1,308 / 1,480
新しいドレス
しおりを挟む
公から外出の許可とステイのおねだりが成功したおかげで、翌日のお昼には公都にあるハニーアンバー店へと一緒に向かう。もちろん、城からステイが迎えに来てくれ、アンバーの屋敷で落ち合った。
今日はアンジェラも一緒に向かうことを伝えると、ステイも興味が会ったようで喜んだ。
「こちらが、『ハニーローズ』?可愛いわ!」
馬車に乗ったあと、すぐにアンジェラに挨拶するように促すときちんと教えたとおりにご挨拶している。ステイは座ったままアンジェラに返礼をしている。そのあと私の隣にちょこんと座るアンジェラ。初めて見るステイをジッと見ていた。
「アンジェラ、ステイ様よ。公はわかるわよね?」
「おうちに来る人!」
先日来ていたのを覚えていたらしい。何度かは会ったことがあるので、わかるようだ。その弟だよと伝えると、ますますステイのことを見ていた。弟がドレスを着ているのが、珍しいのだろう。それも、とびきりの美人だもんだから、言葉にはしなかったが、興味津々で見ているのでわかる。
「私は、気に入ってもらえたのかしら?」
「えぇ、そのようですね。多少、驚きはあるようですけど……私の周りの男性って……」
「体格ね。私はアンナリーゼとそう変わらないから、ドレスを着ていてもそれほど違和感がないはずよ?」
クスっと笑うステイとやっと落とし込んだのかアンジェラもニッコリ笑う。
「今日は、アンジェラちゃんも一緒ということは、ドレスの新調かしら?」
「いえ、ステイ様のドレス選びを一緒に見せようかと思いまして。目を養うという意味で」
「私の?」
「はい。幼いころから、言われてするのではなく、見たり触れたりと体感しながら、自身の美を磨いてほしいなと考えています。ステイ様はご自身にあう素敵なドレスを選ばれると聞きおよんでいますから」
「なるほど、自分に合うものを選ぶ目を養うってことね。他の令嬢や夫人たちのときも一緒に?」
「友人とは会わせることもあります。ナタリーは領地でいつでも会えますし、礼儀作法の先生ですし、公都に来れば、カレンが屋敷に遊びに。今年はトライド男爵夫人のダリアも側にいてくれましたから」
「なるほど、その三人は耳にしたことがあるわ。確かに自分に合う美しさを身に着けている。幼いころから、そういうものに触れるということはいいことなの?」
「どうでしょう?私の母は、とにかく私の興味があることをさせてくれました。どこに興味が向くのかはわかりませんから、たくさん体験させてくれましたよ」
私を見てステイは苦笑いをする。私の情報ももちろんステイの耳には入っているはずだ。仮にも異母兄の妃になるかもしれないかもしれなかった私のことは、公宮の中でも一時取りざたされたことだろう。
「アンナリーゼがその性格なのも納得出来るわ」
「性格は元からですよ?母の教育の賜物ではありませんから」
昔を思い出し、ガキ大将をしていて、兄をいつも連れまわしていたのですと懐かし気に話すと、そんな昔話も聞きたいわとステイは笑う。私の話は、有名なことが多いが、事細かには離宮に籠っていたステイまで届いていないらしい。
「本当、公の妃になってくれなかったことは残念ね。公妃の器だとこの前話しただけでもわかるわ」
「そんなことありませんよ。私なんて……」
「他にも知っているわよ。公の代わりに動き回っていることもね。やはり、今の公妃ではなく、アンナリーゼが相応しかったのよ。そうすれば、もっとこの国もうまくまとまっていたのではなくて?」
ステイが微笑んでいる。何故、公妃になることを拒んだのかというふうに。
「ステイ様は私を買い被りすぎです。公女であるシルキー様がトワイス国へ嫁いだのとは違いますよ?私は他国の侯爵の娘に過ぎません。公からの特別な引き立てがあって、今、公爵位を得ているだけで、後ろ盾のない公妃ほど危ういものはありませんよ」
「そうかしら?あなたが公妃となるなら、私も迷わず後ろ盾になったし……私も継承権はまだ持っている公子なのだから」
「そういえば……今、継承権は3位になるのですか?」
「そうよ。返上してもいいかなぁ?とは思っていたのだけど、プラムのことがあるから、このまま継承権は持ち続けておくわ。そのほうが、アンナリーゼも何かと頼りやすいでしょ?」
私の考えていることが透けて見えるのか、先に言われてしまう。もう何年も社交界へ出ていないステイが始まりの夜会に出れば、間違いなく注目されるだろう。その容姿もさることながら、全てにおいて美しいのだ。ジョージアと年が近いということは、まだまだ若い。老若男女問わず、話題になる。夜会だけでなく、茶会にも誘われることになるだろう。
「今日、お店で見せてもらうドレスを見て、いろいろ考えさせてもらうわ!昨日のドレスも、今日のドレスも、アンジェラちゃんのドレスを見ても……どれもこれも素敵だから、広告塔を引き受けることになりそうよね?」
プラムの教育係だけでなく、こちらの思惑までわかってしまったのかとニッコリ笑って誤魔化しておくが、きっと、今日の来店は気に入るに違いないと確信をもっていた。
ナタリーもニコライもお店にいるようにしているのだ。大物は逃がさないとほくそ笑むのである。
今日はアンジェラも一緒に向かうことを伝えると、ステイも興味が会ったようで喜んだ。
「こちらが、『ハニーローズ』?可愛いわ!」
馬車に乗ったあと、すぐにアンジェラに挨拶するように促すときちんと教えたとおりにご挨拶している。ステイは座ったままアンジェラに返礼をしている。そのあと私の隣にちょこんと座るアンジェラ。初めて見るステイをジッと見ていた。
「アンジェラ、ステイ様よ。公はわかるわよね?」
「おうちに来る人!」
先日来ていたのを覚えていたらしい。何度かは会ったことがあるので、わかるようだ。その弟だよと伝えると、ますますステイのことを見ていた。弟がドレスを着ているのが、珍しいのだろう。それも、とびきりの美人だもんだから、言葉にはしなかったが、興味津々で見ているのでわかる。
「私は、気に入ってもらえたのかしら?」
「えぇ、そのようですね。多少、驚きはあるようですけど……私の周りの男性って……」
「体格ね。私はアンナリーゼとそう変わらないから、ドレスを着ていてもそれほど違和感がないはずよ?」
クスっと笑うステイとやっと落とし込んだのかアンジェラもニッコリ笑う。
「今日は、アンジェラちゃんも一緒ということは、ドレスの新調かしら?」
「いえ、ステイ様のドレス選びを一緒に見せようかと思いまして。目を養うという意味で」
「私の?」
「はい。幼いころから、言われてするのではなく、見たり触れたりと体感しながら、自身の美を磨いてほしいなと考えています。ステイ様はご自身にあう素敵なドレスを選ばれると聞きおよんでいますから」
「なるほど、自分に合うものを選ぶ目を養うってことね。他の令嬢や夫人たちのときも一緒に?」
「友人とは会わせることもあります。ナタリーは領地でいつでも会えますし、礼儀作法の先生ですし、公都に来れば、カレンが屋敷に遊びに。今年はトライド男爵夫人のダリアも側にいてくれましたから」
「なるほど、その三人は耳にしたことがあるわ。確かに自分に合う美しさを身に着けている。幼いころから、そういうものに触れるということはいいことなの?」
「どうでしょう?私の母は、とにかく私の興味があることをさせてくれました。どこに興味が向くのかはわかりませんから、たくさん体験させてくれましたよ」
私を見てステイは苦笑いをする。私の情報ももちろんステイの耳には入っているはずだ。仮にも異母兄の妃になるかもしれないかもしれなかった私のことは、公宮の中でも一時取りざたされたことだろう。
「アンナリーゼがその性格なのも納得出来るわ」
「性格は元からですよ?母の教育の賜物ではありませんから」
昔を思い出し、ガキ大将をしていて、兄をいつも連れまわしていたのですと懐かし気に話すと、そんな昔話も聞きたいわとステイは笑う。私の話は、有名なことが多いが、事細かには離宮に籠っていたステイまで届いていないらしい。
「本当、公の妃になってくれなかったことは残念ね。公妃の器だとこの前話しただけでもわかるわ」
「そんなことありませんよ。私なんて……」
「他にも知っているわよ。公の代わりに動き回っていることもね。やはり、今の公妃ではなく、アンナリーゼが相応しかったのよ。そうすれば、もっとこの国もうまくまとまっていたのではなくて?」
ステイが微笑んでいる。何故、公妃になることを拒んだのかというふうに。
「ステイ様は私を買い被りすぎです。公女であるシルキー様がトワイス国へ嫁いだのとは違いますよ?私は他国の侯爵の娘に過ぎません。公からの特別な引き立てがあって、今、公爵位を得ているだけで、後ろ盾のない公妃ほど危ういものはありませんよ」
「そうかしら?あなたが公妃となるなら、私も迷わず後ろ盾になったし……私も継承権はまだ持っている公子なのだから」
「そういえば……今、継承権は3位になるのですか?」
「そうよ。返上してもいいかなぁ?とは思っていたのだけど、プラムのことがあるから、このまま継承権は持ち続けておくわ。そのほうが、アンナリーゼも何かと頼りやすいでしょ?」
私の考えていることが透けて見えるのか、先に言われてしまう。もう何年も社交界へ出ていないステイが始まりの夜会に出れば、間違いなく注目されるだろう。その容姿もさることながら、全てにおいて美しいのだ。ジョージアと年が近いということは、まだまだ若い。老若男女問わず、話題になる。夜会だけでなく、茶会にも誘われることになるだろう。
「今日、お店で見せてもらうドレスを見て、いろいろ考えさせてもらうわ!昨日のドレスも、今日のドレスも、アンジェラちゃんのドレスを見ても……どれもこれも素敵だから、広告塔を引き受けることになりそうよね?」
プラムの教育係だけでなく、こちらの思惑までわかってしまったのかとニッコリ笑って誤魔化しておくが、きっと、今日の来店は気に入るに違いないと確信をもっていた。
ナタリーもニコライもお店にいるようにしているのだ。大物は逃がさないとほくそ笑むのである。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
悲恋を気取った侯爵夫人の末路
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。
順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。
悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──?
カクヨムにも公開してます。
私との婚約は政略ですか?恋人とどうぞ仲良くしてください
稲垣桜
恋愛
リンデン伯爵家はこの王国でも有数な貿易港を領地内に持つ、王家からの信頼も厚い家門で、その娘の私、エリザベスはコゼルス侯爵家の二男のルカ様との婚約が10歳の時に決まっていました。
王都で暮らすルカ様は私より4歳年上で、その時にはレイフォール学園の2年に在籍中。
そして『学園でルカには親密な令嬢がいる』と兄から聞かされた私。
学園に入学した私は仲良さそうな二人の姿を見て、自分との婚約は政略だったんだって。
私はサラサラの黒髪に海のような濃紺の瞳を持つルカ様に一目惚れをしたけれど、よく言っても中の上の容姿の私が婚約者に選ばれたことが不思議だったのよね。
でも、リンデン伯爵家の領地には交易港があるから、侯爵家の家業から考えて、領地内の港の使用料を抑える為の政略結婚だったのかな。
でも、実際にはルカ様にはルカ様の悩みがあるみたい……なんだけどね。
※ 誤字・脱字が多いと思います。ごめんなさい。
※ あくまでもフィクションです。
※ ゆるふわ設定のご都合主義です。
※ 実在の人物や団体とは一切関係はありません。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる