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イチアの報告Ⅱ
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「ミネルバの話は直接聞けたかしら?」
「もちろんです。やはり、病が発症したことも考えて、ローズディアも陸路の封鎖……とまではいかずとも、帝国に対して厳しい処置をとることは想定されていましたよ」
「さすが、黒の貴族の正妻って感じだね」
「確かに。肝が据わってないと、黒の貴族の伴侶にはなれないんじゃない?」
ウィルとセバスがミネルバのことを話しているの聞いて、ジョージアが頷いている。
「二人とも、あのご夫人はとてもしっかりした方でしたよ?私的には、誰かの奥様とどこかの領主様を思い浮かべましたけどね?」
イチアがミネルバに相対した感想をいうと、みなが私の方を見てくる。誰かの奥様は、きっとノクトの妻である公爵夫人のことだろう。どこかの領主というのは、聞かなくてもみなの視線でわかる。私のことだ。
「ミネルバほど肝は据わっていませんよ?」
「そんなことないですよ!アンナリーゼ様が年を重ねていけば、きっとあのご夫人のようになると……私どもは確信しております!」
ビルとユービスが私の将来はミネルバのようになるという。確かにしっかりしているうえに、采配上手な彼女のようになれるなら嬉しいような気もするが、私には私のやり方しかできない。
ただただ、前を向いて確実に一歩ずつしかできないのだ。
「私はあれほどの手腕はないわよ?」
「あるとしたら、人誑しだな。すぐ、姫さんの手のひらの上で転がされているしな」
ウィルが茶化すので睨むと怖い怖いとすっこんでくれる。
「それで?ミネルバの予想はやはり水路だと考えているのかしら?」
「そのようですね。港町でもあるバニッシュ領ですから、領地を守るために大型船や小型船の軍事利用出来る船がほしいようでですね。本国に連絡はしているそうですが、何分、山を隔てた遠いところからであれば、物資が届くと期待しない方がいいらしいです」
「そうすると……独自入手しかないのよね?」
私はうーんと唸っていると、何が問題なんだ?とジョージアだ。ジョージアは小競り合いにも参加したことがないので、わからないようだ。説明をすると、まずいじゃないか!と驚きの声をあげた。
「アンナは知っていたのかい?」
「もちろんですわ!元々水路からの上陸を想定しているのです」
「じゃあ、港町防衛をすれば、船なんていらないよね?」
「それでは、領民の生活が守られません」
「守られない?」
「出来ることなら、バニッシュ領に一歩も足を踏み入れることがないことを考えています」
「そんなことできればいいけど……」
「そうですね。そのために外海にいるあいだにインゼロの船を落とすことが肝心なんですよ」
「姫さんのいうことはわかるけど、実際船ってどうなんだろう?大人数を運ぶには必要だけど」
「そこはできるの?」
「やらないといけないことだわ。船の調達については、あてがあるから大丈夫そう。インゼロにも聞いてみようと思っているの。バニッシュ領の次はアンバー領だからうちの準備も怠るわけにいかないわ!」
それぞれの必要物資の話をしていく。船については、設計をしている段階とは言っているが、いつ必要になるかわからない。兄に相談すれば、船は確保できるだろう。妹の私のお願いは聞いてくれるから。
「バニッシュ領も、本国へ助けを求めても無しのつぶてらしいので、強力体制は必要ですね。そういうアンバー領とのやり取りをするための窓口が欲しいと言っていました。セバスにお願いしますか?」
「いいえ。セバスに経験を積むいい機会だと思うけど、公都に戻らないといけないから、指揮権はないのよね。だから、イチアとアデル。あなたたち二人に任せたいわ」
「私ですか?」
イチアもアデルも驚いているが、適任でだと思う。イチアは腐っても常勝将軍の軍師。インゼロ帝国の攻め方なんて、目を瞑っても理解できるだろう。武の方の関係ではアデルの他にはいないだろう。リリーと連携をとって動いてくれるはずだと微笑めば、イチアとアデルはお互いを見て小さくため息をついた。
どうやら、諦めてくれたようで、何よりだと微笑んでおいた。
「もちろんです。やはり、病が発症したことも考えて、ローズディアも陸路の封鎖……とまではいかずとも、帝国に対して厳しい処置をとることは想定されていましたよ」
「さすが、黒の貴族の正妻って感じだね」
「確かに。肝が据わってないと、黒の貴族の伴侶にはなれないんじゃない?」
ウィルとセバスがミネルバのことを話しているの聞いて、ジョージアが頷いている。
「二人とも、あのご夫人はとてもしっかりした方でしたよ?私的には、誰かの奥様とどこかの領主様を思い浮かべましたけどね?」
イチアがミネルバに相対した感想をいうと、みなが私の方を見てくる。誰かの奥様は、きっとノクトの妻である公爵夫人のことだろう。どこかの領主というのは、聞かなくてもみなの視線でわかる。私のことだ。
「ミネルバほど肝は据わっていませんよ?」
「そんなことないですよ!アンナリーゼ様が年を重ねていけば、きっとあのご夫人のようになると……私どもは確信しております!」
ビルとユービスが私の将来はミネルバのようになるという。確かにしっかりしているうえに、采配上手な彼女のようになれるなら嬉しいような気もするが、私には私のやり方しかできない。
ただただ、前を向いて確実に一歩ずつしかできないのだ。
「私はあれほどの手腕はないわよ?」
「あるとしたら、人誑しだな。すぐ、姫さんの手のひらの上で転がされているしな」
ウィルが茶化すので睨むと怖い怖いとすっこんでくれる。
「それで?ミネルバの予想はやはり水路だと考えているのかしら?」
「そのようですね。港町でもあるバニッシュ領ですから、領地を守るために大型船や小型船の軍事利用出来る船がほしいようでですね。本国に連絡はしているそうですが、何分、山を隔てた遠いところからであれば、物資が届くと期待しない方がいいらしいです」
「そうすると……独自入手しかないのよね?」
私はうーんと唸っていると、何が問題なんだ?とジョージアだ。ジョージアは小競り合いにも参加したことがないので、わからないようだ。説明をすると、まずいじゃないか!と驚きの声をあげた。
「アンナは知っていたのかい?」
「もちろんですわ!元々水路からの上陸を想定しているのです」
「じゃあ、港町防衛をすれば、船なんていらないよね?」
「それでは、領民の生活が守られません」
「守られない?」
「出来ることなら、バニッシュ領に一歩も足を踏み入れることがないことを考えています」
「そんなことできればいいけど……」
「そうですね。そのために外海にいるあいだにインゼロの船を落とすことが肝心なんですよ」
「姫さんのいうことはわかるけど、実際船ってどうなんだろう?大人数を運ぶには必要だけど」
「そこはできるの?」
「やらないといけないことだわ。船の調達については、あてがあるから大丈夫そう。インゼロにも聞いてみようと思っているの。バニッシュ領の次はアンバー領だからうちの準備も怠るわけにいかないわ!」
それぞれの必要物資の話をしていく。船については、設計をしている段階とは言っているが、いつ必要になるかわからない。兄に相談すれば、船は確保できるだろう。妹の私のお願いは聞いてくれるから。
「バニッシュ領も、本国へ助けを求めても無しのつぶてらしいので、強力体制は必要ですね。そういうアンバー領とのやり取りをするための窓口が欲しいと言っていました。セバスにお願いしますか?」
「いいえ。セバスに経験を積むいい機会だと思うけど、公都に戻らないといけないから、指揮権はないのよね。だから、イチアとアデル。あなたたち二人に任せたいわ」
「私ですか?」
イチアもアデルも驚いているが、適任でだと思う。イチアは腐っても常勝将軍の軍師。インゼロ帝国の攻め方なんて、目を瞑っても理解できるだろう。武の方の関係ではアデルの他にはいないだろう。リリーと連携をとって動いてくれるはずだと微笑めば、イチアとアデルはお互いを見て小さくため息をついた。
どうやら、諦めてくれたようで、何よりだと微笑んでおいた。
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