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ステイ様って……

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 私はステイが編み上げた紐を見て「すごいね!」とナタリーに声をかけた。デリアが作る紐も並べると、手先がとても器用なことがわかる。
 ナタリーは両方を手に取り、見比べていた。その鋭い眼光は、一令嬢のものとは思えない。誰かを暗殺するのではないか!と思わせるほど、ドキッとしてしまう。


「……ナ、ナタリー?」
「……」
「ナタリー様?」
「ステイ殿下!」
「はいっ!」


 ナタリーの気迫に思わず返事をするステイに思わず笑いそうになった。

 ……危ないわ。笑うところだった。

 姿勢のいいステイであるが、さらに背筋が伸びているので、滅多に味わらない緊張にあっているのだろう。


「ステイ殿下、とても器用なのですね!」
「えっ?そうかしら?」
「えぇ、とっても!この見本と少しの説明で、こんなに上手に編めるなんて!神様から与えられたものに違いありませんわ!」


 すごく褒めたたえているナタリー。
 その言葉、要約すると……『ステイ殿下!私のために編んで編んで編んでください!』だと思うよと心の中で呟いておく。
 ただ、ステイのほうもナタリーに褒められて、満更ではない様子。このまま、ナタリーのペースに巻き込まれて、夜まで紐を編むことになりかねない。
 ただ、私も助け船は出せないので……頑張れっ!と応援だけしておいた。


「アンナリーゼ様も、ステイ様を見習って頑張ってくださいね?」

 とてもいい笑顔で振り向くナタリー。どうやら、良い仲間を見つけられたらしいので、ニコニコとその笑顔が怖い。きっと、巻き込まれていくことだろう。
 今日は、そういう日なのだと腹をくくるしかなかった。


 ……これ、たぶん、ずっと続くわよね?執務もしたいけど、無理そう。

 デリアが部屋に入ってきたが、何かをさっちしたのか、お茶だけ用意して、ココナにお願いして出て行ってしまった。そう、前回の大変さを知っているのだ。デリアは。
 自分の変わりがいるのなら……そう思って去ったことだろう。ずるい。


「そういえば、ジョージア様はあまりコーコナにはこないですね?」
「そりゃ、元嫁の実家ですから、来にくいんじゃないの?」
「そのあたり、どう思われますか?アンナリーゼ様!」


 興味津々というふうに、ナタリーが聞いてきた。

 待って!なんか、ナタリーとステイ様、息ぴったりにかけ合わせてくるんだけど……これって、私、しんどいのではないの?

 ダリアやクーヘンを見つめると、視線を微妙に逸らされた。そう。ここで、私を守ってくれる人は誰もいないんだと悟った。
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