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イチアの報告

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「アンナリーゼ様に昨日バニッシュ夫人からの手紙は渡しましたよね?」
「えぇ、読みました。内容は知っていて?」
「もちろんです。でも、アンナリーゼ様から聞かせてください」


 イチアはミネルバからの手紙の内容をみなに伝えるようにお願いしてきた。こちらから書いた内容への返事を先にいうことにする。


「なんて書いてあったの?」
「エールからの要望でお茶会への招待なのよ。もちろん来てくれるって」
「確か、ヨハン教授のところへ向かうときにあったんだっけ?」
「会ったと言うか、つけられていた……が正解よね?アデル」


 こっそり部屋に入ってきたアデルに向かって話しかけると、苦笑いをしている。アデルは正式にアンバー領の警備隊の一員で私の護衛ではあるが、こういう集まりはお呼びではない。あとからウィルに伝えられることが多いのだが、イチアの視察に同行していたので、呼びだされていたのだろう。
 入ってきたことに気が付いた私に驚いているのか、しどろもどろになっている。


「大丈夫?」
「……はい、すみません。黒の貴族のことですよね?確かに、待ち伏せというよりかは、いつ話しかけるかと探りを入れられていた気がします」
「……アンナは、本当にいろんな人を惹きつけるよね……」


 大きなため息をつくジョージアが、ウィルたちだけでなく、ノクトとイチアを見ていた。確かに、私の周りは、いつもの賑やかではある。


「そうですね?私の魅力というわけでもありませんが」
「姫さんはあっちこっちと首を突っ込みすぎるのがダメなんだよ」
「ウィルに言われたくないわよ?」
「まぁまぁ、抑えて。ウィルもアンナリーゼ様を茶化さない。続きが聞けないだろ?」
「わかったよ、セバス」


 引き下がるウィルを軽く睨み、ミネルバの返事の続きを読んだ。アンじゃらの誕生日会やセバスの結婚式にまでどうかと誘いを出していたのだ。それには狙いがあるのだが、乗ってくれるらしい。


「アンジェラの誕生日もセバスの結婚式も参加してくださるそうよ。準備はしないとね」
「セバスの結婚式ならすでにお二人の席を押さえてありますよ」
「さすがナタリー!」


 私がナタリーを褒めると、今度はノクトが口を開いた。


「セバスの誕生日まで呼ぶのか?」
「えぇ、そうよ?」
「何のために?インゼロ対策のため。この領地んも間者がいるのはノクトは知っているよね?」
「あぁ、確かに。ヒーナが監視対象として見つけているだけで三人はいるらしいな。海の経路の話をしているのか?」
「そう。その話をね?立派な軍艦があるインゼロ帝国に対して、アンバー領もバニッシュ領もそのたぐいは手に入れてないからね」
「もし海上での戦いになったら……」
「それを考えるために、ミネルバが来てくれるのよ」


 そう言うと納得したかのようなノクト。これは、アンバー領とバニッシュ領の共同に土地を守ろうという話をする時間なのだ。


「なるほど?祝い事の中になら密談も可能というわけだ」
「得意そうな話だね?僕はそのうちの1つは参加出来そうにないけど?」
「セバスは主役だろ?」
「そうだけど、個人的には気になるよね。どんな話をするのか」
「インゼロ帝国の現状、軍艦は最低でも数隻は必要だとおもうが……用意はしていないのだろう?」


 みなが私を見てくるので、えぇと正直に答えるしかない。今の手持ちでは、正直心もとないなと考えているからこんな場を用意せざるえなかったのだ。ミネルバのほうも何かを掴んでいるのか、今回の話に乗ってきたのだが、みなの意見も聞かないといけない。


「どう思う?ミネルバに話す内容としては……」
「こちらの掴んでいる情報を出しても問題はないだろ?」
「むしろ出さないと、第一防衛はどう考えてもバニッシュ領の港になるだろうし」
「数ヶ月で軍艦を手に入れるのは難しいだろ?」


 海からの襲撃に備え、話合うような雰囲気だが、まずは、ミネルバへの開示の話をしたい。エールもののらりくらりとした性格ではあるが、ミネルバはよくできた女性だ。そんな彼女が、領地のために考えていることもあるだろう。何かあれば、アンバー領を一時避難場所にしたいという話をしてくる可能性もある。そうすると隣の領地だからこそ、受け入れることも考えなければならない。


「その話合いってさ、夜にするつもり?」
「そうね。そのつもり」
「ならさ、ちゃんと祝い事は祝ってやれよ?お嬢の誕生日だし、セバスの結婚式なんだから。一生にその日は一回しかないんだからさ?」


 もちろんよ!お祝い優先ではあるわ!というと、みなが頷く。領地のことばかりだと心配してくれたらしいが、子どもの誕生日と友人の結婚式、どちらも心の底から祝うに決まっているわ!と笑いかけると、セバスがありがとうと嬉しそうにしていた。
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