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初めまして
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重い空気がスッと広がる。レンジほどではないが、暗い場所を歩いてきたもの特有の重さを感じて、私はレンジの後ろに視線をやる。もちろんレンジの首にはキラッと光るものがあてがわれていた。
「主、これ……冷たいからどけてくれるよう言ってくれる?」
「……暢気なものね?そのまま喉を掻ききられても不思議ではないと思うんだけど?」
「あっ、やっぱりそう?」
笑うレンジを呆れて見ているとネコのように瞳が大きく開いた。メイド服の彼女は、初めて見る。
「お初にお目にかかります」
涼やかな声の主を見れば、切れ長のやや冷たそうな美人だった。
……社交界にいたら、さぞかし騒がれていたでしょうね。
その美人があてがっているナイフをどけるように視線で指示を出すと、レンジの首元から遠ざかっていく。
「ふぅ……生きた心地だね。まぁ、まだ、背中にはバリバリの緊張感が伝わってくるけど」「その位置なら、心臓一突きってところかしら?」
「まぁ、そうならないだろうけどね」
自信ありげにレンジは笑うが、メイド服の彼女は不満そうに見下していた。何か言いたげなので、言えばいいのにと後押しをする。
「あなたの心臓なら確実に仕留められますよ?」
「へぇー試してみる?」
「いいですよ。やってみましょう!」
お互いどういうわけか挑発しあうのだが……待って。ここで人を殺してほしくない。今は血なまぐさいのは勘弁してほしいのだがと二人に厳しい視線を送れば、それ以上の動きはない。
「さて、私はあなたの名前を知らないわ。教えてくれる?」
「名前はありません。番号なら……18番と」
「……番号呼びか。俺にも身に覚えがあるが、任務で死ぬかもしれない者には、名をつけないと聞いたことがある。よほど公爵家か公の暗部の闇の濃い場所で生きているんだな」
ぎろりと睨まれるレンジに、口を紡ぐように言えば頷いた。さっきは軽口を叩いてはいても命は大切らしい。その意見には賛成なので、一時的にも守ることにする。
「名前がないのね。私も知らないことだってことね。ディルは知っているかしら?」
「はい。ディル様は先代より引き継いでいるので知っているかと」
「先代……義父のこと?それとも……」
「前公でございます。私はディル様の配下ではございません」
「ディル以外にも耳があったということか。あなたたちは表にはでないからこそ、ディルの忠誠が私にはちょうどよかったのよね。さてと……レンジの話に戻しましょうか」
私は二人を見た。同格か18番と名乗るメイドの方がやや上位だろう。ヒーナにいたっては、レンジのいきにいるかは不明だが、ジョージアの守りにはちょうどいい。
「どうなさるおつもりですか?」
「どうもこうも、領地に入った限りは、馬車馬のように働いてもらうわ。私はあなたたちをを使える立場ではないのよね?」
「俺は、少し前に主と決めたからいつでもいいぜ?」
「……軽い忠誠はこの形態の毒になるからいらないわ。そうすと、殺処分になるけど……受け入れた住民たちの様子を見てほしいわ。どうかしら?」
「もちろん、主が望むなら何なりと」
「ということは、あなたのほうね。わざわざ、このためだけにこんな辺鄙な場所まで?」
「私たちの主は王です。王が主ですから。それにしても今は誰が王であるかわかりませんね。
「おもしろそうですね、お受けいたします」
私は座っている茶宅に手を伸ばしていのがわかる。なんとなく、思い描いているような出来事になってないけど……幸い死者は出ていないはずだ。
「次からはお互いを監視役にして、子どもたちを守ればいいと思うよ?」
私は頷き、ディルの教育について、今晩話合うといいよと二人に伝える。それぞれの部屋に戻すように促した。失敗した模擬試験はなるほど……勉強になった。
「主、これ……冷たいからどけてくれるよう言ってくれる?」
「……暢気なものね?そのまま喉を掻ききられても不思議ではないと思うんだけど?」
「あっ、やっぱりそう?」
笑うレンジを呆れて見ているとネコのように瞳が大きく開いた。メイド服の彼女は、初めて見る。
「お初にお目にかかります」
涼やかな声の主を見れば、切れ長のやや冷たそうな美人だった。
……社交界にいたら、さぞかし騒がれていたでしょうね。
その美人があてがっているナイフをどけるように視線で指示を出すと、レンジの首元から遠ざかっていく。
「ふぅ……生きた心地だね。まぁ、まだ、背中にはバリバリの緊張感が伝わってくるけど」「その位置なら、心臓一突きってところかしら?」
「まぁ、そうならないだろうけどね」
自信ありげにレンジは笑うが、メイド服の彼女は不満そうに見下していた。何か言いたげなので、言えばいいのにと後押しをする。
「あなたの心臓なら確実に仕留められますよ?」
「へぇー試してみる?」
「いいですよ。やってみましょう!」
お互いどういうわけか挑発しあうのだが……待って。ここで人を殺してほしくない。今は血なまぐさいのは勘弁してほしいのだがと二人に厳しい視線を送れば、それ以上の動きはない。
「さて、私はあなたの名前を知らないわ。教えてくれる?」
「名前はありません。番号なら……18番と」
「……番号呼びか。俺にも身に覚えがあるが、任務で死ぬかもしれない者には、名をつけないと聞いたことがある。よほど公爵家か公の暗部の闇の濃い場所で生きているんだな」
ぎろりと睨まれるレンジに、口を紡ぐように言えば頷いた。さっきは軽口を叩いてはいても命は大切らしい。その意見には賛成なので、一時的にも守ることにする。
「名前がないのね。私も知らないことだってことね。ディルは知っているかしら?」
「はい。ディル様は先代より引き継いでいるので知っているかと」
「先代……義父のこと?それとも……」
「前公でございます。私はディル様の配下ではございません」
「ディル以外にも耳があったということか。あなたたちは表にはでないからこそ、ディルの忠誠が私にはちょうどよかったのよね。さてと……レンジの話に戻しましょうか」
私は二人を見た。同格か18番と名乗るメイドの方がやや上位だろう。ヒーナにいたっては、レンジのいきにいるかは不明だが、ジョージアの守りにはちょうどいい。
「どうなさるおつもりですか?」
「どうもこうも、領地に入った限りは、馬車馬のように働いてもらうわ。私はあなたたちをを使える立場ではないのよね?」
「俺は、少し前に主と決めたからいつでもいいぜ?」
「……軽い忠誠はこの形態の毒になるからいらないわ。そうすと、殺処分になるけど……受け入れた住民たちの様子を見てほしいわ。どうかしら?」
「もちろん、主が望むなら何なりと」
「ということは、あなたのほうね。わざわざ、このためだけにこんな辺鄙な場所まで?」
「私たちの主は王です。王が主ですから。それにしても今は誰が王であるかわかりませんね。
「おもしろそうですね、お受けいたします」
私は座っている茶宅に手を伸ばしていのがわかる。なんとなく、思い描いているような出来事になってないけど……幸い死者は出ていないはずだ。
「次からはお互いを監視役にして、子どもたちを守ればいいと思うよ?」
私は頷き、ディルの教育について、今晩話合うといいよと二人に伝える。それぞれの部屋に戻すように促した。失敗した模擬試験はなるほど……勉強になった。
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