ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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イチアの報告Ⅴ

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「じゃあ、街道の方はあと少しって感じなんだね?」
「そうですね。もうほとんど終わりが見えている……そんな感じです」
「春に間に合いそうね」
「そこからはどうするのですか?」
「二手に別れてもらおうかと考えているわ」
「それは?」


 イチアが聞き返してくるので、バニッシュ領のことを話すと、なるほどと頷いた。


「主要な道だけになると思うのだけど、そこの整備ね。うちとの取引もあるから、なるべく早く、終わらせたいところよ?」
「その点については、次のお茶会で話合えますね?」
「そうだね。人数は多くさけないからと伝えれば、バニッシュ領からも人手をだしてくれそうよ?」
「なるほど、それなら、あちらへの労力は最小限ですみますね」


 コクっと頷くと、さすがだねとセバスに言われる。お金は欲しいが、もちろん、領地にも人が必要だ。新しい町を作っている最中なので、いったん、石畳の道を作っている作業員を纏めてあの場へと送りたい。その前に、お疲れさまの労いも必要だろう。


「1つの事業が終われば、すぐにでも新しいことを考えているんですね?」
「そうでもないわ。動いてくれる人は必要なのよ」
「たしかに、近衛の尽力はありがたいわ。街道が領地内完成したら、少し休みを与えましょう」
「姫さんが嫌じゃなければ、領地限定、アンナリーゼ杯やってくれないかな?」


 ウィルの提案に少し驚きつつ、構わないわよ?と答えた。そこにどんな意図があるのだろう?と問えば、単純に力が伸びたのか確認の意味があるらしい。


「そういえば……ここに来ている隊員はウィルの大隊が多いものね?」
「そう。それで、自分の力がどこまで伸びたのか……戦ってみたいのだとよ」
「土木工事でつけた力ですか……すごそうですけど、アンナリーゼ様は勝てますか?」
「……私も出る前提?」
「俺もでる前提」
「……ウィルがただ、暴れたいだけなんじゃ」
「とはいえ、土木工事や農作業の傍ら、鍛えていたのは事実だし叶えてやってほしい」
「……考えておくわ。でも、ウィルが出るなら、私でないから」


 そんな話をすれば、大人げない大人が一人、「俺も」と言い始めるだろう。その前に言っておくことににした。


「ノクトもダメだよ?ウィルと打ち合えばいいじゃない!」
「その手もあったか!」


 ノクトはニヤッと笑い、ウィルは若干引き気味に苦笑いしていた。私の気持ちもわかったであろう。その話を聞いて、ジョージアが止めに入った。


「公爵に万が一があってはダメだから、アンナの出場は認められないな」
「真剣じゃないですから、大丈夫ですよ?」
「アンナは強いから、相手の力量を見誤ることもあるだろ?それなら、まだ、実力の知れているウィルと打ち合いをしてくれたほうがいい」
「……ウィルとですか?」
「あぁ、ダメなのかい?」
「ダメではないですけど……私がでないというほうがよさそうですね?」
「そうしてくれると嬉しい」


 心配性のジョージアに止められてしまったので、ウィルからの提案のうち、私の出場だけが無しになった。ただ、その試合を見に行くことだけは、許可されたので、ご褒美を渡すかかりになりそうだ。


「ウィル様の提案、さぞかし喜ばれますね。近衛の方々は強くなりたくて、この領地に来ている聞いているので」
「そうね。その名目も含め、公に借りたのだから、入れ替えの前に、腕の方は見ておいたほうが良いかもしれない」
「公に文句言われないためにも」


 クスクス笑うとみなが私と公のやり取りを思い浮かべているようだった。


「あと、水車の話をしても?」
「えぇ、かまわないわ!」
「昨年より取り入れているものですが、なかなかいい具合に動いているようですね。製粉技術がかなり向上していると聞きました」
「そうでしょ?それだけで、麦として食べられる量が増えるのよね。私もビックリするくらいの成果だわ」
「食べ物は領民の生活に直結しますからね。今年は、南の領地、近隣領地、ウィル様やセバス様のご実家、エルドアへの輸出もあるとか」
「そうなの。少し手を広げすぎたかな?って反省はしているのだけど……」
「じゅうぶんな量を見込んでいるので大丈夫です。畑の様子も聞けましたが、肥料や品種改良など、進んで取り入れているおかげもあるようですね。農作物は順調ですね」
「そうね。天候に左右される部分ではあるけど、この春もうまく収穫できれば、大きな金額が動く商談ができると思うの。商人の方はそのつもりでいてちょうだい」


 ビルたちのほうを見ると頷いた。ニコライにも話をしてくれるだろう。他にも優秀なアンバー領の商人がいるので、そちらにも根回しをしていてくれるはずだ。


「この地を戦場にすることだけは許されないから。一大穀倉地だからね」


 みなが頷いた。やはり、インゼロとの関係の話になると緊張がはしるが、今はただ、イチアの感じたアンバー領を聞けば嬉しくて頬が緩みそうである。
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