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おいしいシチュー
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私たちが弓の練習をしているところへデリアが呼びに来てくれる。
「アンナ様、お食事の用意が出来ました」
「ありがとう。じゃあ、最後の1本ね!」
そう言ってレオに促すと、馬を走らせる。ここ数本のうち、コツを教えたので馬上での安定感が出たうえに早さもある。弓を構える姿も様になっていて、とてもいい傾向だ。そんな様子を見ていたデリアが私もいいですか?と申し出てくる。レナンテは人を選ぶので、ウィルが馬から降りて弓もデリアに渡す。ありがとうございますと言いながら、ふわりと馬の上に乗った。そのあと、少し馬を撫で、号令と共に馬が駆け始めた。弓をぎゅぅーっと弾いている。5枚の立札に当てれば命中であった。一射目から驚く結果が待っていた。
ウィルでさえ手こずった一射目から、ずどんとど真ん中に弓が刺さっていく。その次も、そのまた次も。5射で終わりなのだが、その全てに命中……ど真ん中命中をさせている。
「デリア、やるじゃん!」
「いえ、たまたまです」
「デリアすごいね!」
レオは自身が出来なかったことをやすやすとやってのけたデリアに尊敬の眼差しで見ていた。これにはウィルも驚いているようで、私のことをチラチラと見てくる。
「気になる?勝負の行方」
「もちろん。それにしたって、姫さんもデリアも全弾命中って……怖いんだけど」
「怖いって失礼だと思いますよ!」
珍しくデリアが割って入ってくるので対応をお願いすることにした。訓練に関しては言え、デリアの目はさっきまでしていたことを薄々は気が付いていた。
「シチューを食べてからもう一度見に来ませんか?お腹も空いているでしょうし」
「デリアのシチュ―、楽しみにしているわ」
私たちは訓練場を後にして、山小屋のほうへ移動した。待ち時間で、訓練をしていたのだが、なかなか有意義な時間の使い方であったように思う。お腹も山小屋から漏れてくる香りで、さらにペコペコだ。
小屋に入れば、用意された3つのシチュー。よそったばかりで、もくもくと湯気が出ている。
「いい香りね!とてもお腹が空くわ!」
「美味しそうですね!」
それぞれ好きな場所の食卓につき、温かいシチューをいただく。とても美味しくて頬が落ちるようであった。
「これはアンナ様が仕留めた鹿肉ですか?」
「そう、レオが捌いた鹿肉よ。しっかり煮込んでくれてあるから、身が柔らかく美味しいわね!」
「僕にもあんな鹿を仕留めることができるでしょうか?」
「そうね、このまま訓練を重ねていけば、きっと、それも可能よ。レオは剣術や体術だけでなく、弓術も身につけるの?」
「できることなら、いろいろとできるようになりたいです。目標とするのは、父様ですから」
「そこはさ、俺じゃなくてアンナ様でいいんじゃない?デリア、おかわりある?」
お皿をデリアの方へ差し出して聞いている。余程、美味しいのだろう。デリアも皿を受け取り、おかわりをよそいに向かう。
「アンナ様とレオ様はいかがですか?」
「僕はもう少し欲しいです!」
「私ももう少しだけ」
二人でお皿を渡すとお待ちくださいとキッチンへと向かう。三人分のシチューを持って戻ってきたデリアにお礼を言い受け取る。
「デリアも食べなさい」
「いえ、私はみなさまがもう一狩り行かれてから食べます。私の分も残しておいてくださいね?」
絶賛されたデリアのシチューはウィルが三杯目を食べたところで、残りはデリアの分!ともう一杯貰おうとしているウィルをとめに入った。
「よほど、気に入ったんだね?」
「あぁ、美味かった!」
ウィルはお腹をさすっていた。私もウィルに倣ってお腹をさすった。どうやら、デリアのシチューは好評のうちに鍋が空になったようだった。
ごちそうさまと声をかけ、外へとまた出かける。さっきの順位を決めなくてはいけないので、三人で訓練場へと向かった。
「アンナ様、お食事の用意が出来ました」
「ありがとう。じゃあ、最後の1本ね!」
そう言ってレオに促すと、馬を走らせる。ここ数本のうち、コツを教えたので馬上での安定感が出たうえに早さもある。弓を構える姿も様になっていて、とてもいい傾向だ。そんな様子を見ていたデリアが私もいいですか?と申し出てくる。レナンテは人を選ぶので、ウィルが馬から降りて弓もデリアに渡す。ありがとうございますと言いながら、ふわりと馬の上に乗った。そのあと、少し馬を撫で、号令と共に馬が駆け始めた。弓をぎゅぅーっと弾いている。5枚の立札に当てれば命中であった。一射目から驚く結果が待っていた。
ウィルでさえ手こずった一射目から、ずどんとど真ん中に弓が刺さっていく。その次も、そのまた次も。5射で終わりなのだが、その全てに命中……ど真ん中命中をさせている。
「デリア、やるじゃん!」
「いえ、たまたまです」
「デリアすごいね!」
レオは自身が出来なかったことをやすやすとやってのけたデリアに尊敬の眼差しで見ていた。これにはウィルも驚いているようで、私のことをチラチラと見てくる。
「気になる?勝負の行方」
「もちろん。それにしたって、姫さんもデリアも全弾命中って……怖いんだけど」
「怖いって失礼だと思いますよ!」
珍しくデリアが割って入ってくるので対応をお願いすることにした。訓練に関しては言え、デリアの目はさっきまでしていたことを薄々は気が付いていた。
「シチューを食べてからもう一度見に来ませんか?お腹も空いているでしょうし」
「デリアのシチュ―、楽しみにしているわ」
私たちは訓練場を後にして、山小屋のほうへ移動した。待ち時間で、訓練をしていたのだが、なかなか有意義な時間の使い方であったように思う。お腹も山小屋から漏れてくる香りで、さらにペコペコだ。
小屋に入れば、用意された3つのシチュー。よそったばかりで、もくもくと湯気が出ている。
「いい香りね!とてもお腹が空くわ!」
「美味しそうですね!」
それぞれ好きな場所の食卓につき、温かいシチューをいただく。とても美味しくて頬が落ちるようであった。
「これはアンナ様が仕留めた鹿肉ですか?」
「そう、レオが捌いた鹿肉よ。しっかり煮込んでくれてあるから、身が柔らかく美味しいわね!」
「僕にもあんな鹿を仕留めることができるでしょうか?」
「そうね、このまま訓練を重ねていけば、きっと、それも可能よ。レオは剣術や体術だけでなく、弓術も身につけるの?」
「できることなら、いろいろとできるようになりたいです。目標とするのは、父様ですから」
「そこはさ、俺じゃなくてアンナ様でいいんじゃない?デリア、おかわりある?」
お皿をデリアの方へ差し出して聞いている。余程、美味しいのだろう。デリアも皿を受け取り、おかわりをよそいに向かう。
「アンナ様とレオ様はいかがですか?」
「僕はもう少し欲しいです!」
「私ももう少しだけ」
二人でお皿を渡すとお待ちくださいとキッチンへと向かう。三人分のシチューを持って戻ってきたデリアにお礼を言い受け取る。
「デリアも食べなさい」
「いえ、私はみなさまがもう一狩り行かれてから食べます。私の分も残しておいてくださいね?」
絶賛されたデリアのシチューはウィルが三杯目を食べたところで、残りはデリアの分!ともう一杯貰おうとしているウィルをとめに入った。
「よほど、気に入ったんだね?」
「あぁ、美味かった!」
ウィルはお腹をさすっていた。私もウィルに倣ってお腹をさすった。どうやら、デリアのシチューは好評のうちに鍋が空になったようだった。
ごちそうさまと声をかけ、外へとまた出かける。さっきの順位を決めなくてはいけないので、三人で訓練場へと向かった。
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