ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

文字の大きさ
上 下
1,230 / 1,512

誕生日会は大成功Ⅲ

しおりを挟む
「さて、私は他を見て回ってきます。アンバー領にはたくさんおもしろいものがありますから、旦那様と一緒に行ってきますわ!」
「えぇ、楽しんで!今回は本当にたくさんお店も集まっているから」
「昨年は流行り病のせいで、規模が小さかったのですものね。楽しみにしていますわ」


 そう言ってカレンはジョージアと話し込んでいる侯爵を誘っている。その姿を見れば、本当に仲の良いことがわかる。二人と別れて、ジョージアがこちらへやってきた。


「侯爵とはどのようなお話を?」
「領地の話を聞いてきたよ。一度行ったことがあったね」
「そうですね。リンゴの木があちらこちらと……今、思い出すだけでも、領地の香りを思い出しますわ」
「領地の香りですか?」


 ナタリーはきょとんとしているので説明をすると、なるほどと頷いた。


「リンゴの季節ならリンゴのパイなど美味しかったでしょうが」
「リンゴなら、あるわよ?蜂蜜漬けではあるけど、パイを焼くくらいの量はあると思うわ」
「それって……リンゴ酒を作るためのものではないのですか?」
「そうよ。リンゴ酒のために取り寄せたものでも、痛んでいれば使えないから」
「痛んで?そんなものを食べているのですか?」
「綺麗に切り取ってね?美味しい実のところだけをいただくの。そうしてお酒で煮詰めたり、ジャムにしたりと加工品を作ったりとすれば、痛んだところはわからないわ」
「なるほど……私もずいぶんいただいた気がします」


「それはよかった」と笑っている。ナタリーも領地のことをお願いしている限りこういう話にも興味があるようだ。


「アンナリーゼ様は今回のお菓子の話はいつ考えたのですか?」
「ずいぶん前よ。食堂で甘味を食べていたとき。少しずつお菓子を食べられるといいなって」
「なるほどです。確かにたくさんのお菓子を少しずつ食べられるのは嬉しいです。結婚式もお茶会もこのようにするのですか?」
「できれば、キティにお願いしようと思っているわ」
「ドレスや装飾だけでなく、こういったお茶会にも流行らせたいことをさりげなく入れられるのは、さすがです。新たな流行になりますね」
「そうなるかしら?従来のお茶会も嫌いではないのだけど、少し主旨を変えてみて、訪れたお客が満足してもらえる会になれば嬉しいわ」
「きっと、なりますよ!いつも思いつきに驚かされます」


 少し、私も回ってきますと離れていくナタリーの少し後ろに、ライズがスッと付き従っている。その様子をジョージアと二人で見つめた。


「……俺、確か、おっかなびっくりな身分をもった人物だって聞かされていたのに、今じゃナタリーの従者だな?」
「そうですね。ライズが慕っているのですから、ナタリーも側に置くのです。最初はもっと酷かった執事もだいぶみられるようになりましたね?」
「……アンナの侍従なハズなのに、なたりがーがね?」
「いいのですよ。ナタリーにはのびのび仕事をしてもらえれば、私は満足ですわ」


 ライズの素性や諸々の事情を知っているジョージアもさすがにナタリーの従者になっていることには苦笑いをしている。


「守られる側がそれならいいよね」


 ナタリーの手伝いなら、目をキラキラさせて手伝いをしようとしている貴族がいた。ナタリーの会話を盗み聞きしているようだった。


「それにしても、貴族のお忍びらしい人が大勢いるね?」
「結婚式とお茶会効果ではないですか?珍しいものがあれば買おうと、目を皿のようにしているから、貴族ってわかりやすくていいね?」


 確かにと彼らの姿を見て、ジョージアは微笑んだ。もう少しすればセバスの結婚式がある。招待されている貴族たちが楽しんでいる様子がアンバー領への期待の大きさなのかもしれないと周りを見渡した。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

わがままな妹が何もかも奪って行きます

拓海のり
恋愛
妹に何でもかんでも持って行かれるヘレナは、妹が結婚してくれてやっと解放されたと思ったのだが金持ちの結婚相手を押し付けられて。7000字くらいのショートショートです。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

竜王の花嫁は番じゃない。

豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」 シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。 ──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

三度目の嘘つき

豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」 「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」 なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

処理中です...