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春に向けての準備Ⅸ
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今日はゆっくりめの朝を迎える。子どもたちとご飯を一緒に取れば、アンジェラが話しかけてくる。話し上手になったアンジェラ。ちょっと引っ込み思案のジョージ。黙々と好きなものを口に運んでいるネイトを見ると、三者三様に育っている。エマを始め、侍女やメイドが後ろに控え、目を光らせていた。ジョージアもその様子を微笑ましく見ている。
「そういえば、この後は執務室へ集合なんだよね?」
「そうです。昨日イチアが戻ってきたので報告を」
「領地全土とバニッシュ領を見てきたのか」
「そうなんですよ!バニッシュ領は私もまだ行ったことがないので、ぜひ、足を運びたいところです!」
「……その調子だと、この夏は逆にイチアに任せて、アンナがバニッシュ領へ飛んでいきそうだね?」
「そうかもしれませんね……バニッシュ領は、それほど遠くはありませんし、隣国とはいえ、アンバー領とは身近な関係ですからね」
ジョージアに見抜かれていたのか、私の考えが筒抜けのようだ。このあと、イチアの報告を聞くことになっているのだが、もう、夏の予定が1つ決まりそうだった。ただし、今年はエリーゼのところから双子を預かる予定もあるので、実際はどうなるかわからない。兄からも視察に行きたいと連絡も来ているし、今年も慌ただしくなりそうだ。
「まぁ、隣の領地と仲良くすることは悪いことではないからね。公国内であれば、公もなお喜ぶだろうけど……」
「隣国ですからね。エールとは、いろいろな縁もありますし」
「……いらない縁だと思うけど」
ムスッとしたジョージアに苦笑いをし、先に執務室へ向かうと伝える。さすがに、執務室の主がいないのはダメだろう。帰ってきたものたちへの労いも、昨日はしたが改めてするべきだと、執務室へと急いだ。
「早いですね?」
執務室へ入れば、すでにイチアとセバスが席についている。何事か話合っているようで、机の上には書類が広がっていた。
「もう仕事?これでも、急いできたのに早すぎるわ……」
「仕事をしていないと、何もありませんから」
「僕も同じだよ」
「セバスは違うだろう?」
「そうよ!これからはダリアがいるんだから、程々にして部屋に戻ってくれないと、私がそのうちダリアに叱られるわ!」
「本当だよ。底は自覚しないと……」
私とイチアに指摘をされ、今までどおりではダメなんだと落ち込んだ表情を見せる。
「僕も出来れば早く帰りたいとは思っているんですけどね?ダリアの顔を見るとホッするんだ」
「ほら、仕事は程々に」
「そんなのは、独身の私に任せてくれたらいいんだから!」
「イチアもそんなこと言わないで、休みはちゃんととってよ!」
やいのやいのと言っているうちに、ウィルがやってきた。そのあとを追うようにビルたち商人が入ってきて一番最後に大あくびのノクトとジョージアが注意している。
「ノクト……お酒飲みすぎなんじゃないの?」
「そんなことはないぞ?俺は適量しか飲んでない!」
「その適量は本当の適量の約10倍ですよね?」
ニコニコとしているイチアが怖い。ノクトの妻である夫人は夫の葬式をすでに済ませてはあるが、イチアには逐一報告をさせ、健康に気を付けるようにと口酸っぱくいうように指示が来ているそうだ。
なんだかんだと屋敷を空けることの多かった常勝将軍も夫人には頭があがらなかったり、とても愛されていることがわかる。
「その点、うちのアンナはお酒が全くダメだからいいけど……」
「「「「「どこに飛んでいくかわからない!」」」」」
ジョージアの心配している言葉に続くであろうものは、この部屋のみなが口を揃えて言ってくる。私を見ながらだったので、苦笑いだけしておいた。
「公爵様だって自覚はあんまりありませんよね?」
「あぁ、確かに……人に任せるより自分が動いちゃうって感じ?」
「私たちを信用していないというわけではないのでしょうが、」
「「「「「自分が動きたい!」」」」」
私の性格を正しく知っているので、みなも声も揃えやすいのだろう。心配してくれるのは嬉しいが、ちょっとした嫌がらせではないだろうか?
「それより……イチアの報告を」
「そうですね。こうして無事にみなさまに再び会えたこと嬉しく思います。また、何日も領地を空けてしまい、みなにご迷惑をおかけしました」
「楽しかった?」
「えぇ、とっても。こちらに来てから、駆け足で領地を見て回りましたが……やはり、私の知るアンバー領とは異なり、随分と様変わりしたことに驚きました」
「それはよかったです。私も日に日に変わりゆく故郷をとても好ましく思っていたので」
ビルもイチアに同行をしていたのだが、ここまでの本音は話していなかったようで、イチアの話で嬉しそうにしている。
「まぁ、酷かったときも見てほしかった気もしますけど」
「あぁ、ユービスもかい?」
「もちろんさ!変わったあとだけでなく、前を知っているからこそ、この劇的な変化を感じて欲しい」
「故郷のこととなると、熱く語ってしまいそうです。私たちアンバー領に生まれ育ったところですから」
「それも本にすると良いかもしれないね?後世に、こんな酷い領地があたんだけど、みなで力を合わせればこんなに素晴らしい領地に生まれ変わったという」
「それなら俺が書こう。おもしろそうだ」
ビルとユービスに話をしていれば、ジョージアが割って入る。おもしろそうだと言っているので、本当に書くかもしれない。
『アンナの功績』という題名で褒めたたえるようなことだけはやめてくれと先に釘をさせば、ニコニコとしていたジョージアとビルとユービスがダメ?と視線で訴えてくるので、首だけ横に振っておく。きっと、止めたって、書くに違いないと思うと、恥ずかしくてもう表を歩けなくなるんじゃないだろうか?と焦る気持ちが湧いてきた。ウィルとセバスは、協力しますと半笑いなので、友人の裏切りにあったと半泣きで訴えてみたが、楽しみにしています!とニコライが指で硬貨の形をとってニッコリ笑った。
「そういえば、この後は執務室へ集合なんだよね?」
「そうです。昨日イチアが戻ってきたので報告を」
「領地全土とバニッシュ領を見てきたのか」
「そうなんですよ!バニッシュ領は私もまだ行ったことがないので、ぜひ、足を運びたいところです!」
「……その調子だと、この夏は逆にイチアに任せて、アンナがバニッシュ領へ飛んでいきそうだね?」
「そうかもしれませんね……バニッシュ領は、それほど遠くはありませんし、隣国とはいえ、アンバー領とは身近な関係ですからね」
ジョージアに見抜かれていたのか、私の考えが筒抜けのようだ。このあと、イチアの報告を聞くことになっているのだが、もう、夏の予定が1つ決まりそうだった。ただし、今年はエリーゼのところから双子を預かる予定もあるので、実際はどうなるかわからない。兄からも視察に行きたいと連絡も来ているし、今年も慌ただしくなりそうだ。
「まぁ、隣の領地と仲良くすることは悪いことではないからね。公国内であれば、公もなお喜ぶだろうけど……」
「隣国ですからね。エールとは、いろいろな縁もありますし」
「……いらない縁だと思うけど」
ムスッとしたジョージアに苦笑いをし、先に執務室へ向かうと伝える。さすがに、執務室の主がいないのはダメだろう。帰ってきたものたちへの労いも、昨日はしたが改めてするべきだと、執務室へと急いだ。
「早いですね?」
執務室へ入れば、すでにイチアとセバスが席についている。何事か話合っているようで、机の上には書類が広がっていた。
「もう仕事?これでも、急いできたのに早すぎるわ……」
「仕事をしていないと、何もありませんから」
「僕も同じだよ」
「セバスは違うだろう?」
「そうよ!これからはダリアがいるんだから、程々にして部屋に戻ってくれないと、私がそのうちダリアに叱られるわ!」
「本当だよ。底は自覚しないと……」
私とイチアに指摘をされ、今までどおりではダメなんだと落ち込んだ表情を見せる。
「僕も出来れば早く帰りたいとは思っているんですけどね?ダリアの顔を見るとホッするんだ」
「ほら、仕事は程々に」
「そんなのは、独身の私に任せてくれたらいいんだから!」
「イチアもそんなこと言わないで、休みはちゃんととってよ!」
やいのやいのと言っているうちに、ウィルがやってきた。そのあとを追うようにビルたち商人が入ってきて一番最後に大あくびのノクトとジョージアが注意している。
「ノクト……お酒飲みすぎなんじゃないの?」
「そんなことはないぞ?俺は適量しか飲んでない!」
「その適量は本当の適量の約10倍ですよね?」
ニコニコとしているイチアが怖い。ノクトの妻である夫人は夫の葬式をすでに済ませてはあるが、イチアには逐一報告をさせ、健康に気を付けるようにと口酸っぱくいうように指示が来ているそうだ。
なんだかんだと屋敷を空けることの多かった常勝将軍も夫人には頭があがらなかったり、とても愛されていることがわかる。
「その点、うちのアンナはお酒が全くダメだからいいけど……」
「「「「「どこに飛んでいくかわからない!」」」」」
ジョージアの心配している言葉に続くであろうものは、この部屋のみなが口を揃えて言ってくる。私を見ながらだったので、苦笑いだけしておいた。
「公爵様だって自覚はあんまりありませんよね?」
「あぁ、確かに……人に任せるより自分が動いちゃうって感じ?」
「私たちを信用していないというわけではないのでしょうが、」
「「「「「自分が動きたい!」」」」」
私の性格を正しく知っているので、みなも声も揃えやすいのだろう。心配してくれるのは嬉しいが、ちょっとした嫌がらせではないだろうか?
「それより……イチアの報告を」
「そうですね。こうして無事にみなさまに再び会えたこと嬉しく思います。また、何日も領地を空けてしまい、みなにご迷惑をおかけしました」
「楽しかった?」
「えぇ、とっても。こちらに来てから、駆け足で領地を見て回りましたが……やはり、私の知るアンバー領とは異なり、随分と様変わりしたことに驚きました」
「それはよかったです。私も日に日に変わりゆく故郷をとても好ましく思っていたので」
ビルもイチアに同行をしていたのだが、ここまでの本音は話していなかったようで、イチアの話で嬉しそうにしている。
「まぁ、酷かったときも見てほしかった気もしますけど」
「あぁ、ユービスもかい?」
「もちろんさ!変わったあとだけでなく、前を知っているからこそ、この劇的な変化を感じて欲しい」
「故郷のこととなると、熱く語ってしまいそうです。私たちアンバー領に生まれ育ったところですから」
「それも本にすると良いかもしれないね?後世に、こんな酷い領地があたんだけど、みなで力を合わせればこんなに素晴らしい領地に生まれ変わったという」
「それなら俺が書こう。おもしろそうだ」
ビルとユービスに話をしていれば、ジョージアが割って入る。おもしろそうだと言っているので、本当に書くかもしれない。
『アンナの功績』という題名で褒めたたえるようなことだけはやめてくれと先に釘をさせば、ニコニコとしていたジョージアとビルとユービスがダメ?と視線で訴えてくるので、首だけ横に振っておく。きっと、止めたって、書くに違いないと思うと、恥ずかしくてもう表を歩けなくなるんじゃないだろうか?と焦る気持ちが湧いてきた。ウィルとセバスは、協力しますと半笑いなので、友人の裏切りにあったと半泣きで訴えてみたが、楽しみにしています!とニコライが指で硬貨の形をとってニッコリ笑った。
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