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ステイ様の未来
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「私が考えるローズディア?」
「えぇ、聞いてみたくなりまして」
「アンナリーゼは変なものに、興味を示すのね?」
クスクス笑うステイ。私は真剣なのにと少しがっかりしてしまった。そんな私を気の毒に思ったのか、提案があった。
「お茶会もそろそろ終わりよね?」
「そうですね。これからは、公妃様の……私設なものに変わると思いますよ?」
「では、私たちもそうしましょう。離宮にあなたたちを招待するわ!」
そう言って、ステイは立ち上がった。それを目ざとく見た公妃は足早にこちらへやってきた。
「あら、見送ってくださるの?」
嫌味にならない声音で、公妃に問いかけるステイをにこやかに躱していく公妃。なんというか……蛇と何かが睨み合っている……まさにそんな気持ちにさせる気まずさだ。
「もう、お帰りですか?」
「えぇ、少し顔を出せば、帰るつもりだったの。アンナリーゼが来ると知らなかったからね。まぁ、思わぬ楽しい時間を過ごせたわ。ありがとう、公妃」
「いえ、おかまいもできなくて。アンバー公爵たちもお帰りかしら?」
「えぇ、そろそろお暇させていただこうかと。本日はお招きいただき、ありがとうございました」
私が頭を下げると、後ろにいたナタリー、カレン、ダリアも同じようにしている。それを見て満足している公妃に別れを告げ、ステイの後をついていく。お茶会をした離宮とステイの住まいである離宮とは少し距離があるので馬車で移動することになった。
「これに乗ってちょうだい」
「ステイ様は、いつもこんな大きな馬車を?」
「いいえ。アンナリーゼが来ているとは予想していなかったけど、もしかしたらと思ったから大きい馬車を用意しておいたのよ。無駄にならなくて、よかった」
無邪気に笑うステイにこちらの面々はほっこりしている。
ステイ様って、人懐っこく笑うわね。たぶん、公族の一人として生活している中での無意識なのだろうけど、するっと人の心に入り込んでいる気がするわ。
馬車に乗り、ステイの離宮へと到着すれば、近侍が出迎えてくれる。私たち一人一人をエスコートして馬車から降ろしたあと、すでに用意されている応接室へと入った。
「ステイ様、改めまして……ご招待ありがとうございます」
「大したことではないわ。寂しい離宮に華が咲くとは不思議なものね」
それぞれに与えられた席に座り、先程の質問をすることにした。
「それね……考えていたのだけど、今は、答えられないわ」
「どうしてですか?」
「私は見てのとおり、何年もこの離宮に軟禁されていた。多少の外の話を聞くことはあっても、国の未来なんて、想像できないわ」
「なるほど」
「では、ステイ殿下は、何かしたいことがおありですか?」
「確か、先日、旅をしたいとおっしゃっていましたよね?」
「そうなのです?」
「ダリアはあの日いなかったから、知らないわね」
「みなさん、一緒に出かけられたんですね?」と少し寂しそうにしていると、ステイがクスクスと笑う。
「新作のドレスを買いにハニーアンバー店へ行ったのよ。その繋がりだわ」
「そうだったのですね」
「例えば、ですけど?」
「何?アンナリーゼは、何か思いついたのかしら?」
「えぇ、提案です。もし、ステイ様さえよければ、お忍びでコーコナへ行くのはどうですか?」
「……コーコナ?そんな領地あったかしら?」
「名が変わっているだけですよ。ダドリー男爵領です」
「あぁ、なるほど!」
元の名を言えば、心得たとばかりに考えている。コーコナ領はそれほど、公都から離れてはいない。手始めの小旅行と考えれば、手軽なのでは?と思ったのだが、どうだろう?
「馬で3日くらいの場所ね?それは、とても魅力的なお誘いだわ」
「馬車でも大丈夫ですよ?」
「アンナリーゼは馬なのでしょ?」
「まぁ、そうですね」
「それなら、私も馬で構わないわ。いいわね……楽しそうで。行ってもいいかしら?」
「もちろんです!コーコナ領は私の領地ですから、いろいろと案内できると思います」
頷くステイ。どうやら、心は決めたようだ。
「アンナ様、私も連れて行ってくれませんか?」
「ダリアも?」
「はい。屋敷にいるのが窮屈とかそういうのではないのですが、その……」
「わかったわ。セバスに聞いてみて。ナタリーも行くから、一緒に馬車で移動したらいいと思うわ!」
「本当ですか?帰って聞いてみます!」
「新婚なのに、いいの?」
「えぇ、私もアンナ様の役に立ちたいと常々、セバスチャン様にはお伝えしているのです。新参者の私で何か役にたつことがあるのかはわかりませんが、コーコナという領地をこの目で見たいと思っていましたから」
「そうね。ダリアは、まだ、ローズディアの土地もあまり馴染みがないものね。いいでしょ。旅の一員に。セバスがいいと言ったらですけど」
はいと返事をするダリア。その様子を見れば、何が何でも、セバスを頷かせるような気がする。知能はセバスが上でも駆け引きはダリアの方が上だと思う。セバスに敵う相手ではないだろうと思わず笑ってしまった。
「えぇ、聞いてみたくなりまして」
「アンナリーゼは変なものに、興味を示すのね?」
クスクス笑うステイ。私は真剣なのにと少しがっかりしてしまった。そんな私を気の毒に思ったのか、提案があった。
「お茶会もそろそろ終わりよね?」
「そうですね。これからは、公妃様の……私設なものに変わると思いますよ?」
「では、私たちもそうしましょう。離宮にあなたたちを招待するわ!」
そう言って、ステイは立ち上がった。それを目ざとく見た公妃は足早にこちらへやってきた。
「あら、見送ってくださるの?」
嫌味にならない声音で、公妃に問いかけるステイをにこやかに躱していく公妃。なんというか……蛇と何かが睨み合っている……まさにそんな気持ちにさせる気まずさだ。
「もう、お帰りですか?」
「えぇ、少し顔を出せば、帰るつもりだったの。アンナリーゼが来ると知らなかったからね。まぁ、思わぬ楽しい時間を過ごせたわ。ありがとう、公妃」
「いえ、おかまいもできなくて。アンバー公爵たちもお帰りかしら?」
「えぇ、そろそろお暇させていただこうかと。本日はお招きいただき、ありがとうございました」
私が頭を下げると、後ろにいたナタリー、カレン、ダリアも同じようにしている。それを見て満足している公妃に別れを告げ、ステイの後をついていく。お茶会をした離宮とステイの住まいである離宮とは少し距離があるので馬車で移動することになった。
「これに乗ってちょうだい」
「ステイ様は、いつもこんな大きな馬車を?」
「いいえ。アンナリーゼが来ているとは予想していなかったけど、もしかしたらと思ったから大きい馬車を用意しておいたのよ。無駄にならなくて、よかった」
無邪気に笑うステイにこちらの面々はほっこりしている。
ステイ様って、人懐っこく笑うわね。たぶん、公族の一人として生活している中での無意識なのだろうけど、するっと人の心に入り込んでいる気がするわ。
馬車に乗り、ステイの離宮へと到着すれば、近侍が出迎えてくれる。私たち一人一人をエスコートして馬車から降ろしたあと、すでに用意されている応接室へと入った。
「ステイ様、改めまして……ご招待ありがとうございます」
「大したことではないわ。寂しい離宮に華が咲くとは不思議なものね」
それぞれに与えられた席に座り、先程の質問をすることにした。
「それね……考えていたのだけど、今は、答えられないわ」
「どうしてですか?」
「私は見てのとおり、何年もこの離宮に軟禁されていた。多少の外の話を聞くことはあっても、国の未来なんて、想像できないわ」
「なるほど」
「では、ステイ殿下は、何かしたいことがおありですか?」
「確か、先日、旅をしたいとおっしゃっていましたよね?」
「そうなのです?」
「ダリアはあの日いなかったから、知らないわね」
「みなさん、一緒に出かけられたんですね?」と少し寂しそうにしていると、ステイがクスクスと笑う。
「新作のドレスを買いにハニーアンバー店へ行ったのよ。その繋がりだわ」
「そうだったのですね」
「例えば、ですけど?」
「何?アンナリーゼは、何か思いついたのかしら?」
「えぇ、提案です。もし、ステイ様さえよければ、お忍びでコーコナへ行くのはどうですか?」
「……コーコナ?そんな領地あったかしら?」
「名が変わっているだけですよ。ダドリー男爵領です」
「あぁ、なるほど!」
元の名を言えば、心得たとばかりに考えている。コーコナ領はそれほど、公都から離れてはいない。手始めの小旅行と考えれば、手軽なのでは?と思ったのだが、どうだろう?
「馬で3日くらいの場所ね?それは、とても魅力的なお誘いだわ」
「馬車でも大丈夫ですよ?」
「アンナリーゼは馬なのでしょ?」
「まぁ、そうですね」
「それなら、私も馬で構わないわ。いいわね……楽しそうで。行ってもいいかしら?」
「もちろんです!コーコナ領は私の領地ですから、いろいろと案内できると思います」
頷くステイ。どうやら、心は決めたようだ。
「アンナ様、私も連れて行ってくれませんか?」
「ダリアも?」
「はい。屋敷にいるのが窮屈とかそういうのではないのですが、その……」
「わかったわ。セバスに聞いてみて。ナタリーも行くから、一緒に馬車で移動したらいいと思うわ!」
「本当ですか?帰って聞いてみます!」
「新婚なのに、いいの?」
「えぇ、私もアンナ様の役に立ちたいと常々、セバスチャン様にはお伝えしているのです。新参者の私で何か役にたつことがあるのかはわかりませんが、コーコナという領地をこの目で見たいと思っていましたから」
「そうね。ダリアは、まだ、ローズディアの土地もあまり馴染みがないものね。いいでしょ。旅の一員に。セバスがいいと言ったらですけど」
はいと返事をするダリア。その様子を見れば、何が何でも、セバスを頷かせるような気がする。知能はセバスが上でも駆け引きはダリアの方が上だと思う。セバスに敵う相手ではないだろうと思わず笑ってしまった。
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