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領地初の大規模お茶会Ⅳ
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「サーラー子爵、トライド男爵」
「アンナリーゼ様、このたびはご招待いただきありがとうございました」
「いいえ、1度はサーラー夫妻にもトライド夫妻にもアンバー領を見ていただきたいと思っていたので、こんな機会に恵まれたこと、こちらが嬉しく思っていますわ」
「とんでもありません!愚息がいつも迷惑をかけていないか、気が気ではありませんでしたから」
チラリとウィルのほうを見ているサーラー子爵にニコリと笑いかける。私が迷惑をかけることがあっても、ウィルにかけられたことなんてない。もちろん、セバスもだ。
「いつも言ってますが、ウィルにもセバスにも迷惑をかけられたことなど1度もありませんよ。私の考えを先読みし、対処してくれるのがあの二人ですから。この領地改革もあの二人がいなければ、これ程早く軌道にのることはなかったでしょう」
「そういっていただけると、本当に嬉しいのですが」
「いつも、私たちも気にかけているのです。学園へ向かうまでのあの子は乱暴者で、喧嘩をしない日はなかったくらいで……」
「ウィルはそんな方ではないですよ。サーラー夫人。勉強熱心で私や娘の護衛のことをよく考えてくれています。今は、領地の警備隊の訓練も指揮を取ってくれていますし、警備隊にも近衛にも好かれています」
「本当ですか?本人からチラと話は聞くのですが、信じられなくて……子どもたちもとてもウィルを慕ってくれているので。子どもの変化に私が付いていけていなくて……」
照れたような申し訳なさそうなサーラー夫人の隣でトライド夫人も頷いている。きっとセバスの変化にも付いていけていないのだろう。
「サーラー様のところばかりではありませんわ。甘えん坊な上に神経質なあの子が、今では自身の力で爵位を頂き、それだけではなく、あんなに素敵な夫人を見つけてくるのですもの。話を聞いたとき、気絶してしまいましたのよ」
「あら、トライド夫人もですか?子どもたちの成長には驚かされますね」
「えぇ、もちろんです。ただ、私が思うに、アンナリーゼ様との出会いこそがあの子にとっての変化だったのだろうと思います。学園に入ったころは、実家に帰ってきてもつまらなさそうでしたもの」
「うちは、初めて帰ってきたときにはすでにアンナリーゼ様の話題ばかりでしたわ!」
「……私のですか?」
ウィルが話す私って……聞くのが怖いな。
そんなことを思っているとは知らないサーラー夫人は続ける。あの日のことだろう。
「自己防衛の授業でしたか?そのときに初めてアンナリーゼ様と手合わせしたと覚えています」
「……えぇ、そうでしたね。確かに、手加減なしで、ウィルをぶん投げてしまったような……」
あはは……と空笑いすると、サーラー夫人は優しく微笑んだ。次に何を言われるのか怯える私とは別に、会話を楽しんでいるようだ。
「それが良かったのでしょうね。いつか、必ず負かす!と意気込んでは負けてくる。高くなっていた鼻も学生のうちにぽっきりとおっていただいたおかげで、今があるのだと思います。私、アンナリーゼ様のお話を聞いたとき、侯爵家へ婿養子になるのかと、実はいらぬ心配もしましたよ。本人に聞いたら、あっけらかんと、アンナリーゼ様と結婚なんて嘘でも辞めてと言われたときは、どんな方かと思いました」
「……お恥ずかしいかぎりで、すみません。でも、これだけは言わせてくださいね。もし、戦場や争い事が起こったとき、私の背中を任せられるのはウィル以外いません。それくらい、私にとって大切な友人です。近衛という仕事は危険と隣り合わせです。いつも何事もないようにと祈っているのですよ」
ありがとうございますとサーラー夫妻が私に頭を下げる。その隣で、話したそうにしているトライド夫人にも話を振る。
「うちの子は、アンナリーゼ様の役に立っていますか?」
「もちろんです。私の足りないところいつも補ってくれています。領地改革では、先頭に立って、いろいろな事業を起こしてくれています。アンバー領はセバスにとって、次に繋がる場所だと思っています。将来は国の顔と言ってもいいんじゃないかと。私はそんなふうに思っていますよ」
「それはいくら何でも買い被りすぎです。セバスチャンにそこまでの力が……」
「あると思いますよ。常勝将軍を退けたのはセバスですし、この間のエルドアとの会談もセバスが纏めました。少しずつ大きなことをしています。この国にセバスチャン・トライドありと知れ渡るのもそう遠くはないと考えていますよ」
トライド夫妻に話をすると、まさかというふうではあったが、嬉しそうであった。実際、ウィルはあの若さで他国にも名が知れ渡っている。エルドアとの会談も秘密と言いつつ、みなが注目していたのだ。
最低でもトワイス国にいる兄やハリー、殿下は評価しているに違いない。そんな話をすれば、ますます嬉しそうにしているトライド夫妻に、あとでセバスとダリアにも声をかけてあげてくださいねとお願いしておいた。
「アンナリーゼ様、このたびはご招待いただきありがとうございました」
「いいえ、1度はサーラー夫妻にもトライド夫妻にもアンバー領を見ていただきたいと思っていたので、こんな機会に恵まれたこと、こちらが嬉しく思っていますわ」
「とんでもありません!愚息がいつも迷惑をかけていないか、気が気ではありませんでしたから」
チラリとウィルのほうを見ているサーラー子爵にニコリと笑いかける。私が迷惑をかけることがあっても、ウィルにかけられたことなんてない。もちろん、セバスもだ。
「いつも言ってますが、ウィルにもセバスにも迷惑をかけられたことなど1度もありませんよ。私の考えを先読みし、対処してくれるのがあの二人ですから。この領地改革もあの二人がいなければ、これ程早く軌道にのることはなかったでしょう」
「そういっていただけると、本当に嬉しいのですが」
「いつも、私たちも気にかけているのです。学園へ向かうまでのあの子は乱暴者で、喧嘩をしない日はなかったくらいで……」
「ウィルはそんな方ではないですよ。サーラー夫人。勉強熱心で私や娘の護衛のことをよく考えてくれています。今は、領地の警備隊の訓練も指揮を取ってくれていますし、警備隊にも近衛にも好かれています」
「本当ですか?本人からチラと話は聞くのですが、信じられなくて……子どもたちもとてもウィルを慕ってくれているので。子どもの変化に私が付いていけていなくて……」
照れたような申し訳なさそうなサーラー夫人の隣でトライド夫人も頷いている。きっとセバスの変化にも付いていけていないのだろう。
「サーラー様のところばかりではありませんわ。甘えん坊な上に神経質なあの子が、今では自身の力で爵位を頂き、それだけではなく、あんなに素敵な夫人を見つけてくるのですもの。話を聞いたとき、気絶してしまいましたのよ」
「あら、トライド夫人もですか?子どもたちの成長には驚かされますね」
「えぇ、もちろんです。ただ、私が思うに、アンナリーゼ様との出会いこそがあの子にとっての変化だったのだろうと思います。学園に入ったころは、実家に帰ってきてもつまらなさそうでしたもの」
「うちは、初めて帰ってきたときにはすでにアンナリーゼ様の話題ばかりでしたわ!」
「……私のですか?」
ウィルが話す私って……聞くのが怖いな。
そんなことを思っているとは知らないサーラー夫人は続ける。あの日のことだろう。
「自己防衛の授業でしたか?そのときに初めてアンナリーゼ様と手合わせしたと覚えています」
「……えぇ、そうでしたね。確かに、手加減なしで、ウィルをぶん投げてしまったような……」
あはは……と空笑いすると、サーラー夫人は優しく微笑んだ。次に何を言われるのか怯える私とは別に、会話を楽しんでいるようだ。
「それが良かったのでしょうね。いつか、必ず負かす!と意気込んでは負けてくる。高くなっていた鼻も学生のうちにぽっきりとおっていただいたおかげで、今があるのだと思います。私、アンナリーゼ様のお話を聞いたとき、侯爵家へ婿養子になるのかと、実はいらぬ心配もしましたよ。本人に聞いたら、あっけらかんと、アンナリーゼ様と結婚なんて嘘でも辞めてと言われたときは、どんな方かと思いました」
「……お恥ずかしいかぎりで、すみません。でも、これだけは言わせてくださいね。もし、戦場や争い事が起こったとき、私の背中を任せられるのはウィル以外いません。それくらい、私にとって大切な友人です。近衛という仕事は危険と隣り合わせです。いつも何事もないようにと祈っているのですよ」
ありがとうございますとサーラー夫妻が私に頭を下げる。その隣で、話したそうにしているトライド夫人にも話を振る。
「うちの子は、アンナリーゼ様の役に立っていますか?」
「もちろんです。私の足りないところいつも補ってくれています。領地改革では、先頭に立って、いろいろな事業を起こしてくれています。アンバー領はセバスにとって、次に繋がる場所だと思っています。将来は国の顔と言ってもいいんじゃないかと。私はそんなふうに思っていますよ」
「それはいくら何でも買い被りすぎです。セバスチャンにそこまでの力が……」
「あると思いますよ。常勝将軍を退けたのはセバスですし、この間のエルドアとの会談もセバスが纏めました。少しずつ大きなことをしています。この国にセバスチャン・トライドありと知れ渡るのもそう遠くはないと考えていますよ」
トライド夫妻に話をすると、まさかというふうではあったが、嬉しそうであった。実際、ウィルはあの若さで他国にも名が知れ渡っている。エルドアとの会談も秘密と言いつつ、みなが注目していたのだ。
最低でもトワイス国にいる兄やハリー、殿下は評価しているに違いない。そんな話をすれば、ますます嬉しそうにしているトライド夫妻に、あとでセバスとダリアにも声をかけてあげてくださいねとお願いしておいた。
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