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約10年後を見据えてⅡ
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「なんていうか、今までの訓練では聞いたことがないような動きをしますね?市街地が戦場にならないようにするのが、私たちの仕事であったはずなのに……」
元近衛のアデル。訓練と言えば、横の連携を大事にして、隊長格からの指示を待つのが正解であったはずだ。その隊長格がウィルではあるので、訓練もさぞかしやりやすかっただろう。
「何度かウィル様の訓練に傘下しましたが、指示も適格でとてもわかりやすく、どこをどう守ればいいのかすぐにわかりました」
「アデルは隊員だったから、ウィル以外の隊長格のところへ配属されることもあるのでしょ?」
「もちろんです。高度な戦術を使っているのでしょうけど、よくわからないものも多く、逃げまどっていた日もありましたよ」
苦笑いをしながら、当時を振り返っている。ウィルは1年目にして小隊長から中隊長へと昇格したため、あまり、隊員訓練に出ることはなかったはずだが、アデルは何年も隊員だったため、いろいろな隊長格の訓練に出ていたことだろう。それこそ、学生上がりのよく知りもしない上官に振り回されたなんてことは、しばしばあっただろう。
「ウィル様はあまりないのですか?」
「あぁ、俺は1年目に子爵になったから、隊長格に鳴ったもんだから、2回くらいしかないなぁ」
「それは羨ましい。もう、本当に当たる隊長によっては、犬死にですよ……」
この訓練は、東と西に別れて演習することがある。大隊と大隊を競わせ、隊長格を育てるという意味も含まれている。木剣に炭が塗られており、切られたらおしまいというルールのもと、戦術訓練をする。その日、隊長格になったものが、戦術を決め、戦うことになる。もちろん、1週間ほどは、大隊同士の交流はさけるようにしている。勝てば給金がほんの少し上がるし、負ければ減ることもある。みなが必死で訓練に取り組んでいる理由はそこにある。
ウィルは貴族とはいえ、爵位を継がない三男なので、身分は隊員から始めているはずだ。
「伝説の1戦がありますよ!」
「……伝説の?」
目を輝かせたのは私だけでない。レオも同じようにしている。
「……それほどのものじゃなだろ?大げさすぎ」
逆にウィルは冷めた感じで適当に流す。私も知らない出来事のようで、ワクワクとしてしまう。
「ウィルが話さなくてもアデルが話してくれるからいいわ!ねぇ?何があったの?」
少し前のめりになって話を聞こうとする。その日、アデルは、ウィルとは反対側の対戦相手としていたらしい。
「当時違う大隊長の下で訓練を受けていました。端的にいえば、絶対的兵力差に対して、完膚なきまでに大隊長を倒してしまったんですよ」
アデルも当時のことを思い出しているの、少し興奮気味だ。アデルの側の訓練内容は、少数部隊に対し数の有利で押し切る作戦だったらしい。逆にウィルたちは、百人程度で5倍の敵から、死地を抜け出す訓練だろう。
「これはどういう訓練なの?」
「俺の方は、殿をしたときとか、少数精鋭で敵を攻めるというようなとき、いかにして、敵と戦うかっていうのが訓練内容。なんとしても敵地の真ん中から、自陣へ戻らないといけないというときを想定してるかな」
「逆にアデルたちは、死地にいるウィルたちを自陣へ帰さないことが目的ね?」
「どうしてダメなの?」
「もしかしたら、そのたった百名の近衛が、国を救えるほどの情報を持っていたとしたら?」
「……わからない」
「じゃあ、こうするわね?今、私たちがおいしいお菓子を食べようとしています。情報を掴んだレオは、主であるアンジェラにおいしいお菓子を一緒に食べようと伝えなくてはなりません。でも、屈強なウィルやアデル、私が扉の前を守っていますってなるとどう?」
「おいしいお菓子を持っているってアンジェラに知らせないといけない。大人たちだけずるい!」
「そうなの。今のレオの置かれている立場が、ウィルたち百人程度の近衛ね?この人たちが、誰か一人でも抜け出すことができれば……それは成功となるのよ。この場合、レオがアンジェラに大人たちがおいしいお菓子を食べているからと秘密の報告をする感じかしら?」
少し考えているようで、レオはゆらゆらと揺れている。アデルは、レオとアンジェラ、私たちの行動を言ったとおりに想像下らしく笑っていた。カイルは納得したように頷く。
「カイルはさっきのでわかった?」
「はい、規模が大きいとまだわかりませんけど、アンナ様が言っていたことはわかりました。どんなときでも、正確な情報が大事だと教えてもらったので、この場合、大隊のほうは、見つけた敵を全員倒すということが大事になのでしょうけど、もしかしたら、だいじな情報が漏れていないようにするためのものだったということでいいですか?小隊の方は、死地にいるということで、何が何でも生きて帰ることを最優先にするということですか?」
「正解。すごいわね?それは、今、自分で考えたのかしら?」
「はい。頭の中で、状況の整理をしてみました」
「なるほどね。例えば、ウィルの方の小隊だったとしたら、方針をどうするか聞いてもいいかしら?」
子どもに聞くのは早すぎるとアデルが私を止めようとしたが、アンバー公爵家でアンジェラの護衛になるのなら、これくらいは自身で考えてもらえないと困る。
どうする?と微笑むと、何か考えがまとまったようで、カイルは頷いた。
元近衛のアデル。訓練と言えば、横の連携を大事にして、隊長格からの指示を待つのが正解であったはずだ。その隊長格がウィルではあるので、訓練もさぞかしやりやすかっただろう。
「何度かウィル様の訓練に傘下しましたが、指示も適格でとてもわかりやすく、どこをどう守ればいいのかすぐにわかりました」
「アデルは隊員だったから、ウィル以外の隊長格のところへ配属されることもあるのでしょ?」
「もちろんです。高度な戦術を使っているのでしょうけど、よくわからないものも多く、逃げまどっていた日もありましたよ」
苦笑いをしながら、当時を振り返っている。ウィルは1年目にして小隊長から中隊長へと昇格したため、あまり、隊員訓練に出ることはなかったはずだが、アデルは何年も隊員だったため、いろいろな隊長格の訓練に出ていたことだろう。それこそ、学生上がりのよく知りもしない上官に振り回されたなんてことは、しばしばあっただろう。
「ウィル様はあまりないのですか?」
「あぁ、俺は1年目に子爵になったから、隊長格に鳴ったもんだから、2回くらいしかないなぁ」
「それは羨ましい。もう、本当に当たる隊長によっては、犬死にですよ……」
この訓練は、東と西に別れて演習することがある。大隊と大隊を競わせ、隊長格を育てるという意味も含まれている。木剣に炭が塗られており、切られたらおしまいというルールのもと、戦術訓練をする。その日、隊長格になったものが、戦術を決め、戦うことになる。もちろん、1週間ほどは、大隊同士の交流はさけるようにしている。勝てば給金がほんの少し上がるし、負ければ減ることもある。みなが必死で訓練に取り組んでいる理由はそこにある。
ウィルは貴族とはいえ、爵位を継がない三男なので、身分は隊員から始めているはずだ。
「伝説の1戦がありますよ!」
「……伝説の?」
目を輝かせたのは私だけでない。レオも同じようにしている。
「……それほどのものじゃなだろ?大げさすぎ」
逆にウィルは冷めた感じで適当に流す。私も知らない出来事のようで、ワクワクとしてしまう。
「ウィルが話さなくてもアデルが話してくれるからいいわ!ねぇ?何があったの?」
少し前のめりになって話を聞こうとする。その日、アデルは、ウィルとは反対側の対戦相手としていたらしい。
「当時違う大隊長の下で訓練を受けていました。端的にいえば、絶対的兵力差に対して、完膚なきまでに大隊長を倒してしまったんですよ」
アデルも当時のことを思い出しているの、少し興奮気味だ。アデルの側の訓練内容は、少数部隊に対し数の有利で押し切る作戦だったらしい。逆にウィルたちは、百人程度で5倍の敵から、死地を抜け出す訓練だろう。
「これはどういう訓練なの?」
「俺の方は、殿をしたときとか、少数精鋭で敵を攻めるというようなとき、いかにして、敵と戦うかっていうのが訓練内容。なんとしても敵地の真ん中から、自陣へ戻らないといけないというときを想定してるかな」
「逆にアデルたちは、死地にいるウィルたちを自陣へ帰さないことが目的ね?」
「どうしてダメなの?」
「もしかしたら、そのたった百名の近衛が、国を救えるほどの情報を持っていたとしたら?」
「……わからない」
「じゃあ、こうするわね?今、私たちがおいしいお菓子を食べようとしています。情報を掴んだレオは、主であるアンジェラにおいしいお菓子を一緒に食べようと伝えなくてはなりません。でも、屈強なウィルやアデル、私が扉の前を守っていますってなるとどう?」
「おいしいお菓子を持っているってアンジェラに知らせないといけない。大人たちだけずるい!」
「そうなの。今のレオの置かれている立場が、ウィルたち百人程度の近衛ね?この人たちが、誰か一人でも抜け出すことができれば……それは成功となるのよ。この場合、レオがアンジェラに大人たちがおいしいお菓子を食べているからと秘密の報告をする感じかしら?」
少し考えているようで、レオはゆらゆらと揺れている。アデルは、レオとアンジェラ、私たちの行動を言ったとおりに想像下らしく笑っていた。カイルは納得したように頷く。
「カイルはさっきのでわかった?」
「はい、規模が大きいとまだわかりませんけど、アンナ様が言っていたことはわかりました。どんなときでも、正確な情報が大事だと教えてもらったので、この場合、大隊のほうは、見つけた敵を全員倒すということが大事になのでしょうけど、もしかしたら、だいじな情報が漏れていないようにするためのものだったということでいいですか?小隊の方は、死地にいるということで、何が何でも生きて帰ることを最優先にするということですか?」
「正解。すごいわね?それは、今、自分で考えたのかしら?」
「はい。頭の中で、状況の整理をしてみました」
「なるほどね。例えば、ウィルの方の小隊だったとしたら、方針をどうするか聞いてもいいかしら?」
子どもに聞くのは早すぎるとアデルが私を止めようとしたが、アンバー公爵家でアンジェラの護衛になるのなら、これくらいは自身で考えてもらえないと困る。
どうする?と微笑むと、何か考えがまとまったようで、カイルは頷いた。
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