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人質の話
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「よくこんな場所を見つけたね?」
「私じゃなくて、代々アンバー公爵家の筆頭執事には子猫たちの教育も業務の一環なんだって」
「あぁ、なんか屋敷に行ったとき、執事でもいいんじゃない?っていう人いるけど、武術系統も強くないとなれない感じ?」
「そうね。そうなるわ。元々王様の側にいる筆頭執事の家系が公爵家の執事になることは決まっているから」
「なんでですか?」
疑問に思ったのはウィルではなくレオのほうだった。ウィルはなんとなく理由をわかっているのだろう。
「監視役も含まれているから」
「監視役?」
「そう。公爵家は傍系でもあるから。特にアンバー公爵家とゴールド公爵家は創立時の公の妹の家系だからね」
「よからぬことを考えていないかという監視ってわけだ」
「うちはともかく、ゴールド公爵家は本当にわからないらしいわ。今、ディルの兄弟が向こうに行っているけど、懐柔されているって話もあるくらいよ」
「懐柔ね。人質とか取っているんでしょ?当たり前のように」
私は頷くと、ウィルがあれ?と何かに気が付いたようだ。こちらからは言わず、ウィルの考えていることを促した。
「デリアがこっちに来ているのって……」
「ウィルって勘がいいのよね。デリアの前では言わないでね?」
「知らないの?」
「知っているとは思うわ」
「じゃあ、何故?」
「貴族ではよくあることではあるけど……まだ、なんて声をかけたらいいのかわからないの。1歳の誕生日に公宮の中にあるディルの実家に取られるのよ」
「それって……デリアさんの子ですか?」
レオも理解したのか驚いていた。
デリアとディルの子は1歳の誕生日と共に公宮にあるディルの実家に預けられる。いわゆる人質として。二人は子を愛しんでいたからこそ、胸を痛めいているだろう。この忌々しい慣習に。私は公になんとかならないのかと言ってみたものの、こればかりは形だけとしてもなくすわけにはいかないと言われた。公爵家の内情を掴んで置かなければ、いつ反旗を翻されるかわからないからと言うのがあるだろう。『ハニーローズ』という絶対的な公と相対できる存在が生まれるアンバー公爵家と公国の中で絶大な力を握っているゴールド公爵家が、いつ、公の首を挿げ替える算段をするのか気が気でないことが窺える。
私自身が公の後ろ盾だと公言したとしても、腹の中はわからない。今は公都にすらおらず、何をしているかすらわからない公やその周りからしたら不気味な存在だろう。アンバー公爵家からは公国内随一の領地にするといきました手前、公の首を挿げ替えるなんて興味もないのだが、公や宰相以外は、私の一挙手一投足が気になっているところだ。ディルも幸い報告をしないといけない義務はあるものの、公に興味がない私やジョージアの報告は気楽なものだろう。
「人質と言っても大切に育ててもらえるから大丈夫よ。5歳から10歳になるくらいから、厳しい教育が始まるらしいけど、それもこれも、公爵を守るためだからね」
「侍従の中も複雑なのですね?」
「複雑なのは、デリアとディルだけなんだけどね?他の子らは、平民が多いからそんな苦労はないわ。話がそれてしまったわ。早速、練習ね。ウィル、やってみる?」
そう言って進めると、大きなため息をついている。仮にも職業が近衛なのだから、全弾命中は当たり前だ。そこから、命中した場所で競うことになることは予想できる。
「姫さん先にやってみなよ。レオに見本見せたいし」
「わかったわ。ど真ん中が全部私だったとしても恨みっこなしね?」
そう言って、弓を構え、馬を走らせる。歩く速度で競っては意味がないので、レナンテに頑張って走ってもらうことにした。レナンテも軍馬なのだ。一歩目の指示をだせば、すでにいつもと同じくらいの早さで走った。
……本当に、じゃじゃ馬ね。私のゆうことなんて聞きやしないわ。
早く走るレナンテに下半身でしっかり体を固定させ、矢をつがえる。私が非力だからあまり弓はと思う近衛も多いらしい中、私は何のことなく全弾ど真ん中を射貫いていく。
ウィルがレオに指導しているようで、私の話をしているのが微かに風に乗って聞こえてくる。
「準備はもういい?」
「いいよ!レオが行く!」
「わかったわ!レオ、そんなに気負わなくていいから。朝の練習でしっかり馬をつかえているから」
「行きます!」
緊張しているのか、こちらに行きますと合図をくれると同時に不安そうな表情をしている。今日はお遊びみたいなもおんだから、そんなに気負わなくていい。
……それにしても、全然あたらないわね?
弓矢が途中で落ちていく様子を見ていた。少しも当たる気配がないことにどう声をかけたものか迷った。
そのままウィルの番だ。さすがだと感心する。
「さっすが、姫さん。全弾命中だけでなくど真ん中。姿勢も綺麗だし、手本としては最高だよ!」
素直に褒めてくれているので喜んでいると、私の服の裾を引っ張るレオ。基礎は教えてあったが、応用はできないようで悔しそうだ。
「あと4回出来るわ。心落ち着かせて。練習をすれば、レオにだってでいるようになるから」
励ましつつ、今さっきの注意点を言っていくと、レオにやる気が戻ったようで、私たちも2本目に馬を走らせたのであった。
「私じゃなくて、代々アンバー公爵家の筆頭執事には子猫たちの教育も業務の一環なんだって」
「あぁ、なんか屋敷に行ったとき、執事でもいいんじゃない?っていう人いるけど、武術系統も強くないとなれない感じ?」
「そうね。そうなるわ。元々王様の側にいる筆頭執事の家系が公爵家の執事になることは決まっているから」
「なんでですか?」
疑問に思ったのはウィルではなくレオのほうだった。ウィルはなんとなく理由をわかっているのだろう。
「監視役も含まれているから」
「監視役?」
「そう。公爵家は傍系でもあるから。特にアンバー公爵家とゴールド公爵家は創立時の公の妹の家系だからね」
「よからぬことを考えていないかという監視ってわけだ」
「うちはともかく、ゴールド公爵家は本当にわからないらしいわ。今、ディルの兄弟が向こうに行っているけど、懐柔されているって話もあるくらいよ」
「懐柔ね。人質とか取っているんでしょ?当たり前のように」
私は頷くと、ウィルがあれ?と何かに気が付いたようだ。こちらからは言わず、ウィルの考えていることを促した。
「デリアがこっちに来ているのって……」
「ウィルって勘がいいのよね。デリアの前では言わないでね?」
「知らないの?」
「知っているとは思うわ」
「じゃあ、何故?」
「貴族ではよくあることではあるけど……まだ、なんて声をかけたらいいのかわからないの。1歳の誕生日に公宮の中にあるディルの実家に取られるのよ」
「それって……デリアさんの子ですか?」
レオも理解したのか驚いていた。
デリアとディルの子は1歳の誕生日と共に公宮にあるディルの実家に預けられる。いわゆる人質として。二人は子を愛しんでいたからこそ、胸を痛めいているだろう。この忌々しい慣習に。私は公になんとかならないのかと言ってみたものの、こればかりは形だけとしてもなくすわけにはいかないと言われた。公爵家の内情を掴んで置かなければ、いつ反旗を翻されるかわからないからと言うのがあるだろう。『ハニーローズ』という絶対的な公と相対できる存在が生まれるアンバー公爵家と公国の中で絶大な力を握っているゴールド公爵家が、いつ、公の首を挿げ替える算段をするのか気が気でないことが窺える。
私自身が公の後ろ盾だと公言したとしても、腹の中はわからない。今は公都にすらおらず、何をしているかすらわからない公やその周りからしたら不気味な存在だろう。アンバー公爵家からは公国内随一の領地にするといきました手前、公の首を挿げ替えるなんて興味もないのだが、公や宰相以外は、私の一挙手一投足が気になっているところだ。ディルも幸い報告をしないといけない義務はあるものの、公に興味がない私やジョージアの報告は気楽なものだろう。
「人質と言っても大切に育ててもらえるから大丈夫よ。5歳から10歳になるくらいから、厳しい教育が始まるらしいけど、それもこれも、公爵を守るためだからね」
「侍従の中も複雑なのですね?」
「複雑なのは、デリアとディルだけなんだけどね?他の子らは、平民が多いからそんな苦労はないわ。話がそれてしまったわ。早速、練習ね。ウィル、やってみる?」
そう言って進めると、大きなため息をついている。仮にも職業が近衛なのだから、全弾命中は当たり前だ。そこから、命中した場所で競うことになることは予想できる。
「姫さん先にやってみなよ。レオに見本見せたいし」
「わかったわ。ど真ん中が全部私だったとしても恨みっこなしね?」
そう言って、弓を構え、馬を走らせる。歩く速度で競っては意味がないので、レナンテに頑張って走ってもらうことにした。レナンテも軍馬なのだ。一歩目の指示をだせば、すでにいつもと同じくらいの早さで走った。
……本当に、じゃじゃ馬ね。私のゆうことなんて聞きやしないわ。
早く走るレナンテに下半身でしっかり体を固定させ、矢をつがえる。私が非力だからあまり弓はと思う近衛も多いらしい中、私は何のことなく全弾ど真ん中を射貫いていく。
ウィルがレオに指導しているようで、私の話をしているのが微かに風に乗って聞こえてくる。
「準備はもういい?」
「いいよ!レオが行く!」
「わかったわ!レオ、そんなに気負わなくていいから。朝の練習でしっかり馬をつかえているから」
「行きます!」
緊張しているのか、こちらに行きますと合図をくれると同時に不安そうな表情をしている。今日はお遊びみたいなもおんだから、そんなに気負わなくていい。
……それにしても、全然あたらないわね?
弓矢が途中で落ちていく様子を見ていた。少しも当たる気配がないことにどう声をかけたものか迷った。
そのままウィルの番だ。さすがだと感心する。
「さっすが、姫さん。全弾命中だけでなくど真ん中。姿勢も綺麗だし、手本としては最高だよ!」
素直に褒めてくれているので喜んでいると、私の服の裾を引っ張るレオ。基礎は教えてあったが、応用はできないようで悔しそうだ。
「あと4回出来るわ。心落ち着かせて。練習をすれば、レオにだってでいるようになるから」
励ましつつ、今さっきの注意点を言っていくと、レオにやる気が戻ったようで、私たちも2本目に馬を走らせたのであった。
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