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何もできない1週間Ⅱ
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「どこまで本気で思っているかか……」
誤魔化すことは出来なさそうな真剣な目を私は逸らした。バカげていると言われれば、それまでの話だ。今は、ウィルたちも私のことを信じてくれているが、どこまで本気で信じてくれているのか、私には計りかねていた。
「ウィルは、私の話を信じている?」
「質問をしたのは、俺が先だけど?」
しっかり返されてしまい、そうだよねと呟いた。私の『予知夢』に関して言えば、それなりの実績があった。でも、それって、本当は違うんじゃないのか……と思う日もなかったことはない。
「私が『予知夢』をみれるようになったのって、ずっと小さい頃なの。覚えている限りではってことだから……いつからとかはわからない。ただ、怖い夢を見る日が多くて、兄のベッドへ逃げ込んだ日は数知れずね」
「サシャ様のところへ?」
「そう。何も言わず、泣きながらベッドにもぐりこむの。泣き止んで眠るまで、ずっと私を撫でてくれていたわ」
「姫さんの子ども時代って……結構、大変だったんだな?」
「そうね?そうかもしれない。お兄様が優しい人だったから、私は心が壊れずにいられたのだと思う」
そこからポツポツと子ども時代の話をする。繰り返しになっている部分や、忘れてしまっていたことなどを言えば、もうすっかり夕方になっていた。途中で昼食やアデルが交替に来ていたが、ウィルはずっと私の話に耳を傾けていた。
「姫さんって、毎日、夢をみるんだっけ?」
「……今は、みれないの」
「今は……確か、力が弱まっているって話していたよね?」
「そう。私から、アンジェラへ力が移行していっている気がする。たまに、私もしらないようなことを教えてくれたりするのよ」
「例えばどんなこと?」
「この前のエルドアでのこと。覚えているかしら?」
「紫の花の絵か……あれは、確か、トリカブトの絵だったんだよな?」
「そう。インゼロ帝国の戦争屋の紋章だった。あとになってわかったけど、あの日、手紙で紫の花を言われなかったら、気付かなかったし、解毒薬を飲んで行こうなんて、たぶん、思わなかったはずよ?」
「お嬢は、トリカブトの花を知っている?」
「いいえ、知らないはず。まだ、4歳にもなっていない子が、トリカブトの花を知るはずもない。私だって、知らなかったんだから」
ウィルが、頷く。毒を専門に研究しているヨハンなら、知っていただろう。まだ、アンジェラには、ヨハンとの接点と言えば、体調を崩したときに見てもらう程度のことだ。強めの毒耐性をつけることは、まだしていない。
「……姫さん、ハニーローズって、何か能力があるんだっけ?」
「過去見ができると聞いているわ。原初の女王は、それで、国を守っていたと言われている」
「どういうこと?」
「私たちが過去を知ろうとしたとき、何で調べる?」
「……本とか文献?俺には無縁のものだけど」
「そう、本や文献が過去を調べるときには有益よね。ただ、そこに書かれていることは、本当に正しいことなのかまでは、誰もわからない。その時代を生きていたわけではないから」
「ハニーローズは、本や文献ではなくて、知りたい過去の事案を見ることができるってこと?」
「私も詳しくはわからないけど、そういうことなんだと王配の手記から読み解いたわ」
「王配の手記って、原初の女王の?」
「そう。アンバー公爵家の夫人に代々受け継がれるものなの」
驚いているウィルに、王配の手記を持ってきて見せる。昔の言葉や文字が使われているので、読みにくい部分もあるが、貴族として当たり前に習うものではあるので、読めないわけではない。説明した部分を開いて見せると、ウィルも読んでいる。
「ハニーローズも万能ではないんだな」
「当たり前よ?神ではないのだもの。元々、原初の女王は忌み嫌われていたらしいしね?」
「過去見ができるから?」
「そう。他にも何かあったのかもしれないわ。ハニーローズってずば抜けた頭の持ち主でもあるらしいから」
「それって、姫さんとかサシャ様とかセバスやイチアと並ぶくらい?」
「もっとよ。記憶力がいいとか、頭の中の整理がうまいとか……私たち常人からは考えられないほどの切れ者だってこと」
「……お嬢がそれになるって?」
「どうだろう……年々、原初の女王ほどには力が発せないというものも見たわ」
「見た?どういうこと?」
「ハニーローズは、アンバー公爵家にしか生まれないのは知っているわよね?」
「もちろん。それも、もう、結構昔だよね?」
「そう。そのころのハニーローズの日記を読んだのよ。原初の女王ほど、力がないって書いてあったわ。どれほどの力と比べているのか、わからなかったけど……」
「劣化していっていると。でも、お嬢は、2つの能力を持って生まれたわけだろう?」
「そう、それが不思議なの。この『予知夢』は、お母様には現れなかった」
「お母様には?」と小首を傾げているので、なんで?という疑問が湧いてきたのだろう。私のほうの家系の説明も必要になると思い、紙とペンを取ってもらう。私の知る限りのことを、ウィルには話そうと頭の中を整理した。
誤魔化すことは出来なさそうな真剣な目を私は逸らした。バカげていると言われれば、それまでの話だ。今は、ウィルたちも私のことを信じてくれているが、どこまで本気で信じてくれているのか、私には計りかねていた。
「ウィルは、私の話を信じている?」
「質問をしたのは、俺が先だけど?」
しっかり返されてしまい、そうだよねと呟いた。私の『予知夢』に関して言えば、それなりの実績があった。でも、それって、本当は違うんじゃないのか……と思う日もなかったことはない。
「私が『予知夢』をみれるようになったのって、ずっと小さい頃なの。覚えている限りではってことだから……いつからとかはわからない。ただ、怖い夢を見る日が多くて、兄のベッドへ逃げ込んだ日は数知れずね」
「サシャ様のところへ?」
「そう。何も言わず、泣きながらベッドにもぐりこむの。泣き止んで眠るまで、ずっと私を撫でてくれていたわ」
「姫さんの子ども時代って……結構、大変だったんだな?」
「そうね?そうかもしれない。お兄様が優しい人だったから、私は心が壊れずにいられたのだと思う」
そこからポツポツと子ども時代の話をする。繰り返しになっている部分や、忘れてしまっていたことなどを言えば、もうすっかり夕方になっていた。途中で昼食やアデルが交替に来ていたが、ウィルはずっと私の話に耳を傾けていた。
「姫さんって、毎日、夢をみるんだっけ?」
「……今は、みれないの」
「今は……確か、力が弱まっているって話していたよね?」
「そう。私から、アンジェラへ力が移行していっている気がする。たまに、私もしらないようなことを教えてくれたりするのよ」
「例えばどんなこと?」
「この前のエルドアでのこと。覚えているかしら?」
「紫の花の絵か……あれは、確か、トリカブトの絵だったんだよな?」
「そう。インゼロ帝国の戦争屋の紋章だった。あとになってわかったけど、あの日、手紙で紫の花を言われなかったら、気付かなかったし、解毒薬を飲んで行こうなんて、たぶん、思わなかったはずよ?」
「お嬢は、トリカブトの花を知っている?」
「いいえ、知らないはず。まだ、4歳にもなっていない子が、トリカブトの花を知るはずもない。私だって、知らなかったんだから」
ウィルが、頷く。毒を専門に研究しているヨハンなら、知っていただろう。まだ、アンジェラには、ヨハンとの接点と言えば、体調を崩したときに見てもらう程度のことだ。強めの毒耐性をつけることは、まだしていない。
「……姫さん、ハニーローズって、何か能力があるんだっけ?」
「過去見ができると聞いているわ。原初の女王は、それで、国を守っていたと言われている」
「どういうこと?」
「私たちが過去を知ろうとしたとき、何で調べる?」
「……本とか文献?俺には無縁のものだけど」
「そう、本や文献が過去を調べるときには有益よね。ただ、そこに書かれていることは、本当に正しいことなのかまでは、誰もわからない。その時代を生きていたわけではないから」
「ハニーローズは、本や文献ではなくて、知りたい過去の事案を見ることができるってこと?」
「私も詳しくはわからないけど、そういうことなんだと王配の手記から読み解いたわ」
「王配の手記って、原初の女王の?」
「そう。アンバー公爵家の夫人に代々受け継がれるものなの」
驚いているウィルに、王配の手記を持ってきて見せる。昔の言葉や文字が使われているので、読みにくい部分もあるが、貴族として当たり前に習うものではあるので、読めないわけではない。説明した部分を開いて見せると、ウィルも読んでいる。
「ハニーローズも万能ではないんだな」
「当たり前よ?神ではないのだもの。元々、原初の女王は忌み嫌われていたらしいしね?」
「過去見ができるから?」
「そう。他にも何かあったのかもしれないわ。ハニーローズってずば抜けた頭の持ち主でもあるらしいから」
「それって、姫さんとかサシャ様とかセバスやイチアと並ぶくらい?」
「もっとよ。記憶力がいいとか、頭の中の整理がうまいとか……私たち常人からは考えられないほどの切れ者だってこと」
「……お嬢がそれになるって?」
「どうだろう……年々、原初の女王ほどには力が発せないというものも見たわ」
「見た?どういうこと?」
「ハニーローズは、アンバー公爵家にしか生まれないのは知っているわよね?」
「もちろん。それも、もう、結構昔だよね?」
「そう。そのころのハニーローズの日記を読んだのよ。原初の女王ほど、力がないって書いてあったわ。どれほどの力と比べているのか、わからなかったけど……」
「劣化していっていると。でも、お嬢は、2つの能力を持って生まれたわけだろう?」
「そう、それが不思議なの。この『予知夢』は、お母様には現れなかった」
「お母様には?」と小首を傾げているので、なんで?という疑問が湧いてきたのだろう。私のほうの家系の説明も必要になると思い、紙とペンを取ってもらう。私の知る限りのことを、ウィルには話そうと頭の中を整理した。
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