1,232 / 1,480
あやしい人物Ⅱ
しおりを挟む
『アンジェラ様たちの側にあやしい人物がいます。至急来られたし』
メモを見て、私は何事もないかのようににこやかに、されどドレスの下は足早にアンジェラの元へと向かう。先程の殺気をこちらに向けていた人物なのだろうか?
すぐにアンジェラの姿を見つけ呼びかけた。
「アンジェラ?」
「ママ?」
慌てた私を見ながら、きょとんとしている。周りを見渡すと、ジョージの姿が見当たらなかった。
「無事なのね?よかったわ」
「うん、なんともないよ?」
「ところで、ジョージはどこかしら?」
「ジョーは……今までいたのに、どこ行っちゃったのかなぁ?」
キョロキョロと見渡しているが、アンジェラも知らないうちにいなくなったようだ。子猫たちはアンジェラを最優先にしているので、ジョージのことに気が付かなかったのかもしれない。
「……アンナリーゼ様、申し訳ありません。とんだ失態を」
「今は謝罪をしている場合ではありません。私に向けられた殺気の正体がわからないのです。ジョージをすぐに探さないと。アンジェラは私が見ているので、探してちょうだい!」
「ただちに」
子猫たちは分散してジョージを探す。私も場所を移動することにした。アンジェラを抱きかかえると、少し不満そうにこちらを見下ろしてくる。
「ごめんね、せっかくの誕生日に。いますぐ部屋に戻るわ」
「ジョーを探しているの?」
「そう。どこに行ったかわかるかしら?」
うーんと唸り始めるアンジェラ。すると、ストンと眠りについてしまう。驚いて、思わず大きな声をだそうとして噤んだ。
きっと、『予知夢』を見ようと眠ったのだろう。
そっと抱きしめ、アンジェラを頼るしかない。
「アンジーは眠ったのかい?」
「えぇ、目が覚めたら、ネイトと一緒に部屋に籠るようにしてくれませんか?」
「それはいいけど……」
「ウィルにも行ってもらうから」
「わかった。部屋の護衛は任せろ」
そのとき、アンジェラが目をさました。私が覗き込むようにして話を促すと、欲しい言葉を言ってくれる。
「ジョーはお屋敷の屋上にいる」
「屋上ね!私が行ってくるわ。人物はわかる?」
「わからない。見たことないおじさん」
それだけ言うと、黙ってしまう。これだけの情報があれば、とりあえず十分だと、私は屋上へ向かって走る。
屋敷は広くても、屋上はそれほど広くない。袋小路になったとはいえ、犯人が何を目的としているかわからない以上、ジョージの元へ戻るしかない。
アンジェラが予見したとおり、屋上に繋がる扉は鍵が壊されたあとがあり、小さな子どもあやすかのように、側にいる大人は大切にしているようだ。
「ジョージ!」
私が名を呼んだだけで、帽子を目深に被った男性は慌てる様子もなく、淡々と逃げないようにジョージを捕まえているのであった。
メモを見て、私は何事もないかのようににこやかに、されどドレスの下は足早にアンジェラの元へと向かう。先程の殺気をこちらに向けていた人物なのだろうか?
すぐにアンジェラの姿を見つけ呼びかけた。
「アンジェラ?」
「ママ?」
慌てた私を見ながら、きょとんとしている。周りを見渡すと、ジョージの姿が見当たらなかった。
「無事なのね?よかったわ」
「うん、なんともないよ?」
「ところで、ジョージはどこかしら?」
「ジョーは……今までいたのに、どこ行っちゃったのかなぁ?」
キョロキョロと見渡しているが、アンジェラも知らないうちにいなくなったようだ。子猫たちはアンジェラを最優先にしているので、ジョージのことに気が付かなかったのかもしれない。
「……アンナリーゼ様、申し訳ありません。とんだ失態を」
「今は謝罪をしている場合ではありません。私に向けられた殺気の正体がわからないのです。ジョージをすぐに探さないと。アンジェラは私が見ているので、探してちょうだい!」
「ただちに」
子猫たちは分散してジョージを探す。私も場所を移動することにした。アンジェラを抱きかかえると、少し不満そうにこちらを見下ろしてくる。
「ごめんね、せっかくの誕生日に。いますぐ部屋に戻るわ」
「ジョーを探しているの?」
「そう。どこに行ったかわかるかしら?」
うーんと唸り始めるアンジェラ。すると、ストンと眠りについてしまう。驚いて、思わず大きな声をだそうとして噤んだ。
きっと、『予知夢』を見ようと眠ったのだろう。
そっと抱きしめ、アンジェラを頼るしかない。
「アンジーは眠ったのかい?」
「えぇ、目が覚めたら、ネイトと一緒に部屋に籠るようにしてくれませんか?」
「それはいいけど……」
「ウィルにも行ってもらうから」
「わかった。部屋の護衛は任せろ」
そのとき、アンジェラが目をさました。私が覗き込むようにして話を促すと、欲しい言葉を言ってくれる。
「ジョーはお屋敷の屋上にいる」
「屋上ね!私が行ってくるわ。人物はわかる?」
「わからない。見たことないおじさん」
それだけ言うと、黙ってしまう。これだけの情報があれば、とりあえず十分だと、私は屋上へ向かって走る。
屋敷は広くても、屋上はそれほど広くない。袋小路になったとはいえ、犯人が何を目的としているかわからない以上、ジョージの元へ戻るしかない。
アンジェラが予見したとおり、屋上に繋がる扉は鍵が壊されたあとがあり、小さな子どもあやすかのように、側にいる大人は大切にしているようだ。
「ジョージ!」
私が名を呼んだだけで、帽子を目深に被った男性は慌てる様子もなく、淡々と逃げないようにジョージを捕まえているのであった。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
悲恋を気取った侯爵夫人の末路
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。
順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。
悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──?
カクヨムにも公開してます。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる