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サラおばさんを尋ねるとⅡ

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 耳当てを気に入ったアンジェラは私の前でレナンテと一緒に風になって走っている。冬のあいだは、街道にも人は少ないので、少し早く走っても大丈夫だ。ただ、レナンテの脚についてこれる馬がいないから、振り返ると、ジョージアもアデルもエマも後方にいた。


「少しゆっくり走るわね?」


 レナンテに手綱から指示を出せば、賢いレナンテはすぐにいうことを聞いてくれる。不満そうではあるが、仕方がない。


「……アンナ、早すぎる」
「レナンテの早さについてこれる馬はそうそういないですからね?」
「確かに。そうすると……レナンテもそろそろ繁殖を考えないといけないんじゃない?」
「……レナンテに似合う牡馬がいれば、考えますけど」
「アンナ様と同じでじゃじゃ馬……」


 アデルを睨むと、しまったと口を押さえている。ジョージアにまで睨まれたようで、すみませんと小さく謝った。

 心配しなくても、もう一人、ここにいるんだけど?

 銀の髪を揺らしながら、目的地が近づいてきたのでそわそわしているのがわかる。アンジェラは、サラおばさんの住む村には何度も来ているので、近くまできたことがわかったようだ。

 村の入口で馬を繋ぎ、私たちは中へ入って行く。慣れたものだから、手早く済ませると、ジョージアが戸惑っていた。アデルが代わりにジョージアの馬も繋いでいるようだ。


「慣れてるね?」
「領地に帰るたびに、サラおばさんのところには何回か来ていますからね。ここには情報が集まりやすくて」


 むぎ農家を中心に農家が多く、アンバー領だけでなくローズディアの穀倉地を目指しているので、この村が農業の中心となっている。ここには、助手たちの出入りも多いし、実験の場としても使われることが多かった。冬の間は休眠させるが、あと1,2ヶ月もすれば、三期作の麦農家が動き始めるのだ。
 この村の中心人物として、サラおばさんが動いてくれている。特に誰かになってといった覚えはないのだが、1番初めに話したのがきっかけで、この村のことを纏めてくれているのだ。
 コンコンと扉を叩けば、中から元気な声が聞こえてきた。扉をあけて、私だとわかると、その大きな体で私を包んでくれる。

 サラおばさんは、私のことを公爵だと知っている。アンバー公爵家で侍女として働いていた娘がいたから。それでも私をただの『アンナちゃん』として迎え入れてくれるので、私はただいまと微笑んだ。


「アンナちゃん、今回は長い戻りだったね?」
「えぇ、始まりの夜会の少し前からだったから、1年のほとんどをアンバー領以外で過ごすことになったわ」
「流行り病とかもあったって聞いていたし、心配していたんだよ?」
「ありがとう、サラおばさん。変わりはない?」
「そうだね。特には。今は、まだ、冬だしね……」


 うーんと考えながら、そうそうと思い出したように奥へ案内される。アンジェラを見つけて、ニッコリ笑うと、抱きかかえられていた。
 サラおばさんに抱かれていると、肝っ玉母ちゃんの子に見えるので笑ってしまう。


「おチビさんも大きくなったねぇ?もう少ししたら、抱きかかえるなんて出来なくなりそうだ」


 アンジェラはサラおばさんに身を任せて挨拶をしていた。ジョージアは、逆に取り乱しており、なんだかおかしい。


「公爵様もこんな汚い場所に足を運んでくれて、ありがとう。おもてなし出来るようなものはないけど、ゆっくりしていって」
「……気を使わないでくれ」


 話しかけられたことに驚いているのか、そわそわしているジョージア。アデルはいつものやり取りを知っているので何も言わないが、エマは少しだけ驚いていた。

 食卓に席を用意してもらい、それぞれ座る。私はその前に、よるところがあるので、そちらへと向かった。


「アンナちゃん、ありがとう」
「……うぅん、私になんて祈られたくないかもだけど」


 小さな骨壺を一撫でした。それは、アンバー公爵家の侍女であったカルアのものだ。ジョージアには言ってなかっただろう。カルアが平民上がりからの侍女だということは。本当によく働いてくれた子だったのは、私の記憶にも残っている。


「そんなことないよ。カルアもアンナちゃんのこと、口にはしなかったけど好きだったからね」


 さぁと進められた席に座り、お茶を飲む。サラおばさんは近くにあった丸椅子を持ってきて、近くに座った。


「今日は何かあるのかい?」
「とくに決まったことはないのだけど……いつも領地のことを任せているイチアが少し領地を回る旅にでるから、その前に、行って来たら?と提案されて」
「そうだったの?そういえば、今年もおチビちゃんの誕生日会はする予定?」
「うん、今年は通常通りよ!お店も呼ぶわ。あと、別で……セバスの結婚式を領地の屋敷でしようと思っているの。もし……」
「参列してもいいのなら、行きたいねぇ。セバスチャンくんにも世話になっているし、うちのバカ息子が」
「本当?来てくれると嬉しいわ!」
「でも、お貴族様たちが大勢くるんだろう?」
「どうだろう?それでも、領地のみんなに祝われるのは嬉しいと思うのよね!」
「そういうことなら……任せておいて!」


 サラおばさんは私から結婚式の詳細を聞き、私たちにできることを提案してくれる。それに頷き、私はお願いね?と微笑んだ。
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