上 下
1,285 / 1,480

公都までの道のり

しおりを挟む
 始まりの夜会に向けて公都へ出発して早3日目。子どもたちの体力もついてきたことで、休憩時間も少し減り、日程も順調だ。
 荷物があるから、これ以上は日程を早められないが、思ったよりも公都へは早く付きそうだった。


「少しダリアと話をさせてもらっても?」


 休憩時間のときにセバスに声をかけるといいよと返ってくる。ダリアも私と話をしたいと喜んでくれた。馬車の割り振り的にセバスとダリアが一緒に乗っているので、セバスに私の馬車へ移るようにお願いする。


「アンナリーゼ様の代わりにあの馬車へか……緊張して酔いそうだ」
「それは困るけど……馬もダメだし」
「馬の移動はダメなのですか?」


 ダリアはセバスの馬には乗れるを真に受けていたようで、不思議がっている。どういう状態になるかは聞かされていないようなので、セバス?というとかっこつけたかったんですと素直に白状した。


「……馬に乗れるには乗れるんだけど、アンナリーゼ様やウィルがいないところでは消して乗ってはダメだと止められているんだ」
「だから、遠乗りのお誘いも断られてしまったのですね?」


 うんと頷くセバスに優しく微笑むダリア。それだけで、二人の関係が優しいものであることがわかる。


「今回は、ウィルがいるけど、護衛も兼ねているからダメよ?もし、私の馬車がダメなら、ナタリーのに乗せてもらうのはダメかしら?ライズも一緒にいるから、二人きりというわけではないわよ?」
「それなら、一層のこと、ナタリーをこっちに呼ぶのはダメなの?」
「あぁ、それもいいわね。ナタリーと話してくるわ。ライズと二人は大丈夫なの?」
「……まぁ、それなりにいろいろと思うけど、ジョージア様と一緒って思うよりかは大丈夫」
「ジョージア様がダメなのか……」
「……言いにくかったけど、少し苦手かなぁ?住む世界が違いすぎてっていうのがね」
「私も一応公爵なんだけど……」
「アンナリーゼ様の公爵とジョージア様の公爵は違うよ。友人と知り合いの違いもあるけど」
「もう何年も付き合いがあるのに、不思議なものね」


 セバスが苦笑いをしている。せっかく、順調な工程で公都に帰ってきているのだ。このままで行きたい。セバスの体調を考えるならと1番いい方法で動くしかない。
 私はナタリーの元へ向かい、ダリアと三人で公都までおしゃべりしましょうというと、喜んで!と言ってくれる。承諾を得たことをセバスに言えば、私たちはそれぞれの馬車へと向かった。子どもたちのいる馬車へはデリアが乗るので、何かあれば面倒をみてくれるだろう。


「セバスに馬車を譲るのって変な感じだわ」
「僕もナタリーの馬車に乗るなんて変な感じ。お邪魔するよ」
「えぇ、ライズと仲良くね?」
「そりゃね?それにしても……ライズと何話したらいいんだろう?」
「それなら、昔話でもしてきたら?」
「昔話?」
「えぇ、そう。例の彼の話なんて聞いてきてくれると嬉しいわ。同母の子で……昔は仲が良かったって聞いたことあるし」
「…………いつの話だよ」
「すっごい昔」


 笑ったら、苦笑いをし肩を落としながら馬車へ向かうセバスにまたねと手を振る。私たちも馬車に乗りこむ。
 ナタリーもダリアも揃って乗ってきた。


「この馬車の内装はこうなっているのですね?さすがに私のとは違いますね?」


 シンプルな内装をナタリーが見渡す。何を見ているのだろうと思えば、さすがだ。馬車の座席に張ってある生地やクッションなどを見たり手触りを堪能している。


「この馬車の内装はどうですか?」
「セバスらしいいいものだと思うわ!この座席もふかふかで素敵ね?」
「この座席は今回の旅のために張り替えたそうですよ。なので、ふかふかです」
「前はどうだったの?」
「普通に板張りにクッションを置いていただけだと聞いています」
「ダリアのために用意したのね?」
「そこかしこで愛を感じますね。あのセバスが……と思ってしまいますわ」


 私は頷き、ナタリーは乙女の祈りのように手を組んで意味ありげにダリアに微笑んだ。それが恥ずかしかったのか頬を染めるダリア。


「いいじゃない。追いかける恋より愛される方が私はいいわ」
「アンナリーゼ様はどちらかというと愛される側ですものね」
「そんなことないわよ?」
「「またまた」」
「どの口が言いますか?」


 私たちは冗談を言いながら笑いあう。なかなか領地ではこんな時間を取るのは難しいので、とても楽しい。


「お茶会をとも思っていたのだけど、なかなか時間が取れなくて……」
「領地にいるときは仕方がないですよ。アンナリーゼ様は執務に私は新作ドレスに追われていますから。ダリアも今年は領地やこの国に慣れること、結婚式があって慌ただしかったですからね」
「……もっとうまく立ち回れたらよかったんですけど」
「ダリアが気にすることじゃないわ。歓迎する側の私たちが間に合っていなかったのだkら。ごめんなさいね?疎かにするつもりはなかったのだけど……遅くなってしまって」
「いえ、エルドアから追放された私をセバス様が救ってください、アンナ様に助けられましたから。それだけでも私の生きる道が変わりました」


 それならよかったわと微笑むと、ナタリーが得意げにダリアに耳打ちしている。その言葉を聞いて、ダリアがクスっと笑うのを見れば、きっと、あまりいいことを吹き込まれたわけではなさそうだと肩を竦めた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

スウィートカース(Ⅷ):魔法少女・江藤詩鶴の死点必殺

湯上 日澄(ゆがみ ひずみ)
ファンタジー
眼球の魔法少女はそこに〝死〟を視る。 ひそかに闇市場で売買されるのは、一般人を魔法少女に変える夢の装置〝シャード〟だ。だが粗悪品のシャードから漏れた呪いを浴び、一般市民はつぎつぎと狂暴な怪物に変じる。 謎の売人の陰謀を阻止するため、シャードの足跡を追うのはこのふたり。 魔法少女の江藤詩鶴(えとうしづる)と久灯瑠璃絵(くとうるりえ)だ。 シャードを帯びた刺客と激闘を繰り広げ、最強のタッグは悪の巣窟である来楽島に潜入する。そこで彼女たちを待つ恐るべき結末とは…… 真夏の海を赤く染め抜くデッドエンド・ミステリー。 「あんたの命の線は斬った。ここが終点や」

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

踏み台令嬢はへこたれない

三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」  公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。  春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。  そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?  これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。 「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」  ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。  なろうでも投稿しています。

ドラゴン王の妃~異世界に王妃として召喚されてしまいました~

夢呼
ファンタジー
異世界へ「王妃」として召喚されてしまった一般OLのさくら。 自分の過去はすべて奪われ、この異世界で王妃として生きることを余儀なくされてしまったが、肝心な国王陛下はまさかの長期不在?! 「私の旦那様って一体どんな人なの??いつ会えるの??」 いつまで経っても帰ってくることのない陛下を待ちながらも、何もすることがなく、一人宮殿内をフラフラして過ごす日々。 ある日、敷地内にひっそりと住んでいるドラゴンと出会う・・・。 怖がりで泣き虫なくせに妙に気の強いヒロインの物語です。 この作品は他サイトにも掲載したものをアルファポリス用に修正を加えたものです。 ご都合主義のゆるい世界観です。そこは何卒×2、大目に見てやってくださいませ。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...