ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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ステイ様は何をしに来たのですか?

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 挨拶もそこそこに、私たちは雑談に入る。ステイが気になったのは私が着ているドレスのようでチラチラと見てくる。


「気になりますか?」
「えぇ、とっても。綺麗な緑色よね。黄緑ではなく……緑色っていうのが素敵」
「兄が私にどうかと贈ってくれたのです」
「アンナリーゼのお兄様?」
「はい、ジョージア様の同級生で今でも手紙のやり取りをしているようです」
「そう、一度会ってみたいわ」


 ナタリーはやや下を向いて苦笑いをし、カレンはあの!と思い浮かべたのはきっと女装姿だっただろう。ダリアも会ったことはなかったはずなので「微笑ましいですね?」とステイに同意していた。


「兄にですか?」
「えぇ、アンナリーゼに似て、素晴らしいのでしょ?」


 視線を逸らしたくなったが、身内の恥じは言わないでと母にもきつく言われているので、言葉を濁すしかない。


「……私は兄には似ておりませんわ。どちらかというと、母にそっくりですの」
「お母様に?アンナリーゼのお母様の噂は聞いたことがありますわね。確か、公室も婚約打診をしたのに断られたと聞いているのだけど、本当?」


 兄の話を濁したつもりが、母の婚約話へと飛び火してしまった。うまくいかないものだと思い、私は正直に話すことにした。それが1番被害が少ないだろう。


「そのように私も聞いています。引く手あまただった母は、父と結婚したくて、祖父に直談判したそうです」
「なるほど、それは、アンナリーゼも同じね。私の父へ公の妃ではなく、ジョージアとの婚約がいいとわざわざ一人で来たのでしょ?」
「そうですよ?ジョージア様が大好きですから」
「なるほど。アンナリーゼの家族はとても興味深い……私はそう感じたわ。いつか会わせてね?」
「たまにローズディアには来ているので、そのときに会えると思いますよ?」
「……あの格好でなければいいですけどね?」
「……うん、そうだね。でも、ステイ様とはもしかしたら気が合うかもしれないわ」


 ステイは私の話を聞いて、嬉しそうにしている。


「……そういえば、ステイ様は何をしに来たのですか?」
「今、それを聞く?」
「えぇ、ビックリしたので」
「おもしろそうなことをしていると聞いてきたのだから」
「そうなのですか?招待なしで、来た?」
「もちろん、私に招待状が届くと思う?」


 私は首を横に振り、「ないでしょうね?」と返事すると頷いた。仲が悪いらしく、先日の始まりの夜会でのこともゴールド公爵から話がついているようで警戒をしているようだった。


「招待状があろうがなかろうが、私には関係ないもの」


 その笑顔に私は納得するしかない。さすが、ステイ様であった。


「お茶会に私が参加したらダメだなんて、お話ないもの。ふふっ、席がなければ作らせるだけよ」
「ステイ様は、なんだかすごいですわね?」
「リンゴ姫も派閥作っているでしょ?」


 チラリと見ているほうを私も確認すれば、カレンがお茶会に連れて行ってくれる先のメンバーだった。


「派閥だなんて。私はアンナ様が公都にいないあいだ、繋ぎをするためにいるだけですから」
「アンナリーゼとの繋がりか……」
「そうです。アンナ様も求めていらっしゃいますけど、アンナ様以上に繋がりを持ちたい方ばかりですわ。ハニーアンバー店のすごく好きらしいので」
「それは、カレンも同じよね?」
「えぇ、もちろんですわ!ドレスもですけど、」
「『赤い涙』ね?」
「そうです。今年のガラス瓶も楽しみにしていますの」
「それは?」
「最高品質の葡萄酒『赤い涙』です。それを入れる瓶も凝っていて、すごいのですよ?私はコレクションしているんです」
「瓶?そんなに?」
「公にもお渡ししているので、見せていただいてはどうですか?」
「……公も持っているのね。私が離宮に引きこもっているあいだに、変わったのね」
「そうですね。アンバー領の改革の中、いろいろと試行錯誤しながら行きついたものです」


 私は『赤い涙』の話をすると興味を示した。これは、ステイにも贈ったほうがいいなと考えていたら、ステイが私を見た。


「私はお酒があまり飲めないから、贈ろうとか思わなくていいわ」
「では、瓶だけ贈らせてください。うちのガラス職人がすごく丁寧に作っているので、それだけでも価値があると思います!」
「それなら、買うわ!リンゴ姫も気に入っているようなものなら、楽しみだわ」
「わかりました。ステイ様に気に入っていただけるようなものをご用意させていただきます」


 注文を受けた。ステイの好きな物はなんだろう?と聞いてみることにした。私は、ステイのことをまだまだ知らなさすぎる。
 友人として、距離を縮めるなら、もう少し個人的なお茶会をするべきなのだろう。


「そうね……薔薇は好きだし、お花がいいわ。見ているだけで元気になるし」
「枯れない薔薇ですね。わかりました。ガラス職人に連絡しておきます。少しお時間いただきますが、必ず素晴らしいものをお届けしますね?」
「えぇ、楽しみにしているわ。それにしても、公妃のお茶会って……派閥で別れてバチバチとしているのね?」
「そうですね。始まりの夜会のようなもので、私的なお茶会ではないので」


「それなら仕方がないわね?」と苦笑いするステイは、この国の未来をどのように見ているのか聞いてみたくなった。
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