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身軽とはいえⅢ

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「アンナリーゼはいつもああやって話を聞いて周っているの?」
「そうですね。だいたいはあんな感じです。領地にいる侍従たちからも報告は上がってきますし、他領の情報も入ってきたりはしますが、やっぱり、自分が見て感じたこと以上のものはないのかなぁ?って思っています。客観的な意見を聞きたいときには、相談していますが、基本的には、町の人の声を聞くのが私なりの情報収集ですよ」
「私はずっと離宮にいたから、情報は誰かから与えられるものだったわ。そういう方法もあるのね?」
「そうですね。普通の貴族はしないでしょうが、私は領民とも近しい領主ですから、いろんな話を聞いておきたい性分なんでしょう。そのおかげで進んだ事業もありますし」
「何の事業?」
「養豚です。ベーコンが安価に食べたいという要望から……畜産関係もアンバー領では手を伸ばしていて、コーコナ領では、今、羊を飼っています」
「豚と羊?どちらも食用?」
「そうですね、どちらも食用としていけますね。豚は主に肉用となりますが、羊は食用ではありませんよ?」


「何に使うの?」とすかさず聞いてくるので、毛糸を作るために、羊の毛が必要となります。毎年、毛を刈ってあらって色をつけて糸に変える。肯定だけを聞くととてつもなく大変だと思われますが、工場内では毛糸を作る独自の機械もあるのだと説明をすると、是非みたいとステイは言った。私たちは好奇心の塊のようなものだ。きっと、そういうだろうと思っていた。


「アンナリーゼの領地は常に新しいことをしているのね?」
「新しい技術開発は領地の発展に繋がるので、どんどん支援していますよ?」
「支援?」
「えぇ、お金を出しています。ただし、貸し付けるだけになるので、貸すときもそれなりの基準を必要としますが、今まで断った件数なんて片手くらいのものです」
「先行投資というもの?慈善事業かしら?」
「慈善事業ではありませんね?最終的にお金を返してもらっているので」
「返してって……どうやって?」
「税負担でです。基本的にこういう事業をしたいんだという相談を受け、判断をします。領地のためになると判断できれば、活動資金を私のお財布から出します」
「領地のお金ではないの?」


 ステイの疑問に頷く。アンバー領も以前よりかは賑わってきたし潤ってきてはいる。ただ、それは、領民のところまでで、実際のところ、私たちまでの恩恵とするなら、まだ、少ない。税法を変えたりといろいろと手を加えていくが、そのあたりが難しい。三大商人たちの知恵も借り、新し物づくりにはおおいに賛成しているが、考えるようなものは最初から却下する。


「アンナリーゼのポケットからの資金だったのね?今の話を聞く限り、アンナリーゼの方も何かしら覚悟は必要になりそうね?」
「そうですよ?それもこれも領主の務めだとは思っています」


「えらいわね?」とステイに褒められ、私ははにかんだ。こそばゆいような感情にソワソワする。


「私も今度の場所で話しかけてみようかしら?」
「そうですね。やってみてください。護衛ものいるので、危ないことにもならないと思います」
「わかったわ。倣ってしてみる」


 ステイも今度の宿で、少し話を聞いてみると意気込んで、話しかけるタイミングをはからっていた。私の経験をステイに伝えると、少し変わった雰囲気で、周りの人に適度な休憩を楽しんでみると笑った。
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