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領地初の大規模お茶会Ⅲ
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「あの……アンナ様、旦那様?」
デリアの声にハッとなり、私たちは離れた。遠くのほうでウィルやセバスが首を横に振っていたが、それも見慣れた風景だ。
「そういえば、ナタリーとダリアはまだなの?」
「もうそろそろだと思います。ナタリー様はあちらのテーブルでよろしかったのですか?」
「えぇ、志願したのですから……それに、ナタリーには侍女ではなく……」
察しがついたのか、デリアが頷いた。ライズが執事としてつくことになっているのだ。一応、アンバー公爵家預かりではあるのだが、インゼロ帝国元皇太子がまさか子爵令嬢のお付きをしているなんて、夢にも思わないだろう。
「ヒーナもそろそろ来るかしら?」
「準備は終わっています。そういえば、会わせていいのですか?」
「ヒーナとライズ?特に問題はないわよ。二人ともアンバー預かりだもの」
そこに「遅くなりました」とヒーナが慌ててやってくる。アデルも一緒に来た。
「噂をしていたのよ。今日は私の後ろについてちょうだい。アデルはジョージア様の後ろに」
「かしこまりました」
「ジョージア様のお守りは私でいいのですか?ヒーナのほうがいいのでは?」
「一応体面を考えると、これが1番いいのよね。別にジョージア様の第二夫人とか妾と言われても全然構わないのだけどね。むしろ、ヒーナの背中には私がいるのだから」
「確かに。ヒーナの背中を見ると……身構えますね」
ヒーナの背中に彫られている図柄はとても綺麗に私と蜂たちが描かれている。公言はしていないが、その背中の意味を知る人は知っている。かの皇帝のものだと闇組織の中では言われているが、私が所有権を得ていた。寵愛を受けているとまで言われることあるが、返すつもりはない。
「それじゃあ、ヒーナがジョージア様を、アデルが私を守ってくれればいいわ。あとは外を警備隊で固めて。受付はデリア、お願い出来るしら?」
「それでは、私がアンナ様のお世話ができません!」
「いいわ。私のところは気にしなくて。私も招待客のところを回る予定だし」
私は花茶の用意をしてもらい、それをついで回ることにしている。
「普通、アンナ様は挨拶される側なのですけどね?」
「いいじゃない。そうやって挨拶周りをしてたくさんの招待客と話がしたいのよ」
「いつも思っているのですけど、どうして貴族の慣習と違うことをされるのですか?」
「貴族の慣習がすべていいものだとは思わないから。それに、この花茶はみんなに見てほしいもの。私がついで回れば、嫌とはいわないでしょ?」
「……確かに。今回のお茶会の本当のお客様は隣国のバニッシュ夫妻ですよね?」
「そうね。エールたちとはお茶会が終わった後、別室でも話をするから、そちらも整えてくれるとありがたいわ」
かしこまりましたとメイドに指示を出すデリアに任せた。私はそのまま会場を歩く。準備が整っているかの確認をしていく。デリアの準備の采配は見事で、ひとつも口出しをしなくてはいけないことなんてなかった。
「さすがね……デリアが来てくれて助かったわ」
育児休業からの復帰早々の行事続きにも文句ひとつなく整えてくれた手腕には頭が下がる思いだ。
会場を1周見終わったとき、来客を告げるベルがなる。出迎えに行くために、私は薔薇のアーチが作ってある出入り口へと足早にむかった。
「アンナリーゼ様、お久しぶりです」
「ミネルバも元気そうね?」
「おかげさまで!あの人のおかげで、年も取らないくらい元気でいられますわ」
エールの妻でバニッシュ夫人であるミネルバが少々嫌味を言っている。きっと隣にいる夫に向けての抗議が籠っていたのだろう。私にもわかるように、苦労しているのだと微笑んだ。
「夫婦といえど、元は他人ですから……その全てまではわかりませんわ。私もジョージア様の心を何一つ取りこぼさずさするのは無理です」
「本当……いいことならまだしも、うちのものたちはどうしてここまで手をやかせるのでしょうかね」
全くだと頷くと、肩身の狭い思いをしたのか、ジョージアとエールはお手上げですね?というふうに、潔く小言を聞く権利を与えられたと思っているようだ。私はメイドにバニッシュ夫妻を案内してもらい、次の招待客に注意事項の話をした。
デリアの声にハッとなり、私たちは離れた。遠くのほうでウィルやセバスが首を横に振っていたが、それも見慣れた風景だ。
「そういえば、ナタリーとダリアはまだなの?」
「もうそろそろだと思います。ナタリー様はあちらのテーブルでよろしかったのですか?」
「えぇ、志願したのですから……それに、ナタリーには侍女ではなく……」
察しがついたのか、デリアが頷いた。ライズが執事としてつくことになっているのだ。一応、アンバー公爵家預かりではあるのだが、インゼロ帝国元皇太子がまさか子爵令嬢のお付きをしているなんて、夢にも思わないだろう。
「ヒーナもそろそろ来るかしら?」
「準備は終わっています。そういえば、会わせていいのですか?」
「ヒーナとライズ?特に問題はないわよ。二人ともアンバー預かりだもの」
そこに「遅くなりました」とヒーナが慌ててやってくる。アデルも一緒に来た。
「噂をしていたのよ。今日は私の後ろについてちょうだい。アデルはジョージア様の後ろに」
「かしこまりました」
「ジョージア様のお守りは私でいいのですか?ヒーナのほうがいいのでは?」
「一応体面を考えると、これが1番いいのよね。別にジョージア様の第二夫人とか妾と言われても全然構わないのだけどね。むしろ、ヒーナの背中には私がいるのだから」
「確かに。ヒーナの背中を見ると……身構えますね」
ヒーナの背中に彫られている図柄はとても綺麗に私と蜂たちが描かれている。公言はしていないが、その背中の意味を知る人は知っている。かの皇帝のものだと闇組織の中では言われているが、私が所有権を得ていた。寵愛を受けているとまで言われることあるが、返すつもりはない。
「それじゃあ、ヒーナがジョージア様を、アデルが私を守ってくれればいいわ。あとは外を警備隊で固めて。受付はデリア、お願い出来るしら?」
「それでは、私がアンナ様のお世話ができません!」
「いいわ。私のところは気にしなくて。私も招待客のところを回る予定だし」
私は花茶の用意をしてもらい、それをついで回ることにしている。
「普通、アンナ様は挨拶される側なのですけどね?」
「いいじゃない。そうやって挨拶周りをしてたくさんの招待客と話がしたいのよ」
「いつも思っているのですけど、どうして貴族の慣習と違うことをされるのですか?」
「貴族の慣習がすべていいものだとは思わないから。それに、この花茶はみんなに見てほしいもの。私がついで回れば、嫌とはいわないでしょ?」
「……確かに。今回のお茶会の本当のお客様は隣国のバニッシュ夫妻ですよね?」
「そうね。エールたちとはお茶会が終わった後、別室でも話をするから、そちらも整えてくれるとありがたいわ」
かしこまりましたとメイドに指示を出すデリアに任せた。私はそのまま会場を歩く。準備が整っているかの確認をしていく。デリアの準備の采配は見事で、ひとつも口出しをしなくてはいけないことなんてなかった。
「さすがね……デリアが来てくれて助かったわ」
育児休業からの復帰早々の行事続きにも文句ひとつなく整えてくれた手腕には頭が下がる思いだ。
会場を1周見終わったとき、来客を告げるベルがなる。出迎えに行くために、私は薔薇のアーチが作ってある出入り口へと足早にむかった。
「アンナリーゼ様、お久しぶりです」
「ミネルバも元気そうね?」
「おかげさまで!あの人のおかげで、年も取らないくらい元気でいられますわ」
エールの妻でバニッシュ夫人であるミネルバが少々嫌味を言っている。きっと隣にいる夫に向けての抗議が籠っていたのだろう。私にもわかるように、苦労しているのだと微笑んだ。
「夫婦といえど、元は他人ですから……その全てまではわかりませんわ。私もジョージア様の心を何一つ取りこぼさずさするのは無理です」
「本当……いいことならまだしも、うちのものたちはどうしてここまで手をやかせるのでしょうかね」
全くだと頷くと、肩身の狭い思いをしたのか、ジョージアとエールはお手上げですね?というふうに、潔く小言を聞く権利を与えられたと思っているようだ。私はメイドにバニッシュ夫妻を案内してもらい、次の招待客に注意事項の話をした。
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