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自覚はあるのね?
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コットンと別れてから、私たちは別の場所へ向かった。少し離れた場所に、ヨハンが公
からもぎ取ったお金で建てた診療所がある。誰でも格安で診療できることが売りで、連日賑わっている。
どうしてヨハンがこの場所に診療所を建てたのかは、はっきり聞いていないが、領地の中心となる場所で領地の中であれば、どこに呼ばれても同じ時間で行けるからだろう。ヨハンらしい考えで頷ける。
常駐している医師が数名おり、研究職や研修医も含まれていた。
コーコナ領へ行くなら、見ておいでと言われ、予定より時間があったから様子を見に来た。
「今度はどこへ向かうの?」
「ヨハンが建てた診療所へ」
「ヨハン?」
「私の主治医です。専攻は毒ですが、医術も心得ていて昨年も大活躍でした」
「あぁ、あの!今日は会えるのかしら?」
「どうでしょう?いつもはアンバー領にある研究室に閉じこもっているんですが、たまにこちらにも来ていますし……フラフラと他領へ出かけているときもあるようなので」
「……なんていうか、類は友を呼ぶというけど、アンナリーゼの周りにはそんな人が多いのかしら?」
「……そんなことないですよ。私とヨハンくらいです。他のみなは、真っ当に生きていますから」
「自覚はあるのね?」
ステイが呟いた言葉に苦笑いをするしかなかった。
……自覚はもちろんありますよ。
心の中で呟いておく。口に出してしまうと、いい大人が恥ずかしさでどうにかなりそうだ。ステイは私の心の内を見抜かれているようで、温かい目で見守ってくれた。
「あれがそうですかね?」
「アンナリーゼも知らないの?」
「領主と言っても、建てるからって言われただけで、詳しくは教えてくれませんでした。ヨハンのことだから、無茶はしないことを知っているので、許可だけだしたんです」
「信頼関係が出来ているのね?」
「そうですかね?毒を飲まされる関係ですからね……それなりのものはお互い持っているとは思います」
「……毒?さっきヨハン教授の専攻だとは聞いたけど」
「そうですよ。私の毒耐性のために研究をしてくれています」
「アンナリーゼは毒耐性を付けているのね。公族でもないのに」
「そうですね。私は、外を出歩くことが多いので、どこからともなく接種してしまうこともあるので、父が心配してくれて」
私はステイに誤魔化した。一般的なものなら、侯爵家の娘であれば、珍しくあっても許容範囲だ。私の場合、三国に留まらず、インゼロ帝国やその他の国の毒も耐性があるが黙っておく。
「優しいお父様ね。確かに、アンナリーゼは外を出歩くことが多いようだから、心配よね。ジョージアも知っていて?」
「えぇ、話してあります。私の行動範囲が広いので、そのあたりも気にしてくれていたようで」
「そう。アンナリーゼには驚かされることばかりね」
ニコリと笑いかけ、私は建物の中へ入って行く。平屋建ての奥に広い作りになっているようで、私を見つけたヨハンの助手らしきものが、駆け寄ってきた。
「アンナリーゼ様、ようこそおいでくださいました」
「ヨハンの建てた診療所が見たくて。見て回ってもいいかしら?」
「もちろんです。ご案内しますね?」
私たちは白衣の助手の後をついて歩く。前回、領地を訪れてから変わった場所のひとつなのだが、白を基調に清潔感のある作りになっており、とても綺麗だ。
「この壁には、教授拘りの素材が使われているのですよ!」
「板ではないのね?」
「珪藻土と言って、湿度調整を出来るようにしてあります。病人がいる場所での乾燥は病気を進める場合もありますから」
「なるほど。ヨハンが考え抜いた造りになっているということかしら?」
「はい、そうです。あとは、患者を動かしやすいようにと動線が考えられていることと、スタッフについては、研修医も含め常駐させています」
「その研修医なんだけど、どう?効果はあるかしら?」
私は助手に話を聞くと、頷いている。元々、町医者の元、修行を積んでいたものたちっばかりで、手際も勘もいいものが多いらしい。勉学も真面目にしている、領地内へ派遣しても評判がいいらしい。
この診療所についてはヨハンに任せっきりとなっているので、内情は知らなかったが、なかなか、いいように動いているらしい。
今後、大規模な形で病の流行があったとしても、対応できるように考えてくれているらしい。
「これって、まだ、アンバー領には出来ていないわよね?」
「基本的に、アンバー領には作らないと教授は言っていましたよ?」
「そうなの?そのあたり、何か聞いている?」
「領地で何かあれば、研究所を開放するつもりだと思います。アンナリーゼ様は知らないかもしれませんが、あの研究所の奥にはいろいろと研究棟が立ち始めているので」
「……確かにあの一帯は好きに使っていいとは言ったけど、全然聞いていないわ。アンバー領へ帰ったら視察ね」
「アンナリーゼでも苦労することがあるのね?」
「……ヨハンとアンジェラだけは、私でも予測不可能ですから、振り回されることもありますよ?」
ステイがおかしそうにしているので、小さくため息をつく。どうやら、ヨハンをそろそろ捕まえて話を聞かないといけないらしい。まずは、ヨハンの確保からかと思うと先が思い知らされたのであった。
からもぎ取ったお金で建てた診療所がある。誰でも格安で診療できることが売りで、連日賑わっている。
どうしてヨハンがこの場所に診療所を建てたのかは、はっきり聞いていないが、領地の中心となる場所で領地の中であれば、どこに呼ばれても同じ時間で行けるからだろう。ヨハンらしい考えで頷ける。
常駐している医師が数名おり、研究職や研修医も含まれていた。
コーコナ領へ行くなら、見ておいでと言われ、予定より時間があったから様子を見に来た。
「今度はどこへ向かうの?」
「ヨハンが建てた診療所へ」
「ヨハン?」
「私の主治医です。専攻は毒ですが、医術も心得ていて昨年も大活躍でした」
「あぁ、あの!今日は会えるのかしら?」
「どうでしょう?いつもはアンバー領にある研究室に閉じこもっているんですが、たまにこちらにも来ていますし……フラフラと他領へ出かけているときもあるようなので」
「……なんていうか、類は友を呼ぶというけど、アンナリーゼの周りにはそんな人が多いのかしら?」
「……そんなことないですよ。私とヨハンくらいです。他のみなは、真っ当に生きていますから」
「自覚はあるのね?」
ステイが呟いた言葉に苦笑いをするしかなかった。
……自覚はもちろんありますよ。
心の中で呟いておく。口に出してしまうと、いい大人が恥ずかしさでどうにかなりそうだ。ステイは私の心の内を見抜かれているようで、温かい目で見守ってくれた。
「あれがそうですかね?」
「アンナリーゼも知らないの?」
「領主と言っても、建てるからって言われただけで、詳しくは教えてくれませんでした。ヨハンのことだから、無茶はしないことを知っているので、許可だけだしたんです」
「信頼関係が出来ているのね?」
「そうですかね?毒を飲まされる関係ですからね……それなりのものはお互い持っているとは思います」
「……毒?さっきヨハン教授の専攻だとは聞いたけど」
「そうですよ。私の毒耐性のために研究をしてくれています」
「アンナリーゼは毒耐性を付けているのね。公族でもないのに」
「そうですね。私は、外を出歩くことが多いので、どこからともなく接種してしまうこともあるので、父が心配してくれて」
私はステイに誤魔化した。一般的なものなら、侯爵家の娘であれば、珍しくあっても許容範囲だ。私の場合、三国に留まらず、インゼロ帝国やその他の国の毒も耐性があるが黙っておく。
「優しいお父様ね。確かに、アンナリーゼは外を出歩くことが多いようだから、心配よね。ジョージアも知っていて?」
「えぇ、話してあります。私の行動範囲が広いので、そのあたりも気にしてくれていたようで」
「そう。アンナリーゼには驚かされることばかりね」
ニコリと笑いかけ、私は建物の中へ入って行く。平屋建ての奥に広い作りになっているようで、私を見つけたヨハンの助手らしきものが、駆け寄ってきた。
「アンナリーゼ様、ようこそおいでくださいました」
「ヨハンの建てた診療所が見たくて。見て回ってもいいかしら?」
「もちろんです。ご案内しますね?」
私たちは白衣の助手の後をついて歩く。前回、領地を訪れてから変わった場所のひとつなのだが、白を基調に清潔感のある作りになっており、とても綺麗だ。
「この壁には、教授拘りの素材が使われているのですよ!」
「板ではないのね?」
「珪藻土と言って、湿度調整を出来るようにしてあります。病人がいる場所での乾燥は病気を進める場合もありますから」
「なるほど。ヨハンが考え抜いた造りになっているということかしら?」
「はい、そうです。あとは、患者を動かしやすいようにと動線が考えられていることと、スタッフについては、研修医も含め常駐させています」
「その研修医なんだけど、どう?効果はあるかしら?」
私は助手に話を聞くと、頷いている。元々、町医者の元、修行を積んでいたものたちっばかりで、手際も勘もいいものが多いらしい。勉学も真面目にしている、領地内へ派遣しても評判がいいらしい。
この診療所についてはヨハンに任せっきりとなっているので、内情は知らなかったが、なかなか、いいように動いているらしい。
今後、大規模な形で病の流行があったとしても、対応できるように考えてくれているらしい。
「これって、まだ、アンバー領には出来ていないわよね?」
「基本的に、アンバー領には作らないと教授は言っていましたよ?」
「そうなの?そのあたり、何か聞いている?」
「領地で何かあれば、研究所を開放するつもりだと思います。アンナリーゼ様は知らないかもしれませんが、あの研究所の奥にはいろいろと研究棟が立ち始めているので」
「……確かにあの一帯は好きに使っていいとは言ったけど、全然聞いていないわ。アンバー領へ帰ったら視察ね」
「アンナリーゼでも苦労することがあるのね?」
「……ヨハンとアンジェラだけは、私でも予測不可能ですから、振り回されることもありますよ?」
ステイがおかしそうにしているので、小さくため息をつく。どうやら、ヨハンをそろそろ捕まえて話を聞かないといけないらしい。まずは、ヨハンの確保からかと思うと先が思い知らされたのであった。
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