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ジョージとお出かけ
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「明日の午前中は少し出かけようと思っています」
「どこにだい?」
「特には何も。ただ、明日はジョージ」
急に名を呼ばれたのできょとんとしてこちらを見ている。黒曜石のようなその瞳に私が映っている。そっと頭を撫で微笑むとニッコリ笑ってくれた。
「一緒にお出かけしましょうか?」
「ママとおでかけ?アンじゃなくてもいいの?」
「もちろん!一緒に出かけましょう」
約束ね?と小指を立てると、ジョージも倣って小指をたてた。そこに絡ませれば頬が緩んでいる。
「よかったな?ジョージ」
「うん!ママとおでかけ出来る!」
「本当、ジョージはアンナのことが好きだなぁ」
「ママ大好き!」
「私もよ!」
ギュっとジョージを抱きしめると、アンも!とアンジェラが私の背中から抱きしめてくる。遅れてソワソワしながら、ネイトが参戦した。おんぶにだっこの状態の私を見てジョージアが笑っている。
「アンナはここでもモテモテだなぁ?」
「ジョージア様、笑っていないでくだい!」
「ふふっ、笑うだなんて……」
やきもちを妬いているんだよ?と子どもたちと同じように私を子どもたちごと抱きしめる。ギューッとなったらしく、アンジェラが苦しいと訴えたのでジョージアは離れていった。調子に乗ったアンジェラは今晩一緒に寝ると言い始めた。慌ててジョージアが止めに入ったが、子どもたちの勢いは止まらない。
「エマ、子どもたちの寝る準備をしてちょうだい。準備が終わったら、私の部屋に」
「かしこまりました。さぁ、着替えてきましょう」
エマが子どもたちに声をかけると、渋々私から離れる三人にまた後でね?と声をかける。こんな私でも、求められていることが嬉しくて、見送りながらニヤニヤしていた。
「早く執務が終わったんだったら、俺も構って欲しかったかな」
「ジョージア様は執務で顔を合わせているからいいではないですか?私にだって、子どもとの時間が欲しいです」
「……じゃあ、俺は今日も一人寂しく私室?」
「嫌なら一緒に寝ますか?」
「アンジェラに蹴り飛ばされながら眠るのも一興か」
「そんなに寝相は悪くないと思いますけど?」
お昼寝のことを思い出していると、ジョージアが苦笑いをする。そこそこ蹴り飛ばされているらしい。
……嫌われているから、ではないよね?
ジョージアのほうを見てニコリと笑っておいた。
「ところで、珍しいね?」
「何がですか?」
「明日の視察にジョージを連れていくのは」
「リアンにまた叱られたので……子どもたちとの時間ももっと作ってくださいと。わかってはいるのですが、」
「優先順位か。効率的に動きたいアンナにとって順位が低い?」
「そんなことはないですよ!もちろん、子どもたちは可愛いですもの」
「領主だからって理由じゃないの?」
「違います。私にだって母親としてあの子たちへの愛情はありますよ。振り回されている時間も多くて、構えないだけで……私の知らない間に、ずいぶん大きくなっていてビックリしているくらいです」
「これから、ますます大きくもなるからね。目を離したら一瞬だよ」
「……私は、その一瞬一瞬に立ち会えない気がします。ジョージア様がしっかりあの子たちの成長を見てあげてくださいね?」
「アンナもだよ。出来る限りでいいから、一緒に見守っていこう」
コクンと頷くと、部屋がノックされる。エマが寝る準備を終えた子らを連れて入ってきた。
「では、ジョージア様、お休みなさい」
「あぁ、お休み」
私は子ども部屋を後にしてネイトとジョージと手を握る。ネイトのもうひとつの手はアンジェラが握っていた。
……お姉ちゃんしているんだね。ネイトが転ばないように見てるわ。
アンジェラが気をつけながら歩いているのを見て感動した。もっと前から二人の関係はこうだったのかもしれないが、私が今日知ったのだ。成長するアンジェラを見逃してしまわないでよかったと胸の内はホッとしている。
「えらいね?アンジェラは」
「えらい?」
「うん、とっても。ちゃんとお姉ちゃんしているから」
自身が妹で兄に甘えて生きてきたからこそ、ネイトに差し伸べられた手に感動したのだ。レオとミアの兄妹がいい手本になっているのだろう。
ニシシと笑うアンジェラはどこか誇らし気だった。
今度は、反対側にいるジョージに話しかける。
「明日はどこか行きたい場所があるかしら?」
「水車が見たいです!」
先日の視察で領地にも水車がたくさん出来ていることをアンジェラから聞いたらしい。それを見てみたいというので行先は決まった。
「それじゃあ、明日は馬で移動だから、温かい服装で出かけましょう。エマ」
「ご用意いたします」
アンジェラの準備をしているので、どんなものが必要かは心得ているというふうだ。
「明日はママとジョージでおでかけ?」
「そうよ。アンジェラは先日出かけたからね。今度はジョージ。そのたとはネイトよだよ?」
ネイトに話しかけると、よくわからないというふうである。お出かけ好きのアンジェラは羨ましそうにしている。馬にも乗れるから、羨ましいのだろう。
「ママ、今度はみんなでお出かけしたいね?」
「みんなで?」
「ママ、パパ、アン、ジョー、ネイト、ウィル、セバス、ナタリー、アデル、リアン」
指折り数えながら名を言っていく。続きがあるようで、そこにはあの孤児たちの名も入っていた。
この春はとても忙しいが、どこかで時間を作って、ピクニックへ行かないといけないかもとぼんやり考えていた。
「どこにだい?」
「特には何も。ただ、明日はジョージ」
急に名を呼ばれたのできょとんとしてこちらを見ている。黒曜石のようなその瞳に私が映っている。そっと頭を撫で微笑むとニッコリ笑ってくれた。
「一緒にお出かけしましょうか?」
「ママとおでかけ?アンじゃなくてもいいの?」
「もちろん!一緒に出かけましょう」
約束ね?と小指を立てると、ジョージも倣って小指をたてた。そこに絡ませれば頬が緩んでいる。
「よかったな?ジョージ」
「うん!ママとおでかけ出来る!」
「本当、ジョージはアンナのことが好きだなぁ」
「ママ大好き!」
「私もよ!」
ギュっとジョージを抱きしめると、アンも!とアンジェラが私の背中から抱きしめてくる。遅れてソワソワしながら、ネイトが参戦した。おんぶにだっこの状態の私を見てジョージアが笑っている。
「アンナはここでもモテモテだなぁ?」
「ジョージア様、笑っていないでくだい!」
「ふふっ、笑うだなんて……」
やきもちを妬いているんだよ?と子どもたちと同じように私を子どもたちごと抱きしめる。ギューッとなったらしく、アンジェラが苦しいと訴えたのでジョージアは離れていった。調子に乗ったアンジェラは今晩一緒に寝ると言い始めた。慌ててジョージアが止めに入ったが、子どもたちの勢いは止まらない。
「エマ、子どもたちの寝る準備をしてちょうだい。準備が終わったら、私の部屋に」
「かしこまりました。さぁ、着替えてきましょう」
エマが子どもたちに声をかけると、渋々私から離れる三人にまた後でね?と声をかける。こんな私でも、求められていることが嬉しくて、見送りながらニヤニヤしていた。
「早く執務が終わったんだったら、俺も構って欲しかったかな」
「ジョージア様は執務で顔を合わせているからいいではないですか?私にだって、子どもとの時間が欲しいです」
「……じゃあ、俺は今日も一人寂しく私室?」
「嫌なら一緒に寝ますか?」
「アンジェラに蹴り飛ばされながら眠るのも一興か」
「そんなに寝相は悪くないと思いますけど?」
お昼寝のことを思い出していると、ジョージアが苦笑いをする。そこそこ蹴り飛ばされているらしい。
……嫌われているから、ではないよね?
ジョージアのほうを見てニコリと笑っておいた。
「ところで、珍しいね?」
「何がですか?」
「明日の視察にジョージを連れていくのは」
「リアンにまた叱られたので……子どもたちとの時間ももっと作ってくださいと。わかってはいるのですが、」
「優先順位か。効率的に動きたいアンナにとって順位が低い?」
「そんなことはないですよ!もちろん、子どもたちは可愛いですもの」
「領主だからって理由じゃないの?」
「違います。私にだって母親としてあの子たちへの愛情はありますよ。振り回されている時間も多くて、構えないだけで……私の知らない間に、ずいぶん大きくなっていてビックリしているくらいです」
「これから、ますます大きくもなるからね。目を離したら一瞬だよ」
「……私は、その一瞬一瞬に立ち会えない気がします。ジョージア様がしっかりあの子たちの成長を見てあげてくださいね?」
「アンナもだよ。出来る限りでいいから、一緒に見守っていこう」
コクンと頷くと、部屋がノックされる。エマが寝る準備を終えた子らを連れて入ってきた。
「では、ジョージア様、お休みなさい」
「あぁ、お休み」
私は子ども部屋を後にしてネイトとジョージと手を握る。ネイトのもうひとつの手はアンジェラが握っていた。
……お姉ちゃんしているんだね。ネイトが転ばないように見てるわ。
アンジェラが気をつけながら歩いているのを見て感動した。もっと前から二人の関係はこうだったのかもしれないが、私が今日知ったのだ。成長するアンジェラを見逃してしまわないでよかったと胸の内はホッとしている。
「えらいね?アンジェラは」
「えらい?」
「うん、とっても。ちゃんとお姉ちゃんしているから」
自身が妹で兄に甘えて生きてきたからこそ、ネイトに差し伸べられた手に感動したのだ。レオとミアの兄妹がいい手本になっているのだろう。
ニシシと笑うアンジェラはどこか誇らし気だった。
今度は、反対側にいるジョージに話しかける。
「明日はどこか行きたい場所があるかしら?」
「水車が見たいです!」
先日の視察で領地にも水車がたくさん出来ていることをアンジェラから聞いたらしい。それを見てみたいというので行先は決まった。
「それじゃあ、明日は馬で移動だから、温かい服装で出かけましょう。エマ」
「ご用意いたします」
アンジェラの準備をしているので、どんなものが必要かは心得ているというふうだ。
「明日はママとジョージでおでかけ?」
「そうよ。アンジェラは先日出かけたからね。今度はジョージ。そのたとはネイトよだよ?」
ネイトに話しかけると、よくわからないというふうである。お出かけ好きのアンジェラは羨ましそうにしている。馬にも乗れるから、羨ましいのだろう。
「ママ、今度はみんなでお出かけしたいね?」
「みんなで?」
「ママ、パパ、アン、ジョー、ネイト、ウィル、セバス、ナタリー、アデル、リアン」
指折り数えながら名を言っていく。続きがあるようで、そこにはあの孤児たちの名も入っていた。
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