1,202 / 1,513
イチアの報告Ⅵ
しおりを挟む
「方々をまわりましたが、やはり穀倉地というだけあって、麦畑が全体的に多くなってきましたね?」
「そうよね。副産物てきにいもにも手を出しているけど、まだ、いうほどの需要がないのよ」
「腐りにくいうえに、二度もとれるなんて、貯蔵食物としてはいいと思うんですけどね……」
「対外的には、なかなか売れないわね?」
「今度の春は、いもをメインに売る方向にしてはいかがですか?畑も増えてきているようですし」
領地の方々を見て回ったのだからわかるだろう。麦を中心に、葡萄、いも、砂糖、紅茶がこの領地を代表する農作物だ。麦は他領にも売り込みが終わり、少しずつではあるが、外からお金が入ってくるように今年からなる予定だ。中には、すでに取引をしているところもあるが、領地の底上げを考えるなら、領地内だけのお金の流通では難しい。ハニーアンバー店を通して外のお金が入ってきているが、今後は麦を中心に資金調達が出来ることを嬉しく思う。
「ハニーアンバー店の喫茶で、いもを使ったおかしなどできないのでしょうか?」
「そうすれば、売れるかしら?」
「必ず。流行の発信源はハニーアンバー店ですからね。できれば、今度のお茶会にもいもの使ったおかしをお願いできますでしょうか?」
「……わかった。聞いておくわ!」
イチアからの提案で、いもについても今後売れる方法を考えることになった。私なら、自身が楽しむだけで終わりそうなのにと感心する。
「おかしだけじゃなくてもいいわね?それこそ、セバスの結婚式の料理として何品か入れさせてもらってもいいかしら?」
「もちろんだよ。アンバー領やコーコナ領で次発信したいものがあれば、上手に混ぜてくれるといいよ」
「……セバスの結婚式なのに」
「結婚式だからじゃない?アンナリーゼ様の結婚式のあと、あのウェディングドレスが流行ったって知っていますか?」
「そうだったの?」
セバスがこくんと頷く。当時次期公爵夫人として注目を集めていた私のドレスは、とても注目されていたらしい。同時期に結婚式をした花嫁たちは、私のウェディングドレスを真似る女性が多かったというのを聞いて嬉しくなる。
「効果的な宣伝の場があるなら、使うべきだよ」
「犠牲になっているとは思わないのですか?」
「アデルはどうしてそう思うんだい?僕とウィルは確かにアンナリーゼ様からお給金をもらっていないけど、領地のためになるなら貢献したいと思っているよ」
「……アンナ様への忠誠心は素晴らしいですね」
「忠誠心か。まぁ、ちょっと違うけど……似たようなものだな」
「アデルが思っているようなことはないよ。いいように利用されているなんて思ったことないし。アンナリーゼ様はどんどん新しいことへ挑戦していっている。その全てがいい結果を残しているかといえばそうではないから、僕らもこうして、次の手を打つための模索をずっとしているんだよ」
「……さすがというべきか」とイチアが呟いた。領地を回って見て、感じたことも多いことだろう。イチアを見つめると口を開いた。
「アデルは領地を回ってみて、どう感じた?」
「……いつもアンナ様と回っていますが、平和な領地だなといつも思っています。盗賊がでることもないし、山賊もいない。そういうところは評価するべきところですよね?」
「確かに。いいところに目がいったね?さすが、元近衛。じゃあ、どうしてそういう盗賊たちがいないと思う?」
「……警備兵ですか?今は近衛も土木工事には参加してますが……」
「近衛が領地にいるってだけで、確かに抑止力になるね」
「他にもあるって表情ですね?」
イチアを見ながらアデルは考えているようだ。
「……生活が潤っているから?」
「大雑把に言えばそう。アンバー領は国の中でも優秀な領地になっているんだ。学都を目指すとアンナリーゼ様がおっしゃった通り、読み書きができる人が9割以上出来る。領地のどこか必ずあるはずの貧民街がこの領地にはないというのが、領地が発展していっている証拠だよ」
「言われてみれば、ないな?姫さん、アンバーには元々なかったわけ?」
「あったわよ?普通の領地なら、1つ2つは抱えているものなの。私が来たときのアンバー領は横並びで底にいたから、変わっていく領地には必要ないでしょ?」
「掃除と一緒にとっぱらったのか。貧民街との境界線を」
ウィルの言葉に頷いた。アンバー領は広大である。そのひとつひとつを回り、ゴミを集め、綺麗にした経緯がある。そのときに、整理したのだ。そういう意識を植えさせることなく、領民が手を取り合って仕事をする。領地全体をひとつの店として働いて貰っているので、職種は多く業務も多岐に渡る。そのたびに領民が手伝ってくれるのだ。雇う側としては、多少の採用不採用は必要なので、軽い試験をしている。
「さすがです。アンナリーゼ様」
最悪の領地から抜け出せた安心感のおかげで、今、みなが協力してくれているだと、改めて胸にしまう。
私にできることは、領地に明るい知らせを話すだけ
「そうよね。副産物てきにいもにも手を出しているけど、まだ、いうほどの需要がないのよ」
「腐りにくいうえに、二度もとれるなんて、貯蔵食物としてはいいと思うんですけどね……」
「対外的には、なかなか売れないわね?」
「今度の春は、いもをメインに売る方向にしてはいかがですか?畑も増えてきているようですし」
領地の方々を見て回ったのだからわかるだろう。麦を中心に、葡萄、いも、砂糖、紅茶がこの領地を代表する農作物だ。麦は他領にも売り込みが終わり、少しずつではあるが、外からお金が入ってくるように今年からなる予定だ。中には、すでに取引をしているところもあるが、領地の底上げを考えるなら、領地内だけのお金の流通では難しい。ハニーアンバー店を通して外のお金が入ってきているが、今後は麦を中心に資金調達が出来ることを嬉しく思う。
「ハニーアンバー店の喫茶で、いもを使ったおかしなどできないのでしょうか?」
「そうすれば、売れるかしら?」
「必ず。流行の発信源はハニーアンバー店ですからね。できれば、今度のお茶会にもいもの使ったおかしをお願いできますでしょうか?」
「……わかった。聞いておくわ!」
イチアからの提案で、いもについても今後売れる方法を考えることになった。私なら、自身が楽しむだけで終わりそうなのにと感心する。
「おかしだけじゃなくてもいいわね?それこそ、セバスの結婚式の料理として何品か入れさせてもらってもいいかしら?」
「もちろんだよ。アンバー領やコーコナ領で次発信したいものがあれば、上手に混ぜてくれるといいよ」
「……セバスの結婚式なのに」
「結婚式だからじゃない?アンナリーゼ様の結婚式のあと、あのウェディングドレスが流行ったって知っていますか?」
「そうだったの?」
セバスがこくんと頷く。当時次期公爵夫人として注目を集めていた私のドレスは、とても注目されていたらしい。同時期に結婚式をした花嫁たちは、私のウェディングドレスを真似る女性が多かったというのを聞いて嬉しくなる。
「効果的な宣伝の場があるなら、使うべきだよ」
「犠牲になっているとは思わないのですか?」
「アデルはどうしてそう思うんだい?僕とウィルは確かにアンナリーゼ様からお給金をもらっていないけど、領地のためになるなら貢献したいと思っているよ」
「……アンナ様への忠誠心は素晴らしいですね」
「忠誠心か。まぁ、ちょっと違うけど……似たようなものだな」
「アデルが思っているようなことはないよ。いいように利用されているなんて思ったことないし。アンナリーゼ様はどんどん新しいことへ挑戦していっている。その全てがいい結果を残しているかといえばそうではないから、僕らもこうして、次の手を打つための模索をずっとしているんだよ」
「……さすがというべきか」とイチアが呟いた。領地を回って見て、感じたことも多いことだろう。イチアを見つめると口を開いた。
「アデルは領地を回ってみて、どう感じた?」
「……いつもアンナ様と回っていますが、平和な領地だなといつも思っています。盗賊がでることもないし、山賊もいない。そういうところは評価するべきところですよね?」
「確かに。いいところに目がいったね?さすが、元近衛。じゃあ、どうしてそういう盗賊たちがいないと思う?」
「……警備兵ですか?今は近衛も土木工事には参加してますが……」
「近衛が領地にいるってだけで、確かに抑止力になるね」
「他にもあるって表情ですね?」
イチアを見ながらアデルは考えているようだ。
「……生活が潤っているから?」
「大雑把に言えばそう。アンバー領は国の中でも優秀な領地になっているんだ。学都を目指すとアンナリーゼ様がおっしゃった通り、読み書きができる人が9割以上出来る。領地のどこか必ずあるはずの貧民街がこの領地にはないというのが、領地が発展していっている証拠だよ」
「言われてみれば、ないな?姫さん、アンバーには元々なかったわけ?」
「あったわよ?普通の領地なら、1つ2つは抱えているものなの。私が来たときのアンバー領は横並びで底にいたから、変わっていく領地には必要ないでしょ?」
「掃除と一緒にとっぱらったのか。貧民街との境界線を」
ウィルの言葉に頷いた。アンバー領は広大である。そのひとつひとつを回り、ゴミを集め、綺麗にした経緯がある。そのときに、整理したのだ。そういう意識を植えさせることなく、領民が手を取り合って仕事をする。領地全体をひとつの店として働いて貰っているので、職種は多く業務も多岐に渡る。そのたびに領民が手伝ってくれるのだ。雇う側としては、多少の採用不採用は必要なので、軽い試験をしている。
「さすがです。アンナリーゼ様」
最悪の領地から抜け出せた安心感のおかげで、今、みなが協力してくれているだと、改めて胸にしまう。
私にできることは、領地に明るい知らせを話すだけ
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。


結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる