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新しいドレスⅡ
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馬車がガタリと停まる。どうやらハニーアンバー店に着いたようだ。久方ぶりの外に少しお尻のあたりがソワソワしているのは何もアンジェラだけではないようだ。
「お店に着きましたよ、ステイ様。きっと、驚いていただけると思います」
「えぇ、楽しみだわ!」
馬車の扉が開くと、玄関の前でナタリーとニコライ二人並んで待っている。先にアンジェラがぴょんと馬車から飛び出てしまった。客であるステイの前だから、お行儀よくしてほしかったのだが、私の言うことなんて聞くはずもない。元気にナタリーの元へ駆けて行く我が子を見てため息をつきそうになった。ただ、隣にいるステイは、元気に駆けて行ったアンジェラを見て微笑んでいる。
「可愛いわね?」
「そう言っていただけると、幸いです」
「アンナリーゼが言いたいことはわかるけど、あなたも小さい頃は、あぁだったのではなくて?」
ステイに指摘されてぐぅのねも出ない私は、苦笑いしておくしかない。血は争えない……と叔父がよく言ったものだ。母も同じだったらしく、私を見てよく笑っていた。今は私が母の立場になれば、なるほど……おでこに手を持っていきたくなる気持ちがよくわかった。
「よくご存じですね?」
「なんとなく……ね?見た目はジョージアそっくりなのに、物怖じしない感じとか、くるくる回る目とか見ているとそうかな?って思うわ。あの子もあのまま大きくなっていけばいいのに」
「ステイ様……それはさすがに」
「わかっているわ。アンナリーゼのようにちゃんと社交もできるようにでしょ?アンナリーゼに出来て、アンジェラちゃんに出来ないはずはないわ」
クスクスと笑いながら、馬車から降りる。店の店員が、手を差し出し、馬車から降ろしてくれるので、先にステイ、次に私が降りる。降りたところで、まずは外観を見ている。老舗の店を買い取ったのだが、新しさはなくとも外観の古き良き味わいが出ていると私は感じている。
「ステキね?あえて古いものを使っているのなら……素晴らしいわ!新しいお店を持ちたいなら、立てなおすことがおおいのだけど、そうはしないのね」
「そうです。あえて前の店の雰囲気は残したままです。外から見たとき、ちょうど季節のドレスが見えるようにしてあるのですけど、店に入る前からワクワクできるような工夫をしていますわ」
頷くステイの前に、アンジェラと手を繋いだナタリーとニコライがやってきた。二人ともステイとは初めて会うので、挨拶をする。
「初めまして、ステイ殿下。カラマス子爵の妹、ナタリーと申します。ハニーアンバー店でドレスのデザインをしております」
「えぇ、聞いていますよ。昨日、アンナリーゼが着ていた素敵なドレスはあなたが手ずから作ったと聞いています」
「いえ、私はデザインを作って、あのドレスにあった布やレースをアンナリーゼ様のためにひと針ひと針大切に縫っただけですわ」
「それがすごいのよ!細やかな作りにとても感動したの。私のドレスもお願いしたいのだけど?」
ナタリーはニッコリ笑いかけ、もちろんお受けしますと頭を下げた。その様子をステイはまじまじと見ている。
「あなたも所作が綺麗だわ。よく見ると、アンナリーゼとよく似ているのだけど?」
「私のお手本はアンナリーゼ様です。子爵家と言えど、それほど娘の教育に力を入れていなかったのです」
「なるほど……そこにお手本となるアンナリーゼがまんまと来たと?」
「お上手ですn!ステイ殿下は」
「あら、予想は外れたのね?」
クスっと笑った後、当時を思い出しているのか、うっとりしているナタリー。こうなってしまえば手が付けられないが、ナタリーの話が落ち着くまで待つことにした。学園の話で盛り上がる二人には悪いが、そろそろニコライの紹介もしたい。
「アンナリーゼ様には、学園で危ないところを助けて頂きました。今でも忘れませんわ」
「学園でも活躍していたのね?」
言いありげにこちらを見てくるステイにそんなことないですよ?オホホと誤魔化すが、ナタリーが許さない。隣で、笑わないようにとニコライが頑張ってくれている。
「ステイ様、先ににこの店の店長を紹介しても?」
「もちろんよ!さっきからごめんなさいね?」
「いえ……こちらこそ、談笑を遮ってしまい申し訳ありません。私、ハニーアンバー店を任せていただいています。ニコライ・マーラと申します。ようこそ、おいでくださいました」
「ニコライね!ニコライにはどんな才能があるのかしら?」
「私にはそんなものはありません」
「何を言っているの!ニコライは、その足で見てきたことを知っているわ」
私は、ニコライが将来を見据えて勉強していたことが役に立っている。それを感じているは、当の本人であろう。
「ニコライとも仲がいいのね?」
「ニコライとも仲はいいかと。学園で開いたお茶会も参加していましたよ!」
「学園なんて懐かしいわ。その頃には取り巻きがたくさんいたから、お茶会もたくさん出たのよ。今でも、令嬢にはお茶会の仕切りをさせているの?」
「私たちのときもありましたよ!」
「私のお家は屋敷が狭いので、していませんわ。あの日のアンナリーゼ様は特別美しかったですね?」
「それじゃあ、今はもう美しくないみたいだわ!」
頬を膨らませ抗議をすると、今も十分可愛いよとステイが私を褒めてくれる。ニッコリ笑いかければ、ナタリーがぼそえりとするので何の話だろうか?と先をつながしていく。
「お店に着きましたよ、ステイ様。きっと、驚いていただけると思います」
「えぇ、楽しみだわ!」
馬車の扉が開くと、玄関の前でナタリーとニコライ二人並んで待っている。先にアンジェラがぴょんと馬車から飛び出てしまった。客であるステイの前だから、お行儀よくしてほしかったのだが、私の言うことなんて聞くはずもない。元気にナタリーの元へ駆けて行く我が子を見てため息をつきそうになった。ただ、隣にいるステイは、元気に駆けて行ったアンジェラを見て微笑んでいる。
「可愛いわね?」
「そう言っていただけると、幸いです」
「アンナリーゼが言いたいことはわかるけど、あなたも小さい頃は、あぁだったのではなくて?」
ステイに指摘されてぐぅのねも出ない私は、苦笑いしておくしかない。血は争えない……と叔父がよく言ったものだ。母も同じだったらしく、私を見てよく笑っていた。今は私が母の立場になれば、なるほど……おでこに手を持っていきたくなる気持ちがよくわかった。
「よくご存じですね?」
「なんとなく……ね?見た目はジョージアそっくりなのに、物怖じしない感じとか、くるくる回る目とか見ているとそうかな?って思うわ。あの子もあのまま大きくなっていけばいいのに」
「ステイ様……それはさすがに」
「わかっているわ。アンナリーゼのようにちゃんと社交もできるようにでしょ?アンナリーゼに出来て、アンジェラちゃんに出来ないはずはないわ」
クスクスと笑いながら、馬車から降りる。店の店員が、手を差し出し、馬車から降ろしてくれるので、先にステイ、次に私が降りる。降りたところで、まずは外観を見ている。老舗の店を買い取ったのだが、新しさはなくとも外観の古き良き味わいが出ていると私は感じている。
「ステキね?あえて古いものを使っているのなら……素晴らしいわ!新しいお店を持ちたいなら、立てなおすことがおおいのだけど、そうはしないのね」
「そうです。あえて前の店の雰囲気は残したままです。外から見たとき、ちょうど季節のドレスが見えるようにしてあるのですけど、店に入る前からワクワクできるような工夫をしていますわ」
頷くステイの前に、アンジェラと手を繋いだナタリーとニコライがやってきた。二人ともステイとは初めて会うので、挨拶をする。
「初めまして、ステイ殿下。カラマス子爵の妹、ナタリーと申します。ハニーアンバー店でドレスのデザインをしております」
「えぇ、聞いていますよ。昨日、アンナリーゼが着ていた素敵なドレスはあなたが手ずから作ったと聞いています」
「いえ、私はデザインを作って、あのドレスにあった布やレースをアンナリーゼ様のためにひと針ひと針大切に縫っただけですわ」
「それがすごいのよ!細やかな作りにとても感動したの。私のドレスもお願いしたいのだけど?」
ナタリーはニッコリ笑いかけ、もちろんお受けしますと頭を下げた。その様子をステイはまじまじと見ている。
「あなたも所作が綺麗だわ。よく見ると、アンナリーゼとよく似ているのだけど?」
「私のお手本はアンナリーゼ様です。子爵家と言えど、それほど娘の教育に力を入れていなかったのです」
「なるほど……そこにお手本となるアンナリーゼがまんまと来たと?」
「お上手ですn!ステイ殿下は」
「あら、予想は外れたのね?」
クスっと笑った後、当時を思い出しているのか、うっとりしているナタリー。こうなってしまえば手が付けられないが、ナタリーの話が落ち着くまで待つことにした。学園の話で盛り上がる二人には悪いが、そろそろニコライの紹介もしたい。
「アンナリーゼ様には、学園で危ないところを助けて頂きました。今でも忘れませんわ」
「学園でも活躍していたのね?」
言いありげにこちらを見てくるステイにそんなことないですよ?オホホと誤魔化すが、ナタリーが許さない。隣で、笑わないようにとニコライが頑張ってくれている。
「ステイ様、先ににこの店の店長を紹介しても?」
「もちろんよ!さっきからごめんなさいね?」
「いえ……こちらこそ、談笑を遮ってしまい申し訳ありません。私、ハニーアンバー店を任せていただいています。ニコライ・マーラと申します。ようこそ、おいでくださいました」
「ニコライね!ニコライにはどんな才能があるのかしら?」
「私にはそんなものはありません」
「何を言っているの!ニコライは、その足で見てきたことを知っているわ」
私は、ニコライが将来を見据えて勉強していたことが役に立っている。それを感じているは、当の本人であろう。
「ニコライとも仲がいいのね?」
「ニコライとも仲はいいかと。学園で開いたお茶会も参加していましたよ!」
「学園なんて懐かしいわ。その頃には取り巻きがたくさんいたから、お茶会もたくさん出たのよ。今でも、令嬢にはお茶会の仕切りをさせているの?」
「私たちのときもありましたよ!」
「私のお家は屋敷が狭いので、していませんわ。あの日のアンナリーゼ様は特別美しかったですね?」
「それじゃあ、今はもう美しくないみたいだわ!」
頬を膨らませ抗議をすると、今も十分可愛いよとステイが私を褒めてくれる。ニッコリ笑いかければ、ナタリーがぼそえりとするので何の話だろうか?と先をつながしていく。
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