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いろいろなお菓子の話は
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「お菓子については、キティに一任するわね?」
「ありがとうございます!リアンさんと考えて美味しいもの用意します!」
「よろしくね?あっ、そうそう、デリアがこちらに向かっているの」
「デリアがですか?」
リアンがこちらを不思議そうに見つめてきたので頷いた。私たちは、誕生日会や結婚式、お茶会が終われば公都に戻る。出産してからしばらく、公都で育児をしていたデリアが、この時期に領地へ来ることに驚いたようだ。
「デリアはアンナリーゼ様が向こうへ戻ってからの復職になるのだとばかり思っていたので驚きました」
「私もよ?もう少し、子どもとの時間をと思っていたのだけど……いてもたってもいられなかったようね。通常の春であれば向こうにいたと思うけど」
「今年は少々違いますからね?」
「セバスの結婚式とお茶会。アンナリーゼ様の専属侍女であるデリアが現場復帰をしないといけない事態といえば、そうですね?」
現状人手が足りないというのはもちろんだが、屋敷内をうまく回せる人がいないことも問題となっていた。私やジョージアが屋敷にいるので、まだ、動いているが、領地運営のことから、屋敷の中の情報収集までとなると、手が回っていないこともある。リアンもこちらに戻すことも検討していたのだが、孤児たちを見てもらうほうを優先させているため、侍従たちがてんやわんやしている。
「デリアがこれば、姫さんの負担も減るんじゃないか?」
「そう簡単な話ではありませんけどね?」
「どうして?」
「アンナリーゼ様が把握している現場のことと、現場で起こっていることの差異はもちろんありますし、それを職場復帰早々で片付けないといけないことは、大変な苦労だと思います」
「デリアは優秀だから、そのあたりはそつなくこなせると思うけど、従事から少し空いているし、新しい侍従も増えているからね」
「さらに、デリアは年若いですからね」
あぁと納得している一同だが、正直なところ、私はデリア復帰について、何も心配はしていない。従事していない期間もあったのは事実ではあるが、夫でありアンバー公爵家筆頭執事でもあるディルが逐一情報共有されていると聞いている。それなら、ガツンと職場である私の側で、存在感を示せばいいだけだ。デリアはアンバー公爵家に入った以降はメイドからのたたき上げ。専属侍女になるために積み上げたものが、他の侍従たちとは違うのだ。過信していると言われるかもしれないが、デリアほど努力の塊を私は知らない。
「何はともあれ、デリアがこちらに来てくれれば何も心配はいらないわ」
「デリアへの信頼は今も厚いのですね?」
「もちろんよ?ナタリーも知っているでしょ?私たち主従は難局を乗り切ってきたことを」
「もちろんですわ。デリアは私の盟友。アンナリーゼ様への愛に関していえば、私に引けを取りませんから」
「アンナリーゼ教の総帥が言うのであれば、確かだよな?セバス」
「僕に振らないでよ、ウィル」
「なんだか、懐かしいわね。デリアが私の側を離れたのはほんの1年くらいなのに」
「それだけ濃い1年を過ごしたってことだろ?姫さん、死地に行ってたわけだし?」
確かにと声を揃えるみなに、苦笑いをする。つい最近病を治めたとばかり思っていたのだが、そうではないらしい。バタバタと過ぎて行ったこの1年。1日1日、誰かの死と隣り合わせだったことを思い出すと背中に冷たいものが流れる。
「本当にいろいろあったわね?」
「こうして慶事もあるわけだし、悪いことばかりではなかったと思うよ」
「アンバー領の学都計画もだいぶ進んでいるしね?」
「特に医療分野はヨハン教授を含め、相当勉強する内容が練られていると聞いていますよ」
「今までみたいに聞きかじっただけではなく、きちんとした勉学を元に医術を学ぶということは、すごいことですよね。なんとなくの民間療法とか合わない薬を飲まされたりということがなくなるのでしょ?」
「格段に救える命が増えるということだろうな。勉強は無茶苦茶大変だって聞いたことはあるけど」
「そうだ、ウィル」
私は思い出したかのようにウィルを呼ぶと、何?と眉を寄せる。私がこんなときに呼ぶのはだいたいいいことではないので、そんな表情なのだろう。
「近衛の中に衛生兵っているの?」
「もちろんいるけど、そこまで熟練しているわけじゃないよ。戦えないものがそちらに回されているって感じだから」
「それなら、衛生兵も育ててみてはどうかしら?せっかく、アンバー領にいるのだから」
「なるほど、それはいいかもしれない。俺自身は衛生兵ではないけど……、応急処置をもう少しできるようにしたいし、姫さんがあのヨハン教授に言ってくれるなら、勉強したいな。領地の警備隊にももちろん勉強させておいたほうがいいな」
ウィルの提案に頷き、それを実行するべく、あとでヨハンに手紙を書くことになった。ウィルが少し悩んでいるところで、おもいついたとニコリと笑う。
「ろくでもないことを思い浮かべてそう」
「そんなことないわよ?レオもそこに入ればと思っただけだし」
「それいいな。本人のやる気次第だけど。リアンも反対はしない?」
「もちろんです、近衛になると意気込んでいたのですから」
リアンは笑うが、気にならないわけはない。でも、応急処置などを覚え、レオが少しでも戦いにおける生存率がたくなるならとウィルもリアンも承諾した。
「ありがとうございます!リアンさんと考えて美味しいもの用意します!」
「よろしくね?あっ、そうそう、デリアがこちらに向かっているの」
「デリアがですか?」
リアンがこちらを不思議そうに見つめてきたので頷いた。私たちは、誕生日会や結婚式、お茶会が終われば公都に戻る。出産してからしばらく、公都で育児をしていたデリアが、この時期に領地へ来ることに驚いたようだ。
「デリアはアンナリーゼ様が向こうへ戻ってからの復職になるのだとばかり思っていたので驚きました」
「私もよ?もう少し、子どもとの時間をと思っていたのだけど……いてもたってもいられなかったようね。通常の春であれば向こうにいたと思うけど」
「今年は少々違いますからね?」
「セバスの結婚式とお茶会。アンナリーゼ様の専属侍女であるデリアが現場復帰をしないといけない事態といえば、そうですね?」
現状人手が足りないというのはもちろんだが、屋敷内をうまく回せる人がいないことも問題となっていた。私やジョージアが屋敷にいるので、まだ、動いているが、領地運営のことから、屋敷の中の情報収集までとなると、手が回っていないこともある。リアンもこちらに戻すことも検討していたのだが、孤児たちを見てもらうほうを優先させているため、侍従たちがてんやわんやしている。
「デリアがこれば、姫さんの負担も減るんじゃないか?」
「そう簡単な話ではありませんけどね?」
「どうして?」
「アンナリーゼ様が把握している現場のことと、現場で起こっていることの差異はもちろんありますし、それを職場復帰早々で片付けないといけないことは、大変な苦労だと思います」
「デリアは優秀だから、そのあたりはそつなくこなせると思うけど、従事から少し空いているし、新しい侍従も増えているからね」
「さらに、デリアは年若いですからね」
あぁと納得している一同だが、正直なところ、私はデリア復帰について、何も心配はしていない。従事していない期間もあったのは事実ではあるが、夫でありアンバー公爵家筆頭執事でもあるディルが逐一情報共有されていると聞いている。それなら、ガツンと職場である私の側で、存在感を示せばいいだけだ。デリアはアンバー公爵家に入った以降はメイドからのたたき上げ。専属侍女になるために積み上げたものが、他の侍従たちとは違うのだ。過信していると言われるかもしれないが、デリアほど努力の塊を私は知らない。
「何はともあれ、デリアがこちらに来てくれれば何も心配はいらないわ」
「デリアへの信頼は今も厚いのですね?」
「もちろんよ?ナタリーも知っているでしょ?私たち主従は難局を乗り切ってきたことを」
「もちろんですわ。デリアは私の盟友。アンナリーゼ様への愛に関していえば、私に引けを取りませんから」
「アンナリーゼ教の総帥が言うのであれば、確かだよな?セバス」
「僕に振らないでよ、ウィル」
「なんだか、懐かしいわね。デリアが私の側を離れたのはほんの1年くらいなのに」
「それだけ濃い1年を過ごしたってことだろ?姫さん、死地に行ってたわけだし?」
確かにと声を揃えるみなに、苦笑いをする。つい最近病を治めたとばかり思っていたのだが、そうではないらしい。バタバタと過ぎて行ったこの1年。1日1日、誰かの死と隣り合わせだったことを思い出すと背中に冷たいものが流れる。
「本当にいろいろあったわね?」
「こうして慶事もあるわけだし、悪いことばかりではなかったと思うよ」
「アンバー領の学都計画もだいぶ進んでいるしね?」
「特に医療分野はヨハン教授を含め、相当勉強する内容が練られていると聞いていますよ」
「今までみたいに聞きかじっただけではなく、きちんとした勉学を元に医術を学ぶということは、すごいことですよね。なんとなくの民間療法とか合わない薬を飲まされたりということがなくなるのでしょ?」
「格段に救える命が増えるということだろうな。勉強は無茶苦茶大変だって聞いたことはあるけど」
「そうだ、ウィル」
私は思い出したかのようにウィルを呼ぶと、何?と眉を寄せる。私がこんなときに呼ぶのはだいたいいいことではないので、そんな表情なのだろう。
「近衛の中に衛生兵っているの?」
「もちろんいるけど、そこまで熟練しているわけじゃないよ。戦えないものがそちらに回されているって感じだから」
「それなら、衛生兵も育ててみてはどうかしら?せっかく、アンバー領にいるのだから」
「なるほど、それはいいかもしれない。俺自身は衛生兵ではないけど……、応急処置をもう少しできるようにしたいし、姫さんがあのヨハン教授に言ってくれるなら、勉強したいな。領地の警備隊にももちろん勉強させておいたほうがいいな」
ウィルの提案に頷き、それを実行するべく、あとでヨハンに手紙を書くことになった。ウィルが少し悩んでいるところで、おもいついたとニコリと笑う。
「ろくでもないことを思い浮かべてそう」
「そんなことないわよ?レオもそこに入ればと思っただけだし」
「それいいな。本人のやる気次第だけど。リアンも反対はしない?」
「もちろんです、近衛になると意気込んでいたのですから」
リアンは笑うが、気にならないわけはない。でも、応急処置などを覚え、レオが少しでも戦いにおける生存率がたくなるならとウィルもリアンも承諾した。
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