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さぁ、ついた
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馬車に乗り、公都を1周回ってきた。ちょうど、公宮の前にきたとき、「少し寄っていくかい?」とジョージアは聞いてくれたが、首を横に振った。
「今日はジョージア様とお出かけですから、また、後日、お菓子を持ってきますよ!」
「あぁ、いつもの?」
「そうです。喜んでもらえるのですよ!」
お菓子の話をすると、甘いものが苦手なジョージアは微笑みながら頷くだけだ。新しいお菓子の開発をキティと相談しているというと、「甘くないのも頼むよ?」と珍しくいうので、「今度味見をしてほしいお菓子があるのです!」と笑いかけた。
「アンナは甘いものとなると、本当に目がないね?」
「もちろんですよ!甘いものは私の原動力ですから。食事は大切なのですよ?」
「お菓子は……食事ではないだろう?」
「確かに。でも、おいしいからいいのです。体も動かせば、その分消費していきますし」
「今朝もアンジーと体を動かしていたみたいだしね?」
「そうですね。デリアとエマも参戦してましたよ」
「デリアも?涼しい顔をしていたから、まさか……。俺も本格的に体を動かしたほうがいいのかなぁ?」
「気になることでも?」
「アンナたちと一緒にご飯を食べると美味しいからね。つい食べすぎる」
「……それは、わかる気がします」
私たちがお腹いっぱい食べられるのは、領地のみなが潤っているからに他ならない。料理が美味しいのは、料理人の努力もある。最近、アンバー領ではお菓子を中心に領地以外や国内外関わらず、各地の料理を作っている。元々、私が婚姻のためにローズディアへ移ってきたことが発端ではあるらしい。故郷の味をと料理長の気遣いがあった。どれもおいしいのだが、一味足りないと感じてたとき、料理長から遠慮なく味について言ってほしいと言われたあたりから、アンバー公爵家の食改善が進んでいる。脂っこいものばかりだったのが、サッパリした料理や魚料理もあったり、量も食べられるだけにしてもらうようになったので、無駄も少ない。やりがいを覚えた料理長を始め料理人たちが、各地の食事を取り入れることにしている。おかげで、食卓は毎日賑わっている。
「うちの食卓は本当にいろいろな料理が出るから、公都の食事処にも負けないほどだね?」
「むしろ、うちの料理人たちの並々ならぬ努力のおかげで、巷で美味しいと評判の食事処にも引けを取らないと思います。実際、お菓子については、キティのところへ弟子入りしたいという申し出もあるくらいなので」
「それは、どうしているの?」
「最初は断っていたそうです。ただ、定番メニューであるシフォンケーキだけは、レシピを広く公開しているらしいですね」
「アンナが許可を出してるの?」
「えぇ、一応、相談はされたので、許可は出しています」
知らなかったとジョージアは驚いていた。キティのお菓子への飽くなき探求心のおかげで、アンバー公爵家のお菓子事情は、他と雲泥の差がある。もちろん、ハニーアンバー店の喫茶で出しているので、職人の感性があれば味見をして同じようなものが作れるだろう。ただし、キティが作るお菓子ほど、他の職人が作るものは中毒性が少ない。
秘密の材料がひとつだけ入っている。それは、無味無臭なため、わからないのだが、それを入れると、どうしてか、また食べたくなるらしい。砂糖を使うというだけでも、中毒性があるとか……聞いたことがある。安価に砂糖を手に入れやすくなった貴族たちもお菓子を作る職人を雇うようになったとか、聞いたことがあった。
「キティの存在は、公都にとっての財産だな」
「職人があちらこちらで育っていると聞いています」
「これもそれもアンナが見出した才能のおかげということか。キティは領地で料理人見習いをしていたと聞いているけど」
「そうですよ。お菓子を作るのが大好きだけど、砂糖や蜂蜜が高くて買えなくて……というのが、悩みだったらしいです」
「アンナの周りは、何かに夢中な人が多いな。それが、仕事に繋がっている人も……辛くても頑張っている人の支援もみなの成長に繋がっているんだろうな」
そうこうしていると、馬車が停まる。今日は、どこへ向かうのか聞いていなかったので、「着いたよ」と馬車を降りるよう言われた。
馬車から降りたとき、目に入ったのは、懐かしい場所であった。ジョージアがプロポーズをしてくれた食事処である。
「入ろうか?」
「……えぇ、いきましょう」
ジョージアにエスコートされながら、私は店に入る。今日は昼間だったので、あの日と雰囲気がまた違ったが、同じ席を用意してくれていたらしく、懐かしさが込み上げてくる。
「ジョージア様、ここは……」
「アンナも覚えてくれていた?」
「もちろんです!どうして、ここへ?」
「2つ理由があるんだ」
「2つ?」
「あぁ、1つは……アンナと結婚記念日を祝いたいと思って。忙しすぎて、そういうのって、してこなかっただろう?」
「はい、私のせいですね?」
「そうじゃないよ。子どもたちも少し大きくなったから、こういう時間も作りたい……俺の我儘だ」
机の上に置かれた手をギュっと握られ、微笑むジョージア。私がジョージアへ我慢をさせていることがたくさんあることも知っている。こうして、行動にうつしてくれると、正直とても嬉しい。
机の上にも青薔薇が飾られており、幼かった私と緊張したジョージアのことを思い出した。
「今日はジョージア様とお出かけですから、また、後日、お菓子を持ってきますよ!」
「あぁ、いつもの?」
「そうです。喜んでもらえるのですよ!」
お菓子の話をすると、甘いものが苦手なジョージアは微笑みながら頷くだけだ。新しいお菓子の開発をキティと相談しているというと、「甘くないのも頼むよ?」と珍しくいうので、「今度味見をしてほしいお菓子があるのです!」と笑いかけた。
「アンナは甘いものとなると、本当に目がないね?」
「もちろんですよ!甘いものは私の原動力ですから。食事は大切なのですよ?」
「お菓子は……食事ではないだろう?」
「確かに。でも、おいしいからいいのです。体も動かせば、その分消費していきますし」
「今朝もアンジーと体を動かしていたみたいだしね?」
「そうですね。デリアとエマも参戦してましたよ」
「デリアも?涼しい顔をしていたから、まさか……。俺も本格的に体を動かしたほうがいいのかなぁ?」
「気になることでも?」
「アンナたちと一緒にご飯を食べると美味しいからね。つい食べすぎる」
「……それは、わかる気がします」
私たちがお腹いっぱい食べられるのは、領地のみなが潤っているからに他ならない。料理が美味しいのは、料理人の努力もある。最近、アンバー領ではお菓子を中心に領地以外や国内外関わらず、各地の料理を作っている。元々、私が婚姻のためにローズディアへ移ってきたことが発端ではあるらしい。故郷の味をと料理長の気遣いがあった。どれもおいしいのだが、一味足りないと感じてたとき、料理長から遠慮なく味について言ってほしいと言われたあたりから、アンバー公爵家の食改善が進んでいる。脂っこいものばかりだったのが、サッパリした料理や魚料理もあったり、量も食べられるだけにしてもらうようになったので、無駄も少ない。やりがいを覚えた料理長を始め料理人たちが、各地の食事を取り入れることにしている。おかげで、食卓は毎日賑わっている。
「うちの食卓は本当にいろいろな料理が出るから、公都の食事処にも負けないほどだね?」
「むしろ、うちの料理人たちの並々ならぬ努力のおかげで、巷で美味しいと評判の食事処にも引けを取らないと思います。実際、お菓子については、キティのところへ弟子入りしたいという申し出もあるくらいなので」
「それは、どうしているの?」
「最初は断っていたそうです。ただ、定番メニューであるシフォンケーキだけは、レシピを広く公開しているらしいですね」
「アンナが許可を出してるの?」
「えぇ、一応、相談はされたので、許可は出しています」
知らなかったとジョージアは驚いていた。キティのお菓子への飽くなき探求心のおかげで、アンバー公爵家のお菓子事情は、他と雲泥の差がある。もちろん、ハニーアンバー店の喫茶で出しているので、職人の感性があれば味見をして同じようなものが作れるだろう。ただし、キティが作るお菓子ほど、他の職人が作るものは中毒性が少ない。
秘密の材料がひとつだけ入っている。それは、無味無臭なため、わからないのだが、それを入れると、どうしてか、また食べたくなるらしい。砂糖を使うというだけでも、中毒性があるとか……聞いたことがある。安価に砂糖を手に入れやすくなった貴族たちもお菓子を作る職人を雇うようになったとか、聞いたことがあった。
「キティの存在は、公都にとっての財産だな」
「職人があちらこちらで育っていると聞いています」
「これもそれもアンナが見出した才能のおかげということか。キティは領地で料理人見習いをしていたと聞いているけど」
「そうですよ。お菓子を作るのが大好きだけど、砂糖や蜂蜜が高くて買えなくて……というのが、悩みだったらしいです」
「アンナの周りは、何かに夢中な人が多いな。それが、仕事に繋がっている人も……辛くても頑張っている人の支援もみなの成長に繋がっているんだろうな」
そうこうしていると、馬車が停まる。今日は、どこへ向かうのか聞いていなかったので、「着いたよ」と馬車を降りるよう言われた。
馬車から降りたとき、目に入ったのは、懐かしい場所であった。ジョージアがプロポーズをしてくれた食事処である。
「入ろうか?」
「……えぇ、いきましょう」
ジョージアにエスコートされながら、私は店に入る。今日は昼間だったので、あの日と雰囲気がまた違ったが、同じ席を用意してくれていたらしく、懐かしさが込み上げてくる。
「ジョージア様、ここは……」
「アンナも覚えてくれていた?」
「もちろんです!どうして、ここへ?」
「2つ理由があるんだ」
「2つ?」
「あぁ、1つは……アンナと結婚記念日を祝いたいと思って。忙しすぎて、そういうのって、してこなかっただろう?」
「はい、私のせいですね?」
「そうじゃないよ。子どもたちも少し大きくなったから、こういう時間も作りたい……俺の我儘だ」
机の上に置かれた手をギュっと握られ、微笑むジョージア。私がジョージアへ我慢をさせていることがたくさんあることも知っている。こうして、行動にうつしてくれると、正直とても嬉しい。
机の上にも青薔薇が飾られており、幼かった私と緊張したジョージアのことを思い出した。
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