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ジョージとお出かけⅣ
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「姫さんってさ、子どもに懐かれるというより、人を誑し込んでいくんだよね?」
「……私に聞かないでくれる?」
もうすぐ警備隊の訓練場につくころ、ウィルがふいにいうので、私は睨んでおく。いつもいうが、人を誑し込んだ覚えは全くない。
「飾らない人柄と真っすぐなところが好ましいのかもな」
「……恥ずかしいんだけど?」
「ほら、ナタリーとかデリアって心の底から姫さん!って叫んでるじゃん?」
「……何が言いたいの?」
「いや、才能なのかなぁ?って」
よくわからない話を始めるウィル。もし、トワイスに残っていたら……と話を振ってくる。
「もし、トワイスに残っていたらなんて、考えたことないわ。私には私にしかできないことをしようと思って生きてきたのだし、ウィルだって、自分が進む道は自分で決めたでしょ?」
「まぁ、ぼんやりとは。姫さんに出会って、はっきりした道を選んだ感じはする。セバスもナタリーもそうだろうし、デリアもそうじゃないの?誰かが道を選ぶとき、必ずいるんだよなぁ……たぶん、今、アンバー領へ学びに来てるやつらもそうだろう?ぼんやり道は見えているけど、きりとか靄がかかっていてわからない。けど、それを掃ってしまうほどの強烈な人物」
「それが私?そんな大それたものじゃないわ。さっ、着いたよ」
門をくぐり、木剣を打ち鳴らす音が聞こえてくる。馬に乗って現れた私を見て、その場が止まってしまった。ウィルが続けるように促す。今日はリリーがここに詰めているようで、かけてきた。
「お久しぶりです、アンナ様」
「久しぶりね!リリー。変わりはないかしら?」
「変わりがないといえばないですけど……」
レナンテから降り、ジョージも降ろす。ウィルがレナンテを厩舎へ連れて行ってくれるらしく手綱を渡した。
レナンテから降りて、初めて気が付いた。元々、リリーは鍛え上げられた体躯をしていた。私と領地を回っていたときも、他の警備隊員とは頭ひとつふたつ上の仕上がりだったのだが……私はリリーへ近寄った。
いきなり不躾に体を触る。
「……アンナ様?」
「……いい、いいわね?」
「あの、」
「姫さん、何やってるの?」
呆れた声が後ろから聞こえてきて、リリーが困っているけど?と言われてハッとなった。
「ウィルもだけど……リリーの仕上がり具合がすごくよくて……私と領地を回っていたときもしっかりした体つきだったけど……さらに無駄が無くなって……理想の体だよね?」
ウィルにキラキラした目で訴えかけると、確かにと返ってくる。ウィルも剣を扱うし職業が近衛であるので鍛え抜かれた体をしている。とはいえ、一般的な近衛の中ではやや細身なのだ。それに比べ、リリーは完璧な体といっていいだろう。
「理想だからって、いきなりベタベタ触るのはダメだろ?ごめんな、リリー」
「いえ、いいのですけど、その……」
「私ね、女に生まれたことを1度も嫌だと思ったことはないの。でも、バランスの取れたウィルの体や理想的な作りのリリーを見ると、羨ましいわ。大剣は扱えて?」
「……出来ないことはないですけど、そこまでは。振りなれたこれが1番です。あとは槍ですかね?」
「なるほどね」
「姫さんは、大剣は使えないだろ?筋力的に」
「一回振り回すくらいなら出来るわよ?細腕でって思っているでしょうけど。エリックが大剣を使えるからいいのよ。私は愛剣があれば、負けたりしないから」
ウィルが持ってきてくれている白い鞘に入った愛剣はほとんど使うことはない。使わないでいられることがいいのだからそのほうがいい。
「今日は何か御用があったのでは?」
「うん、ジョージに訓練場を見せたくて」
「姫さんの戦うところをみたいんだって。誰か相手してくれそうなのいる?」
「じゃあ、俺はどうです?」
「リリー?相手に不足はないけど」
「あれやろうか。どうせなら、久しぶりに」
そう言ってスタスタと訓練場の真ん中へウィルは歩いて行った。
「近衛大隊長ウィル・サーラーが申し付ける。今、この場で、うちの領主様と訓練をしたいものは前へ!」
その言葉にフラフラとつられてきた団体がいた。ウィルの中隊にいた懐かしい者たちだ。
「それ、受けます!」
そういって集まってきたのは約四十人。よくぶちのめしていた面々であった。
「おぉー、また、ぶちのめされたいのか?好きだな?」
「……隊長、さすがにそれはないんじゃないですか?俺たちも強くなったか確かめたいんです。土木工事をするようになって、体もあの頃に比べて強くなっていますからね!」
「他にいないか?百人くらいなら、なんとでもなるし、本気で戦って大丈夫だから。まぁ、俺もそうするし」
こっちを向いてニヤッとする。今日、アデルに護衛を変わってもらったのは、こういう思惑があったのだろう。ため息をついて、相手しないよ?というと、大丈夫、乱入するからと返ってきた。リリーを見上げると、お願いしますというので、わかったわと返事をする。
そのころには、ウィルの周りにさらに人が集まる。制服を着ているので、近衛なのか警備隊なのかわかるが、どうやら私にぶちのめされたい奇特な人が多すぎるようだった。
「……私に聞かないでくれる?」
もうすぐ警備隊の訓練場につくころ、ウィルがふいにいうので、私は睨んでおく。いつもいうが、人を誑し込んだ覚えは全くない。
「飾らない人柄と真っすぐなところが好ましいのかもな」
「……恥ずかしいんだけど?」
「ほら、ナタリーとかデリアって心の底から姫さん!って叫んでるじゃん?」
「……何が言いたいの?」
「いや、才能なのかなぁ?って」
よくわからない話を始めるウィル。もし、トワイスに残っていたら……と話を振ってくる。
「もし、トワイスに残っていたらなんて、考えたことないわ。私には私にしかできないことをしようと思って生きてきたのだし、ウィルだって、自分が進む道は自分で決めたでしょ?」
「まぁ、ぼんやりとは。姫さんに出会って、はっきりした道を選んだ感じはする。セバスもナタリーもそうだろうし、デリアもそうじゃないの?誰かが道を選ぶとき、必ずいるんだよなぁ……たぶん、今、アンバー領へ学びに来てるやつらもそうだろう?ぼんやり道は見えているけど、きりとか靄がかかっていてわからない。けど、それを掃ってしまうほどの強烈な人物」
「それが私?そんな大それたものじゃないわ。さっ、着いたよ」
門をくぐり、木剣を打ち鳴らす音が聞こえてくる。馬に乗って現れた私を見て、その場が止まってしまった。ウィルが続けるように促す。今日はリリーがここに詰めているようで、かけてきた。
「お久しぶりです、アンナ様」
「久しぶりね!リリー。変わりはないかしら?」
「変わりがないといえばないですけど……」
レナンテから降り、ジョージも降ろす。ウィルがレナンテを厩舎へ連れて行ってくれるらしく手綱を渡した。
レナンテから降りて、初めて気が付いた。元々、リリーは鍛え上げられた体躯をしていた。私と領地を回っていたときも、他の警備隊員とは頭ひとつふたつ上の仕上がりだったのだが……私はリリーへ近寄った。
いきなり不躾に体を触る。
「……アンナ様?」
「……いい、いいわね?」
「あの、」
「姫さん、何やってるの?」
呆れた声が後ろから聞こえてきて、リリーが困っているけど?と言われてハッとなった。
「ウィルもだけど……リリーの仕上がり具合がすごくよくて……私と領地を回っていたときもしっかりした体つきだったけど……さらに無駄が無くなって……理想の体だよね?」
ウィルにキラキラした目で訴えかけると、確かにと返ってくる。ウィルも剣を扱うし職業が近衛であるので鍛え抜かれた体をしている。とはいえ、一般的な近衛の中ではやや細身なのだ。それに比べ、リリーは完璧な体といっていいだろう。
「理想だからって、いきなりベタベタ触るのはダメだろ?ごめんな、リリー」
「いえ、いいのですけど、その……」
「私ね、女に生まれたことを1度も嫌だと思ったことはないの。でも、バランスの取れたウィルの体や理想的な作りのリリーを見ると、羨ましいわ。大剣は扱えて?」
「……出来ないことはないですけど、そこまでは。振りなれたこれが1番です。あとは槍ですかね?」
「なるほどね」
「姫さんは、大剣は使えないだろ?筋力的に」
「一回振り回すくらいなら出来るわよ?細腕でって思っているでしょうけど。エリックが大剣を使えるからいいのよ。私は愛剣があれば、負けたりしないから」
ウィルが持ってきてくれている白い鞘に入った愛剣はほとんど使うことはない。使わないでいられることがいいのだからそのほうがいい。
「今日は何か御用があったのでは?」
「うん、ジョージに訓練場を見せたくて」
「姫さんの戦うところをみたいんだって。誰か相手してくれそうなのいる?」
「じゃあ、俺はどうです?」
「リリー?相手に不足はないけど」
「あれやろうか。どうせなら、久しぶりに」
そう言ってスタスタと訓練場の真ん中へウィルは歩いて行った。
「近衛大隊長ウィル・サーラーが申し付ける。今、この場で、うちの領主様と訓練をしたいものは前へ!」
その言葉にフラフラとつられてきた団体がいた。ウィルの中隊にいた懐かしい者たちだ。
「それ、受けます!」
そういって集まってきたのは約四十人。よくぶちのめしていた面々であった。
「おぉー、また、ぶちのめされたいのか?好きだな?」
「……隊長、さすがにそれはないんじゃないですか?俺たちも強くなったか確かめたいんです。土木工事をするようになって、体もあの頃に比べて強くなっていますからね!」
「他にいないか?百人くらいなら、なんとでもなるし、本気で戦って大丈夫だから。まぁ、俺もそうするし」
こっちを向いてニヤッとする。今日、アデルに護衛を変わってもらったのは、こういう思惑があったのだろう。ため息をついて、相手しないよ?というと、大丈夫、乱入するからと返ってきた。リリーを見上げると、お願いしますというので、わかったわと返事をする。
そのころには、ウィルの周りにさらに人が集まる。制服を着ているので、近衛なのか警備隊なのかわかるが、どうやら私にぶちのめされたい奇特な人が多すぎるようだった。
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