ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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いいのですか?

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 話を聞いていたナタリーは私に厳しい表情を向けてくる。さっき、ナイトに言ったことだろう。出来ない約束はするべきではないと。


「できない約束ではないのだけど……ナイトの将来を考えても悪い話ではないわ。それなりに頑張らないといけないことは、ナイト自身もわかっているでしょ?」


 ナイトへ視線を送ると頷いている。カイルたちと一緒に勉強をしているそうで、自身も似た境遇からカイルたちにも言われているらしい。あの四人が目指しているもの、それは、ハニーローズであるアンジェラの侍従。それには、勉強だけではなく、いろいろな経験も必要となるだろう。いずれ、ナイトと同じように城で働いてもらうこともあるだろう。井の中の蛙大海を知らずでは、守るべきものが守れない場合もあるから。私の計画は私だけでなくウィルやセバスも知っている。何かあれば、動いてくれる手はずだ。


「小さな子に、そこまで……」
「食扶持がなければ、ナイトも大人になったとき生活が出来ないわ。ちょっとした仕事斡旋だと思って。読み書き計算ができる人材は、どこへいっても大切にしてもらえる。こんな世の中だからこそ、縋れるものには縋ってでも、生活できるようにしないと」
「アンナリーゼ様らしい考えですわね?」
「そう?ウィルもセバスもそうじゃなくて?ナイトの年には、将来を決めていた……違う?」


 私に話を振られた二人は頷いた。子爵家三男、男爵家五男では、爵位を継ぐことはできない。よほど、上の兄弟に何かなければ、無理なのだ。私は女であったため、いずれ他家へ輿入れすると育てられてきたし、ナタリーもそうだろう。


「女性は婚姻という形で、家を離れることになるけど、男性は違うのよ。ナタリーもわかっているでしょ?」
「……そうですね。そうでした。それなら、早い段階で、準備をすることは、間違っているわけではありませんね」
「子どもらしくいられる時間が少ないのは可哀想に思えるけど、いずれ、どこに行っても困ることのないようにだけ、手をうってあげたかったの。私が出来ることは、それほど多くないし、本人の努力しだいだから」


 ナイトに笑いかけると、頷いた。すでに、どうあるべきかの道標は、少なからず見つけたのだろう。家から弟を連れ出して、逃げてきたのだ。行動力も決断力もあるのだろう。あとは知識だけあれば、生きていくすべは見つかるだろう。


「アンナリーゼ様って、優しいようで厳しいよね?」
「確かに。道は用意してあげたから、あとは自力でがんばりなさいだもんな」
「それでも、こっそり後押しはしてくれるよ?」
「確かに。それが、アンナリーゼ様から離れられない要因なのかもしれないですね?」
「そんなことないぞ?俺は自力で近衛に入った」
「でも、シルキー様のケーキをかけて戦ったときの評価もあったってきいたけど……」
「……やっぱり、それもあるのか?」
「なんだか知らないけど、私のおかげで評価をあげられたなら、感謝してほしいわね?」


 クスクス笑うと、ウィルもはいはいと言って視線をそらしたのである。
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