですか?」
「そう。ラブラブな雰囲気はまだ、続けておいてくれないと困るわ!いつ店員が来るかわからないでしょ?」
「……でも、そろそろいいんじゃないですか?解放してくれても。アンナの悪ふざけでしょ?」
大きなため息をつくと、何かまずいことを言ったのかと肩を震わせる。私もニコニコニコニコと笑いかける。
「さっきのお店……視線を感じなかった?」
「視線ですか?そんなのは全く」
「……もう少し、訓練が必要なようね?ディルに言っておくから、しっかり励みなさい!」
「えっ?いや、ちょっと……それは」
「もう少し、あるでしょ?」
「……暗殺者か何かですか?」
「暗殺者というより観察者って感じたかな。ねっちこいいやらしい感じ?」
「……アンナって、そういうのはどうやってわかるのですか?」
「感じない?人の視線って、好意や悪意とかって。特に殺意はすごく感じるけど?」
「今回のは観察なのですよね?さすがの俺でも殺意は感じますし、好意もわかります」
私は「好意がわかります」と言ったアデルに驚いてしまった。好意がわかるのは、向けられたことがあるからだ。ジトっと見ると、「俺だって近衛でしたからね!」というので、「制服効果か」と笑ってやると、拗ねるアデル。
「落ち込まないで、そういうので結婚まで繋がる人もいるから」
「俺は全く何もないですけどね?」
「アデルって、本当に好意の視線を受けたことあるの?」
疑問に思い、再度聞くと「ありますから!」と完全に拗ねてしまう。好意がわかるなら、リアンの好意もわかっているはずだが、これは……絶対わかっていないと思ってよさそうだ。
そのとき、足音が聞こえてくる。私は咄嗟にアデルの手を握り、恋人繋ぎをする。ちょうど、店員が注文を取りに来たときに、目に入っただろう。
「お薦め料理でお願いします!」
私は店員に言えば、注文をとって、厨房へ伝えに行く。その様子を見ても、特に何もなさそうなので、アデルの手をパッと開いた。
「……何事でしょう?」
「大切なのよ。こういうの」
「……確かに、玄関を通ったときは、仲が良かったのにってことですね。やっと理解出来ました」
「小さなことからコツコツよ?」
頷くアデル。他にも聞きたいことがあったらしく、私の首元で光るネックレスを指さした。
「何を考えているのですか?」
「何って……この宝石、クズ石でできたもので、アデルが払った金額は本物の値段だったから、何かあるのか調べるために買ったのよ」
「……お財布が」
「リアンに買ってって言われたら買うくせに」
「それは、その……でも、アンナの場合は俺じゃなくてもいいわけで……それこそ、最高級のものばかりですよね?」
「そうね。だからこそ、違和感を感じたのよ」
ネックレスを見ながら、どこの仕入れなのか……。
「これは、あの領地で取れるものなのではないのですか?」
「それはないんじゃないかしら?この領地で取れるなら、おかしいわよ?」
「どういうことですか?」
「クズ石を宝飾品にするというのがないのよ。だから、これはおかしいの。値段も含めてね。店を見て回ったときに感じた違和感がね……そのまま、監視されちゃったって感じね」
「アンナが味方でよかった」
「どうして?」と聞くと、とてもじゃないが私には敵わないと笑う。護衛がそれでは困るのだけど?と苦笑いをしていると、店員がお薦めをもって来てくれる。ところ変われば、おいしい料理も違う。見たこともないおいしそうな料理に頬も緩む。「先に毒見します」とアデルが口に入れたのを見ていると頷くので、食べても大丈夫なようだ。私は湯気の立ったスープにスプーンを突っ込む。柔らかいお肉が、私を温めてくれたのであった。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
悲恋を気取った侯爵夫人の末路
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。
順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。
悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──?
カクヨムにも公開してます。
私との婚約は政略ですか?恋人とどうぞ仲良くしてください
稲垣桜
恋愛
リンデン伯爵家はこの王国でも有数な貿易港を領地内に持つ、王家からの信頼も厚い家門で、その娘の私、エリザベスはコゼルス侯爵家の二男のルカ様との婚約が10歳の時に決まっていました。
王都で暮らすルカ様は私より4歳年上で、その時にはレイフォール学園の2年に在籍中。
そして『学園でルカには親密な令嬢がいる』と兄から聞かされた私。
学園に入学した私は仲良さそうな二人の姿を見て、自分との婚約は政略だったんだって。
私はサラサラの黒髪に海のような濃紺の瞳を持つルカ様に一目惚れをしたけれど、よく言っても中の上の容姿の私が婚約者に選ばれたことが不思議だったのよね。
でも、リンデン伯爵家の領地には交易港があるから、侯爵家の家業から考えて、領地内の港の使用料を抑える為の政略結婚だったのかな。
でも、実際にはルカ様にはルカ様の悩みがあるみたい……なんだけどね。
※ 誤字・脱字が多いと思います。ごめんなさい。
※ あくまでもフィクションです。
※ ゆるふわ設定のご都合主義です。
※ 実在の人物や団体とは一切関係はありません。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる