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公爵様は本当に……

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 注目を一身に浴びる私たち。いつも注目の的ではあるので、今更なんとも思わないが、ダリアが少し引いたように感じた。ウェステン伯爵といえど、ここまで貴族たちの目を集めることはなかっただろうし、思い当たるものは去年のチェスの勝負くらいだろう。
「大丈夫?」と気づかわし気なセバスの声が聞こえてくるので、私は心配無用のようだ。


「そんなに奥に引っ込んでいないで、こっちにきたらどうだ?」


 公がやや挑発気味に私に声をかけてくるので、「わかりました」と何食わぬ顔で歩き始める。ジョージアもエスコートをと近寄ってくるが、一人で大丈夫と合図をすれば、引き下がってくれる。
 途中、カレンの隣を通ったようで、甘いリンゴの香りがする。そちらに視線を向かえば、意味ありげに微笑んでいた。

 ……ここにも見ていた人がいるのね。大丈夫だとおもったのに。

 私はそのまま前へと向かい、公の立っている階段の下まで行くと、エリックが降りてきた。階段を上るようにということらしい。


「アンナリーゼ様、手を」
「これくらいなら……」
「……俺にもエスコートさせてください。ずっと、したいって思っていたんです」
「それなら、お願いしたいわ!」
「お任せください」


 エリックの手に重ね、階段を上る。上から見ていた公は少し怒っているし、ステイは微笑んでいた。エリックの手を借り、階段を上り終えると、私は淑女の礼を取るとふんっと公が鼻を鳴らしていた。


「……公爵様は本当に」
「なんですか?」
「自由すぎる!ココは、社交場だろう?屋敷とは違うんだぞ?」
「……誰も見ていないからいいかと思いまして……ジョージア様のご機嫌取りですよ?」
「帰ってからやれ!」
「帰ってもいいんですか?では、さっそく!」
「待て待て……誰も帰っていいなんて言ってないからな!帰るなよ?」
「……お許しが出たと思ったのに」
「まだ、始まったばかりですよ?アンナリーゼ」
「そうなんですけど。ステイ様の挨拶も……」
「あら?聞いていたの?私、てっきりジョージアとキスをしていたから聞いていなかったのかと」


 わざとらしくステイが言うので「聞いていましたよ?」と微笑んだ。実際、半分くらいは仲間内で話をしていて、聞いていなかったのだが……情報共有をする時間が少なく、今になったから仕方がなかったのだ。
 ステイとニコニコと笑いながら相対する。

「アンナリーゼは、ジョージアが大好きなんだね?初めて見て驚いたわ」
「そうですか?そこそこ仲良しですよ?カレンのような仲良しっていうわけではないですけど……」
「リンゴ姫はあそこにいるのね。旦那様にべったりね?」
「そうなんですよね……」


 先日のことを思い出したようで、羨ましそうにしている。本来なら、リンゴ姫ことカレンが妃としてこの女装公子の隣にいたかもしれない。


「それにしても、夜はこれからだというのに……」
「アンナリーゼはこんなやつだから仕方がない。自由なんだよ」
「それは、今感じていますわ」
「ところで、そろそろ立ったらどうだ?」
「……公が立ってもいいと言ってくれないので……」
「立ってもいいぞ?」
「……投げやり」


 私はエリックの手を借り立ち上がる。公と視線を合わせると、苦笑いをされ後ろを見てみろと言われるので素直に従った。


「すごいですね。今、私の勢力は半分もいないんですよね」
「今、それをいうのか?」
「聞こえませんよ。音楽もあるし、がやがやしているから」
「ふふっ、確かにそうね」


 隣にステイが並び、「どれくらいの勢力にしたいの?」と聞いてくるので、「せめて半分くらいですか?」と答えた。


「それじゃあ、私がその足りない分を補充させればいいかしら?」
「そんなことが出来るのですか?」
「元々、私にもいるのよ。そういう会があって、今も繋がりがある貴族たちが」
「そうなのですか?公はなかったですよね?」
「……煩い!」
「公はなかったのですよ!」
「アンナリーゼ!」


 私と公のやり取りを聞いて、クスクス笑うステイ。


「あなたたち……そんな感じでかけあうのですね?」
「……私たち、普通ですよね?」
「普通ではないだろう?俺は公でアンナリーゼは公爵だろう?」
「そんなに差はないでしょ?今の私と公なら」
「確かにないように見えますね。国の大事に実際動いているのはアンナリーゼなわけですし、もし、妃になっていたら……この国はアンナリーゼのものでしたね?」
「今からでも遅くはないよ?」
「……私はジョージア様以外の元へ嫁ぐつもりはりませんよ」


 もぅ!と口を尖らせると、ステイがおかしそうに笑う。何事だと見ると、私を通り越して公を見ていた。


「公はこうやって、何度も振られたわけですか?」
「ステイも今振られたではないか?」
「降られてはいませんよ?私にはアンナリーゼに提供出来るものがありますからね!」


 そういって、ステイが右手を軽くあげるこちらを見ていた者たちの中、結構な人数が階段の下へと歩いてくる。面々を見れば、中立の者ばかり。そのうち、数名は顔合わせをしており、私の傘下にという話を密かにもらっていた。


「んーこれでも、半分には満たないのか。私にはこれくらいの力しかないけど……」
「十分ですよ。中立の重鎮を動かせる人がいるだなんて……感動者です!ステイ様」


 私はステイに抱きつき、「ありがとうございます」と告げると、勝ち誇った様子で公を見ていた。
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