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夜会を楽しみに
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「そういえば、あの方……ステイ様?はどちらの方なのですか?」
さっきまで一緒にいたステイたちの方を見ながら、ニコリと笑っている。紹介してという意味なのか……とカレンを窺う。
「そんなに警戒しないで?私たちの仲ではないですか?」
「……そんなに笑顔で言われると、断れないわ。誰かと教えるのは構わないの。今年の始まりの夜会には出てくれることになっているから」
「というと、ローズディアの方と言うことですね?私はこちらの出身ですし、知らない人がいるとは思いませんが……あんなに美人な方を忘れるわけありませんし」
ジッとステイの方を見ては誰かしら?と考えている。私が知る限りでは、カレンが社交界デビューした頃は男性として参加していたと聞いている。当時のことは知らないが、相当美人なステイを思いおこすことはできるのかと、カレンを見つめた。
「……わかりませんわ。一人、それらしい人を思い浮かべたのですけど、男性ですから……あれほど、ドレスを着こなされては女性として自信をなくしそうですもの」
カレンは、誰か一人、思い当たる人がいるらしい。私は、その人が誰なのか、興味がわいた。
……カレンのことですもの。核心に近いところを攻めてくるのではなくて?
悔しそうにしながら、まだ、ステイを見つめている。「あの方ではないですわよね?」とブツブツ言っているのが聞こえてくるので、聞き出すことにした。どのみち、カレンんは答えを要求してくるのだ。思い当たる人が正解かどうか、私も知りたい。
「カレンはどう思っているのか聞かせてくれるかしら?」
「あら、答えはお預けなのですね?」
「えぇ、聞きたいわ!」
「そうですね……私が思い浮かべている方と同一人物なら、あの女性にしては高身長なところが頷けます。当時はもっと硬い感じがありましたが」
「硬い?」
「筋肉質というか、がっしりしていたような気がします。そこで、実は迷っているのです。お化粧もされていますが、私の知る方の面影もどことなしにあるんですよ」
「ズバリ、その方のお名前は?」
「名前もステイ様と言いますわ。公の異母弟であるステイ殿下ではないかと推測したのですが、美しすぎて……霞んでしまいますわ!」
「カレンは大丈夫。どんな美人がきても霞むどころか、霞ませる方だから。ステイ様と並んでも申し分ないと思うよ?」
私が褒めると嬉しそうに頬に手をあてがっている。その姿だけで絵になるのだから。正直、私も羨まうその美貌と微笑み返しておく。
「それで、正解はどうですか?」
「カレンの想像通りの方ですよ」
「ステイ殿下なのですか?でも、私の知る……」
「ずっと、離宮に閉じこもっていたそうよ。やっと、出てきてくれる気になったらしいの。それで、夜会用にドレスを見に来たのよ」
「……ステイ殿下ですか。私も一時期憧れていましたの。公と違って誠実だと聞いておりますし、優しいうえにあの美しさ。年を重ねてその美しさが失われることなく、むしろ、今こそが最上とばかり、輝いていますわ」
ため息をつくカレン。旦那様以外にそんな表情をするのか……と少し驚いた。どうやら、カレンが憧れていたというのは本当のようだ。
「私たちの世代で、ステイ殿下に憧れを持たない令嬢はいなかったですわ!私もそのうちの一人でしたが、いつの間にか表舞台には出られることがなくなったので……どうされているか、心配はしていたのです」
「旦那様以外に少女のように焦がれるのね?」
「もちろんです!ずっと、憧れはありましたから。旦那様とは別の愛ですわ。社交界にぱたりと出なくなってしまったのは、何故ですか?」
「前公に止められていたらしいわ。本当は今もこれからもなんだけど、公が代替わりしたから、もういいのではないかって。ステイ様に公を脅かすような存在ではないことは聞いているから」
「社交界に戻ってこられるなら、始まりの夜会は倒れる方がたくさんいるかもしれませんね」
カレンは嬉しそうに笑い、楽しみだと呟いた。それと同時にドレスなのが気になるようだ。
「お母様とお姉様を思うと、ドレスに身を包んでいたいそうよ。私は素敵だからいいと思うのだけど、カレンはどう思う?」
「もちろん素敵ですわ。あのドレスを着こなすのは難しいはず……ご自身に合うドレスをしっかり研究なさっていますわね。負けていられませんわ!」
カレンは流行らしい流行を追わない。自身にあったドレスこそが1番なのだからという持論がある。ナタリーはそのあたりもきちんと聞き取り、カレンに合ったドレスを提供しているので、売上にも貢献してくれている。
「ステイ殿下にご挨拶したいけど……」
「いきましょうか」
「えっ?あちらに向かうのですか?」
「もちろんよ!ご挨拶だけでもしましょう!カレンなら、きっと気に入ってくれるはずだから」
私はカレンの手を取り、ステイやナタリーの元へと急ぐ。カレンの気が変わらないうちに、顔なじみになっておくのは必要だと、二人に近づき「ステイ様」と呼びかけると「なんだい?」と微笑んだ。
さっきまで一緒にいたステイたちの方を見ながら、ニコリと笑っている。紹介してという意味なのか……とカレンを窺う。
「そんなに警戒しないで?私たちの仲ではないですか?」
「……そんなに笑顔で言われると、断れないわ。誰かと教えるのは構わないの。今年の始まりの夜会には出てくれることになっているから」
「というと、ローズディアの方と言うことですね?私はこちらの出身ですし、知らない人がいるとは思いませんが……あんなに美人な方を忘れるわけありませんし」
ジッとステイの方を見ては誰かしら?と考えている。私が知る限りでは、カレンが社交界デビューした頃は男性として参加していたと聞いている。当時のことは知らないが、相当美人なステイを思いおこすことはできるのかと、カレンを見つめた。
「……わかりませんわ。一人、それらしい人を思い浮かべたのですけど、男性ですから……あれほど、ドレスを着こなされては女性として自信をなくしそうですもの」
カレンは、誰か一人、思い当たる人がいるらしい。私は、その人が誰なのか、興味がわいた。
……カレンのことですもの。核心に近いところを攻めてくるのではなくて?
悔しそうにしながら、まだ、ステイを見つめている。「あの方ではないですわよね?」とブツブツ言っているのが聞こえてくるので、聞き出すことにした。どのみち、カレンんは答えを要求してくるのだ。思い当たる人が正解かどうか、私も知りたい。
「カレンはどう思っているのか聞かせてくれるかしら?」
「あら、答えはお預けなのですね?」
「えぇ、聞きたいわ!」
「そうですね……私が思い浮かべている方と同一人物なら、あの女性にしては高身長なところが頷けます。当時はもっと硬い感じがありましたが」
「硬い?」
「筋肉質というか、がっしりしていたような気がします。そこで、実は迷っているのです。お化粧もされていますが、私の知る方の面影もどことなしにあるんですよ」
「ズバリ、その方のお名前は?」
「名前もステイ様と言いますわ。公の異母弟であるステイ殿下ではないかと推測したのですが、美しすぎて……霞んでしまいますわ!」
「カレンは大丈夫。どんな美人がきても霞むどころか、霞ませる方だから。ステイ様と並んでも申し分ないと思うよ?」
私が褒めると嬉しそうに頬に手をあてがっている。その姿だけで絵になるのだから。正直、私も羨まうその美貌と微笑み返しておく。
「それで、正解はどうですか?」
「カレンの想像通りの方ですよ」
「ステイ殿下なのですか?でも、私の知る……」
「ずっと、離宮に閉じこもっていたそうよ。やっと、出てきてくれる気になったらしいの。それで、夜会用にドレスを見に来たのよ」
「……ステイ殿下ですか。私も一時期憧れていましたの。公と違って誠実だと聞いておりますし、優しいうえにあの美しさ。年を重ねてその美しさが失われることなく、むしろ、今こそが最上とばかり、輝いていますわ」
ため息をつくカレン。旦那様以外にそんな表情をするのか……と少し驚いた。どうやら、カレンが憧れていたというのは本当のようだ。
「私たちの世代で、ステイ殿下に憧れを持たない令嬢はいなかったですわ!私もそのうちの一人でしたが、いつの間にか表舞台には出られることがなくなったので……どうされているか、心配はしていたのです」
「旦那様以外に少女のように焦がれるのね?」
「もちろんです!ずっと、憧れはありましたから。旦那様とは別の愛ですわ。社交界にぱたりと出なくなってしまったのは、何故ですか?」
「前公に止められていたらしいわ。本当は今もこれからもなんだけど、公が代替わりしたから、もういいのではないかって。ステイ様に公を脅かすような存在ではないことは聞いているから」
「社交界に戻ってこられるなら、始まりの夜会は倒れる方がたくさんいるかもしれませんね」
カレンは嬉しそうに笑い、楽しみだと呟いた。それと同時にドレスなのが気になるようだ。
「お母様とお姉様を思うと、ドレスに身を包んでいたいそうよ。私は素敵だからいいと思うのだけど、カレンはどう思う?」
「もちろん素敵ですわ。あのドレスを着こなすのは難しいはず……ご自身に合うドレスをしっかり研究なさっていますわね。負けていられませんわ!」
カレンは流行らしい流行を追わない。自身にあったドレスこそが1番なのだからという持論がある。ナタリーはそのあたりもきちんと聞き取り、カレンに合ったドレスを提供しているので、売上にも貢献してくれている。
「ステイ殿下にご挨拶したいけど……」
「いきましょうか」
「えっ?あちらに向かうのですか?」
「もちろんよ!ご挨拶だけでもしましょう!カレンなら、きっと気に入ってくれるはずだから」
私はカレンの手を取り、ステイやナタリーの元へと急ぐ。カレンの気が変わらないうちに、顔なじみになっておくのは必要だと、二人に近づき「ステイ様」と呼びかけると「なんだい?」と微笑んだ。
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