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なんでそんなに楽しそうなわけ?
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「セバスの結婚式だよな?」
「そうだけど?」
「何かしら?」
私とナタリーが当たり前のようにウィルに聞くと、ウィルが引き気味であった。
「普通、セバスとダリアが準備するものだろ?結婚式なんだから……」
「それはそうね?」
「そうともいいわね?」
二人して同じ反応に、ウィルは困った表情を見せてくる。
「なんでそんなに楽しそうなわけ?二人で考えたらいいことは、二人に任せればいいんじゃないの?」
「……そう言われれば、そうね?」
「……だって、何かしたいんだもの」
悪びれることなくしゃしゃり出ていこうとする私とナタリーを止めるがごとく、ウィルに釘を刺される。
「いい?セバスとダリアのは政略結婚で、ダリアを平民に落とさないための苦肉の策だったわけだよ?」
「苦肉の策とか言わないで欲しいわ。セバスが望んで結婚する相手なのに」
「それは、わかっているけど……でも、普通に考えたら、そう言う話になるだろ?」
「なるの?」とナタリーに聞けば、今回のも政治的意図が含まれていると答えた。
「そっか。でも、セバスは例え政略結婚でも、幸せになろうってダリアには言っていたわ。その言葉、政治的なものは一切なくて、セバス本人の心からの言葉だったと思うのよね?」
「……それは、俺もわかっているけど」
「わかっているならいいじゃない」
「いいけど、結婚式の準備くらい、自分たちだけでさせてやれって言ってるの。わかる?」
ウィルが言いたいこともわかるが、私もナタリーも政略結婚しかしたことがなく、全て周りが準備してしまった。今更、そんなことを言われても……困るのだ。
「せめて、ダリアを呼ぶことにすればいいんじゃない?どうせ、何もしていないのだろうし」
ウィルに指摘され、私とナタリーは頷きあった。それから、ダリアを執務室へと呼び寄せた。あまり、アンバー領に来てから、外に出ていなかったためか、顔色がよくない。
「具合の悪いところがある?」と聞けばそうでもないというので、私たちは席を勧め結婚式の話をすることにした。
ダリアは張本人であるので、意見を聞くことにしたのだ。
「ダリアが思う結婚式ってどんなの?私たち、二人の結婚式のことをいろいろと進めようとしたら、ウィルに怒られちゃって……」
「えっ?何?俺、悪者?」
「そういうわけじゃないけど……」
「結婚式の話ですか?」
ダリアは驚いた表情をしている。ただでさえ、私たちが勝手に進めていることもあるし、招待状についてもだ。エルドアの貴族であったダリアも呼びたい人がいるかもしれないと聞くことにする。
「そう。準備をね?子どもたちも手伝ってくれていて」
ダリアが振り向くと、子どもたちも手を止めて微笑んだ。見てと手渡すと、その招待状をしげしげとみている。
「私、こういうことにはとんと疎くって……もし、手伝ってくださるなら、お手伝いしていただけますか?」
「もちろんよ!領地で結婚式をしてくれる人なら、後押しはしっかりさせてもらうわ!」
少し黙ったあと、ダリアは話しかけてくる。やはり、ダリア自身が、エルドアの貴族としての身分を剥奪されていることについて、心の底では不安に思っていることを吐露した。
「そうね。ダリアの心配することはもっともだと思う。セバスは、文官ながらも公から爵位をもらえるほほの活躍をしたのだもの。かたや、廃棄族となればってなるわよね?」
「はい。セバス様の言葉を信じていないわけではないのです。毎日誠実に私に向き合ってくださいますから」
嬉しそうにしているダリアの表情をみれば、二人がそれぞれ歩み寄ろうと努力をしていることが手にとるようにわかった。だからこそ、私たちは応援したいとも思っているし、幸せになる手助けになるのならばと考えていた。それは、ナタリーも同じである。
「私は、特に呼びたい人はいません。あたたかな結婚式の日を迎えられれば、何も」
「そんなこと言って……姫さんとナタリーに任せると、想い出にならないぞ?」
「いえ、本当にそう思っています。先日、ナタリー様からいただいたドレスも素敵でしたし、こちらに来てから、本当に幸せなときを過ごしています。あの日、もし、やり方を間違えていれば、私にはこんな幸せな日々が来ることもなかったでしょう。隣国であるローズディア公国にも迷惑をかけてしまうところでした」
「いいのよ。未然に防げたのだから。それより、結婚式の話。ダリアは呼びたい人はいないの?」
「……はい。私には、そんな人はいません。セバスがいる場所が私の帰る家ですから、今エルドアでのことより、こちらでの関係を強めていきたいです」
「そうよね?そうそう」
ナタリーがやたら笑顔なのが怖い。一体何を考えているのだろうと覗き込むと目があった。
「結婚式が終われば、セバスの夫人として、夜会や茶会に出てもらうこともあるわ。一緒に頑張りましょうね!」
巻き込もうとしているのがわかったときはすでに遅かった。すでにダリアはナタリーに向かって頷いたあとだったのだから。
「そうだけど?」
「何かしら?」
私とナタリーが当たり前のようにウィルに聞くと、ウィルが引き気味であった。
「普通、セバスとダリアが準備するものだろ?結婚式なんだから……」
「それはそうね?」
「そうともいいわね?」
二人して同じ反応に、ウィルは困った表情を見せてくる。
「なんでそんなに楽しそうなわけ?二人で考えたらいいことは、二人に任せればいいんじゃないの?」
「……そう言われれば、そうね?」
「……だって、何かしたいんだもの」
悪びれることなくしゃしゃり出ていこうとする私とナタリーを止めるがごとく、ウィルに釘を刺される。
「いい?セバスとダリアのは政略結婚で、ダリアを平民に落とさないための苦肉の策だったわけだよ?」
「苦肉の策とか言わないで欲しいわ。セバスが望んで結婚する相手なのに」
「それは、わかっているけど……でも、普通に考えたら、そう言う話になるだろ?」
「なるの?」とナタリーに聞けば、今回のも政治的意図が含まれていると答えた。
「そっか。でも、セバスは例え政略結婚でも、幸せになろうってダリアには言っていたわ。その言葉、政治的なものは一切なくて、セバス本人の心からの言葉だったと思うのよね?」
「……それは、俺もわかっているけど」
「わかっているならいいじゃない」
「いいけど、結婚式の準備くらい、自分たちだけでさせてやれって言ってるの。わかる?」
ウィルが言いたいこともわかるが、私もナタリーも政略結婚しかしたことがなく、全て周りが準備してしまった。今更、そんなことを言われても……困るのだ。
「せめて、ダリアを呼ぶことにすればいいんじゃない?どうせ、何もしていないのだろうし」
ウィルに指摘され、私とナタリーは頷きあった。それから、ダリアを執務室へと呼び寄せた。あまり、アンバー領に来てから、外に出ていなかったためか、顔色がよくない。
「具合の悪いところがある?」と聞けばそうでもないというので、私たちは席を勧め結婚式の話をすることにした。
ダリアは張本人であるので、意見を聞くことにしたのだ。
「ダリアが思う結婚式ってどんなの?私たち、二人の結婚式のことをいろいろと進めようとしたら、ウィルに怒られちゃって……」
「えっ?何?俺、悪者?」
「そういうわけじゃないけど……」
「結婚式の話ですか?」
ダリアは驚いた表情をしている。ただでさえ、私たちが勝手に進めていることもあるし、招待状についてもだ。エルドアの貴族であったダリアも呼びたい人がいるかもしれないと聞くことにする。
「そう。準備をね?子どもたちも手伝ってくれていて」
ダリアが振り向くと、子どもたちも手を止めて微笑んだ。見てと手渡すと、その招待状をしげしげとみている。
「私、こういうことにはとんと疎くって……もし、手伝ってくださるなら、お手伝いしていただけますか?」
「もちろんよ!領地で結婚式をしてくれる人なら、後押しはしっかりさせてもらうわ!」
少し黙ったあと、ダリアは話しかけてくる。やはり、ダリア自身が、エルドアの貴族としての身分を剥奪されていることについて、心の底では不安に思っていることを吐露した。
「そうね。ダリアの心配することはもっともだと思う。セバスは、文官ながらも公から爵位をもらえるほほの活躍をしたのだもの。かたや、廃棄族となればってなるわよね?」
「はい。セバス様の言葉を信じていないわけではないのです。毎日誠実に私に向き合ってくださいますから」
嬉しそうにしているダリアの表情をみれば、二人がそれぞれ歩み寄ろうと努力をしていることが手にとるようにわかった。だからこそ、私たちは応援したいとも思っているし、幸せになる手助けになるのならばと考えていた。それは、ナタリーも同じである。
「私は、特に呼びたい人はいません。あたたかな結婚式の日を迎えられれば、何も」
「そんなこと言って……姫さんとナタリーに任せると、想い出にならないぞ?」
「いえ、本当にそう思っています。先日、ナタリー様からいただいたドレスも素敵でしたし、こちらに来てから、本当に幸せなときを過ごしています。あの日、もし、やり方を間違えていれば、私にはこんな幸せな日々が来ることもなかったでしょう。隣国であるローズディア公国にも迷惑をかけてしまうところでした」
「いいのよ。未然に防げたのだから。それより、結婚式の話。ダリアは呼びたい人はいないの?」
「……はい。私には、そんな人はいません。セバスがいる場所が私の帰る家ですから、今エルドアでのことより、こちらでの関係を強めていきたいです」
「そうよね?そうそう」
ナタリーがやたら笑顔なのが怖い。一体何を考えているのだろうと覗き込むと目があった。
「結婚式が終われば、セバスの夫人として、夜会や茶会に出てもらうこともあるわ。一緒に頑張りましょうね!」
巻き込もうとしているのがわかったときはすでに遅かった。すでにダリアはナタリーに向かって頷いたあとだったのだから。
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