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どこへ行くの?

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 想い出の食事処については、ニコライに任せることにした。1度二人と話し合い、私の意向や二人の考えを聞いてどういう判断をするかは、ちゃんと考えてくれたようで、私の出る幕はなさそうだ。
 私は、いつものようにアンジェラと体を動かし、朝食を食べ、執務をする。アンバー領に関しては、イチアがきちんと精査したものを報告してくれるので、目を通して裁可するだけでいい。コーコナ領に関してもココナがきちんと管理してくれているので、私は次の視察の日を連絡しておく。

 そう言えば、町を丸ごと作ったのは……うまくいったようね。順調だと報告書にもあるわ。そちらの視察もしたいと連絡をしておこう。

 手紙に書く内容を頭の中で纏めていると、机に影が出来る。私は前に立った人物を見て、微笑んだ。


「どうかされましたか?」
「今日はどこへ行くの?」
「どうしてです?」
「うん、いつもの服装とは少し趣が違うから」


 私は着ている服を見て、ニッコリと笑いかける。今日は、どうやら、見逃してくれないようで、答えを聞きたいと粘ってくる。


「ジョージア様は、女性が集まるお茶会にご興味があるのですか?」
「……あぁ、お茶会ね。アンナのことだから、どこかへ飛んでいってしまうのかと思って」
「毎度毎度そんなことはありませんよ!今日は、公妃様のお茶会です。出ないわけにはいかないので、行くだけですけど……ダリアを紹介する必要もありますからね」
「なるほど、ダリアをね」
「ウェスティン伯爵として、昨年、ローズディアには訪問はしていました、公妃様には会わなかったそうなので、顔合わせです。男爵位と爵位が低いので、私のお付きとして参加することになるそうですけど」
「そっか……、そうなるんだ。大丈夫?」
「何がですか?」


 ジョージアに問われ、私は首を傾げた。質問の意味がわからなかったからだ。話を促すと、少し言いにくそうにしている。公妃の性格を知っているからこそ、何か考えているのかもしれない。


「爵位が低いと、公妃はその……」
「心配しなくても、爵位が高くても、公妃様は私を無視しますよ?目ざわりなのでしょう?公妃様のお茶会で私の陣営に入らないかと勧誘しているのですから」
「……それは、嫌われるなぁ。よくそんな状態で公妃からお茶会の招待状がもらえるね?」
「本音と建前ですよ。本音では、私を嫌っていますけど、建前上は私を無視出来ないのです。私的なお茶会なら、私を呼ばないことは可能ですけど、今期初のお茶会ですからね?」
「なるほど……アンナに嫌味を言われるお茶会は、さぞかし辛いお茶会だろうね?」
「嫌味なんて言いませんよ?」


 失礼なと頬を膨らませると、頬を人差し指で突かれる。


「アンナは公妃にとって、存在そのものが嫌味なんだよ。そんなこと言われてもと思うだろうけど、眩しいんだろうな。自分は政治の道具として公に嫁いだと思っている節があるから」
「そうなんですか?公妃様が、そんなふうに思っているとは思えませんけど……性格悪いですもん」
「……アンナはなかなかいうねぇ?」
「本当のことを言ったまでです!」


 さてと……と立ち上がる。今日のドレスはシンプルなものだ。薄い緑色の単色で草の刺繍が見事な出来映えであった。これは、ナタリーが作ってくれたものではなく、兄が贈ってきたものだった。


「アンナにしては珍しいドレスだね?」
「そうですよね?お兄様が用意してくださったのです。どういう意図があるのかわかりませんけど……このドレスは一輪華だそうですよ」


 その場でクルっと回ってみると裾がふわっと開く。緑色のドレスに私のストロベリーピンクの髪がちょうど花のように見えることから、兄がそう呼んでいた。


「確かに……華に見えるね。野に咲く花ではなく、咲き誇る薔薇のような気品に満ちているような華に」
「お褒めに預かりありがとうございます」
「本当のことをいったまでだよ。今日のお供はダリアだけかい?」
「いえ、いつも一緒に行っているナタリーとカレンも一緒ですよ?」
「……ますます華だなぁ。また、公妃に睨まれることになるかもしれない」
「いいではないですか。公妃様に睨まれたくらいで、私がすごすごと帰ってくるように見えますか?」
「……むしろ、会場を乗っ取る勢い。ナタリーにカレンときたら……凄みも倍増するだろうしね。まぁ、アンナの隣にたてる令嬢や夫人は、あの二人以外にいないだろうけど」
「そうですかね?私は、あの二人が側にいてくれると、心強いですけど……情報収集もしっかりしてもらわないといけないので……今回も頑張ってもらいましょう」


 ニコニコと笑っている私にため息をついているジョージア。公妃を気の毒に思っているのかもしれないが、それこそ、お茶会という戦いの場に出た公妃も十分女王様を発揮する。向こうには取り巻きがいるのだから、私に負けることなんて微塵も考えていないだろう。女同士のプライドのぶつかり合いとか考えていそうな公妃には悪いが、私は地道に活動をするだけである。
 一人でも多くのご婦人を味方につけ、派閥の均衡を保つために新しい流行を広めてくると執務室を出た。
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