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何もできない1週間Ⅳ
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知らないこと……この世の中には、まだ、たくさんある。例えば、原初の女王であるハニーローズの王配のこととか。
何もせずに王配の手記を捲っていると、ふと考えた。部屋には、今日もウィルが護衛としてというより、見張りとしている。部屋の中なので、剣も振れず、何やら本を読んでいた。
「ねぇ、ウィル」
「何?姫さん」
「何を読んでいるの?」
「古い戦術書」
「古い?そんなもの、どこに?」
「この屋敷の書棚にあったぞ?パラパラとっと捲ってみて、おもしろそうだったから、持ってきた。あとで、セバスとイチアにも見てもらおうと思っていたんだけど、見たこともない陣形が書いてある」
本と椅子を持って、こちらに近寄って来た。私が見たいと考えたのだろう。今日もベッドの上で過ごしているので、ウィルに差し出された本を手に取る。確かに、質感からしてかなり古い。それなのに、きちんと本として残っているということは、高級な紙を使って作ってあるものだろう。後ろから捲ってみると、かなり古く、ところどころ読めなくなっている。さらに、読み込まれているらしく、すり減っている場所も多い。
「本当、かなり古いものだね?ジョージア様のおじい様の時代より、古いんじゃないかしら?」
「それなら、相当だよな?姫さんの持っているのは何?」
「王配の手記。代々、アンバー公爵家に引き継がれていくものなの」
「なるほどなぁ……」
ウィルにそれを見せると、背表紙のところに同じ紋様があることがわかった。王配の手記は、王配が後世にハニーローズのすごさを伝えたり、ちょっと笑える話だったり、難しい案件が整理されていたりと、多岐に渡るメモのようなものだ。王配の手記は、他の誰でもない、ロサオリエンティスの王配を示す。だから、この本には、王国をあらわす紋章が付いていてもおかしくはなかった。
「これって……」
「この国が3つに別れる前の時代のものね。そんな古いものが、こんな場所に」
「アンバー公爵家自体が、古い貴族だから、こういうものもあるのかもしれないな。公都の屋敷にあるんじゃない?」
「……公都の屋敷にはないわ。私、暇な時間に全部読んだもの」
「……勉強嫌いの姫さんが?涙ぐましいな」
ウィル!と叱るとべっと舌を出している。余程、この本が気に入ったのか、今まで読んだ部分までをかいつまんで教えてくれた。
確かに知らない戦法ね?古すぎて、私が知らないだけでしょうけど……試したって書いてある。戦争規模で使うようなものよ?どうやって……。
開けてもらったところを読んでいけば、見慣れたクセ字がある。よくよく見れば、知っている人物が書いたものだろう。
「ウィル、これ……書いた人がわかったわ!」
「はっ?書いた人?」
「えぇ、わかったわよ」
「著書のところ、文字が掠れてみれないのに?」
「ウィルが持っているその本、開けてみて」
王配の手記を広げる。その隣にウィルが持ってきた戦法書を並べる。やはり、同じ文字だ。クセ字というのは、他の人が書けるものではない。
「この字とこの字……この字とこの字……これとこれも。同じクセ字だ。と、いうことは……この戦法書は、王配が書いたものなのか?」
「たぶん。見る限りでは、そうなるかしら?私、このクセのある字は、王配しか見たことがないし、文章の作り方も酷似している」
「確かに。こっちの手記は日記のようなものだけど、似ているな」
私は、その戦法書を手に取り読んでいく。穏やかな人柄をイメージしていたが、この戦法書を読むかぎりでは、なかなかの策士だ。ロサオリエンティスを女王にした人物だ。革命を起こした張本人と言っても過言ではない。
「……これ読んでて、すごいなって思ってたけど、まさかなぁ?」
「まさかよね?」
私たちは頭を突き詰めて一緒になって読んでいく。大規模な戦争のことももちろんではあるが、市街地での戦い方が詳しく書いてあった。知りたかったものだ。ウィルと頷きあえば、これに倣って、紙に書きおこしてみる。
「すごいな、これが実践できれば、内部で何かあったとき、すぐに制圧出来るな」
「そうだね。すごいな……これは、現トワイス国の王都が戦いの場となっているけど、ローズディアの公都に置き換えることも出来るわね?」
「確かに……地図、なかったかな。ちょっと見てくる。姫さん、動くなよ?」
「こんな玩具貰って、私が遊ばないとでも?」
確かにと笑って部屋から出ていった。セバスのところへ行ったようで、部屋に戻って来たときには、二人がやいのやいのと言いながら入って来た。ベッドの上にいる私を見て、セバスが苦笑いをする。
「アンナリーゼ様、せっかく休みをとるように言われているのに」
「でも、おもしろそうなことがあれば、首を突っ込みたくなるでしょ?」
「確かに。王配の残した戦法書がなんて、夢のあるものだよね。僕は見たことがないから、ちょっとワクワクしてる」
「でしょ?セバスも気に入ると思うわ」
私がセバスに戦法書を渡すとウィルが持ってきた地図をベッドに広げる。地図の上に書かれた事柄を書いて行く。図上訓練という方法で、戦術を学ばなければならないある程度高位の隊長格が戦術を学んだりするときのものだ。
セバスを交えて、三人が地図の上を縦横無尽に書き入れて、戦法書を読み解いていった。
何もせずに王配の手記を捲っていると、ふと考えた。部屋には、今日もウィルが護衛としてというより、見張りとしている。部屋の中なので、剣も振れず、何やら本を読んでいた。
「ねぇ、ウィル」
「何?姫さん」
「何を読んでいるの?」
「古い戦術書」
「古い?そんなもの、どこに?」
「この屋敷の書棚にあったぞ?パラパラとっと捲ってみて、おもしろそうだったから、持ってきた。あとで、セバスとイチアにも見てもらおうと思っていたんだけど、見たこともない陣形が書いてある」
本と椅子を持って、こちらに近寄って来た。私が見たいと考えたのだろう。今日もベッドの上で過ごしているので、ウィルに差し出された本を手に取る。確かに、質感からしてかなり古い。それなのに、きちんと本として残っているということは、高級な紙を使って作ってあるものだろう。後ろから捲ってみると、かなり古く、ところどころ読めなくなっている。さらに、読み込まれているらしく、すり減っている場所も多い。
「本当、かなり古いものだね?ジョージア様のおじい様の時代より、古いんじゃないかしら?」
「それなら、相当だよな?姫さんの持っているのは何?」
「王配の手記。代々、アンバー公爵家に引き継がれていくものなの」
「なるほどなぁ……」
ウィルにそれを見せると、背表紙のところに同じ紋様があることがわかった。王配の手記は、王配が後世にハニーローズのすごさを伝えたり、ちょっと笑える話だったり、難しい案件が整理されていたりと、多岐に渡るメモのようなものだ。王配の手記は、他の誰でもない、ロサオリエンティスの王配を示す。だから、この本には、王国をあらわす紋章が付いていてもおかしくはなかった。
「これって……」
「この国が3つに別れる前の時代のものね。そんな古いものが、こんな場所に」
「アンバー公爵家自体が、古い貴族だから、こういうものもあるのかもしれないな。公都の屋敷にあるんじゃない?」
「……公都の屋敷にはないわ。私、暇な時間に全部読んだもの」
「……勉強嫌いの姫さんが?涙ぐましいな」
ウィル!と叱るとべっと舌を出している。余程、この本が気に入ったのか、今まで読んだ部分までをかいつまんで教えてくれた。
確かに知らない戦法ね?古すぎて、私が知らないだけでしょうけど……試したって書いてある。戦争規模で使うようなものよ?どうやって……。
開けてもらったところを読んでいけば、見慣れたクセ字がある。よくよく見れば、知っている人物が書いたものだろう。
「ウィル、これ……書いた人がわかったわ!」
「はっ?書いた人?」
「えぇ、わかったわよ」
「著書のところ、文字が掠れてみれないのに?」
「ウィルが持っているその本、開けてみて」
王配の手記を広げる。その隣にウィルが持ってきた戦法書を並べる。やはり、同じ文字だ。クセ字というのは、他の人が書けるものではない。
「この字とこの字……この字とこの字……これとこれも。同じクセ字だ。と、いうことは……この戦法書は、王配が書いたものなのか?」
「たぶん。見る限りでは、そうなるかしら?私、このクセのある字は、王配しか見たことがないし、文章の作り方も酷似している」
「確かに。こっちの手記は日記のようなものだけど、似ているな」
私は、その戦法書を手に取り読んでいく。穏やかな人柄をイメージしていたが、この戦法書を読むかぎりでは、なかなかの策士だ。ロサオリエンティスを女王にした人物だ。革命を起こした張本人と言っても過言ではない。
「……これ読んでて、すごいなって思ってたけど、まさかなぁ?」
「まさかよね?」
私たちは頭を突き詰めて一緒になって読んでいく。大規模な戦争のことももちろんではあるが、市街地での戦い方が詳しく書いてあった。知りたかったものだ。ウィルと頷きあえば、これに倣って、紙に書きおこしてみる。
「すごいな、これが実践できれば、内部で何かあったとき、すぐに制圧出来るな」
「そうだね。すごいな……これは、現トワイス国の王都が戦いの場となっているけど、ローズディアの公都に置き換えることも出来るわね?」
「確かに……地図、なかったかな。ちょっと見てくる。姫さん、動くなよ?」
「こんな玩具貰って、私が遊ばないとでも?」
確かにと笑って部屋から出ていった。セバスのところへ行ったようで、部屋に戻って来たときには、二人がやいのやいのと言いながら入って来た。ベッドの上にいる私を見て、セバスが苦笑いをする。
「アンナリーゼ様、せっかく休みをとるように言われているのに」
「でも、おもしろそうなことがあれば、首を突っ込みたくなるでしょ?」
「確かに。王配の残した戦法書がなんて、夢のあるものだよね。僕は見たことがないから、ちょっとワクワクしてる」
「でしょ?セバスも気に入ると思うわ」
私がセバスに戦法書を渡すとウィルが持ってきた地図をベッドに広げる。地図の上に書かれた事柄を書いて行く。図上訓練という方法で、戦術を学ばなければならないある程度高位の隊長格が戦術を学んだりするときのものだ。
セバスを交えて、三人が地図の上を縦横無尽に書き入れて、戦法書を読み解いていった。
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