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甘いお菓子を食べたいわ
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それぞれに仕事があるので、今日は解散となった。元々、イチアから報告書は逐一届いていたので、その確認をするために集まったのだが、最終的に先立つものと人手に阻まれる結果となった。
みなが出ていった執務室に残っていたウィルとセバスが疲れたと机に突っ伏している私を見て笑っていた。
「そうやっていると、威厳も何もない」
「元々ありませんけど?」
「……あるでしょ?公が後ずさりするくらいには」
友人である二人と軽口を叩いているとホッとする。どうしても、みなで集まると公爵として接しないといけない。私がどれほど突拍子のないことを言ったとしても、そこは周りが大人の対応をしてくれるのだから甘えてしまう。
「アンナリーゼ様は最近、甘いものを食べましたか?」
「……あんまり。忙しくて全然食べてない」
「生クリームがあれほど好きだったのに?」
「……領地改革が落ち着くまではと思って、絶っていたのよ……解禁したい。甘い甘い生クリーム!」
「すればいいじゃん?セバスの結婚式もあることだし、生クリームたっぷりのケーキを作ってもらえば?」
「……それいい!そうしよう!セバス、スポンジより生クリームが多いケーキでもいいかなぁ?」
「……それはちょっと困る」
眉をハの字にしながら、困ったと表情をこちらに向けてくる。アンバー領の改革があったから高い砂糖をふんだんに使う甘いものは、なるべく控えていた。領地で砂糖を作れるようになった今、それも可能ではあるので消費する側に回りたいとごねてみた。
「本当、好きだよな?」
「生クリーム?」
「そう。どうしてそんなに?」
「あのフワフワがいいでしょ?甘すぎないあの何とも言えない……」
「姫さんはさ、追いクリームとかするからさ……ちょっと引くよね?」
セバスに視線を送るウィルに盛大に頷くセバス。
「追いクリームは必須だよ」
「一回の追いで終わらないじゃん!」
「……確かに。あぁー甘いもの食べたい!」
「じゃあ、せっかくだから、作ったらどう?いろんな種類のケーキとかの甘味。アンジェラ様の誕生日は無理でも、僕の結婚式やお茶会なら、たくさんの種類を選んで食べられるってしてもいいんじゃないかな?」
「選んで食べれる?何それ、おもしろそう!」
「あぁ、それなら、ひとつを小さくしたらどうだ?数食べようと思うと、通常の大きさだったら、ご婦人がたは遠慮するかもしれないし」
「……ひとつを小さくしなくても別腹だよ!」
「それは姫さんだけだから」
呆れかえっているウィルとセバスに抗議をしたが、セバスの発想はおもしろい。今まで、お茶会に出すお菓子は1種類しか出したことがない。いろいろな種類を自分が欲しいもの選べる楽しさが何よりよさそうだ。
「ナタリーに聞いてみようかなぁ?私はいいと思うんだよね。好きなお菓子を選んで食べる」
「たぶん、ナタリーも気に入るんじゃないか?春だから、ベリー系のお菓子がいいだろうな」
「ウィルはベリー系のお菓子なら食べているよね?」
「程よい酸味がいいんだよ。姫さんの好きな甘いだけより」
「……私、甘いのだけじゃないわよ?」
「お菓子全般好きなんでしょ?」
「そう!セバスはよくわかっているわ!」
ニッコリ笑って想像をした。もう、頭の中はいろいろなお菓子が頭の中で踊っている。両手を頬にはぁと熱いため息をついたところで、ナタリーが執務室に戻ってきた。
「……アンナリーゼ様の頬が緩みっぱなしなんだけど、何かあったの?」
ウィルとセバスに聞けば、私の好きそうな話をしていたのだと納得している。ナタリーも少し考えたあと、菓子職人をここに呼びましょうとニコッと笑う。ナタリーも女の子。甘いお菓子は好きなはずだ。
机の上に置いてあるベルをならせば、メイドが着て用事を問う。公都からセバスのウエディングケーキを作るために来てくれている菓子職人のキティが来てくれている。
「キティを呼んでくれるかしら?」
メイドが一礼して出ていったあと、すぐにキティが現れた。ウエディングケーキの試作品を作っているのか、少し頬に粉がついている。
「お呼びでしょうか?」
「うん、キティにお願いがあって……」
「私にできることなら」
「今度のセバスの結婚式やお茶会のお菓子なんだけど……」
私の『お菓子』という言葉にキティは身を引き締めている。
「不手際がございましたか?」
「そうじゃないの。そうじゃなくて……何種類かのお菓子を作ることは可能かしら?」
「何種類もですか?」
「そう。いつもハニーアンバー店で出している多きさの半分くらいのものを」
「なるほど……おもしろい試みですね?」
キティは察したのか頷いている。それと同時に渋い顔もしていた。
「難しいのかしら?」
「難しいといいますか、お菓子は基本的に生ものが多いので、私一人で作るには時間がたりません。焼き菓子中心にするとしても、きっと味だけでなく、目も楽しませたいというのがアンナリーゼ様のご希望でしょう?」
「わかっているのね?キティって。お菓子のことしか考えていないのだと思っていましたわ」
「あはは……ナタリー様、あっていますよ」
ナタリーへ空笑いをしたあと、こちらに向き直る。そう、ここでも人手が足りないとのことだ。結婚式当日は大きなウエディングケーキだけでなく、普通に料理も出てくるのでそちらの調理師には頼めない。残るは料理の出来るメイドや侍従となるのだが……と、二人の女性を思い浮かべた。
一人は孤児院にいる。もう一人は、先日、一足早くにアンバー領へ足を運びたいという手紙がきていた。
優秀な二人がいれば……もしかして?と話すと、それなら!とキティは頷いた。
みなが出ていった執務室に残っていたウィルとセバスが疲れたと机に突っ伏している私を見て笑っていた。
「そうやっていると、威厳も何もない」
「元々ありませんけど?」
「……あるでしょ?公が後ずさりするくらいには」
友人である二人と軽口を叩いているとホッとする。どうしても、みなで集まると公爵として接しないといけない。私がどれほど突拍子のないことを言ったとしても、そこは周りが大人の対応をしてくれるのだから甘えてしまう。
「アンナリーゼ様は最近、甘いものを食べましたか?」
「……あんまり。忙しくて全然食べてない」
「生クリームがあれほど好きだったのに?」
「……領地改革が落ち着くまではと思って、絶っていたのよ……解禁したい。甘い甘い生クリーム!」
「すればいいじゃん?セバスの結婚式もあることだし、生クリームたっぷりのケーキを作ってもらえば?」
「……それいい!そうしよう!セバス、スポンジより生クリームが多いケーキでもいいかなぁ?」
「……それはちょっと困る」
眉をハの字にしながら、困ったと表情をこちらに向けてくる。アンバー領の改革があったから高い砂糖をふんだんに使う甘いものは、なるべく控えていた。領地で砂糖を作れるようになった今、それも可能ではあるので消費する側に回りたいとごねてみた。
「本当、好きだよな?」
「生クリーム?」
「そう。どうしてそんなに?」
「あのフワフワがいいでしょ?甘すぎないあの何とも言えない……」
「姫さんはさ、追いクリームとかするからさ……ちょっと引くよね?」
セバスに視線を送るウィルに盛大に頷くセバス。
「追いクリームは必須だよ」
「一回の追いで終わらないじゃん!」
「……確かに。あぁー甘いもの食べたい!」
「じゃあ、せっかくだから、作ったらどう?いろんな種類のケーキとかの甘味。アンジェラ様の誕生日は無理でも、僕の結婚式やお茶会なら、たくさんの種類を選んで食べられるってしてもいいんじゃないかな?」
「選んで食べれる?何それ、おもしろそう!」
「あぁ、それなら、ひとつを小さくしたらどうだ?数食べようと思うと、通常の大きさだったら、ご婦人がたは遠慮するかもしれないし」
「……ひとつを小さくしなくても別腹だよ!」
「それは姫さんだけだから」
呆れかえっているウィルとセバスに抗議をしたが、セバスの発想はおもしろい。今まで、お茶会に出すお菓子は1種類しか出したことがない。いろいろな種類を自分が欲しいもの選べる楽しさが何よりよさそうだ。
「ナタリーに聞いてみようかなぁ?私はいいと思うんだよね。好きなお菓子を選んで食べる」
「たぶん、ナタリーも気に入るんじゃないか?春だから、ベリー系のお菓子がいいだろうな」
「ウィルはベリー系のお菓子なら食べているよね?」
「程よい酸味がいいんだよ。姫さんの好きな甘いだけより」
「……私、甘いのだけじゃないわよ?」
「お菓子全般好きなんでしょ?」
「そう!セバスはよくわかっているわ!」
ニッコリ笑って想像をした。もう、頭の中はいろいろなお菓子が頭の中で踊っている。両手を頬にはぁと熱いため息をついたところで、ナタリーが執務室に戻ってきた。
「……アンナリーゼ様の頬が緩みっぱなしなんだけど、何かあったの?」
ウィルとセバスに聞けば、私の好きそうな話をしていたのだと納得している。ナタリーも少し考えたあと、菓子職人をここに呼びましょうとニコッと笑う。ナタリーも女の子。甘いお菓子は好きなはずだ。
机の上に置いてあるベルをならせば、メイドが着て用事を問う。公都からセバスのウエディングケーキを作るために来てくれている菓子職人のキティが来てくれている。
「キティを呼んでくれるかしら?」
メイドが一礼して出ていったあと、すぐにキティが現れた。ウエディングケーキの試作品を作っているのか、少し頬に粉がついている。
「お呼びでしょうか?」
「うん、キティにお願いがあって……」
「私にできることなら」
「今度のセバスの結婚式やお茶会のお菓子なんだけど……」
私の『お菓子』という言葉にキティは身を引き締めている。
「不手際がございましたか?」
「そうじゃないの。そうじゃなくて……何種類かのお菓子を作ることは可能かしら?」
「何種類もですか?」
「そう。いつもハニーアンバー店で出している多きさの半分くらいのものを」
「なるほど……おもしろい試みですね?」
キティは察したのか頷いている。それと同時に渋い顔もしていた。
「難しいのかしら?」
「難しいといいますか、お菓子は基本的に生ものが多いので、私一人で作るには時間がたりません。焼き菓子中心にするとしても、きっと味だけでなく、目も楽しませたいというのがアンナリーゼ様のご希望でしょう?」
「わかっているのね?キティって。お菓子のことしか考えていないのだと思っていましたわ」
「あはは……ナタリー様、あっていますよ」
ナタリーへ空笑いをしたあと、こちらに向き直る。そう、ここでも人手が足りないとのことだ。結婚式当日は大きなウエディングケーキだけでなく、普通に料理も出てくるのでそちらの調理師には頼めない。残るは料理の出来るメイドや侍従となるのだが……と、二人の女性を思い浮かべた。
一人は孤児院にいる。もう一人は、先日、一足早くにアンバー領へ足を運びたいという手紙がきていた。
優秀な二人がいれば……もしかして?と話すと、それなら!とキティは頷いた。
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