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そろそろ
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「美味しいケーキも頂いたことだし、そろそろ本題ね。お店の魅せかたに私は驚きっぱなしだったけど……流行の話を聞きたいわ」
「始まりの夜会は、昨年の流行りのままの場合が多いですね?」
「それはどうして?」
「理由はひとつしかありません」
チラリと私を見るナタリーの言いたいことはなんとなくわかった。ハニーアンバー店の広告といっても過言ではない私が、公都で新しいドレスを着る日が、始まりの夜会となる。なので、その時点では、今年の流行りになるものがわからない。お洒落な令嬢であればいち早く新しい流行に乗りたいだろうが、ハニーアンバー店については、まず、私が新作を着ないとお店に並べることがない。もちろん、すでに、並べる場所の確保は終わっているので、その日を待っている状態だ。
他店でもうちに負けじと新作が出ているが、イマイチ振るわないと聞いている。みな、始まりの夜会が終わった後は、ハニーアンバー店を訪れるのだ。
「せっかくですので、ドレスならアンナリーゼ様が着る予定のものや今年の新作、男性用のでしたら、ジョージア様と近しいものはいかがですか?」
ナタリーが今年のスケッチブックを開いて見せる。そこには、昨日着ていたドレスや始まりの夜会で着るドレスなどが描かれている。これを元に色違いを作っていくのだが、どうだろうか?とステイの方を見ると、やはり、昨日私が着ていたドレスが気になるようだ。
「昨日、アンナリーゼが着ていたものがいいわ」
「わかりました。そちらをご用意いたします。どんな色がいいでしょう?」
「そうね……昨日のも素敵だったのよね。でも、色は明るい色がいいわ。せっかくだし」
「では、水色と青で統一したものがございます。そちらをご用意しますので、一度みてくださいますか?」
「えぇ、そうね。聞いてもいいかしら?」
「もちろんです!」
ナタリーがはきはきと答えているので、私は見守っている。ドレスを売るに掛けて、ニコライと売り上げの二分しているのはナタリーだ。商人でないナタリーではあるが、作った本人であるからか、色味の合わせ方や宝飾品の合わせ方などを伝え、一式買わせる話術を習得している。
「ハニーアンバー店のドレスって、人気じゃない?」
「おかげさまで」
「量産品になるのかしら?それなら、着れないのだけど……」
「型は同じですが、多少は変えております。レースをつける位置だとか色目を変えたり柄を変えたりと、どれ一つとっても同じドレスはありませんよ?」
「そうなのね?」
「似たようなドレスは出てきてしまうんですけど、それぞれ違いがあるんです。お客の悩みや相談にのってドレスを選んではいます」
「徹底されているのね?」
ニコリと笑うナタリーには考えがあるのだろう。全面的に任せてあるので、実は私の預かり知らぬところではあった。これを着てくださいと渡されたものだけを着ているので、知らなかったりする。もちろん、売上の数字や、店に顔を出したりすることはあるのだが、ナタリーの涙ぐましい努力に私は感服した。
「もちろんです!アンナリーゼ様と同じドレスをと望まれる令嬢や婦人がとても多いのです。同じドレスを着られては、困ります。それに、アンナリーゼ様に似合ったからと言って、その女性に似合うかというと似合わず、タンスの肥やしになってしまったら、もったいないですからね」
「確かに」
「その点、1点ものにすれば、どこそこの令嬢とドレスが同じだった……ということが、無くなります。夜会でも茶会でも、女性は綺麗に着飾って注目されたいですから」
「なるほど。同じ型でも色味や生地の使い方でその人だけのものになるか。考えたわね?」
「アンナリーゼ様と同じドレスを他の誰かに着てほしくないだけです」
ニコニコと笑うナタリーはお客のことも考えてはいたが、どうやら、私とお揃いを切るかもしれない誰かが許せなかったようだ。確かに、夜会や茶会で見かける女性は、人目ハニーアンバー店の作りだとわかるのに、少しずつ違っていたなと思い出した。
「ナタリーのいうところの世界に1着しかない私のドレスというのかな?」
「そうですね。そう考えながら、仕事をしています。専属で針子をしてくれている人もいるけど、農業の隙間に手伝ってくれる人などが対象となりますから、作り方もまちまちなので、それはそれで、おもしろいと思っています」
なるほどと頷くステイ。一通りスケッチブックのは見終わったようで、次は下に降りて本物を見てきたからか、時間軸は少し違うのかもしれないけど……。
「大丈夫ですよ?」
ま打、部屋のインドはインドアの肩に向けてなのかなぁ?とか、二人の会話を見守っていく。初めてナタリーが起こした事業は、悩みんだ末に、とても素敵な場所になっている。
「そろそろ、下へ向かいますか?」
「そうね」
返事をして階下に降りれば数名の貴族たちが、思い思いにドレスを着ていた。私の前でどうしようと悩んでいる女性に見覚えがあった。私はトントンと肩を貸してやった。見ても何があるのかわからないかもしれないが、ナタリーも進むべき道を見つけられているようでほっとした。
「始まりの夜会は、昨年の流行りのままの場合が多いですね?」
「それはどうして?」
「理由はひとつしかありません」
チラリと私を見るナタリーの言いたいことはなんとなくわかった。ハニーアンバー店の広告といっても過言ではない私が、公都で新しいドレスを着る日が、始まりの夜会となる。なので、その時点では、今年の流行りになるものがわからない。お洒落な令嬢であればいち早く新しい流行に乗りたいだろうが、ハニーアンバー店については、まず、私が新作を着ないとお店に並べることがない。もちろん、すでに、並べる場所の確保は終わっているので、その日を待っている状態だ。
他店でもうちに負けじと新作が出ているが、イマイチ振るわないと聞いている。みな、始まりの夜会が終わった後は、ハニーアンバー店を訪れるのだ。
「せっかくですので、ドレスならアンナリーゼ様が着る予定のものや今年の新作、男性用のでしたら、ジョージア様と近しいものはいかがですか?」
ナタリーが今年のスケッチブックを開いて見せる。そこには、昨日着ていたドレスや始まりの夜会で着るドレスなどが描かれている。これを元に色違いを作っていくのだが、どうだろうか?とステイの方を見ると、やはり、昨日私が着ていたドレスが気になるようだ。
「昨日、アンナリーゼが着ていたものがいいわ」
「わかりました。そちらをご用意いたします。どんな色がいいでしょう?」
「そうね……昨日のも素敵だったのよね。でも、色は明るい色がいいわ。せっかくだし」
「では、水色と青で統一したものがございます。そちらをご用意しますので、一度みてくださいますか?」
「えぇ、そうね。聞いてもいいかしら?」
「もちろんです!」
ナタリーがはきはきと答えているので、私は見守っている。ドレスを売るに掛けて、ニコライと売り上げの二分しているのはナタリーだ。商人でないナタリーではあるが、作った本人であるからか、色味の合わせ方や宝飾品の合わせ方などを伝え、一式買わせる話術を習得している。
「ハニーアンバー店のドレスって、人気じゃない?」
「おかげさまで」
「量産品になるのかしら?それなら、着れないのだけど……」
「型は同じですが、多少は変えております。レースをつける位置だとか色目を変えたり柄を変えたりと、どれ一つとっても同じドレスはありませんよ?」
「そうなのね?」
「似たようなドレスは出てきてしまうんですけど、それぞれ違いがあるんです。お客の悩みや相談にのってドレスを選んではいます」
「徹底されているのね?」
ニコリと笑うナタリーには考えがあるのだろう。全面的に任せてあるので、実は私の預かり知らぬところではあった。これを着てくださいと渡されたものだけを着ているので、知らなかったりする。もちろん、売上の数字や、店に顔を出したりすることはあるのだが、ナタリーの涙ぐましい努力に私は感服した。
「もちろんです!アンナリーゼ様と同じドレスをと望まれる令嬢や婦人がとても多いのです。同じドレスを着られては、困ります。それに、アンナリーゼ様に似合ったからと言って、その女性に似合うかというと似合わず、タンスの肥やしになってしまったら、もったいないですからね」
「確かに」
「その点、1点ものにすれば、どこそこの令嬢とドレスが同じだった……ということが、無くなります。夜会でも茶会でも、女性は綺麗に着飾って注目されたいですから」
「なるほど。同じ型でも色味や生地の使い方でその人だけのものになるか。考えたわね?」
「アンナリーゼ様と同じドレスを他の誰かに着てほしくないだけです」
ニコニコと笑うナタリーはお客のことも考えてはいたが、どうやら、私とお揃いを切るかもしれない誰かが許せなかったようだ。確かに、夜会や茶会で見かける女性は、人目ハニーアンバー店の作りだとわかるのに、少しずつ違っていたなと思い出した。
「ナタリーのいうところの世界に1着しかない私のドレスというのかな?」
「そうですね。そう考えながら、仕事をしています。専属で針子をしてくれている人もいるけど、農業の隙間に手伝ってくれる人などが対象となりますから、作り方もまちまちなので、それはそれで、おもしろいと思っています」
なるほどと頷くステイ。一通りスケッチブックのは見終わったようで、次は下に降りて本物を見てきたからか、時間軸は少し違うのかもしれないけど……。
「大丈夫ですよ?」
ま打、部屋のインドはインドアの肩に向けてなのかなぁ?とか、二人の会話を見守っていく。初めてナタリーが起こした事業は、悩みんだ末に、とても素敵な場所になっている。
「そろそろ、下へ向かいますか?」
「そうね」
返事をして階下に降りれば数名の貴族たちが、思い思いにドレスを着ていた。私の前でどうしようと悩んでいる女性に見覚えがあった。私はトントンと肩を貸してやった。見ても何があるのかわからないかもしれないが、ナタリーも進むべき道を見つけられているようでほっとした。
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