ハニーローズ ～ 『予知夢』から始まった未来変革 ～

復活？

　目を覚ますと私は目を擦った。頭が痛かったはずがどうやら万能解毒薬のおかげで治ったようだ。手元にあったベルを鳴らすと、メイドが部屋に入ってきた。


「お呼びでしょうか？」
「えぇ、着替えをお願いできるかしら？」


　かしこまりましたと準備をしてくれる。今日はセバスの結婚式のために貴族も来ているのでみすぼらしい格好はできない。綺麗なドレスを用意してくれる。


「今日はこちらでいいですか？」
「えぇ、とても素敵な色合いね！濃いピンク色は髪の色とあっていいわ」
「はい。こちらの飾りはいかがですか？」
「パールね？それはとても素敵」


　ドレスに着替えて鏡の前に座る。御髪を整えますと髪を整えてくれる。パールの髪飾りをつけていく。


「アンナリーゼ様の御髪に白いパールは素敵ですね？とても輝いています」
「このパールは、私の友人が作ってくれたもの。懐かしいわ。お兄様の卒業式の前に依頼したの」
「そうだったのですね。アンナリーゼ様の髪色によく映えていますね」


　薄化粧をしてもらい、私は鏡台の前から立ち上がり私室から出ていく。すでに、誕生日会は始まっているようで外は賑やかだ。廊下に出れば、アデルが警護してくれていた。


「アンナ様、大丈夫でしたか？」
「えぇ、十分休ませてもらったわ」
「……お酒、本当にダメだったのですね。チョコレートのあれだけで……」
「えぇ、本当にね。自分でも驚いちゃった。お兄様には止められていたのよね」
「……以後、こちらも気を付けます」
「ごめんね。私も気を付けるわ。甘いものには目がないとか……ダメね」


　私はアデルを伴って、階段を降りる。すでに玄関ホールにも人がおり、ハニーアンバー店アンバー支店で物色している貴族もいるようだ。見かけないものだったので、挨拶なしに外へ向かって歩く。
　少し向こうに本日の主役が席を用意してもらい頬に生クリームをつけているのが見えた。


「クリームをつけているわ！もう、アンジェラったら」
「あの可愛らしい表情を見ると昨日のアンナ様を思い出しますね？」
「私あんな表情してたの？」
「えぇ、生クリームが大好きですって顔してました」


　アデルに指摘されると恥ずかしくて仕方がない。私の生クリーム好きは仲間内は知っていても他はあまり知らないことだったから、ニヤニヤされると困る。


「そういえば、リアンと回らないの？せっかくのお祭りなのに」
「……そうしたいのはやまやまですが、どこかのえらい貴族がリアンに仕事を割り振ってくださったので……」
「私ね？じゃあ、リアンの様子を見に行きましょうか？今日の目玉は、お菓子の食べ比べだからね！」


　食べ比べの会場にいるはずのリアンを求め、私とアデルは先をいそぐ。こちらからは嬉しそうにケーキを食べてほほを緩めているアンジェラが見える。


「アンナ、もういいの？」


　アンジェラの側に行けば、ジョージアが子どもたちを見守っている。あまり甘いものが得意ではないジョージアと数歩下がっていた。


「ご心配をおかけしました」
「本当だよ。お酒は今後一切ダメだから。お菓子でもだよ？」
「はい、身をもって感じています」


　ごめんなさいと謝ると、ジョージアが隣に並んでいいよと返事をしてくれた。それにしても、アンジェラはどれほどのクリームを食べるつもりなのだろう。
　山のようにあった生クリームも終わりかけていた。


「そろそろ止めないと。今ので3皿目なんだ」
「そんなに食べたのですか？」
「あぁ、誰かに似て本当……生クリームが好きだよね？」
「……見てるだけで胸やけしそう」


　そこにウィルとレオが現れる。アンジェラがホクホクと食べている生クリームのお皿を私は取り上げた。
　キッと睨み上げるアンジェラにニッコリ笑いかける。何を意味するのか聡いアンジェラはわかったようで、しょぼんと肩を落としてしまった。


「食べすぎよ！生クリームばっかり食べているとお顔がパンパンになってしまうわよ？」


　顔の回りに手で大きな円を作るとやだ！と膨れ上がった。生クリームを取り上げられて嫌なのか、顔が真ん丸になるのが嫌なのか判断がつかない。


「明日、レオと剣のお稽古と運動をたくさんするなら、他のお菓子なら食べていいわ」


　チラリと他のお菓子を見ながら、恋しい生クリームとは今日のところはさよならをするらしい。リアンが焼いた大きなクッキーを選んだ。他にもデリアが作ったパウンドケーキを机の上に置いてもらって上機嫌だ。
　リアンに言って少し数の少ないクッキーをアンジェラに渡してくれる。


「アンナリーゼ様もうよろしいのですか？」
「えぇ、お陰様で。みなに迷惑をかけたけど、賑わっているのは嬉しいわね」
「そうですね。今年は貴族も来ているから、いつもより少しぴりついていることにどれほどの人が気が付いているのでしょうか？」
「初めて参加する人もいるくらいだし、少し警備も気を付けてって言わないと、何かあってからでは遅いから」


　ジョージアとリアンに見守られ、新しいお菓子に手を伸ばしているアンジェラ。私も、アンジェラと同じ机につくことにした。