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何を企んでいるの?
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セバスが席に着き、ノーラに挨拶をする。イチアやロイドを手伝うことはあるが、セバスの仕事を文官見習いたちは間接的にしか手伝っていなかった。社交の季節は領地にいないこともあるが、あの貴族の子息がセバスのことを嫌っていたので、関わらないようしていたそうだ。
「どこから言えばいいかな?僕は、セバスチャン・トライド。男爵位を拝命しているけど、基本的にアンナリーゼ様のお守が仕事かな?」
「……お守ですか?」
困惑気味のノーラに苦笑いをするセバス。私はうんうんと頷くだけなので、余計わからなくなっているようだ。
「僕は、一応、国の文官なんだけど、アンナリーゼ様が学生時代に僕のことを拾ってくれて、そこからのつきあいかな?目を離すと無茶なことばかりするから、お目付け役みたいな感じかな?」
「それはお互い様だと思うけど?」
セバスのほうを見て笑うと、確かにと返ってくる。本当のお目付け役はウィルだよねと笑いあうと不思議そうにノーラがこちらを見てくる。
「あの、男爵位とお聞きしたのですが、パルマ様よりも……」
「一応上司になるのかなぁ?」
「そうね。パルマも文官として必要なことは、ほとんどをセバスから聞いているだろうし、今もセバスが相談役なんでしょ?」
「公都にいるあいだは基本的に向こうで仕事しているからね。その間は常に一緒だよ」
「……そうだったんですね。文官になってから、ずいぶん経ちますが知りませんでした」
「1年のほとんどがアンバー領にいるからね。知らなくて当然じゃないかな?」
セバスに話を振られ、頷いた。そのあとは、ノーラの話をして、研修が終わった後、私の推薦を得てパルマの補佐になりたいということを伝えた。
「僕のところでしばらく勉強をするってことになるね。仕事の進め方を教えたのはディルさんだから、そうだな……ちょっと、考えるよ。パルマは少し特殊だから」
「どういうことですか?」
「パルマは、アンバー公爵家の筆頭執事であるディルさんが育てたんだ。目的は礼儀作法と気配り。執事として相当優秀な人材なんだよ」
「執事としてですか?」
「そう。それが、仕事にも生かされている。僕は、アンナリーゼ様との付き合いの長さでカバーしているけど、パルマはそういう人の機微にすごく聡い子なんだよ。だから、宰相もいつの間にか手放せないでいるらしいね」
「右腕らしいわよ?」
「確かに。パルマと仕事をすると、自分がとても出来る人間なんじゃないかって、錯覚するよ。まずは、ノーラにもそこを目指して欲しいと思う」
「……執事をですか?」
セバスは首を横に振る。似たようなものでも、実際は違う。仕事に対して理解を深める、上司や同僚、部下と連携を取りやすくするというのが目的だろう。
「あくまで例だよ。実際、僕の補佐につけばわかると思うけど、1つの仕事をしているわけじゃない。同時進行で多種多様な案件をこなしているんだ。連携を取れないとただの足手まといになるし、深く業務を理解していないと次の一歩が踏み出せない。僕は領地だけど、パルマは宰相の右腕だからね。それこそ、いろいろな業務を理解して自身ができることをフルにしているはずだよ」
「……執事の仕事を応用して、宰相様の仕事の補佐に役立てているということですね?」
「そう。あと、礼儀作法ももう少しできるようになった方がいい」
「どうしてですか?」
「宰相に話に来る人は、役職がかなり上の人か、上級貴族が多いんだ。そこで、失礼な態度をとれば、宰相が教育不足で業務以外でいろいろと足を引っ張られてしまう」
何度も頷くノーラに説明が響いているようなので、私から、もうひとつ提案をする。この前、連れ帰ってきたナイトをパルマの小間使いにしたいというと、それはまた……と渋めの表情を私に見せてくる。
「なかなか、越えないといけない壁が多そうですけど……」
「そうなのよね。ナイトは文官でもないから、本当に1から教えないといけないの。それをセバスとノーラにしてほしいのよ!」
「なるほど。僕は、ノーラとナイトの教育をする。ノーラはナイトの教育をすると言うことですね?」
「そういうこと。そうすれば、ノーラも手は抜けないどころか、常に見られている意識が出来るからいいかと」
「いい案ですね。ノーラ、自身が学ぶことは大事だけど、誰かを導くというのもノーラの身の糧となるから、試してみるのもいいかと」
ノーラは驚きを隠せないでいるが、私たちの提案を受けてくれるそうだ。ベルでメイドを呼び、ナイトを連れてきてくれるように頼んだ。
少し待っていると、ナイトが部屋に入ってくる。私が初めて会ったときより、綺麗な格好をしていた。
「お呼びですか?」
「えぇ、呼んだわ。ナイトに仕事を与えます」
「……仕事ですか?できる?」
「ナイトの努力次第で、この先の未来も変わるかもしれないわ」
「何をするんですか?」
「最終目的は、宰相補佐の小間使い。大変な仕事だけど、文官への道が開けるかもしれないの。頑張れるかしら?」
平民から文官になるには、それなりの懐事情が必要だ。そういう未来は諦めていただろうナイトは、私たちの話に乗っかってくれるようで、目が輝く。
「厳しいけど、がんばってね?」
そういうと、二つ返事で期待できそうであった。
「どこから言えばいいかな?僕は、セバスチャン・トライド。男爵位を拝命しているけど、基本的にアンナリーゼ様のお守が仕事かな?」
「……お守ですか?」
困惑気味のノーラに苦笑いをするセバス。私はうんうんと頷くだけなので、余計わからなくなっているようだ。
「僕は、一応、国の文官なんだけど、アンナリーゼ様が学生時代に僕のことを拾ってくれて、そこからのつきあいかな?目を離すと無茶なことばかりするから、お目付け役みたいな感じかな?」
「それはお互い様だと思うけど?」
セバスのほうを見て笑うと、確かにと返ってくる。本当のお目付け役はウィルだよねと笑いあうと不思議そうにノーラがこちらを見てくる。
「あの、男爵位とお聞きしたのですが、パルマ様よりも……」
「一応上司になるのかなぁ?」
「そうね。パルマも文官として必要なことは、ほとんどをセバスから聞いているだろうし、今もセバスが相談役なんでしょ?」
「公都にいるあいだは基本的に向こうで仕事しているからね。その間は常に一緒だよ」
「……そうだったんですね。文官になってから、ずいぶん経ちますが知りませんでした」
「1年のほとんどがアンバー領にいるからね。知らなくて当然じゃないかな?」
セバスに話を振られ、頷いた。そのあとは、ノーラの話をして、研修が終わった後、私の推薦を得てパルマの補佐になりたいということを伝えた。
「僕のところでしばらく勉強をするってことになるね。仕事の進め方を教えたのはディルさんだから、そうだな……ちょっと、考えるよ。パルマは少し特殊だから」
「どういうことですか?」
「パルマは、アンバー公爵家の筆頭執事であるディルさんが育てたんだ。目的は礼儀作法と気配り。執事として相当優秀な人材なんだよ」
「執事としてですか?」
「そう。それが、仕事にも生かされている。僕は、アンナリーゼ様との付き合いの長さでカバーしているけど、パルマはそういう人の機微にすごく聡い子なんだよ。だから、宰相もいつの間にか手放せないでいるらしいね」
「右腕らしいわよ?」
「確かに。パルマと仕事をすると、自分がとても出来る人間なんじゃないかって、錯覚するよ。まずは、ノーラにもそこを目指して欲しいと思う」
「……執事をですか?」
セバスは首を横に振る。似たようなものでも、実際は違う。仕事に対して理解を深める、上司や同僚、部下と連携を取りやすくするというのが目的だろう。
「あくまで例だよ。実際、僕の補佐につけばわかると思うけど、1つの仕事をしているわけじゃない。同時進行で多種多様な案件をこなしているんだ。連携を取れないとただの足手まといになるし、深く業務を理解していないと次の一歩が踏み出せない。僕は領地だけど、パルマは宰相の右腕だからね。それこそ、いろいろな業務を理解して自身ができることをフルにしているはずだよ」
「……執事の仕事を応用して、宰相様の仕事の補佐に役立てているということですね?」
「そう。あと、礼儀作法ももう少しできるようになった方がいい」
「どうしてですか?」
「宰相に話に来る人は、役職がかなり上の人か、上級貴族が多いんだ。そこで、失礼な態度をとれば、宰相が教育不足で業務以外でいろいろと足を引っ張られてしまう」
何度も頷くノーラに説明が響いているようなので、私から、もうひとつ提案をする。この前、連れ帰ってきたナイトをパルマの小間使いにしたいというと、それはまた……と渋めの表情を私に見せてくる。
「なかなか、越えないといけない壁が多そうですけど……」
「そうなのよね。ナイトは文官でもないから、本当に1から教えないといけないの。それをセバスとノーラにしてほしいのよ!」
「なるほど。僕は、ノーラとナイトの教育をする。ノーラはナイトの教育をすると言うことですね?」
「そういうこと。そうすれば、ノーラも手は抜けないどころか、常に見られている意識が出来るからいいかと」
「いい案ですね。ノーラ、自身が学ぶことは大事だけど、誰かを導くというのもノーラの身の糧となるから、試してみるのもいいかと」
ノーラは驚きを隠せないでいるが、私たちの提案を受けてくれるそうだ。ベルでメイドを呼び、ナイトを連れてきてくれるように頼んだ。
少し待っていると、ナイトが部屋に入ってくる。私が初めて会ったときより、綺麗な格好をしていた。
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「ナイトの努力次第で、この先の未来も変わるかもしれないわ」
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「最終目的は、宰相補佐の小間使い。大変な仕事だけど、文官への道が開けるかもしれないの。頑張れるかしら?」
平民から文官になるには、それなりの懐事情が必要だ。そういう未来は諦めていただろうナイトは、私たちの話に乗っかってくれるようで、目が輝く。
「厳しいけど、がんばってね?」
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