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それで?
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「あとどれくらいなら時間を許してもらえるのかしら?」
ステイは私を見てくる。私のどんな小さな様子を見逃すまいと見られるので、逃げ道はなさそうだ。
「10年は長すぎると言ったわね?何年なら待てるの?」
「そうですね。半分の5年というところでしょうか?」
「5年。その心は?」
「ただの人材不足です。公宮が腐敗しているとまでは行きませんが、優秀なものが育たないのが現状。それをなんとかしたいとパルマたち若手が頑張っていますが、」
「そこも後ろが弱いのね?」
「そうですね。宰相が見てくれていますが、端々までは目が届きにくいうえに、パルマが若すぎることにも問題が」
「アンナリーゼの周りはその若さゆえになかなか目が出にくいということね?でも、私にその手伝いは出来ないわよ?」
私は頷く。もちろん、若手の後ろ盾を頼むつもりはなかった。むしろ、どんな状況でも折れない心を手に入れてほしい人材がたくさんいる。そういうものたちを統括する人物が宰相の下以外にも欲しいのだ。今すぐには、頭角をあらわさなくても、片鱗だけでも構わないと思っている。
「ジョージアに出仕させたらどう?公も喜ぶわよ?」
「ジョージア様はあぁ見えて、子育てに忙しいのです」
「子育て?ジョージアが?」
我が家の事情を知るナタリー、カレン、ダリアは頷いた。代表してナタリーが説明をすると、ステイはおもしろそうに笑っている。
「そういうことなら仕方がないのかもしれないわね?5年以内に全部を周るのは無理だわ」
「主だった領地だけ周ればいいと思います。あとは、視察に切り替えれば」
「執務もしつつ、領地を見て回れということ?」
「よくわかっているではありませんか!ローズディアでは、国のものが派遣されることは、ありませんが、よその国ではそういう機関があって管理者が周っているところもあるんですよ」
「知らなかったわ」
みなが一同に聞いていた。そんな国があることを知らなかったようだ。私もそんな話をきいたのは、つい最近なのだが、いろんな国の形があるなと思わされた。領主が治める領地運営ではなく国から派遣された文官が適正に管理することになっているそうだ。さらに不正がないか、見回る役があるということだった。
「私も聞きかじっただけだから、わからないことも多いのだけど、例えば小さい規模でならできるのではないかと考えているの。領地内なら、自由に整備できるから」
「なるほど、それで試してみるということ?」
「まだ、構想も何もないけど」
私は苦笑いをしていると、もしかして?とステイがこちらを見てくる。
「私にその練習をさせるつもり?」
「そんなことは。出来ることなら、注意点とか教えていただけると嬉しいですけど。汚職とかないとは限らないらしいので」
「難しいわね」
気長に考えますと返事だけしたあと、コーコナ領への話を公にも話さないといけないとなり、私は公への謁見に向かう羽目になった。ステイはというと、ついてきてくれないようだ。
「……公はどう思っているのですか?」
「ステイが領地を周るのか?」
「そうです。ステイ様は、あちらこちら見て回りたいと」
「まぁ、いいと思うぞ?ちょうど、遊び盛りのときにあの離宮に幽閉されていたんだし、少しくらい羽根を伸ばしてもいいんじゃないかと思う」
「なら、その第1弾!コーコナ領へ行こうと思っているんですけど」
「いいんじゃないか?アンナリーゼももう少ししたら、向こうの領地へ向かうんだろう?」
「えぇ」と返事をすると「自由でいいな」と公が珍しく呟いている。別に自由なわけではない。領地が離れているから、行き来が大変なんだと逆にブツブツ言ってやる。
「まぁ、初めて行く領地がコーコナなら、ステイにとってもいい旅行になるだろう。アンナリーゼの治める領地は、他の領地と違うところがあったり、新しい技術が入っていたりするから、視察するにはいいだろう」
「公って来たことないでしょ?」
「アンバー領には行ったことがある」
「あぁ、ありましたね。迷惑な訪問でした」
ニコニコと笑いかけると、「そういうな」と叱られる。公だって、視察に出たいらしい。執務室にこもらないといけないほどの業務を分担できる能力ある文官がいれば違うのだろうが、まだまだ、育っていないと嘆いている。
「公が育てなかったのですから、自業自得ですよね?さて、許可ももらいましたから、次は近衛の訓練場へよっていきます」
「何をする?」
「ステイ様の護衛です。私は領地からアデルを呼ぶので、ステイ様にも必要でしょ?」
「ウィルを連れて行くのかと思ったが、違うのか?」
「アンジェラは、今回の視察には連れて行かないことにしているので、そちらの護衛を頼む予定です」
「それで、目星はついているのか?」
「そうですね……ウィルの大隊はほとんどアンバー領にいるので、誰か借りれるか聞いてきます」
「そんな世話まで、すまないな?」
「公のくちから、そんな言葉が聞ける日が来るとは思いませんでした」
では、と立ち上がり、執務室を後にする。目指すは近衛の訓練所であった。
ステイは私を見てくる。私のどんな小さな様子を見逃すまいと見られるので、逃げ道はなさそうだ。
「10年は長すぎると言ったわね?何年なら待てるの?」
「そうですね。半分の5年というところでしょうか?」
「5年。その心は?」
「ただの人材不足です。公宮が腐敗しているとまでは行きませんが、優秀なものが育たないのが現状。それをなんとかしたいとパルマたち若手が頑張っていますが、」
「そこも後ろが弱いのね?」
「そうですね。宰相が見てくれていますが、端々までは目が届きにくいうえに、パルマが若すぎることにも問題が」
「アンナリーゼの周りはその若さゆえになかなか目が出にくいということね?でも、私にその手伝いは出来ないわよ?」
私は頷く。もちろん、若手の後ろ盾を頼むつもりはなかった。むしろ、どんな状況でも折れない心を手に入れてほしい人材がたくさんいる。そういうものたちを統括する人物が宰相の下以外にも欲しいのだ。今すぐには、頭角をあらわさなくても、片鱗だけでも構わないと思っている。
「ジョージアに出仕させたらどう?公も喜ぶわよ?」
「ジョージア様はあぁ見えて、子育てに忙しいのです」
「子育て?ジョージアが?」
我が家の事情を知るナタリー、カレン、ダリアは頷いた。代表してナタリーが説明をすると、ステイはおもしろそうに笑っている。
「そういうことなら仕方がないのかもしれないわね?5年以内に全部を周るのは無理だわ」
「主だった領地だけ周ればいいと思います。あとは、視察に切り替えれば」
「執務もしつつ、領地を見て回れということ?」
「よくわかっているではありませんか!ローズディアでは、国のものが派遣されることは、ありませんが、よその国ではそういう機関があって管理者が周っているところもあるんですよ」
「知らなかったわ」
みなが一同に聞いていた。そんな国があることを知らなかったようだ。私もそんな話をきいたのは、つい最近なのだが、いろんな国の形があるなと思わされた。領主が治める領地運営ではなく国から派遣された文官が適正に管理することになっているそうだ。さらに不正がないか、見回る役があるということだった。
「私も聞きかじっただけだから、わからないことも多いのだけど、例えば小さい規模でならできるのではないかと考えているの。領地内なら、自由に整備できるから」
「なるほど、それで試してみるということ?」
「まだ、構想も何もないけど」
私は苦笑いをしていると、もしかして?とステイがこちらを見てくる。
「私にその練習をさせるつもり?」
「そんなことは。出来ることなら、注意点とか教えていただけると嬉しいですけど。汚職とかないとは限らないらしいので」
「難しいわね」
気長に考えますと返事だけしたあと、コーコナ領への話を公にも話さないといけないとなり、私は公への謁見に向かう羽目になった。ステイはというと、ついてきてくれないようだ。
「……公はどう思っているのですか?」
「ステイが領地を周るのか?」
「そうです。ステイ様は、あちらこちら見て回りたいと」
「まぁ、いいと思うぞ?ちょうど、遊び盛りのときにあの離宮に幽閉されていたんだし、少しくらい羽根を伸ばしてもいいんじゃないかと思う」
「なら、その第1弾!コーコナ領へ行こうと思っているんですけど」
「いいんじゃないか?アンナリーゼももう少ししたら、向こうの領地へ向かうんだろう?」
「えぇ」と返事をすると「自由でいいな」と公が珍しく呟いている。別に自由なわけではない。領地が離れているから、行き来が大変なんだと逆にブツブツ言ってやる。
「まぁ、初めて行く領地がコーコナなら、ステイにとってもいい旅行になるだろう。アンナリーゼの治める領地は、他の領地と違うところがあったり、新しい技術が入っていたりするから、視察するにはいいだろう」
「公って来たことないでしょ?」
「アンバー領には行ったことがある」
「あぁ、ありましたね。迷惑な訪問でした」
ニコニコと笑いかけると、「そういうな」と叱られる。公だって、視察に出たいらしい。執務室にこもらないといけないほどの業務を分担できる能力ある文官がいれば違うのだろうが、まだまだ、育っていないと嘆いている。
「公が育てなかったのですから、自業自得ですよね?さて、許可ももらいましたから、次は近衛の訓練場へよっていきます」
「何をする?」
「ステイ様の護衛です。私は領地からアデルを呼ぶので、ステイ様にも必要でしょ?」
「ウィルを連れて行くのかと思ったが、違うのか?」
「アンジェラは、今回の視察には連れて行かないことにしているので、そちらの護衛を頼む予定です」
「それで、目星はついているのか?」
「そうですね……ウィルの大隊はほとんどアンバー領にいるので、誰か借りれるか聞いてきます」
「そんな世話まで、すまないな?」
「公のくちから、そんな言葉が聞ける日が来るとは思いませんでした」
では、と立ち上がり、執務室を後にする。目指すは近衛の訓練所であった。
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