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「今から帰るから二人はついてきて」
「今からですか?夜明けを待ってもいいのでは?」
「主の言うことがきけないのかしら?」
不服そうなレンジを睨めば、ついていくと返事が返ってきた。18番もそれに倣うというので問題はなさそうだ。
「18番って……呼びにくわ!そうね……シェラと呼んでも?」
「かまいません。お心のままに」
「わかったわ。それじゃあ、レンジとシェラ、行くわよ!」
馬房に戻るとウィルが待っていた。帰るのだという私の後ろが気になったようで、名前だけ伝えておく。
「詳細は帰ってから話すわ。警備隊の方にはレンジを連れて帰るとだけ……」
「かしこまりました。隊長に伝えておきます」
私をみてニコリと笑うので、お願いして馬に跨る。私の後ろにウィル、シェラとレンジが相乗りだった。
そのまま、日が明けないうちに帰らないと、ジョージアに叱られてしまうので、家路に急いだ。
「姫さん、飛ばしすぎ」
「レナンテじゃないからこれでも手加減をしているのよ?」
「そんなに慌てなくても、あと2時間くらいは日が昇らないから大丈夫。デリアも見てくれているんだろう?」
「そうだけど……出てくる前にジョージア様、起きたのよね。こういうときだけ、勘がいいんだから」
もう!と怒っていると、背中からクスクス笑う声が聞こえてきた。ウィルが笑っているのだ。
屋敷についたので、馬を馬房へと連れていく。四人で連れ立っていくと、おじいさんが、もう他の馬の世話をするために起きてきていた。
「あぁ、アンナリーゼ様、おはようございます」
「おはよう。まだ、暗いのに……いつもありがとう」
「もったいないお言葉です。今日はレナンテには乗っていかなかったので?」
「馬房を見たら、ぐっすり眠っていたから。違う子で行ったの。ゆっくり休ませてあげて」
「わかっています。しっかりブラッシングしたあと、寝かせてあげます」
お願いね!と馬を預けて屋敷へと向かった。そのまま私室へ向かうときっとジョージアを起こしてしまうだろう。執務室へ向かい、他の三人も座らせた。せっかくなので、ウィルに先に説明をする。
「こちら、公直属の暗部配属ウィルの大隊所属のレンジ。私の護衛と言うより、子どもの護衛のために遣わされたようね。子どもたちの周りにも子猫たちはいるにはいるけど……」
「お嬢のための護衛って感じだもんな。ヒーナも子どもらの側にいるときは、そうなんだろ?」
「そう。まぁ……次期当主って決まっているし、『ハニーローズ』でもあるから、そこは仕方がないわね。他の子らだって、私は失いたくはないけど……国の損失と考えたのでしょう。先日のジョージの件で、本腰を入れてレンジを遣わしたみたい」
「なるほど。それで、俺の隊にね?名目上は、『ハニーローズ』の護衛だからな。俺も」
「そうそう。そんなとき、ほとんど見たことないけど」
私が嫌味そうにいうと、仕方がないだろう?とこちらを睨んでいる。ウィルの言い分もわかる。こちらにいる間は、護衛はもちろんだが、警備隊の訓練のほうもお願いしている。領地全土に配属している警備隊の把握をリリーと一緒になってしてくれているから、なかなか忙しい。自身の訓練も子どもたちの訓練もあるから、休みなしで働いてくれていた。もちろん、私の護衛も担てくれている。アデルに任せられるなら任せてというのだが、重要そうなときは、特に変わろうとしなかった。おかげで、私は安心材料が多いのだけど、そればかりではダメだということは何度もウィルには言っている。
「で、そちらのメイドさんは、どなた?」
「彼女はシェラ。前公の暗部から来ているみたいね。公がいるのだから、普通に公の部隊だと思っていたのだけど、違うと言われて正直驚いているわ」
「……前公か。たいがいタヌキだよな。公の位もさっさと渡したかと思ったけど……そういうところで関わってくるのか」
シェラを見ながら、なるほどと呟いている。
「それで、今度はどうするの?」
「レンジとシェラはこれから、子どもたちの護衛に勤めてもらう。お互いいろいろと柵があるようだから、そこは大人のとしての節度を持ってくれると嬉しいわね」
「レンジはともかく、シェラか。よろしく頼む」
シェラに対して差し出した手を握ろうかどうしようかと悩んでいるので、私はおせっかいをやくことにした。
「握手くらいしてあげなさい。それで、円滑になるのなら、敵とですら手をくむこともあるし、ウィルは信頼にあたいする人物よ」
「主様がそうおっしゃるのなら」
「えぇ、大丈夫。それより、ディルからの手紙に結婚の話が出ていなかったかしら?」
「出てるんじゃない?最近、公都は結婚式が続いているだとか。ダリアのために作ったウェディングドレスが好評なんだって」
「……どこでそんな情報を仕入れてくるのか驚き」
アンバー領で見聞きしたことは私や私の家族を中心に考えられている。もらった花で、あの人に似た感想を言ってもらえたことに驚いた。
「今からですか?夜明けを待ってもいいのでは?」
「主の言うことがきけないのかしら?」
不服そうなレンジを睨めば、ついていくと返事が返ってきた。18番もそれに倣うというので問題はなさそうだ。
「18番って……呼びにくわ!そうね……シェラと呼んでも?」
「かまいません。お心のままに」
「わかったわ。それじゃあ、レンジとシェラ、行くわよ!」
馬房に戻るとウィルが待っていた。帰るのだという私の後ろが気になったようで、名前だけ伝えておく。
「詳細は帰ってから話すわ。警備隊の方にはレンジを連れて帰るとだけ……」
「かしこまりました。隊長に伝えておきます」
私をみてニコリと笑うので、お願いして馬に跨る。私の後ろにウィル、シェラとレンジが相乗りだった。
そのまま、日が明けないうちに帰らないと、ジョージアに叱られてしまうので、家路に急いだ。
「姫さん、飛ばしすぎ」
「レナンテじゃないからこれでも手加減をしているのよ?」
「そんなに慌てなくても、あと2時間くらいは日が昇らないから大丈夫。デリアも見てくれているんだろう?」
「そうだけど……出てくる前にジョージア様、起きたのよね。こういうときだけ、勘がいいんだから」
もう!と怒っていると、背中からクスクス笑う声が聞こえてきた。ウィルが笑っているのだ。
屋敷についたので、馬を馬房へと連れていく。四人で連れ立っていくと、おじいさんが、もう他の馬の世話をするために起きてきていた。
「あぁ、アンナリーゼ様、おはようございます」
「おはよう。まだ、暗いのに……いつもありがとう」
「もったいないお言葉です。今日はレナンテには乗っていかなかったので?」
「馬房を見たら、ぐっすり眠っていたから。違う子で行ったの。ゆっくり休ませてあげて」
「わかっています。しっかりブラッシングしたあと、寝かせてあげます」
お願いね!と馬を預けて屋敷へと向かった。そのまま私室へ向かうときっとジョージアを起こしてしまうだろう。執務室へ向かい、他の三人も座らせた。せっかくなので、ウィルに先に説明をする。
「こちら、公直属の暗部配属ウィルの大隊所属のレンジ。私の護衛と言うより、子どもの護衛のために遣わされたようね。子どもたちの周りにも子猫たちはいるにはいるけど……」
「お嬢のための護衛って感じだもんな。ヒーナも子どもらの側にいるときは、そうなんだろ?」
「そう。まぁ……次期当主って決まっているし、『ハニーローズ』でもあるから、そこは仕方がないわね。他の子らだって、私は失いたくはないけど……国の損失と考えたのでしょう。先日のジョージの件で、本腰を入れてレンジを遣わしたみたい」
「なるほど。それで、俺の隊にね?名目上は、『ハニーローズ』の護衛だからな。俺も」
「そうそう。そんなとき、ほとんど見たことないけど」
私が嫌味そうにいうと、仕方がないだろう?とこちらを睨んでいる。ウィルの言い分もわかる。こちらにいる間は、護衛はもちろんだが、警備隊の訓練のほうもお願いしている。領地全土に配属している警備隊の把握をリリーと一緒になってしてくれているから、なかなか忙しい。自身の訓練も子どもたちの訓練もあるから、休みなしで働いてくれていた。もちろん、私の護衛も担てくれている。アデルに任せられるなら任せてというのだが、重要そうなときは、特に変わろうとしなかった。おかげで、私は安心材料が多いのだけど、そればかりではダメだということは何度もウィルには言っている。
「で、そちらのメイドさんは、どなた?」
「彼女はシェラ。前公の暗部から来ているみたいね。公がいるのだから、普通に公の部隊だと思っていたのだけど、違うと言われて正直驚いているわ」
「……前公か。たいがいタヌキだよな。公の位もさっさと渡したかと思ったけど……そういうところで関わってくるのか」
シェラを見ながら、なるほどと呟いている。
「それで、今度はどうするの?」
「レンジとシェラはこれから、子どもたちの護衛に勤めてもらう。お互いいろいろと柵があるようだから、そこは大人のとしての節度を持ってくれると嬉しいわね」
「レンジはともかく、シェラか。よろしく頼む」
シェラに対して差し出した手を握ろうかどうしようかと悩んでいるので、私はおせっかいをやくことにした。
「握手くらいしてあげなさい。それで、円滑になるのなら、敵とですら手をくむこともあるし、ウィルは信頼にあたいする人物よ」
「主様がそうおっしゃるのなら」
「えぇ、大丈夫。それより、ディルからの手紙に結婚の話が出ていなかったかしら?」
「出てるんじゃない?最近、公都は結婚式が続いているだとか。ダリアのために作ったウェディングドレスが好評なんだって」
「……どこでそんな情報を仕入れてくるのか驚き」
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