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見たことない景色Ⅱ
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隠し部屋から出ると、夕方になっていた。私は、結構な時間、眠っていたらしい。報告に来たココナが置いて行ったらしい報告書を手に取る。どうやら、あの町が完成したらしい。領地主体で町を丸ごと作り変えたのだから、時間はかかると思っていたが、意外と早く終わったようだ。
「へぇ……あの二人が中心に動いてくれているのね?ココナは私へ報告書を書いたりする事務方か。副隊長ともあろうものたちが、事務も出来ないって……」
ため息をついていると、ココナが執務室へ入ってきた。お茶の用意を持ってきてくれていたので、私は目配せして入れてもらった。
「報告書を読んだわ。思っていたより早く終わったようね?」
「町の復興ですか?」
「えぇ、そう」
「あの町のものたちだけでなく、近隣の町からも応援が来てくださいましたから。スラム街だったあの町も、今では風通しのよい明るい町へと変わっています」
出身者であるココナ。酷い扱いを受けていたようで、そのときの記憶はまだ持っているようだが、これからは、あの老人に怯えることはない。今頃、公都の牢獄で捉えられているのだから。
「その後、人身売買や麻薬の話は出ている?」
「いえ、あのあとは聞いていません。コーコナ領の中でも、あの地域は無法地帯でしたが、領主権限で、町そのものを変えてしまったおかげで、黒い噂も立ち消えていきました」
「それが本当なら嬉しいわね?」
「と、言いますと?」
「こちらに来る前に、似たような話を聞いたから。どうやら、近隣では麻薬中毒者が増えているようよ?」
渋い顔をしているココナ。その気持ちはわかるが、実際広まっていっているのが事実のようだ。現実に不満があったり、娘のいる家が狙われているという話も聞いた。
「娘のいる家……それは、高額な麻薬を買うために、娘を売ると言うことです?」
「そうみたいね。そのせいで娼館に売られることになるんだけど、娼館にすら売られない娘たちがいるようね」
「どれは……他国へ売り飛ばしたり、あとは愛玩目的の奴隷として取引されているとか」
「愛玩……それは、貴族へですよね?」
「そうね。酷い扱いを受けているものも少なくないようね」
「……私たちより酷い扱いを受けているのですね」
俯くココナ。私は領地内のことであれば、手を差し伸べることが出来るが、領地外のこととなると難しい。実情を公へ話して手を打つしかないのだが、現状、後手に周っているので、難しいことも多い。糸を辿っていくと、ある人物のところへ繋がっているはずなのだが、トカゲの尻尾きりで終わるだろう。
「なんとか、ならないのですよね?」
「私では難しいわ。公でも、難しいでしょうね?麻薬の売上の何割かは領主のポケットに入っているのではないかという噂話もあるのだから、巧妙に隠すわ」
「どうして、こういう話は尽きないのでしょう?」
「どうしてかしらね?現実が辛い人が多いから?とかかしら。アンバー領には、同じ辛いでも、生きるために回すお金すらなかったから、そういう被害はないのかもしれないわ」
「アンバー領って、そんなに酷かったのですか?」
「餓死者も普通にいたくらいね。幸い、今は、そういう話を聞かなくなったけど」
ココナはアンバー領へ行ったことがなかったらしく、噂で聞くくらいで想像も出来なかったらしい。ココナが育った町をもう少し酷くして、それを領地規模に考えればいいだけだ。
それを言うと、引きつった表情になった。
「……それは、酷いという問題ではないのでは?」
「人間として生きることも難しい状況だわ」
「アンナリーゼ様に助けられた……そう思ったでしょうね?領民の方々は」
「それはどうだろうね?最初は、私の公爵家の人間だって言えなかったわ。何が起こるかわからないほど、荒んでいたから。身の危険すらあったのよね。身分を伏せて、領地改革をしましょうなんていう小娘、信用できると思う?」
「……それは、難しいでしょうね?」
「でしょ?でも、そこから始めるしかなかった。俯いている人の視線を集めるために、いろいろとしたけど……結局のところ、領民が私たちを信頼してくれたからこそ、出来た改革よ」
「アンナリーゼ様って、不思議と信じたくなりますよね?」
ココナに見つめられ、私は「そう?」と首を傾げる。どういう魅力があるのか……私ではわからないけど、認めてくれる人がいるのだから、きっと、私にも何かあるのだろう。
「なんていうか……心までの距離を詰めるのがうまいのでしょうね?」
「いわゆる、人誑し的な?」
「よく言われるのですか?」
「えぇ、よく言われるわ。どういうわけかね?」
「それは、アンナ様が、誰よりも優しいからじゃないですか?」
「デリア」
「遅くなりました」
ナタリーたちとはまた別に、コーコナ領へ後追いで来てくれていたのだ。私の面倒を見れる人物は多いほうがいい、それは、ジョージアからの提案で、私以外がみな賛成をしたため、遅れてデリアが遣わされた。その場合、ココナの仕事がステイの方へ振れるので助かるのだが、ココナはどう思ったのだろうか?
「ココナ、今日からアンナ様については、私が変わりますね?」
「えぇ、お願いできますか?私より、デリアのほうが、アンナリーゼ様もきっと快適に過ごせるでしょうから」
「それでは」と執務室から出ていくココナ。今日のところは世間話に来ただけのようだった。その後ろ姿を見送り、町の復興を任せたおかげか頼もしくなったなと思った。
「へぇ……あの二人が中心に動いてくれているのね?ココナは私へ報告書を書いたりする事務方か。副隊長ともあろうものたちが、事務も出来ないって……」
ため息をついていると、ココナが執務室へ入ってきた。お茶の用意を持ってきてくれていたので、私は目配せして入れてもらった。
「報告書を読んだわ。思っていたより早く終わったようね?」
「町の復興ですか?」
「えぇ、そう」
「あの町のものたちだけでなく、近隣の町からも応援が来てくださいましたから。スラム街だったあの町も、今では風通しのよい明るい町へと変わっています」
出身者であるココナ。酷い扱いを受けていたようで、そのときの記憶はまだ持っているようだが、これからは、あの老人に怯えることはない。今頃、公都の牢獄で捉えられているのだから。
「その後、人身売買や麻薬の話は出ている?」
「いえ、あのあとは聞いていません。コーコナ領の中でも、あの地域は無法地帯でしたが、領主権限で、町そのものを変えてしまったおかげで、黒い噂も立ち消えていきました」
「それが本当なら嬉しいわね?」
「と、言いますと?」
「こちらに来る前に、似たような話を聞いたから。どうやら、近隣では麻薬中毒者が増えているようよ?」
渋い顔をしているココナ。その気持ちはわかるが、実際広まっていっているのが事実のようだ。現実に不満があったり、娘のいる家が狙われているという話も聞いた。
「娘のいる家……それは、高額な麻薬を買うために、娘を売ると言うことです?」
「そうみたいね。そのせいで娼館に売られることになるんだけど、娼館にすら売られない娘たちがいるようね」
「どれは……他国へ売り飛ばしたり、あとは愛玩目的の奴隷として取引されているとか」
「愛玩……それは、貴族へですよね?」
「そうね。酷い扱いを受けているものも少なくないようね」
「……私たちより酷い扱いを受けているのですね」
俯くココナ。私は領地内のことであれば、手を差し伸べることが出来るが、領地外のこととなると難しい。実情を公へ話して手を打つしかないのだが、現状、後手に周っているので、難しいことも多い。糸を辿っていくと、ある人物のところへ繋がっているはずなのだが、トカゲの尻尾きりで終わるだろう。
「なんとか、ならないのですよね?」
「私では難しいわ。公でも、難しいでしょうね?麻薬の売上の何割かは領主のポケットに入っているのではないかという噂話もあるのだから、巧妙に隠すわ」
「どうして、こういう話は尽きないのでしょう?」
「どうしてかしらね?現実が辛い人が多いから?とかかしら。アンバー領には、同じ辛いでも、生きるために回すお金すらなかったから、そういう被害はないのかもしれないわ」
「アンバー領って、そんなに酷かったのですか?」
「餓死者も普通にいたくらいね。幸い、今は、そういう話を聞かなくなったけど」
ココナはアンバー領へ行ったことがなかったらしく、噂で聞くくらいで想像も出来なかったらしい。ココナが育った町をもう少し酷くして、それを領地規模に考えればいいだけだ。
それを言うと、引きつった表情になった。
「……それは、酷いという問題ではないのでは?」
「人間として生きることも難しい状況だわ」
「アンナリーゼ様に助けられた……そう思ったでしょうね?領民の方々は」
「それはどうだろうね?最初は、私の公爵家の人間だって言えなかったわ。何が起こるかわからないほど、荒んでいたから。身の危険すらあったのよね。身分を伏せて、領地改革をしましょうなんていう小娘、信用できると思う?」
「……それは、難しいでしょうね?」
「でしょ?でも、そこから始めるしかなかった。俯いている人の視線を集めるために、いろいろとしたけど……結局のところ、領民が私たちを信頼してくれたからこそ、出来た改革よ」
「アンナリーゼ様って、不思議と信じたくなりますよね?」
ココナに見つめられ、私は「そう?」と首を傾げる。どういう魅力があるのか……私ではわからないけど、認めてくれる人がいるのだから、きっと、私にも何かあるのだろう。
「なんていうか……心までの距離を詰めるのがうまいのでしょうね?」
「いわゆる、人誑し的な?」
「よく言われるのですか?」
「えぇ、よく言われるわ。どういうわけかね?」
「それは、アンナ様が、誰よりも優しいからじゃないですか?」
「デリア」
「遅くなりました」
ナタリーたちとはまた別に、コーコナ領へ後追いで来てくれていたのだ。私の面倒を見れる人物は多いほうがいい、それは、ジョージアからの提案で、私以外がみな賛成をしたため、遅れてデリアが遣わされた。その場合、ココナの仕事がステイの方へ振れるので助かるのだが、ココナはどう思ったのだろうか?
「ココナ、今日からアンナ様については、私が変わりますね?」
「えぇ、お願いできますか?私より、デリアのほうが、アンナリーゼ様もきっと快適に過ごせるでしょうから」
「それでは」と執務室から出ていくココナ。今日のところは世間話に来ただけのようだった。その後ろ姿を見送り、町の復興を任せたおかげか頼もしくなったなと思った。
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