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一輪華
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こそっと屋敷を出るつもりだが、ジョージアに見つかってしまった。どのみち、私の行動はディルが知っているので、ジョージアに聞かれれば答えただろう。
「アンナリーゼ様、お迎えに来てくださりありがとうございます」
「今日はよろしくお願いします」
カラマス子爵家に寄り、ナタリーとダリアを馬車に乗せる。今日は、ダリアのことをご婦人たちへ紹介するという意味もあるので一人では行かず、二人を伴って向かうことになっていた。途中、カレンが合流するだろうが、カレンには私たち以外にも交流があるので、そちらを優先せてと伝えてある。
「今日は、公妃様のお茶会ですけど……」
「緊張する?」
「一応は。会ったことがないので」
「夜会には滅多に……全く出てこないからね。あの目立ちたがり」
「アンナリーゼ様、本音が出ていますよ?」
苦笑いをするダリア。私とナタリーは公妃のことをよく知っているので、多少の人となりを話す。目立ちたがり屋、高慢ちき、出しゃばり、高飛車、おばか、嫉妬深いなどなど……公妃をあらわすには少々我儘令嬢を思わせるようなことばかりを私とナタリーで羅列していくので、さらにダリアの苦笑いが困った雰囲気を深くしていく。
「とにかく!公妃はアンナリーゼ様のことが苦手……いえ、嫌いのようですから、わりとあることないこと言われますけど、ただ、そういうときは公妃を見つめて、優しく微笑んであげてください」
「……ナタリーって、意外と性格悪いわよね?」
「そんなことありませんよ?アンナリーゼ様のほうが、悪いと思います」
「私には、お二人とも、どっちもどっちかと」
「そんなことないですわ!カレンがいればもっと!」
「……カレンはね?ある意味ライバル的存在よね?」
三人が馬車の中でカレンのことを思い浮かべている。きっと、今頃、カレンはくしゃみをしているのではないだろうかと話題にする。
「公妃様のお茶会は何か禁止事項はありますか?」
「そうねぇ……」
「アンナリーゼ様の側にいればないわ。他の御婦人方に虐められることもないでしょうし。特に私やダリアでは身分が低いと判断されているから、公妃側からの嫌がらせは本当に多いの。アンナリーゼ様やカレンの近くになるべきいるべきだと思うわ」
「わかりました。それほど酷いのですか?その……お茶会は」
「行けばわかるけど、洗礼にあわないようにするには、アンナリーゼ様の側にいるのが無難。ダリアは頭がいいから、見ていてば、そのあたりはわかると思うの。アンナリーゼ様が茶会に出れば、近寄ってくるご婦人のほとんどが笠に着たいご婦人ばかりよ」
ナタリーの話を真剣に聞いているダリア。元々、そういったことには慣れっこだろうと言うと、確かに……と苦笑いをする。元々、ダリアは宮女なのだから、地味な派閥争いは身に沁みるほどわかっている。
「それにしても……アンナリーゼ様」
「何かしら?」
「そのドレスはどうされたのですか?」
私の着ているドレスが気になったのか、ナタリーが話題を変えていく。さすがというべきか、このドレスについて、ひとつひとつ解説をしてくれそうだ。
「お兄様がトワイスで見つけたからって送ってきたの」
「サシャ様がですか?」
「そう。アンナに似合いそうだって。新しい作り方なの?」
私はナタリーがドレスの裾を見ていいかというので許可を出した。ジックリ見ている目は、職人。すごい集中力に感心する。
「ナタリーは新しいドレスとなると、いつもこうなのですか?」
「だいたいは、そうかしら?とても勉強熱心よね」
「……それはひとえに、アンナリーゼ様を私の手で輝かせるため。今日はサシャ様に、その栄光をお譲りいたしますけど……この生地、素晴らしいですね?綿でもないし、絹でもありません。何で出来ているのか……」
「こうなったら、放っておくしかないから、ダリアも気を付けてね?」
「……はい。新しいドレスを着るときには、気を付けます」
「私を珍獣のように言わないでくださいませ!サシャ様がこのドレスを贈られた理由がわかりましたわ。これって……薔薇をイメージして作られた特注品です」
「特注?そんなものを何故わざわざお兄様は作って持たせたのかしら?」
不思議そうにすると、ナタリーが下からジックリ観察している。着ているドレスを見ていると、丸裸にされたようで恥ずかしい。
「アンナリーゼ様って昔から会場に咲く高貴な一輪の薔薇のようでしたからね。そこだけ雰囲気が違う……。私たちの卒業式でみなと踊っていましたが、やはりジョージア様とヘンリー様と踊られたときは格別でした。大輪の薔薇のようでしたし。今回の緑のドレスにはそういう意味もあるのではないですか?」
「……ナタリーはお兄様のこともよくわかるのね?」
「サシャ様のお考えはわかりませんが、今日、このドレスをアンナリーゼ様が着てお茶会へ向かうことに意味があるのでしょうね。ぼうっとしているようで、よく考えられています」
「……お兄様に伝えておくわ。よく考えられているって」
兄へのドレスのお礼の手紙はまだ書いていなかったので、ナタリーやジョージアの考えていたドレスの意味など、考察を送っておくことにした。
「アンナリーゼ様、お迎えに来てくださりありがとうございます」
「今日はよろしくお願いします」
カラマス子爵家に寄り、ナタリーとダリアを馬車に乗せる。今日は、ダリアのことをご婦人たちへ紹介するという意味もあるので一人では行かず、二人を伴って向かうことになっていた。途中、カレンが合流するだろうが、カレンには私たち以外にも交流があるので、そちらを優先せてと伝えてある。
「今日は、公妃様のお茶会ですけど……」
「緊張する?」
「一応は。会ったことがないので」
「夜会には滅多に……全く出てこないからね。あの目立ちたがり」
「アンナリーゼ様、本音が出ていますよ?」
苦笑いをするダリア。私とナタリーは公妃のことをよく知っているので、多少の人となりを話す。目立ちたがり屋、高慢ちき、出しゃばり、高飛車、おばか、嫉妬深いなどなど……公妃をあらわすには少々我儘令嬢を思わせるようなことばかりを私とナタリーで羅列していくので、さらにダリアの苦笑いが困った雰囲気を深くしていく。
「とにかく!公妃はアンナリーゼ様のことが苦手……いえ、嫌いのようですから、わりとあることないこと言われますけど、ただ、そういうときは公妃を見つめて、優しく微笑んであげてください」
「……ナタリーって、意外と性格悪いわよね?」
「そんなことありませんよ?アンナリーゼ様のほうが、悪いと思います」
「私には、お二人とも、どっちもどっちかと」
「そんなことないですわ!カレンがいればもっと!」
「……カレンはね?ある意味ライバル的存在よね?」
三人が馬車の中でカレンのことを思い浮かべている。きっと、今頃、カレンはくしゃみをしているのではないだろうかと話題にする。
「公妃様のお茶会は何か禁止事項はありますか?」
「そうねぇ……」
「アンナリーゼ様の側にいればないわ。他の御婦人方に虐められることもないでしょうし。特に私やダリアでは身分が低いと判断されているから、公妃側からの嫌がらせは本当に多いの。アンナリーゼ様やカレンの近くになるべきいるべきだと思うわ」
「わかりました。それほど酷いのですか?その……お茶会は」
「行けばわかるけど、洗礼にあわないようにするには、アンナリーゼ様の側にいるのが無難。ダリアは頭がいいから、見ていてば、そのあたりはわかると思うの。アンナリーゼ様が茶会に出れば、近寄ってくるご婦人のほとんどが笠に着たいご婦人ばかりよ」
ナタリーの話を真剣に聞いているダリア。元々、そういったことには慣れっこだろうと言うと、確かに……と苦笑いをする。元々、ダリアは宮女なのだから、地味な派閥争いは身に沁みるほどわかっている。
「それにしても……アンナリーゼ様」
「何かしら?」
「そのドレスはどうされたのですか?」
私の着ているドレスが気になったのか、ナタリーが話題を変えていく。さすがというべきか、このドレスについて、ひとつひとつ解説をしてくれそうだ。
「お兄様がトワイスで見つけたからって送ってきたの」
「サシャ様がですか?」
「そう。アンナに似合いそうだって。新しい作り方なの?」
私はナタリーがドレスの裾を見ていいかというので許可を出した。ジックリ見ている目は、職人。すごい集中力に感心する。
「ナタリーは新しいドレスとなると、いつもこうなのですか?」
「だいたいは、そうかしら?とても勉強熱心よね」
「……それはひとえに、アンナリーゼ様を私の手で輝かせるため。今日はサシャ様に、その栄光をお譲りいたしますけど……この生地、素晴らしいですね?綿でもないし、絹でもありません。何で出来ているのか……」
「こうなったら、放っておくしかないから、ダリアも気を付けてね?」
「……はい。新しいドレスを着るときには、気を付けます」
「私を珍獣のように言わないでくださいませ!サシャ様がこのドレスを贈られた理由がわかりましたわ。これって……薔薇をイメージして作られた特注品です」
「特注?そんなものを何故わざわざお兄様は作って持たせたのかしら?」
不思議そうにすると、ナタリーが下からジックリ観察している。着ているドレスを見ていると、丸裸にされたようで恥ずかしい。
「アンナリーゼ様って昔から会場に咲く高貴な一輪の薔薇のようでしたからね。そこだけ雰囲気が違う……。私たちの卒業式でみなと踊っていましたが、やはりジョージア様とヘンリー様と踊られたときは格別でした。大輪の薔薇のようでしたし。今回の緑のドレスにはそういう意味もあるのではないですか?」
「……ナタリーはお兄様のこともよくわかるのね?」
「サシャ様のお考えはわかりませんが、今日、このドレスをアンナリーゼ様が着てお茶会へ向かうことに意味があるのでしょうね。ぼうっとしているようで、よく考えられています」
「……お兄様に伝えておくわ。よく考えられているって」
兄へのドレスのお礼の手紙はまだ書いていなかったので、ナタリーやジョージアの考えていたドレスの意味など、考察を送っておくことにした。
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