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春に向けての準備Ⅲ
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農家は動き出している。春の麦の種まきに向けて。冬のあいだ、休ませていた畑をおこし、肥料を撒いて整えていく。その準備に入ったとサラおばさんから連絡が入った。
「今年もこの時期になりましたね?」
「そうね。今年はどうだろう?種まきにいけるかしら?」
「日程的には可能でしょうが……アンナリーゼ様の予定は詰まりすぎていますから、ちょっと体を休ませる必要がありますよ?」
「……予定ね?セバスの予定はどうなっているの?」
「うーん、僕の方も結構詰まっている感じかなぁ?」
お互いの予定表を机におき、真っ黒になっているのでため息をお互いついた。イチアがまだ戻ってきていないため、セバスの予定はパンパンに詰まっているのだ。
「アンナリーゼ様は酷いですね?」
「……私より、セバスのほうが酷いわよ?今年の春は主役なのに」
「……そうなんですけど、やらないといけないことが多すぎて。ナタリーにも手伝って貰っているし、ロイドも手一杯ですから」
「この中でイチアの仕事はある?」
「もちろんといいたいところですけど、ほとんどないです。何ヶ月も開ける予定で、仕事を片付けていったので。ほとんどが新規の仕事ですかね?」
ため息をつかないだけえらいと思う。領主がこなす仕事とほぼ同等の仕事を持っているのだ。早急に人員を増やしたいと思っても、育っていない人を配置すると、大惨事が起きることもある。
私は机の上にあるベルを鳴らした。メイドが入ってきて、要件を問うてくる。
「ウィルを呼んでほしいのだけど」
かしこまりましたと部屋から出て行き扉が閉まる。その瞬間にセバスはこちらを見ていた。
「驚くことでもないでしょ?ウィルも貴族の令息ですからね。剣ばかり振っているわけじゃないのよ?」
「そうですけど……大丈夫ですか?」
「もちろん!ノーラ!」
「はい、なんでしょうか?」
「こっちに来てちょうだい」
「……ノーラ?えっ?大丈夫なんですか?」
「ウィル次第ってとこだけど。そろそろ、招待状も終わったかしら?」
「はい。あと少しです」
「どれくらいで終わる?あと1時間もあれば、終わるかと」
だそうよ?とセバスに言うと、軽く頭を振っていた。セバスにどの仕事が振れるか別の紙に書いてもらう。その項目は10。私はそこからあと3項目を追記した。
「アンナリーゼ様!それは、さすがにノーラでは無理です!」
「ノーラに無理ってだけでしょ?」
困惑気味のセバスにニコッと笑いかけると呼んだ?とウィルが執務室へ入ってきた。今日は、非番だったこともあり私服でレオがくっついてきた。
「レオも来たの?」
「あぁ、今、特訓してて」
「なるほどね。じゃあ、レオはそこのソファで待っていて?ウィルはこっち」
レオがソファに座り、ウィルがいつもの席に座る。セバスと私、ノーラもそれぞれ席についた。
「それで?何かあるんだろ?」
「うん、ちょっと手伝ってほしいの」
「手伝う?」
「そう。このうちで出来るものってあるかしら?」
セバスの業務のうち、セバスでなくてもできるものについて書かれた紙を見ながら、唸っている。それからペンを持って、丸をしていった。
「結構、できるのね?」
「まぁ、補佐の予備だから、領地運営のことはそれなりに教えられてはいるけど、さすがに……子爵領とアンバー領は勝手が違いすぎる」
「そこは、ほら……私とノーラが補佐をするから大丈夫」
「それならいいけど?何?これて……」
借りだされた理由を知りたいようで、セバスに予定表を見せるように言った。机に置かれた予定表を見て驚いている。
「……セバス、仕事しすぎ。姫さんもセバスに仕事を任せすぎ」
「ウィル、僕よりアンナリーゼ様の予定表のほうが、ヤバいから」
「はぁ?二人してこんなに真っ黒なわけ?他にいないの?……あぁ、いないのか」
「早急に文官を育てるようにってしているけど、はいそうですかでできるものじゃないし……時間がかかるのよ」
「……そっか。まだ、子どもたちは文字を覚えているところだし、こっちを手伝ってもらうのは難しいわけだ。ロイドのところも収支予算をしてるから、きついって言ってたし」
「そうなのよね。今年は、視察は行かないから、こっちを手伝ってくれる?イチアがいないからこの仕事の量ってわけでもないらしいから」
「……セバスの処理能力をもってしても厳しいのか。ジョージア様も仕事詰めているしな。ここの領地って、本当に領地の成長速度と運営側の成長速度があってなさすぎ」
「なまじアンナリーゼ様が優秀だから、人がいなくても、視察に出ていても、業務が回ってたからね。今年は行事が多いから……」
ウィルが遠い目をしながら、三連ちゃんと呟く。そう、アンジェラの誕生日会から始まり、セバスの結婚式、お茶会と続く。そっちにも人を回しているから、人手がたりないのだ。
「まぁ、ノーラもつけてくれるなら、なんとかなりそうかな?可能だったらさ、レオにも見せてもいい?」
「もちろんいいわよ?どういう道に進んだとしても、役に立つと思うわ!」
レオと呼び寄せて、これからの仕事の話をしている。執務室は、しばらく私とウィルが使うことになりそうで、そこに補佐としてノーラとレオが配置される。どうせなら、ナイトだけは呼ぼうと思い追加で話をした。目まぐるしく、忙しくなりそうだと、セバスの予定表を睨んだ。
「今年もこの時期になりましたね?」
「そうね。今年はどうだろう?種まきにいけるかしら?」
「日程的には可能でしょうが……アンナリーゼ様の予定は詰まりすぎていますから、ちょっと体を休ませる必要がありますよ?」
「……予定ね?セバスの予定はどうなっているの?」
「うーん、僕の方も結構詰まっている感じかなぁ?」
お互いの予定表を机におき、真っ黒になっているのでため息をお互いついた。イチアがまだ戻ってきていないため、セバスの予定はパンパンに詰まっているのだ。
「アンナリーゼ様は酷いですね?」
「……私より、セバスのほうが酷いわよ?今年の春は主役なのに」
「……そうなんですけど、やらないといけないことが多すぎて。ナタリーにも手伝って貰っているし、ロイドも手一杯ですから」
「この中でイチアの仕事はある?」
「もちろんといいたいところですけど、ほとんどないです。何ヶ月も開ける予定で、仕事を片付けていったので。ほとんどが新規の仕事ですかね?」
ため息をつかないだけえらいと思う。領主がこなす仕事とほぼ同等の仕事を持っているのだ。早急に人員を増やしたいと思っても、育っていない人を配置すると、大惨事が起きることもある。
私は机の上にあるベルを鳴らした。メイドが入ってきて、要件を問うてくる。
「ウィルを呼んでほしいのだけど」
かしこまりましたと部屋から出て行き扉が閉まる。その瞬間にセバスはこちらを見ていた。
「驚くことでもないでしょ?ウィルも貴族の令息ですからね。剣ばかり振っているわけじゃないのよ?」
「そうですけど……大丈夫ですか?」
「もちろん!ノーラ!」
「はい、なんでしょうか?」
「こっちに来てちょうだい」
「……ノーラ?えっ?大丈夫なんですか?」
「ウィル次第ってとこだけど。そろそろ、招待状も終わったかしら?」
「はい。あと少しです」
「どれくらいで終わる?あと1時間もあれば、終わるかと」
だそうよ?とセバスに言うと、軽く頭を振っていた。セバスにどの仕事が振れるか別の紙に書いてもらう。その項目は10。私はそこからあと3項目を追記した。
「アンナリーゼ様!それは、さすがにノーラでは無理です!」
「ノーラに無理ってだけでしょ?」
困惑気味のセバスにニコッと笑いかけると呼んだ?とウィルが執務室へ入ってきた。今日は、非番だったこともあり私服でレオがくっついてきた。
「レオも来たの?」
「あぁ、今、特訓してて」
「なるほどね。じゃあ、レオはそこのソファで待っていて?ウィルはこっち」
レオがソファに座り、ウィルがいつもの席に座る。セバスと私、ノーラもそれぞれ席についた。
「それで?何かあるんだろ?」
「うん、ちょっと手伝ってほしいの」
「手伝う?」
「そう。このうちで出来るものってあるかしら?」
セバスの業務のうち、セバスでなくてもできるものについて書かれた紙を見ながら、唸っている。それからペンを持って、丸をしていった。
「結構、できるのね?」
「まぁ、補佐の予備だから、領地運営のことはそれなりに教えられてはいるけど、さすがに……子爵領とアンバー領は勝手が違いすぎる」
「そこは、ほら……私とノーラが補佐をするから大丈夫」
「それならいいけど?何?これて……」
借りだされた理由を知りたいようで、セバスに予定表を見せるように言った。机に置かれた予定表を見て驚いている。
「……セバス、仕事しすぎ。姫さんもセバスに仕事を任せすぎ」
「ウィル、僕よりアンナリーゼ様の予定表のほうが、ヤバいから」
「はぁ?二人してこんなに真っ黒なわけ?他にいないの?……あぁ、いないのか」
「早急に文官を育てるようにってしているけど、はいそうですかでできるものじゃないし……時間がかかるのよ」
「……そっか。まだ、子どもたちは文字を覚えているところだし、こっちを手伝ってもらうのは難しいわけだ。ロイドのところも収支予算をしてるから、きついって言ってたし」
「そうなのよね。今年は、視察は行かないから、こっちを手伝ってくれる?イチアがいないからこの仕事の量ってわけでもないらしいから」
「……セバスの処理能力をもってしても厳しいのか。ジョージア様も仕事詰めているしな。ここの領地って、本当に領地の成長速度と運営側の成長速度があってなさすぎ」
「なまじアンナリーゼ様が優秀だから、人がいなくても、視察に出ていても、業務が回ってたからね。今年は行事が多いから……」
ウィルが遠い目をしながら、三連ちゃんと呟く。そう、アンジェラの誕生日会から始まり、セバスの結婚式、お茶会と続く。そっちにも人を回しているから、人手がたりないのだ。
「まぁ、ノーラもつけてくれるなら、なんとかなりそうかな?可能だったらさ、レオにも見せてもいい?」
「もちろんいいわよ?どういう道に進んだとしても、役に立つと思うわ!」
レオと呼び寄せて、これからの仕事の話をしている。執務室は、しばらく私とウィルが使うことになりそうで、そこに補佐としてノーラとレオが配置される。どうせなら、ナイトだけは呼ぼうと思い追加で話をした。目まぐるしく、忙しくなりそうだと、セバスの予定表を睨んだ。
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