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公都へ帰る前にⅡ

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「今年の始まりの夜会への人選はどうする?」
「デリアに任せようと思っています。ライズは……ナタリーについていくので私たちの従者に入れなくてもいいでしょうし、ノクトたちも勝手に動くはずです。追加と言えば、レンジとシェラくらいでしょうか?」
「あの二人は結局何になるの?」
「子どもたちの護衛ですよ。ジョージが攫われたことを心配した誰かが遣わせてくれたようです」


 思い当たる人がいるのかどうかはわからないが、そうとだけ呟いた。子どもたちの安全は絶対なのだからというと、わかっていると返ってきた。何に悩む必要があるのだろうかとジョージアに問えば、曖昧に笑う。


「納得されませんか?」
「そういうんじゃないよ。アンナたちがいろいろと動いているのに何もできないなと思って。子どもたちを見ていることも今回出来なかったわけだし」
「それなら私もですから。人手が足りないのです。私が働きの悪いものたちを間引いたから」
「それからでも、かなりの人数を雇い入れているだろう?」
「そうですね。それにディルのほうからの補充もありますが、少々特殊な働きになるので、なかなか定着までに至っていないのです。公爵家という肩書は立派ですけど、お給金が似合っていないと辞めていくものも多いとか……年数や働きによっては昇給させているので、それも含め、彼彼女たちの実力なのでしょうけど……」
「アンナの査定方法は厳しいからね?」
「そうですね。でも、無駄なお金は一切使えない状況なので、仕方がありません。最低限の侍従で回しているので……」
「働きになれればアンバー公爵家も悪くないって聞くけど……そこまで至らないことが多いのか」


 廊下で話をしながら食堂へ向かって歩く。ジョージアはジョージアなりに考えてくれているのだろう。私には、その気持ちだけで嬉しいのだが、ウィルから言わせれば、違うのだろう。


「ジョージア様は、私のやり方は間違っていると思いますか?」
「何度もいうようだけど……そうは思わないよ。現状を考えれば妥当だろう。そこになたを振れなかった俺はずっと苦境だったわけだし。じゃあ、公都へ帰る侍従たちもデリアに任せるとなると、最後の打ち合わせが近々あるかな?」
「そうですね。イチアに任せっぱなしなので申し訳ないですけど……」
「元々、領地には管理人がいるんだから、いいんじゃないか?」
「イチアは管理人ではなく、軍師ですよ。その能力は多岐に渡りますけど」
「この前、チェスをしたら完敗だった」


 ジョージアがイチアに挑んだという話を聞いて驚いた。ジョージアは次期公爵として戦略等々を教え込まれている。戦争になれば、実際に兵を連れて戦場にでることもあるからだ。だから、チェスもそこそこ強いはずなのだが、やはりイチアには勝てないようだ。


「大丈夫ですよ、私もイチアには負けますし」
「負けると言っても6対4くらいで勝つ割合のほうが高いんだろう?」
「8対2くらいですかね?戦略も含め模擬戦をしておかないと、いざというとき身動きとれませんからね」
「警備隊は、そこまで練兵されていないだろ?」
「報告しませんでしたか?近衛を借りている関係でそういったところも上手い育ててますよ」
「……ウィルか」


 悔しそうにしているが、それが本来の仕事なのでウィルが1番最初から力を入れているものだ。練兵は大隊2つ分の規模で出来上がっている。どうやら、警備隊に入隊したいという人も多いらしく、新人教育も出来ているらしい。


「今年はどんなドレスを着るんだい?」
「楽しみにしておいてください!ナタリーがすごく張り切っていましたから」
「エルドアに行ってから、精力的だと聞いているからね。俺の分もあるんだよね?」
「えぇ、公都に帰ってから、試着があるはずですよ」
「毎年ながら、頭があがらないな。相当荒稼ぎしているだろう?」
「ドレスも含めた服飾はかなり。その分雇っている人も多いので」
「俺には見えない、コーコナ領の民か……。二つの領地なんてって思っていたけど……案外うまく回せているのがさすがの手腕だな」
「ゆくゆくは、ジョージに任せたいと思っているので、きちんと道筋は作ってあげたいと思っています」
「そっか。元々、ジョージの血筋の領地だからね。それは喜んでくれるといいけど……」


 私たちは食堂へ入って行くと、リアンに連れられて孤児院の子たちが来ていた。その中にはあの兄弟たちもいて、私を見つけ立ち上がり挨拶をしてくれる。それを見たジョージアは、変わった四人に驚いていた。


「あの子らはアンナがコーコナから連れてきた子だよね?」
「そうですよ。見習いをしながら、将来的にアンジェラに仕えてもらうことになります」
「あの子たちも連れていくの?」
「女の子たちは連れていきます」
「女の子たちは?」
「えぇ、メイド見習いと文官見習いなので、エマの側やセバスの側にと思っています。カイルとダンは、警備隊で鍛えてもらう予定です」
「護衛だから?」


 私は頷き、子らに座るように指示をすると、ぺこりと頭を下げて座り直した。その後は楽しそうに談笑しながらご飯を食べている。小さな子らの面倒を見てくれているようで、口を拭ってあげたり、フォークの持ち方を教えたりしていた。


「見違えるような所作になったなぁ」
「そうでしょ?どこに出しても恥ずかしくないようにと訓練しているんですけど、彼彼女たちの学ぶ意欲のおかげで、学習要領も前倒ししているそうですよ」


 微笑ましい子らの様子を伺いながら、私たちも席についた。その頃、食堂の扉が開く。声を聞けばアンジェラだとわかるので、私らの子も三人で朝食に来たのだろうと手招きするとかけてきた。
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