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公都での立ち居振る舞いについてⅡ
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「ナタリーには帰う場所があるでしょ?」
「ありますけど……アンナリーゼ様の側にいたいです。ダメですか?」
「……そんな可愛い顔で言われると断れないじゃない。その代わり……」
「わかっています。礼儀作法をアンジェラ様に教えるのですね?」
「えぇ、お願いしたいわ」
「とても早い段階で教えるのですね?まだ、四歳だと聞いていますが」
ダリアは驚いていたが、実際は去年から少しずつナタリーが教えている。スプーンやフォークの持ち方など、癖が出やすいものからアンジェラに教えてくれている。おかげで、自然に綺麗な持ち方になっている。もちろん、アンジェラだけでなく、ジョージもネイトも一緒に見ているので、同じようにできる。レオやミアも混ざっていたので、練習していると聞いていた。とくにこの五人は今後貴族社会で生きることになるのだからとナタリーがしっかり面倒を見てくれている。
「体に沁み込ませるのなら、それほど早くはないかな。私も三歳くらいのときにはお母様がお兄様に教えているのをマネしていたし」
「アンジェラ様は、お子の中で1番上の子ですからね。真似るのではなく、率先して覚えないといけないですから……そこはアンナリーゼ様と少し違いますね」
「私はどちらかというと、ネイトと同じ立場ね。お姉ちゃんがしてるからマネをしてみるみたいな」
「その場合、下の子の方が早く覚えると聞いていますよ?」
ダリアも興味があるのかなるほどと頷いている。貴族出身ではないダリアからすれば、不思議ではあるだろう。私とナタリーの教育の考えを聞けば聞くほど、大変ですねと暗い顔をする。
「そんな顔をしないで……いずれ、ダリアにもこんな日が来るわよ?そんなときは、私たちを頼ってくれたらいいの。だって、私たちは友人でしょ?」
手を差し出すと、おずおずと手を出してくるので、私はギュっと握る。離さないよって意味も込めてニッコリ笑うと、ナタリーがその上から両手で私たちの手をくるんだ。
私もいますよと言っているので、三人で笑いあう。
「子どもが出来てから、いろいろと考えましょう。出産については、アンナリーゼ様に聞けばいいし、私はおむつ替えなら任せて!」
「ナタリーがおむつ替えをするの?」
「していましたよね?私も」
「していたわ。アンジェラのもネイトのも。二人のことを本当に大切にしてくれているの」
「それは見ていてわかります。ナタリーは子どもが本当に好きなのね?」
「そうなのかしら?わからないけど……アンナリーゼ様のお子だと思えばこそかもしれないけど……」
うーんと考えるそぶりをするナタリーに、そんなことないわとダリアが話しかけている。どうやら、ダリアは周りをよく見ているらしい。マリアやシシリーにもよく声を掛けているのを見かけたというのだ。
「あの子たちはゆくゆくはアンジェラ様の側で仕える子たちだもの。私だって目にかけるわ。エマやデリアが教育をするでしょうけど……」
「セバスもするわよ?」
「セバスには難しいこともありますからね。そこのフォローをできるようにと、声をかけています」
「……ナタリーには感服するわね」
「ダリアもあの子たちには積極的に関わってあげて。あとミアにも。ウィルにべったりなのは、考え物だわ」
ナタリーが珍しく少し怒ったような声を出すが、私はそれを窘める。ミアはそのままのミアでいてほしいと私は願うから。
「アンナリーゼ様?」
「ミアはいい子よ。もちろんレオもね。私はあの二人がこの先、アンジェラにとってとても大切なものになると思うから引き取ったの。あの二人の出自のことはおいといて、大切にしてあげてほしいわ。知っているのは、私たちだけだから」
「何かあるのですか?あの二人に。確か……養子だと聞いていますが」
「えぇ、そのあたりは少し複雑なの。あまり多くの人に知られたくないから……聞かないでくれると助かるわ」
「わかりました。あの二人もとてもいい子たちですもの。私は好きですよ」
ダリアが詮索をしないでくれるというのならとホッとした。いずれ勘のいいダリアなら気が付くだろうが、言わないでくれるだろう。
「それで、公都での立ち居振る舞いについて話しておかなければいけないと思うのですけど?」
「ナタリーの提案はもっともね。ダリアは、この国の派閥について知っていて?」
「だいたい三つに別れていると聞いています。アンバー公爵派、ゴールド公爵派、中立。合っていますか?」
「そうねあっているわ!」
「ありがとうございます。その中でも、公はアンバー公爵側で、公妃は親元であるゴールド公爵派、第二妃は親元の後ろ盾が弱いからアンバー公爵派にいるという解釈でいいですか?」
「正解ね。セバスが教えてくれるの?」
「そうです。元々、こちらに来る前の情報もありましたが、セバス様に教えてもらっています」
「ちなみにカラマス子爵家はアンバー公爵よりの中立よ。私はアンバー公爵派閥だから、いろいろと難しそうですね」
「子爵も年若いから、大変ね……」
カラマス子爵を労うような言葉を言うと、決断できないのが悪いのですと、現子爵であるナタリーの兄のカラマス子爵を罵った。思うところがあるのだろうというのはわかるが、それでも歩み寄ろうとしてくれているのだからと怒っているナタリーをなだめたのである。
「ありますけど……アンナリーゼ様の側にいたいです。ダメですか?」
「……そんな可愛い顔で言われると断れないじゃない。その代わり……」
「わかっています。礼儀作法をアンジェラ様に教えるのですね?」
「えぇ、お願いしたいわ」
「とても早い段階で教えるのですね?まだ、四歳だと聞いていますが」
ダリアは驚いていたが、実際は去年から少しずつナタリーが教えている。スプーンやフォークの持ち方など、癖が出やすいものからアンジェラに教えてくれている。おかげで、自然に綺麗な持ち方になっている。もちろん、アンジェラだけでなく、ジョージもネイトも一緒に見ているので、同じようにできる。レオやミアも混ざっていたので、練習していると聞いていた。とくにこの五人は今後貴族社会で生きることになるのだからとナタリーがしっかり面倒を見てくれている。
「体に沁み込ませるのなら、それほど早くはないかな。私も三歳くらいのときにはお母様がお兄様に教えているのをマネしていたし」
「アンジェラ様は、お子の中で1番上の子ですからね。真似るのではなく、率先して覚えないといけないですから……そこはアンナリーゼ様と少し違いますね」
「私はどちらかというと、ネイトと同じ立場ね。お姉ちゃんがしてるからマネをしてみるみたいな」
「その場合、下の子の方が早く覚えると聞いていますよ?」
ダリアも興味があるのかなるほどと頷いている。貴族出身ではないダリアからすれば、不思議ではあるだろう。私とナタリーの教育の考えを聞けば聞くほど、大変ですねと暗い顔をする。
「そんな顔をしないで……いずれ、ダリアにもこんな日が来るわよ?そんなときは、私たちを頼ってくれたらいいの。だって、私たちは友人でしょ?」
手を差し出すと、おずおずと手を出してくるので、私はギュっと握る。離さないよって意味も込めてニッコリ笑うと、ナタリーがその上から両手で私たちの手をくるんだ。
私もいますよと言っているので、三人で笑いあう。
「子どもが出来てから、いろいろと考えましょう。出産については、アンナリーゼ様に聞けばいいし、私はおむつ替えなら任せて!」
「ナタリーがおむつ替えをするの?」
「していましたよね?私も」
「していたわ。アンジェラのもネイトのも。二人のことを本当に大切にしてくれているの」
「それは見ていてわかります。ナタリーは子どもが本当に好きなのね?」
「そうなのかしら?わからないけど……アンナリーゼ様のお子だと思えばこそかもしれないけど……」
うーんと考えるそぶりをするナタリーに、そんなことないわとダリアが話しかけている。どうやら、ダリアは周りをよく見ているらしい。マリアやシシリーにもよく声を掛けているのを見かけたというのだ。
「あの子たちはゆくゆくはアンジェラ様の側で仕える子たちだもの。私だって目にかけるわ。エマやデリアが教育をするでしょうけど……」
「セバスもするわよ?」
「セバスには難しいこともありますからね。そこのフォローをできるようにと、声をかけています」
「……ナタリーには感服するわね」
「ダリアもあの子たちには積極的に関わってあげて。あとミアにも。ウィルにべったりなのは、考え物だわ」
ナタリーが珍しく少し怒ったような声を出すが、私はそれを窘める。ミアはそのままのミアでいてほしいと私は願うから。
「アンナリーゼ様?」
「ミアはいい子よ。もちろんレオもね。私はあの二人がこの先、アンジェラにとってとても大切なものになると思うから引き取ったの。あの二人の出自のことはおいといて、大切にしてあげてほしいわ。知っているのは、私たちだけだから」
「何かあるのですか?あの二人に。確か……養子だと聞いていますが」
「えぇ、そのあたりは少し複雑なの。あまり多くの人に知られたくないから……聞かないでくれると助かるわ」
「わかりました。あの二人もとてもいい子たちですもの。私は好きですよ」
ダリアが詮索をしないでくれるというのならとホッとした。いずれ勘のいいダリアなら気が付くだろうが、言わないでくれるだろう。
「それで、公都での立ち居振る舞いについて話しておかなければいけないと思うのですけど?」
「ナタリーの提案はもっともね。ダリアは、この国の派閥について知っていて?」
「だいたい三つに別れていると聞いています。アンバー公爵派、ゴールド公爵派、中立。合っていますか?」
「そうねあっているわ!」
「ありがとうございます。その中でも、公はアンバー公爵側で、公妃は親元であるゴールド公爵派、第二妃は親元の後ろ盾が弱いからアンバー公爵派にいるという解釈でいいですか?」
「正解ね。セバスが教えてくれるの?」
「そうです。元々、こちらに来る前の情報もありましたが、セバス様に教えてもらっています」
「ちなみにカラマス子爵家はアンバー公爵よりの中立よ。私はアンバー公爵派閥だから、いろいろと難しそうですね」
「子爵も年若いから、大変ね……」
カラマス子爵を労うような言葉を言うと、決断できないのが悪いのですと、現子爵であるナタリーの兄のカラマス子爵を罵った。思うところがあるのだろうというのはわかるが、それでも歩み寄ろうとしてくれているのだからと怒っているナタリーをなだめたのである。
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