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誕生日会は大成功!
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「そういえば……先程、屋敷の中で見せていただいたのですけど……」
「屋敷の中?」
「えぇ、飾り付けの花がとても素敵でしたわ。本物かと思っていたのですけど、布やレースなのですね?」
「あぁ、あれね?領民がセバスの結婚を祝って作ってくれたの。当日の楽しみにしようって言ったんだけど、ナタリーが今日お披露目したいって」
「ナタリーが?」
頷くと少し驚いた表情をしていた。
レースのテーブルクロスを作ってくれていた領地の女性たち。先日、サラおばさんたちが持ってきてくれたのだが、もう少し遠い町や村からは昨日届いた。その中には石切りの町や紅茶農園からもあった。一際目を引いたのが、布で出来た花だ。数ヶ月前、ナタリーが端切れをコーコナ領から大量に持って帰ってきたのだが、見覚えのある柄の布を使ってたくさんの花を作り、領地の屋敷を飾ったのであった。
「布の花など見たことがなくて、とても驚きましたのよ?」
「一般的には染めや刺繍が主流ですものね」
「たまに立体的な花をつけているドレスもありますが、微妙な感じではありませんか?」
「えぇ、そうね。せっかくの花が俯いているものが多い気がするわ」
「アンナ様のドレスのひとつには、確か大き目の花がありませんでしたか?」
「あるわよ!あれも相当数の失敗を重ねているわ。結果的にナタリーは成功させて私のドレスに採用したのよ。興味ある?」
「はい。是非次の流行りにいいなっと思いまして」
「なるほど、ナタリーに相談しておくわ。この夏は、カラーレースを流行らせたいみたいだから、そちらが優先になるかもしれないけど」
「カラーレースですか?」
頷くとアンジェラのドレスを見てとカレンにいうと、視線をそちらに向ける。春で少々肌寒いのでボレロを着ているが、見事なピンクの薔薇の刺繍が胸の上から肩にかけてレースになっているが見るた様だ。
「可愛らしいドレスだと思っていたのですけど……こんな場所にまで流行を取り入れているのですね?」
「流行の発信は私の務めですからね」
「確かに広告塔ですけど……それにしても、素敵なレース。これもコーコナ領で作られているのですか?」
「いいえ。アンジェラが着ている分のも私が着ているものもアンバー領の女性たちが作ってくれたものよ。それをもとにコーコナ領でも同じものを作るの。型紙はほとんどがこちらで作っているわ」
「そうなんですか?いつ見ても素敵です」
アンジェラの着ているドレスを見ながら、微笑んでいる。その隣にいるジョージにも目がいったのだろう。あら?と声が聞こえてくる。
「アンナリーゼ様」
「どうかして?」
「ジョージ様にもレースを使われているのですね?同系色だったので気付きませんでしたわ」
「すごいわね?カレンは。そうなの。男性のドレスコードにレースなんてって思われるかもしれないけど、あんなふうに使うのは素敵ではなくて?」
「たしかに。さりげなく使われていて、同系色の糸なら目立ちにくいですし……これは素敵」
「ジョージア様のジャケットにも同じ仕掛けがしてあるのよ。今年はこんなふうに男性にも流行をと考えているわ」
「男性にも流行をですか。考えたこともなかったですわ。型どおりのものばかりかと」
「そうでもないのよ?」
「そのあたりは、ナタリーのほうが勉強しているわ。今年はジョージア様やセバスに着てくれって頼んでいるのを見たから、結婚式を楽しみにしていて」
カレンは私やナタリーの友人として、セバスの結婚式に招待した。この先、ご婦人たちのお茶会に参加することも考えられるからこその顔繋ぎでもある。ダリアをアンバー領にとセバスは考えているだろうが、彼女自身がそれで収まる器ではないだろう。
「そうそう、私考えていますの。アンナ様の侍女を。屋敷内であれば、平民でも構わないと思いますが」
「社交場へ出たときの話よね?」
「えぇ、そうです。今までは、ナタリーがその役目をはたしていましたが、そろそろ手元においておく夫人を一人つけるべきだわ。私もその内の一人と自負してますが」
「もちろんよ。カレンにも頼む予定だった。来年、アンジェラが5歳になれば、社交界に戻るつもりよ」
ニッコリ笑うカレン。その笑みを見れば、長年、待っていたといわんばかりで、やっと、女主人を頂に据えられると喜んでいるようだった。
「あくまで、公妃は立てないといけなくてよ?」
「それはもちろんですけど、あの女狐がわざわざ敵陣に首を突っ込むとも思いませんわ」
「むしろこちらから、乗り込むことはあるでしょうね?」
カレンと話をしていることに気が付いたナタリーが私たちの話に入ってくる。ここ数年、貴族女性の情報収集を二人に任せていた。
「心配はいりませんよ。もう、派閥はとっくの昔に出来ていますから、あとはそれを纏める御印があればいいのです」
「私たちなりにアンナリーゼ様への手土産です。まだ、1年ありますから……もう少し、おもしろい勢力図になるよう、努力は続けていくつもりですよ。もちろん、アンジェラ様の代にまで及ぶよう、しっかりと手綱は握っていますからご安心を」
カレンとナタリーが笑うと、悪だくみをしているようで、なんとも言えない気持ちになるが、どうやら、来年の社交界復帰には苦労せずに、その座を用意してくれているようだった。優秀な二人を見て、ため息を飲み込むのであった。
「屋敷の中?」
「えぇ、飾り付けの花がとても素敵でしたわ。本物かと思っていたのですけど、布やレースなのですね?」
「あぁ、あれね?領民がセバスの結婚を祝って作ってくれたの。当日の楽しみにしようって言ったんだけど、ナタリーが今日お披露目したいって」
「ナタリーが?」
頷くと少し驚いた表情をしていた。
レースのテーブルクロスを作ってくれていた領地の女性たち。先日、サラおばさんたちが持ってきてくれたのだが、もう少し遠い町や村からは昨日届いた。その中には石切りの町や紅茶農園からもあった。一際目を引いたのが、布で出来た花だ。数ヶ月前、ナタリーが端切れをコーコナ領から大量に持って帰ってきたのだが、見覚えのある柄の布を使ってたくさんの花を作り、領地の屋敷を飾ったのであった。
「布の花など見たことがなくて、とても驚きましたのよ?」
「一般的には染めや刺繍が主流ですものね」
「たまに立体的な花をつけているドレスもありますが、微妙な感じではありませんか?」
「えぇ、そうね。せっかくの花が俯いているものが多い気がするわ」
「アンナ様のドレスのひとつには、確か大き目の花がありませんでしたか?」
「あるわよ!あれも相当数の失敗を重ねているわ。結果的にナタリーは成功させて私のドレスに採用したのよ。興味ある?」
「はい。是非次の流行りにいいなっと思いまして」
「なるほど、ナタリーに相談しておくわ。この夏は、カラーレースを流行らせたいみたいだから、そちらが優先になるかもしれないけど」
「カラーレースですか?」
頷くとアンジェラのドレスを見てとカレンにいうと、視線をそちらに向ける。春で少々肌寒いのでボレロを着ているが、見事なピンクの薔薇の刺繍が胸の上から肩にかけてレースになっているが見るた様だ。
「可愛らしいドレスだと思っていたのですけど……こんな場所にまで流行を取り入れているのですね?」
「流行の発信は私の務めですからね」
「確かに広告塔ですけど……それにしても、素敵なレース。これもコーコナ領で作られているのですか?」
「いいえ。アンジェラが着ている分のも私が着ているものもアンバー領の女性たちが作ってくれたものよ。それをもとにコーコナ領でも同じものを作るの。型紙はほとんどがこちらで作っているわ」
「そうなんですか?いつ見ても素敵です」
アンジェラの着ているドレスを見ながら、微笑んでいる。その隣にいるジョージにも目がいったのだろう。あら?と声が聞こえてくる。
「アンナリーゼ様」
「どうかして?」
「ジョージ様にもレースを使われているのですね?同系色だったので気付きませんでしたわ」
「すごいわね?カレンは。そうなの。男性のドレスコードにレースなんてって思われるかもしれないけど、あんなふうに使うのは素敵ではなくて?」
「たしかに。さりげなく使われていて、同系色の糸なら目立ちにくいですし……これは素敵」
「ジョージア様のジャケットにも同じ仕掛けがしてあるのよ。今年はこんなふうに男性にも流行をと考えているわ」
「男性にも流行をですか。考えたこともなかったですわ。型どおりのものばかりかと」
「そうでもないのよ?」
「そのあたりは、ナタリーのほうが勉強しているわ。今年はジョージア様やセバスに着てくれって頼んでいるのを見たから、結婚式を楽しみにしていて」
カレンは私やナタリーの友人として、セバスの結婚式に招待した。この先、ご婦人たちのお茶会に参加することも考えられるからこその顔繋ぎでもある。ダリアをアンバー領にとセバスは考えているだろうが、彼女自身がそれで収まる器ではないだろう。
「そうそう、私考えていますの。アンナ様の侍女を。屋敷内であれば、平民でも構わないと思いますが」
「社交場へ出たときの話よね?」
「えぇ、そうです。今までは、ナタリーがその役目をはたしていましたが、そろそろ手元においておく夫人を一人つけるべきだわ。私もその内の一人と自負してますが」
「もちろんよ。カレンにも頼む予定だった。来年、アンジェラが5歳になれば、社交界に戻るつもりよ」
ニッコリ笑うカレン。その笑みを見れば、長年、待っていたといわんばかりで、やっと、女主人を頂に据えられると喜んでいるようだった。
「あくまで、公妃は立てないといけなくてよ?」
「それはもちろんですけど、あの女狐がわざわざ敵陣に首を突っ込むとも思いませんわ」
「むしろこちらから、乗り込むことはあるでしょうね?」
カレンと話をしていることに気が付いたナタリーが私たちの話に入ってくる。ここ数年、貴族女性の情報収集を二人に任せていた。
「心配はいりませんよ。もう、派閥はとっくの昔に出来ていますから、あとはそれを纏める御印があればいいのです」
「私たちなりにアンナリーゼ様への手土産です。まだ、1年ありますから……もう少し、おもしろい勢力図になるよう、努力は続けていくつもりですよ。もちろん、アンジェラ様の代にまで及ぶよう、しっかりと手綱は握っていますからご安心を」
カレンとナタリーが笑うと、悪だくみをしているようで、なんとも言えない気持ちになるが、どうやら、来年の社交界復帰には苦労せずに、その座を用意してくれているようだった。優秀な二人を見て、ため息を飲み込むのであった。
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