1,204 / 1,480
甘いお菓子を食べたいわ
しおりを挟む
それぞれに仕事があるので、今日は解散となった。元々、イチアから報告書は逐一届いていたので、その確認をするために集まったのだが、最終的に先立つものと人手に阻まれる結果となった。
みなが出ていった執務室に残っていたウィルとセバスが疲れたと机に突っ伏している私を見て笑っていた。
「そうやっていると、威厳も何もない」
「元々ありませんけど?」
「……あるでしょ?公が後ずさりするくらいには」
友人である二人と軽口を叩いているとホッとする。どうしても、みなで集まると公爵として接しないといけない。私がどれほど突拍子のないことを言ったとしても、そこは周りが大人の対応をしてくれるのだから甘えてしまう。
「アンナリーゼ様は最近、甘いものを食べましたか?」
「……あんまり。忙しくて全然食べてない」
「生クリームがあれほど好きだったのに?」
「……領地改革が落ち着くまではと思って、絶っていたのよ……解禁したい。甘い甘い生クリーム!」
「すればいいじゃん?セバスの結婚式もあることだし、生クリームたっぷりのケーキを作ってもらえば?」
「……それいい!そうしよう!セバス、スポンジより生クリームが多いケーキでもいいかなぁ?」
「……それはちょっと困る」
眉をハの字にしながら、困ったと表情をこちらに向けてくる。アンバー領の改革があったから高い砂糖をふんだんに使う甘いものは、なるべく控えていた。領地で砂糖を作れるようになった今、それも可能ではあるので消費する側に回りたいとごねてみた。
「本当、好きだよな?」
「生クリーム?」
「そう。どうしてそんなに?」
「あのフワフワがいいでしょ?甘すぎないあの何とも言えない……」
「姫さんはさ、追いクリームとかするからさ……ちょっと引くよね?」
セバスに視線を送るウィルに盛大に頷くセバス。
「追いクリームは必須だよ」
「一回の追いで終わらないじゃん!」
「……確かに。あぁー甘いもの食べたい!」
「じゃあ、せっかくだから、作ったらどう?いろんな種類のケーキとかの甘味。アンジェラ様の誕生日は無理でも、僕の結婚式やお茶会なら、たくさんの種類を選んで食べられるってしてもいいんじゃないかな?」
「選んで食べれる?何それ、おもしろそう!」
「あぁ、それなら、ひとつを小さくしたらどうだ?数食べようと思うと、通常の大きさだったら、ご婦人がたは遠慮するかもしれないし」
「……ひとつを小さくしなくても別腹だよ!」
「それは姫さんだけだから」
呆れかえっているウィルとセバスに抗議をしたが、セバスの発想はおもしろい。今まで、お茶会に出すお菓子は1種類しか出したことがない。いろいろな種類を自分が欲しいもの選べる楽しさが何よりよさそうだ。
「ナタリーに聞いてみようかなぁ?私はいいと思うんだよね。好きなお菓子を選んで食べる」
「たぶん、ナタリーも気に入るんじゃないか?春だから、ベリー系のお菓子がいいだろうな」
「ウィルはベリー系のお菓子なら食べているよね?」
「程よい酸味がいいんだよ。姫さんの好きな甘いだけより」
「……私、甘いのだけじゃないわよ?」
「お菓子全般好きなんでしょ?」
「そう!セバスはよくわかっているわ!」
ニッコリ笑って想像をした。もう、頭の中はいろいろなお菓子が頭の中で踊っている。両手を頬にはぁと熱いため息をついたところで、ナタリーが執務室に戻ってきた。
「……アンナリーゼ様の頬が緩みっぱなしなんだけど、何かあったの?」
ウィルとセバスに聞けば、私の好きそうな話をしていたのだと納得している。ナタリーも少し考えたあと、菓子職人をここに呼びましょうとニコッと笑う。ナタリーも女の子。甘いお菓子は好きなはずだ。
机の上に置いてあるベルをならせば、メイドが着て用事を問う。公都からセバスのウエディングケーキを作るために来てくれている菓子職人のキティが来てくれている。
「キティを呼んでくれるかしら?」
メイドが一礼して出ていったあと、すぐにキティが現れた。ウエディングケーキの試作品を作っているのか、少し頬に粉がついている。
「お呼びでしょうか?」
「うん、キティにお願いがあって……」
「私にできることなら」
「今度のセバスの結婚式やお茶会のお菓子なんだけど……」
私の『お菓子』という言葉にキティは身を引き締めている。
「不手際がございましたか?」
「そうじゃないの。そうじゃなくて……何種類かのお菓子を作ることは可能かしら?」
「何種類もですか?」
「そう。いつもハニーアンバー店で出している多きさの半分くらいのものを」
「なるほど……おもしろい試みですね?」
キティは察したのか頷いている。それと同時に渋い顔もしていた。
「難しいのかしら?」
「難しいといいますか、お菓子は基本的に生ものが多いので、私一人で作るには時間がたりません。焼き菓子中心にするとしても、きっと味だけでなく、目も楽しませたいというのがアンナリーゼ様のご希望でしょう?」
「わかっているのね?キティって。お菓子のことしか考えていないのだと思っていましたわ」
「あはは……ナタリー様、あっていますよ」
ナタリーへ空笑いをしたあと、こちらに向き直る。そう、ここでも人手が足りないとのことだ。結婚式当日は大きなウエディングケーキだけでなく、普通に料理も出てくるのでそちらの調理師には頼めない。残るは料理の出来るメイドや侍従となるのだが……と、二人の女性を思い浮かべた。
一人は孤児院にいる。もう一人は、先日、一足早くにアンバー領へ足を運びたいという手紙がきていた。
優秀な二人がいれば……もしかして?と話すと、それなら!とキティは頷いた。
みなが出ていった執務室に残っていたウィルとセバスが疲れたと机に突っ伏している私を見て笑っていた。
「そうやっていると、威厳も何もない」
「元々ありませんけど?」
「……あるでしょ?公が後ずさりするくらいには」
友人である二人と軽口を叩いているとホッとする。どうしても、みなで集まると公爵として接しないといけない。私がどれほど突拍子のないことを言ったとしても、そこは周りが大人の対応をしてくれるのだから甘えてしまう。
「アンナリーゼ様は最近、甘いものを食べましたか?」
「……あんまり。忙しくて全然食べてない」
「生クリームがあれほど好きだったのに?」
「……領地改革が落ち着くまではと思って、絶っていたのよ……解禁したい。甘い甘い生クリーム!」
「すればいいじゃん?セバスの結婚式もあることだし、生クリームたっぷりのケーキを作ってもらえば?」
「……それいい!そうしよう!セバス、スポンジより生クリームが多いケーキでもいいかなぁ?」
「……それはちょっと困る」
眉をハの字にしながら、困ったと表情をこちらに向けてくる。アンバー領の改革があったから高い砂糖をふんだんに使う甘いものは、なるべく控えていた。領地で砂糖を作れるようになった今、それも可能ではあるので消費する側に回りたいとごねてみた。
「本当、好きだよな?」
「生クリーム?」
「そう。どうしてそんなに?」
「あのフワフワがいいでしょ?甘すぎないあの何とも言えない……」
「姫さんはさ、追いクリームとかするからさ……ちょっと引くよね?」
セバスに視線を送るウィルに盛大に頷くセバス。
「追いクリームは必須だよ」
「一回の追いで終わらないじゃん!」
「……確かに。あぁー甘いもの食べたい!」
「じゃあ、せっかくだから、作ったらどう?いろんな種類のケーキとかの甘味。アンジェラ様の誕生日は無理でも、僕の結婚式やお茶会なら、たくさんの種類を選んで食べられるってしてもいいんじゃないかな?」
「選んで食べれる?何それ、おもしろそう!」
「あぁ、それなら、ひとつを小さくしたらどうだ?数食べようと思うと、通常の大きさだったら、ご婦人がたは遠慮するかもしれないし」
「……ひとつを小さくしなくても別腹だよ!」
「それは姫さんだけだから」
呆れかえっているウィルとセバスに抗議をしたが、セバスの発想はおもしろい。今まで、お茶会に出すお菓子は1種類しか出したことがない。いろいろな種類を自分が欲しいもの選べる楽しさが何よりよさそうだ。
「ナタリーに聞いてみようかなぁ?私はいいと思うんだよね。好きなお菓子を選んで食べる」
「たぶん、ナタリーも気に入るんじゃないか?春だから、ベリー系のお菓子がいいだろうな」
「ウィルはベリー系のお菓子なら食べているよね?」
「程よい酸味がいいんだよ。姫さんの好きな甘いだけより」
「……私、甘いのだけじゃないわよ?」
「お菓子全般好きなんでしょ?」
「そう!セバスはよくわかっているわ!」
ニッコリ笑って想像をした。もう、頭の中はいろいろなお菓子が頭の中で踊っている。両手を頬にはぁと熱いため息をついたところで、ナタリーが執務室に戻ってきた。
「……アンナリーゼ様の頬が緩みっぱなしなんだけど、何かあったの?」
ウィルとセバスに聞けば、私の好きそうな話をしていたのだと納得している。ナタリーも少し考えたあと、菓子職人をここに呼びましょうとニコッと笑う。ナタリーも女の子。甘いお菓子は好きなはずだ。
机の上に置いてあるベルをならせば、メイドが着て用事を問う。公都からセバスのウエディングケーキを作るために来てくれている菓子職人のキティが来てくれている。
「キティを呼んでくれるかしら?」
メイドが一礼して出ていったあと、すぐにキティが現れた。ウエディングケーキの試作品を作っているのか、少し頬に粉がついている。
「お呼びでしょうか?」
「うん、キティにお願いがあって……」
「私にできることなら」
「今度のセバスの結婚式やお茶会のお菓子なんだけど……」
私の『お菓子』という言葉にキティは身を引き締めている。
「不手際がございましたか?」
「そうじゃないの。そうじゃなくて……何種類かのお菓子を作ることは可能かしら?」
「何種類もですか?」
「そう。いつもハニーアンバー店で出している多きさの半分くらいのものを」
「なるほど……おもしろい試みですね?」
キティは察したのか頷いている。それと同時に渋い顔もしていた。
「難しいのかしら?」
「難しいといいますか、お菓子は基本的に生ものが多いので、私一人で作るには時間がたりません。焼き菓子中心にするとしても、きっと味だけでなく、目も楽しませたいというのがアンナリーゼ様のご希望でしょう?」
「わかっているのね?キティって。お菓子のことしか考えていないのだと思っていましたわ」
「あはは……ナタリー様、あっていますよ」
ナタリーへ空笑いをしたあと、こちらに向き直る。そう、ここでも人手が足りないとのことだ。結婚式当日は大きなウエディングケーキだけでなく、普通に料理も出てくるのでそちらの調理師には頼めない。残るは料理の出来るメイドや侍従となるのだが……と、二人の女性を思い浮かべた。
一人は孤児院にいる。もう一人は、先日、一足早くにアンバー領へ足を運びたいという手紙がきていた。
優秀な二人がいれば……もしかして?と話すと、それなら!とキティは頷いた。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
悲恋を気取った侯爵夫人の末路
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。
順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。
悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──?
カクヨムにも公開してます。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる