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屋敷に戻ると
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「そろそろ戻りましょうか?」
日の傾きも西よりなり、数時間で日が暮れる。屋敷に帰るよう提案すれば、みなが、帰る準備を始めた。
牛のお産騒動のあと、まだ見ぬ診療所の奥まで見せてもらい私は大満足していたが、ステイは少し困ったような表情をしていた。何故かと聞くと、診療所という考えが今までなかったという。平民は町医者に頼ってはいるが、それは口伝で伝えられる怪しげな薬の調合であったり、いい加減な診療であったりと、きちんと学んで町医者になっているものが、少ないらしい。
人が死ぬこと自体は、この世の中ではごく普通のことだ。ただ、もしかしたら、その中でも助けられた命もあったのではないかと、ステイは話始めた。
「ステイ様は町医者を信じていないのですか?」
「……公宮には専属の医者がいるから、町医者に見てもらうことはないの」
「そう言われればそうですね。私もヨハンがいるので、他の人に見てもらったことはありません」
「そう。そうなの。町医者って、評判のところで弟子になって、数年働いたらのれんわけするじゃない?」
「そうですね?」
「それでいいのかなって思って」
私は、南の領地での話をし、優秀な町医者は存在すると伝えた。確かに私の出会ったものたちは、病気について、間者について、しっかり向き合っている印象を受けた。だからこそ、町のみなが頼ってきていたことがわかる。その助手も同じく、しっかりと勉強をしていた。もちろん、私の知らない病気などの治療法など、様々な知識を備えていることに感心すらした。
そんな中で、この国1番の名医となってしまったヨハンの元で学ぶ機会を得たものたちは多い。今日も助手の側で動き回っていたのは、どこだったかの町医者の助手である。
「命を預かるものたちですからね。勤勉であってほしい、診断を間違わないでほしい、家族を助けてほしい……そう願うのは当たり前です。南の領地でも、いろいろな医者がいましたが、さらなる高みを目指すために、自身の元から助手を派遣して、今、アンバー領で勉強させている町医者もいますよ?」
「聞いたことがある話ね?」
「アンバー領は学都を目指しています。学びたいというものを受け入れ、立派に育ったあとは、それぞれの領地で活躍してほしいと願っています。その中ででも、医師は特別。大切な誰かを守ってくれる存在ですから、ヨハンを始め、ヨハンの助手たちが持てるもの全てを教えています。今後、ヨハンは離れると言っているので、別の研究へ戻ることになりますが」
「ヨハン教授がいなくなっても、今日の助手の様子を見れば、安心よね。アンナリーゼは、本当に人に恵まれている子ね?」
「私ですか?」と自分に向かって指を指すと、ステイは頷いていた。私は人誑しなんて言われているので、ステイも恵まれているというのなら、そうなのだろう。
「みんなに言われますけど、私が何かをしたというより、みんなが私を見つけてくれたというのが正解だと思います。人誑しなんてよく言われますけど……」
「確かに、アンナリーゼの周りにいれば、楽しいことが多いから、期待してしまうのね」
「屋敷が見えてきましたよ!」と話をを逸らし、私たちは中へ入って行く。馬での移動だったので、ステイは疲れただろうと聞くと、苦笑いしていた。
「数日間、ずっとだから……少し疲れたかもしれないわ」
「では、明日は1日屋敷で休みましょう。玄関に馬車が止まっていたので、ナタリーたちも着いたようですから」
「そうなのね?それは、あちらの旅の話も聞かなくてはならないわ!」
「きっと、楽しい旅になったと思いますよ。馬車の中はいつでも大盛り上がりですからね?」
「今年は、馬移動だから、残念だったわね?」
「いえ、それはそれで楽しいので大丈夫です。約束もありましたから」
玄関へ入ると、デリアが先に戻っていたので出迎えてくれる。その後ろからナタリーが飛び出してきて、私に抱きついた。
ジョージアがいない今、ナタリーはこうしてくっついてくることもある。
「アンナリーゼ様!」
「ナタリー、無事の旅、お疲れ様!」
「アンナリーゼ様は、先に視察に出られたと聞きましたよ?」
「そうね。コットンと約束があって……ナタリーもあるでしょ?工場長と」
「そうですけど……私も、アンナリーゼ様とお出かけしたかったです。デリアに聞いて……」
「コーコナ領にいる時間はまだまだあるから、一緒に出かけましょう!」
「明日はどうされるのですか?」
ナタリーの疑問に、さっきステイと話したことをそのまま話す。ナタリーとダリアも馬車での長旅だったため、1日ゆっくりしたらどうだと提案すると頷いてくれた。
「私、1つお願いがあるのですが……」
「何?」
「昨年でしたか?作った……」
「てるてる坊主?」
「そうです!あれをまた作りたいのですが、お手伝いしていただけますか?」
「商品化するの?」
「えぇ、公都では入荷待ちになっているので……」
「はやりすたりもあるけど……大丈夫なの?在庫にならない?」
「そのあたりは、考えてあります。また、端切れを使うので、材料費は少なく済みますし……他国へも売り出そうかとニコライと話していたのです」
さすが、商売に関しては、この二人の絆は山より高く海より深い。「わかったわ」と返事をすれば、私の後ろにいるステイとナタリーの後ろにいたダリアが興味あると聞き耳をたてていた。
日の傾きも西よりなり、数時間で日が暮れる。屋敷に帰るよう提案すれば、みなが、帰る準備を始めた。
牛のお産騒動のあと、まだ見ぬ診療所の奥まで見せてもらい私は大満足していたが、ステイは少し困ったような表情をしていた。何故かと聞くと、診療所という考えが今までなかったという。平民は町医者に頼ってはいるが、それは口伝で伝えられる怪しげな薬の調合であったり、いい加減な診療であったりと、きちんと学んで町医者になっているものが、少ないらしい。
人が死ぬこと自体は、この世の中ではごく普通のことだ。ただ、もしかしたら、その中でも助けられた命もあったのではないかと、ステイは話始めた。
「ステイ様は町医者を信じていないのですか?」
「……公宮には専属の医者がいるから、町医者に見てもらうことはないの」
「そう言われればそうですね。私もヨハンがいるので、他の人に見てもらったことはありません」
「そう。そうなの。町医者って、評判のところで弟子になって、数年働いたらのれんわけするじゃない?」
「そうですね?」
「それでいいのかなって思って」
私は、南の領地での話をし、優秀な町医者は存在すると伝えた。確かに私の出会ったものたちは、病気について、間者について、しっかり向き合っている印象を受けた。だからこそ、町のみなが頼ってきていたことがわかる。その助手も同じく、しっかりと勉強をしていた。もちろん、私の知らない病気などの治療法など、様々な知識を備えていることに感心すらした。
そんな中で、この国1番の名医となってしまったヨハンの元で学ぶ機会を得たものたちは多い。今日も助手の側で動き回っていたのは、どこだったかの町医者の助手である。
「命を預かるものたちですからね。勤勉であってほしい、診断を間違わないでほしい、家族を助けてほしい……そう願うのは当たり前です。南の領地でも、いろいろな医者がいましたが、さらなる高みを目指すために、自身の元から助手を派遣して、今、アンバー領で勉強させている町医者もいますよ?」
「聞いたことがある話ね?」
「アンバー領は学都を目指しています。学びたいというものを受け入れ、立派に育ったあとは、それぞれの領地で活躍してほしいと願っています。その中ででも、医師は特別。大切な誰かを守ってくれる存在ですから、ヨハンを始め、ヨハンの助手たちが持てるもの全てを教えています。今後、ヨハンは離れると言っているので、別の研究へ戻ることになりますが」
「ヨハン教授がいなくなっても、今日の助手の様子を見れば、安心よね。アンナリーゼは、本当に人に恵まれている子ね?」
「私ですか?」と自分に向かって指を指すと、ステイは頷いていた。私は人誑しなんて言われているので、ステイも恵まれているというのなら、そうなのだろう。
「みんなに言われますけど、私が何かをしたというより、みんなが私を見つけてくれたというのが正解だと思います。人誑しなんてよく言われますけど……」
「確かに、アンナリーゼの周りにいれば、楽しいことが多いから、期待してしまうのね」
「屋敷が見えてきましたよ!」と話をを逸らし、私たちは中へ入って行く。馬での移動だったので、ステイは疲れただろうと聞くと、苦笑いしていた。
「数日間、ずっとだから……少し疲れたかもしれないわ」
「では、明日は1日屋敷で休みましょう。玄関に馬車が止まっていたので、ナタリーたちも着いたようですから」
「そうなのね?それは、あちらの旅の話も聞かなくてはならないわ!」
「きっと、楽しい旅になったと思いますよ。馬車の中はいつでも大盛り上がりですからね?」
「今年は、馬移動だから、残念だったわね?」
「いえ、それはそれで楽しいので大丈夫です。約束もありましたから」
玄関へ入ると、デリアが先に戻っていたので出迎えてくれる。その後ろからナタリーが飛び出してきて、私に抱きついた。
ジョージアがいない今、ナタリーはこうしてくっついてくることもある。
「アンナリーゼ様!」
「ナタリー、無事の旅、お疲れ様!」
「アンナリーゼ様は、先に視察に出られたと聞きましたよ?」
「そうね。コットンと約束があって……ナタリーもあるでしょ?工場長と」
「そうですけど……私も、アンナリーゼ様とお出かけしたかったです。デリアに聞いて……」
「コーコナ領にいる時間はまだまだあるから、一緒に出かけましょう!」
「明日はどうされるのですか?」
ナタリーの疑問に、さっきステイと話したことをそのまま話す。ナタリーとダリアも馬車での長旅だったため、1日ゆっくりしたらどうだと提案すると頷いてくれた。
「私、1つお願いがあるのですが……」
「何?」
「昨年でしたか?作った……」
「てるてる坊主?」
「そうです!あれをまた作りたいのですが、お手伝いしていただけますか?」
「商品化するの?」
「えぇ、公都では入荷待ちになっているので……」
「はやりすたりもあるけど……大丈夫なの?在庫にならない?」
「そのあたりは、考えてあります。また、端切れを使うので、材料費は少なく済みますし……他国へも売り出そうかとニコライと話していたのです」
さすが、商売に関しては、この二人の絆は山より高く海より深い。「わかったわ」と返事をすれば、私の後ろにいるステイとナタリーの後ろにいたダリアが興味あると聞き耳をたてていた。
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